高校教員の徒然日記

PMA~Positive Mental Attitude~

長野大学_国語_2022(令和4)年度_学校推薦型選抜(推薦入試)_第1問

こんにちは。きんこです。

 

長野大学2022年度(令和4年度)学校推薦型選抜(推薦入試)の国語第1問の解答解説です。

 

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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています

そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 

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この読み方、解き方を徹底することで入試問題を解けるようになるでしょう。

ぜひ身につけてください。

 

問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。

www.nagano.ac.jp

   


はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。

 

では、始めます。

 

[解答]

 

1 志水宏吉『「つながり格差」が学力格差を生む』より

 

問1 

(ア)ばいかい  (イ)かごん  (ウ)みゃくらく  (エ)ひるがえ(し)  (オ)てい(し)

 

問2

(1)把握  (2)機微  (3)所与  (4)疑義  (5)苦境

 

問3 

A…ウ、エ、
B…オ、キ、ケ
C…ア、イ、カ、ク、コ

 

問4 

 

問5

ア、オ

 

問6

学力とは、個人の能力や資質だけによって決まるものではなく、それらと、学校や地域、家庭など、的確な援助を受けられる環境との相互作用によって決まるものである。(77字)


[解説]

 

形式段落での説明になります。

1~8まで形式段落に番号を振ってください。


問1 漢字(読み)

 

「呈したい」はあまり見かけないので難しいかもしれませんが、その他は確実に得点したいものばかりです

ちなみに「媒介」の「媒」、「呈」が漢字検定準2級の漢字であり、その他はそれ以下の級です。


問2 漢字(書き取り)

 

漢字自体は難しくありません。漢字検定2級まで取得していればまったく問題ありません(準2級でも大丈夫そうです)。

今回は「把」の「把」が準2級の漢字で、それ以外は4級以下となっています。

ただし、「機微」「所与」「疑義」など「ことば」としては難しめのものが問われています。漢字の学習というよりも、現代文における重要語をしっかりと学んでおく必要がありそうです


問3 内容理解

 

この文章で対比されている「ピアジュの学習観」と「ヴィゴツキーの学習観」をしっかりと理解できているかを問う設問です

 

このような問題のときには、それぞれがどのようなものかをしっかりと確認してから選択肢を見ていく必要があります。

 

読み取るときには、これらが主語になっている場合、これらが修飾されている場合、形式段落のはじめに述べられている場合(その後の形式段落のつくり)などに注目します

詳しくははじめに紹介した「文章の読み方」のブログを参考にしてください。

これらに注目して、それぞれの内容を確認します。

 

○ピアジュの学習観

形式段落1 
・「伝統的な」学習観
・個人中心

 

形式段落2 
・「感覚運動期」「前操作期」「具体的操作期」「形式的操作期」の4段階で把握した
・子どもたちの発達段階に応じて学習を組織していかなければならない。

 

形式段落3
・「個人の頭のなかで起こる」ことがら
・冷静に論理的に物事を考えることができる個人が、理想的な学習者

 

形式段落6
・すぐれた個人がすぐれた学習者になる

 

ヴィゴツキーの学習観

形式段落1

・「新しい」学習観
・社会関係重視

 

形式段落4

・思考や学習における他者との関係性に注目した
・一人ひとりの子どもの発達の最近接領域に働きかけること
・「発達の最近接領域」とは、「一人ではできない(わからない)」が「他者のサポートがあればできる(わかる)」という行為の水準・領域

 

形式段落6
・身近な他者の的確なサポート・援助こそが、学習の成功の鍵になる

 

以上の内容を踏まえて、各選択肢を見ていきます。

 

ア 「一人ではできない」子どもの発達に着目するのではなく、「一人ではできない」が「他者のサポートがあればできる」子どもの発達に着目するのがヴィゴツキーです。

どちらにも当てはまりません。

 

イ 「優れた大人になることを目指す」とは、どちらも言っていません。

 

ウ 「学習の成功の鍵を個人の内面に見出す」のがピアジュです。形式段落3の内容です。

 

エ 「年齢とともに発達する」から、それに合わせるのがピアジュです。形式段落2の内容です。

 

オ 「他者との関係性の内に展開されるとする」のがヴィゴツキーです。形式段落4の内容です。

 

カ 「日本の学校教育の方針になる」とは、どこにも述べてられていません。
形式段落6で、筆者は「後者の学習観(ヴィゴツキーの学習観)の方が好き」と述べていますが、それが「日本の学校教育の方針になる」とは述べていませんので、どちらにも当てはまりません。

 

キ 「他者との関係を重視する」のはヴィゴツキーです。

 

ク 「子どもの発達段階をあえて否定する」とありますが、「子どもの発達段階に合わせる」のがピアジュであり、ヴィゴツキーは「ピアジュをあえて否定した」わけではありませんので、どちらにも当てはまりません。

 

ケ 「他者からの支援が求められる」とするのがヴィゴツキーです。形式段落4・6の内容です。

 

コ 「ロシアの教育で主流となった」とありますが、ヴィゴツキーはロシアの心理学者というだけであり、彼の学習観がロシアの主流になったとは述べられていませんので、どちらにも当てはまりません。


問4 空欄補充

 

空欄補充の問題は、前後の文脈を確認して考えます

 

今回の空欄は形式段落3の「なかほど」にありますから、そのまとめが「おわり」に述べられるはずです

 

「おわり」を確認すると

「年齢のわりにしっかりしているね」という言い方がほめ言葉になるのは、そうした脈絡においてである。

です。

この「そうした脈絡」が空欄の内容です。

 

また、この文を確認すると

「年齢のわりにしっかりしているね」という言い方がほめ言葉になる=そうした脈絡においてだ

ですね。「は」は「イコール」ですから。

 

ということは

空欄=そうした脈絡=年齢のわりにしっかりしている

と判断できます。

 

ここまで考えて選択肢を見ます。

このような内容になっているのものは「小さな大人」しかありません。


問5 空欄補充(具体例)

 

再び空欄補充です。

空欄補充は前後の文脈なのですが、今回は設問にあるとおり「ヴィゴツキーの学習観の具体的な場面」を答えます。

ということは、まずは「ヴィゴツキーの学習観」をしっかりと押さえます(これが前後の文脈を押さえるということになります)。

 

すでに問3で確認しました。もう一度再掲します。

ヴィゴツキーの学習観

・「新しい」学習観
・社会関係重視
・思考や学習における他者との関係性に注目した
・一人ひとりの子どもの発達の最近接領域に働きかけること
・「発達の最近接領域」とは、「一人ではできない(わからない)」が「他者のサポートがあればできる(わかる)」という行為の水準・領域
・身近な他者の的確なサポート・援助こそが、学習の成功の鍵になる

 

分かりやすくまとめると

「一人ではできない(わからない)」が「他者のサポートがあればできる(わかる)」ときに、身近な他者が的確なサポート・援助をする

ということでしょう。

 

ここまで確認してから選択肢を見ます。

簡単ですね。

 

他者に手伝ってもらって「できる(わかる)」状態になっているのはアとオです

エについては、「辛抱強さが身に付いた」かもしれませんが、「強制的にやらされている」というのは「的確なサポート」とは言えませんよ。
そもそも「辛抱強さが身に付いた」とは「できる(わかる)」状態とは違いますしね。


問6 内容説明

 

筆者が考える「学力観」をまとめます。

筆者の学力観が述べられているのは形式段落6からです。

確認しましょう。

 

形式段落6
・後者の学習観(ヴィゴツキーの学習観)が好き
ヴィゴツキーの学習観=身近な他者の的確なサポート・援助こそが、学習の成功の鍵になる

 

形式段落7
・学力は個人の能力や資質に焦点が当てられる傾向にあるが、その見方に半期を翻したい
・「できる・できない」は環境との相互作用によってもたらされるものだ

 

形式段落8
・平均点の高い学校が「よい学校」、低い学校が「悪い学校」と見られるのが一般的だが、それに疑義を呈したい
・子どもたちの学力テストの成績は「学校の力」と「地域・家庭の力」の総和だ

 

以上を確認して、答えを作りましょう。

 

設問では「個人」と「環境」を必ず用いてという条件があります。

「個人」はピアジュの学習観、「環境」はヴィゴツキーの学習観をあらわすことばですね

そして、筆者はヴィゴツキーの学習観が好きだと述べています。

 

ということは、大きな枠組みはこうなると考えられます。

学力とは、「個人」によって決まるのではなく、「環境」によって決まるものだ。

 

これに「個人」「環境」の説明を足していきます。

まず「個人」に足してみます。

形式段落7に「個人」が出てきましたから、そこを使いましょう。

学力とは、個人の能力や資質によって決まるのではなく、「環境」によって決まるものだ。

 

次に「環境」の説明を足します。

形式段落7の内容です。

学力とは、個人の能力や資質によって決まるのではなく、環境との相互作用によって決まるものだ。(45字)

 

「相互作用」ということは、「個人」も「環境」のどちらも必要だと考えることができるので、次のように直します。

学力とは、個人の能力や資質だけによって決まるのではなく、それらと、環境との相互作用によって決まるものだ。(52字)

 

まだまだ字数が足りませんから、「環境」を具体的に説明しましょう。

形式段落8の内容です。

学力とは、個人の能力や資質だけによって決まるのではなく、それらと、学校や地域、家庭などの環境との相互作用によって決まるものだ。(63字)

設問の60字以上を満たしました。

ただ、このような場合(80字以内となっている)、基本的には80字くらい書かないと、すべてのポイントを書くことができていないと判断します

 

ですので、さらに「環境」の説明を足します。

ヴィゴツキーの学習観(形式段落7)の内容です。

学力とは、個人の能力や資質だけによって決まるものではなく、それらと、学校や地域、家庭など、的確な援助を受けられる環境との相互作用によって決まるものである。(77字)

これでいいでしょう。

 

なお、後半の説明を増やしていったのは、あくまで筆者の学力観は「環境(ヴィゴツキーの学習観)」の方だからです

こちらの説明を手厚くすることが筆者の学力観を説明することになります。

 


以上が第1問の解説です。

 

2021年度入試まで長野大学では、文章を正しく読めること、自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること、そして漢字や語句の意味などの語彙力が求められてきました。

このことは学校推薦型選抜(推薦入試)だろうと総合型選抜(AO入試)だろうと、一般選抜だろうと変わりませんでした。

ただ、2022年度入試では「自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること」をはかる設問は出題されていません

もしかすると、文章を正しく読む力、語彙力だけを求めるようになったのかもしれません。

とはいえ、再び「自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること」をはかる設問が出題されることもあるかもしれませんから油断はできません

これらすべての力をつけるように学習しておくことをオススメします。

 

文章を正しく読む力が試される設問に関しては、「文章の読み方」を意識していれば比較的簡単に解くことができるはずです

大事なのは、常に同じ読み方をしてみることです

そのためには、一度取り組んだ問題を復習し、このブログで説明したような流れで考えることができるかを試すといいと思います。

 

自分の意見を述べる設問に関しては、過去の長野大学の小論文問題をやってみるのがいいかもしれません。

私のブログで解説もしているので見てみてください。

 

先程も書いたように、長野大学の入試問題は漢字などの語句の問題に始まり、文脈から解ける空欄補充、基本的な読解力、表現力などを問うてきます。

特別な力などではなく「基本的な国語力」を試す問題と言えます。

この問題を解けるようになることは、皆さんの人生においてプラスの何かをもたらしてくれるでしょう。

「入試問題」だからやるのではなく、自分の力を高めるためにも取り組んでもらいたいと思います。

 

頑張ってくださいね。

 

では、これで終わります。


他の年度や国語の勉強の仕方はこちらからご覧ください。

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旭川大学_小論文_2022年度_保健福祉学部_学校推薦

こんにちは。きんこです。

 

旭川大学(2022年度・令和4年度保健福祉学部学校推薦型選抜)の小論文の解説です。
(社会人特別選抜1期、編入学特別選抜1期、社会人編入学特別選抜1期)


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現代文の力もつきますよ。

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では、はじめます。

 

課題文は、浜田寿美男『「私」をめぐる冒険「私」が「私」であることが揺らぐ場所から』です。

 

設問の解説の前に、旭川大学が示している小論文の評価ポイントを確認しておきましょう。

 

入学者選抜要項のアドミッションポリシーによれば、保健福祉学部保健看護学科は「読解力・思考力・表現力・判断力と論理的思考を小論文で評価する」、コミュニティ福祉学科は「思考力、表現力を小論文によって評価する」となっています。

 

課題文の内容をしっかりと読み取ることができているか、そして、それをもとに自分の意見を適切な表現で述べることができているかが求められていることが分かります。

 

また、保健看護学科は「判断力」も評価となっていることから、医療従事者としての「判断力」、つまり医療従事者として適切な意見を述べることができているかも求められていると考えていいでしょう。

 

問題1

 

課題文の要旨を200字以内で説明する問題です。

まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。

『現代新国語辞典』(三省堂)によれば

「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です。

 

小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。

それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。

ちなみに旭川大学だけでなく、このブログで解説をしている長野大学名寄市立大学の小論文の課題文もそのようになっています。

ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。

 

まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。

この力が求められていることも、アドミッションポリシーから明らかです。

ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。

 


では、今回の課題文を読んでいきましょう。

 

形式段落ごとに見ていきますので1~8まで番号を振ってください。

課題文の書き抜きは青字で表示します。

 

古典的なリハビリの発想では
欠如した機能を効率的に回復する手立てを探り、そこで見つけた最適最上と思われる訓練方法を、繰り返し反復させようとする。

 

課題文の「はじめ」です。

この課題文のテーマが「リハビリ」だと分かります。

ここでは「古典的なリハビリ」がどのようなものかが書かれています。

このように書かれるということは、この後に「古典的ではないリハビリ」が書かれると予想できますね。

 

この考え方を根本的に批判し続けてきた人に、三好春樹という介護の実践家がいる。

理学療法士として、看る側ではなく、看られる側に立って提言をしている人。

 

「古典的ではないリハビリ」が三好春樹が提言しているものですね。

それがどのようなものかを読み取る意識を持って読み進めます。

 

彼が紹介している話の1つに、脳溢血になったおばあちゃんのエピソードがある。

 

具体例が始まります。

これを通して、三好春樹の提言を読み取ることになります。

 

おばあちゃんは、リハビリの訓練で「私は何のために向こうまで行ったんじゃね」と質問した。

 

トレーナーとしては元通りに歩けるようになるための訓練だが、

おばあちゃんには行って何かするという意味が見えなかった。

 

ここまでが具体例です。

第2段落にあった「看る側ではなく、看られる側に立って」がポイントになりそうですね。

 

従来のリハビリは、たいてい、まず訓練を行い、力を身につけ、あるいは取り戻す。それから、その力を使おうという発想。

看る側の都合で管理的なトレーニングをさせても果たして意味があるのだろうか。

トイレに行きたいなど、生活そのものの中で湧き上がってくる、看られる本人の思いの中で力を使う方が自然なのではないか。

 

ここがリハビリについての筆者の主張です

「看る側」視点の古典的なリハビリではなく、「看られる側」視点でのリハビリが自然であり、大事だと述べているわけです。

 

看る側よりも看られる側の都合を大切にすることが、プラグマティックに考えても効果がある。

「生活にまさる訓練なし」

 

主張を繰り返しています。

 

身体の感覚は、訓練で力をつけて、生活に戻るというものではない。

今ある力で生きるというかたちに従うのが一番自然だ。

 

ここも主張の繰り返しですね。

 

ただ、「新生児の育ち方」とも述べていますから、リハビリだけの話ではなくなってはいます。

ということは、この課題文はリハビリの例を通して「身体の感覚」について述べたかったのだと分かります

第6段落から続いた主張を、リハビリに限らず新生児の育ち方などを含む「身体の感覚」としてまとめています。

 

ということは、この課題文のテーマは「リハビリ」だけというわけではなく「身体の感覚」についてだったことが分かります

 


課題文の読み取りが終了しました。

以上のことを踏まえて、課題文の要旨を説明してみましょう。

 

筆者の主張は、第8段落の内容でまとめます。

身体の感覚は、訓練で力をつけて、生活に戻るというものではなく、今ある力で生きるというかたちに従うのが一番自然だ。(56字)

これを中心にまとめていきます。


まずは、前半のリハビリを加えます。

リハビリについては第1段落の内容ですね。

古典的なリハビリの発想では、欠如した機能を効率的に回復する手立てを探り、そこで見つけた最適最上と思われる訓練方法を、繰り返し反復させようとする。しかし、身体の感覚は、訓練で力をつけて、生活に戻るというものではなく、今ある力で生きるというかたちに従うのが一番自然だ。(132字)

このままでは前半と後半が繋がっていません。

前半がリハビリ、後半が突然身体感覚の話になってしまっています。

そこで、三好春樹の主張を加えることで、リハビリの話が何を意味するのかを加えます。

第6・7段落の内容です。

古典的なリハビリの発想では、欠如した機能を効率的に回復する手立てを探り、そこで見つけた最適最上と思われる訓練方法を、繰り返し反復させようとする。しかし、看る側の都合で管理的なトレーニングをさせるよりも、トイレに行きたいなど、生活そのものの中で湧き上がってくる、看られる本人の思いの中で力を使う方が自然であり、プラグマティックに考えても効果がある。身体の感覚は、訓練で力をつけて、生活に戻るというものではなく、今ある力で生きるというかたちに従うのが一番自然だ。(229字)

流れが自然になったので、これを200字以内にまとめます。

古典的なリハビリの発想では、欠如した機能を効率的に回復する手立てを探り、そこで見つけた最適と思われる訓練方法を繰り返し反復させる。しかし、看る側の都合で管理的なトレーニングをさせるよりも、看られる本人の思いの中で力を使う方が自然であり、プラグマティックに考えても効果がある。身体の感覚は、訓練で力をつけて生活に戻るというものではなく、今ある力で生きるというかたちに従うのが一番自然である。(194字)


問題2

 

絶対に注意しなければいけないことは「問題」をよく見ることです

具体的には「この文章を読んだ上で」「あなたのイメージを」「なぜそう考えるのか根拠を示して」を見落とさないことです。

この文章を読んだ上で、つまり筆者の主張をふまえて、自分が持っているイメージを、その理由・根拠とともに述べる必要があります。

 

ということで、筆者の主張を確認します。

 

問題1より、

身体の感覚は、訓練で力をつけて、生活に戻るというものではなく、今ある力で生きるというかたちに従うのが一番自然だ。

言い換えると、看る側の都合ではなく看られる側(患者)の視点に立って治療やリハビリを行うことが重要だということでしょう。

 

看護や福祉の仕事に関するイメージを、これと関連付けながら述べる必要があります。

つまり、看護師や福祉士側からの視点と、患者側からの視点のどちらを重視するかということが問われていると言えます。

 

それを、あなたが持っているイメージを出発点として述べていくことになります

看護や福祉に従事することを考えると、あなたの意見は患者側に立つという方向性になりそうです。

そして、そのように考える根拠をしっかりと述べることができるかがポイントとなります。


以上のことを踏まえて、自分の持つイメージ、その理由、根拠を800字で述べましょう。

基本の構成はこうなるでしょう。

第1段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見(イメージ)を述べる
第2段落 意見(イメージ)の理由、根拠、具体例
第3段落 意見のまとめ

4段落構成にする場合は、上記の「第2段落」の内容を2つに分けることになります。


以上で書くと、合格できる小論文になります。

 

書き方や表現、意見の内容などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。


これからも過去問に取り組んでみましょう。

旭川大学は公開されている過去問が少ないので、名寄市立大学長野大学の課題文を使って練習するのもアリですよ。

 

では、終わります。


長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 

名寄市立大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。

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長野大学_小論文_2022年度_総合型選抜(AO入試)

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長野大学(2022年度・令和4年度総合型選抜・AO入試)の小論文の解説です。

 

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問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。
  

www.nagano.ac.jp

 

このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。

そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。

まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。

現代文の力もつきますよ。

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では、はじめます。

 

課題文は小川さやか「世界が存在する偶然を」『アステイオン』91所収です。

 

設問の解説の前に、長野大学が示していた、小論文における「評価のポイント」を確認しておきましょう。

現在の募集要項には小論文の評価のポイントが載っていませんが、以前は載っていました。

募集要項から消えたからといって、評価のポイントがガラッと変わってしまうことは考えにくいですから、参考になると思います。

以下の記事で詳しく紹介していますので、まだご覧になっていない方は読んでおくことをオススメします。

kinkoshin.hatenablog.com

 

上記のブログで示したように、課題文で筆者は何かしらに対して「問題」を提起しています

その問題を捉えるのだという意識で課題文を読み進めるといいでしょう。

また、多くの場合、その問題についての筆者の意見が述べられています。

これが「筆者の主張」となります。

課題文で提起されている問題は何か、そしてその問題に対して筆者はどのように考えているかを読み取ることを意識しましょう。

 

設問1

 

課題文の要旨を200字以内で書く問題です。

 

まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。

『現代新国語辞典』(三省堂)によれば

「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です。

 

小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。

それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。

ちなみにこのブログで解説をしている長野大学名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。

 

ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。

 

先ほど確認したように、長野大学の課題文では何らかの「問題」が提起されているはずです。

読み取るべき筆者の主張は、「問題点そのもの」であったり、「問題に対する筆者の考え」であったりするということを意識しておくと取り組みやすくなります。

 

まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。

この力が求められていることも、長野大学のアドミッションポリシーから明らかです。

ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。


では、今回の課題文を読んでいきましょう。

 

形式段落ごとに見ていきますので1~7まで番号を振ってください。

課題文の書き抜きは青字で表示します。

 

この百年に、人類の社会の大部分は、不確実性・不透明性を削減・縮小することを目指して発展してきた。

確実性を増大させ、個人と社会の安定性や安全性を高めていくことが、人類の幸福につながると信じられてきた時代だった。

 

形式段落の「はじめ」も「おわり」も同じことが述べられています。

人類の発展=不確実性の縮小=確実性の増大=個人と社会の安定=人類の幸福

とまとめることができます。

 

けれども

人類の社会は、予測不可能な事柄や偶然性の存在によっても成り立ってきた。

それは、他社や社会に対する能動的な働きかけを引き起こす原動力。

偶然に成功することは、他社や社会を肯定的に意味づける契機。

 

逆接から始まっていますから、筆者の主張がありそうです。

予測不可能な事柄や偶然性が重要だと言いたいのでしょう。

 

偶然性は、友情や愛情、贈与、返礼、創造性、独自性などを生み出した。

 

偶然性が重要である理由が述べられています。

偶然性があるからこそ、これらがあるのです。

 

それゆえ(だから)

不確実性を削減していく動きが進展するならば、

あらゆる側面に「不確実性・不可知性」を再創造していく時代になると予想している。

 

第2段落での主張をさらに進めています。

偶然性が重要なのに、この百年にそれが削減されているから、今後、偶然性(不確実性)を再創造する時代となる。

これが筆者の主張です。

 

香港のタンザニア人は、偶然に応答した相手に賭けるという方法で商売する。

 

長いけれど、まとめるとコレだけです。

偶然性・不確実性の例ですね。

 

香港のタンザニア人は、偶然に応答する者が現れると「彼/彼女は私のことが好きだ」と語る。

むしろ、この無根拠で幸せな確信のために、誰が信用できるかわからないという不確実性のある世界とそこへの自己の投企を肯定している。

 

「投企」ということばが難しいですが、全体の内容はわかると思います。

香港のタンザニア人は、偶然による無根拠で幸せな確信のために、不確実性のある社会で生きているという感じでしょうか。

 

第1段落の内容とは逆ですね。

第1段落では「人類の幸福=不確実性の縮小=確実性の増大」でしたから。

タンザニア人は「幸せ=偶然」です。

 

「むしろ」がありますから、後半の内容が注目すべき箇所です。

筆者の主張を裏付ける内容となっていることがわかります。

 

なお、「投企」とは「自分とは何かを考え、未来に向かって自分を創っていく」というような意味です。

つまり、「自分の未来」のために「不確実性のある世界」に身を投じているという意味になります。

 

百年後の人類が、既に獲得した物質的・精神的な豊かさを捨てずに原初的な人類のユートピアを実現しているなら、

予想外の可能性のない世界の隙間に、自身と世界が存在するまったき偶然それ自体の豊かさを復活させているはずだ。

 

第4段落で述べた「偶然性(不確実性)を再創造する時代」を具体的に述べています。

やはり主張は第4段落の内容ですね。

 

ということで、本文の読み取りが終了しました。

 

長野大学の課題文では「問題」が提起されていることが多いのですが、今回は明確には問題提起がされていませんでした。

とはいえ、筆者の主張は読み取りやすいですし、もし「問題」が提起されていると考えるのであれば、第1段落で述べられていた「この百年の人類の発展のあり方(不確実性の削減)」を問題視していると考えることができます。

不確実性・不透明性を削減・縮小することが幸福につながると信じられてきたが、本当にそうなのか

これを「問題」と捉えることもできるでしょう。

この問題に対する答えが筆者の主張であると言えます。


以上のことを踏まえて、課題文の要旨をまとめてみましょう。

 

筆者の主張は、第4段落の内容でまとめます。

不確実性を削減していく動きが進展するならば、あらゆる側面に「不確実性・不可知性」を再創造していく時代になるはずだ。(57字)

これを中心にまとめていきます。


まずは、筆者がこのように考える理由を加えます

不確実性、つまり偶然性が重要だからですね。

第2段落の内容です。

人類の社会は、予測不可能な事柄や偶然性の存在によっても成り立ってきた。このまま不確実性を削減していく動きが進展するならば、あらゆる側面に「不確実性・不可知性」を再創造していく時代になるはずだ。(96字)

はじめの一文に「偶然性の存在によって『』成り立ってきた」とありますから、もう1つも書かなくてはいけません

第1段落の内容である、これまでのことですね。

この百年に、人類の社会の大部分は、不確実性・不透明性を削減・縮小することを目指し、確実性を増大させ、個人と社会の安定性や安全性を高めていくことが、人類の幸福につながると信じてきた。しかし、人類の社会は、予測不可能な事柄や偶然性の存在によっても成り立ってきた。このまま不確実性を削減していく動きが進展するならば、あらゆる側面に「不確実性・不可知性」を再創造していく時代になるはずだ。(190字)

おっと、もう200字程度になってしまいました。

 

ここで終わりたいところですがダメです。

 

それは、最後の「不確実性・不可知性」を再創造していく時代がどういう時代か、課題文で述べられていたからです。

ここは「再創造していく時代」がどのような時代なのか書いておきたいところです。

最後の部分を第7段落の内容と差し替えます。

この百年に、人類の社会の大部分は、不確実性・不透明性を削減・縮小することを目指し、確実性を増大させ、個人と社会の安定性や安全性を高めていくことが、人類の幸福につながると信じてきた。しかし、人類の社会は、予測不可能な事柄や偶然性の存在によっても成り立ってきた。百年後の人類が既に獲得した物質的・精神的な豊かさを捨てずに原初的な人類のユートピアを実現しているなら、予想外の可能性のない世界の隙間に、自身と世界が存在するまったき偶然それ自体の豊かさを復活させているはずだ。(233字)

33字超えていますので、内容を変えずに短くして完成です。

この百年、人類の社会は不確実性・偶然性を削減し、確実性を増大させ個人と社会の安定性や安全性を高めていくことを目指して発展してきた。しかし、人類の社会は、予測不可能な事柄や偶然性の存在によっても成り立ってきた。百年後、人類が物質的・精神的な豊かさを捨てずに原初的な人類のユートピアを実現しているなら、不確実性のない世界の隙間に、自身と世界が存在する偶然それ自体の豊かさを復活させているはずだ。(195字)

 

コレで十分ですが、2文目を具体的にしてもいいでしょう。

そのまま差し替えると200字を超えてしまうため、1文目も短くしてまとめます。

この百年、人類の社会は不確実性・偶然性の削減と、確実性の増大とが人類の幸福につながると信じ発展してきた。しかし、予測不可能な出来事や偶然は、人間の持つ根源的な脆弱性を開示し、他者や社会を肯定的に意味づける契機になる。百年後、人類が物質的・精神的な豊かさを捨てずに原初的な人類のユートピアを実現しているなら、不確実性のない世界の隙間に、自身と世界が存在する偶然それ自体の豊かさを復活させているはずだ。(199字)


設問2

 

絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。

具体的には「筆者の主張をふまえ」を見落とさないことです。

筆者の主張をふまえて、自分はどのように考えるのかを述べる必要があります。

 

ということで、筆者の主張を確認します。

 

設問1より、

不確実性を削減していく動きが進展するならば、あらゆる側面に「不確実性・不可知性」を再創造していく時代になるはずだ。

これが主張です。

 

人類には、不確実性・不可知性・偶然性が必要だということを押さえればいいですね。

 

今回、大学があなたに問うているのは、人類の「生き方」と言えるでしょう。

人類が幸福になるには、確実な社会を目指した方がいいのか、それとも偶然性も必要とした方がいいのか、ということです。

もちろん、人類には「あなた」も含まれますから、「あなたの生き方」を問うているとも言えます。

これから大学に入学したとして、そこで出会う仲間とは「偶然」出会うことになります。

 

課題文の第3段落の内容を考えると「偶然性が必要だ」という方向で書くことになるでしょう。

また、第2段落の「予測不可能な出来事や偶然は、人間の持つ根源的な脆弱性を開示し、他者や社会を肯定的に意味づける契機になる」という内容からも「偶然性が必要だ」という方向で書くことになりそうです。

 

以上のことを踏まえて、自分がどのように考えるかを400字で述べましょう。

 

基本の構成はこうなるのでした。

第1段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる

第2段落 自分の意見の理由、具体例

第3段落 意見のまとめ

2段落構成にする場合は、上記の「第2段落」の内容を第1段落か第3段落に振り分けることになります。

 

第1段落の筆者の主張を踏まえる部分では、筆者が提起していると考えられる「問題」をしっかりと踏まえていることが分かる書き方にできるといいですね(以前までは評価のポイントと明示されていました)。

今回の「問題」は「人類が不確実性の削減を目指して発展してきた」ということですね。

これだけではダメだよね、というのが筆者の主張だったわけです。

 

第2段落では「偶然性」の重要性を具体的に述べることで理由に繋げることができそうです。

 

それらを踏まえて、最後にあらためて自分の意見を明示しましょう。

単に筆者の主張を繰り返すだけでなく、もう一歩踏み込んで自分の考えを付け足すことが必要ですよ。


以上で書くと、合格できる小論文になります。

 

書き方や表現、意見の内容などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。


これからも過去問に取り組んでみましょう。

長野大学は過去問が少ないので、名寄市立大学の課題文を使って練習するのもアリですよ。

 

では、終わります。


今回以外の長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。

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ついでに名寄市立大学のリンクも貼っておきます。

要約練習にも使えますよ!

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長野大学_小論文_2022年度_編入学試験

こんにちは。きんこです。

 

長野大学(2022年度・令和4年度編集学試験)の小論文の解説です。


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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。

そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。

まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。

現代文の力もつきますよ。

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では、はじめます。

 

課題文は大塚久雄「社会科学を学ぶことの意義について」『生活の貧しさと心の貧しさ』所収です。

 

設問の解説の前に、長野大学が示している、小論文における「評価のポイント」を確認しておきましょう

以下の記事で詳しく紹介していますので、まだご覧になっていない方は読んでおくことをオススメします。

kinkoshin.hatenablog.com

 

編入学試験で特に意識しておきたいことは、課題文の筆者は何らかの「問題」を提起しているということです。

筆者が提起している「問題」はどういうことかを読み取るという意識で課題文を読みましょう

それは、長野大学が求めている「評価のポイント」ですし、設問2ではその問題点についての自分の意見を述べることが好ましいからです。


設問1

 

課題文の要旨を200字以内で書く問題です。

 

まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。

『現代新国語辞典』(三省堂)によれば

「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です。

 

小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。

それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。

ちなみにこのブログで解説をしている長野大学名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。

 

ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます

 

また、長野大学の課題文では何らかの「問題」が提起されているはずです。

読み取るべき筆者の主張は、「問題点そのもの」であったり、「問題に対する筆者の考え」であったりするということを意識しておく必要があります。

 

まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。

ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。


では、今回の課題文を読んでいきましょう。

 

形式段落ごとに見ていきますので1~3まで番号を振ってください。

 

 

社会科学を学ぶことは、われわれにとってどういう意味を持つか。

社会科学を学ぶことは、知るに値することを知ろうとする、そういう知的価値の追求で

ある限りにおいて、それ自体(社会科学を学ぶこと)として意味がある。

学問のために学問をするという一面がある。

学問として、他の文化諸領域(政治とか経済とか)における営みに対して相対的に意味を持っている。

自己目的という一面を持っていることを忘れてはいけない。

 

はじめにズバッと「問題」を提起していますね。

今回のテーマは「社会科学を学ぶ意味」となるでしょう。

 

これは、すでに確認した出典からも分かります。

 

そして、この段落では「社会科学を学ぶこと、知りたいことを知ろうとする営み自体に意味があり、自己目的という一面を持っていることを忘れてはいけない」と述べています。

長い段落ですが、読み取るべきことはコレだけですね。

 

 

社会科学を学ぶことは、自己目的の一面を持っており、これを忘れるとある種の退廃が起こりうる。

学問が他の文化諸領域の生の要求に屈して、ことがらの真実、真理がかくされると、学問は成り立たないし、他の文化諸領域にも良くない影響を与える。

その例として、ある特定の具体的な政治的要求にだけくっついて、学問をすべてそれに従わせようとすると、人々の間に学問をやろうという意欲がなくなるということが挙げられる。

 

第1段落の最後の「自己目的という一面をもっていることは忘れてはならない」と述べたことに対する理由が述べられています

それは、社会科学を学ぶ意味を忘れてしまうと、学問が成り立たなくなることがあるからだというわけです。

最後に具体例があるので分かりやすいですね。

(政治的な要求があって、それに合わせるだけの学問なんて、誰も追求しようとしないですよね。だって、政治的要求によってある種の「答え」が決まっているのですから)

 

 

ところが

学問の営みをひたすら自己目的と考えて、社会科学なのに社会現象の現実の動きに関心を示さないというように、ただ学問のために学問をやるとなると、別の退廃が起こる。

社会科学は、正しい意味での時代の要請にとって(時代を支えている、あるいはその動きを推進している思想にてらして)、どういう意味を持っているのかという点が問われているといわねばならない。

 

逆接から始まっていますから、この段落が筆者の主張になっていそうです。

 

第2段落のように社会科学を学ぶ意味を忘れてもよくないけれども、社会科学の意味だけ(自己目的だけ)を突き詰めるのもよくないと述べています。

だから、社会科学の意味を考えるときには、時代を支えている、あるいはその動きを推進している思想にてらして考える必要があるとまとめています。

文末が「いわねばなりますまい」と強い表現になっていることからも、ここが筆者の主張だと考えられます

 

なお、「別の退廃」の内容は述べられていません。

課題文では、自己目的だけになると「よくない」としか述べていないわけです。

 


本文の読み取りが終了しました。

要旨をまとめましょう。

 

課題文は「社会科学を学ぶことの意味」について書かれていました。

(「社会科学を学ぶことの意味とは何か」という問題提起と考えてもいいですよね)

 

ただし、そこには注意すべき点がありました。

(「社会科学を学ぶことの意味を考える際に大切なことは何か」という問題提起と考えてもいいですね)

 

これらについてまとめることが筆者の主張をまとめることになります。

 

まず「社会科学を学ぶことの意味」については第1段落で述べられていました。

社会科学を学ぶことは、知るに値することを知ろうとする、そういう知的価値の追求である限りにおいて、それ自体(社会科学を学ぶこと)として意味がある。

 

ただし、社会科学の意味を考えるときには注意点があります。

それが最後に述べられた内容であり筆者の主張です。

社会科学の意味を考えるときには、時代を支えている、あるいはその動きを推進している思想にてらして考える必要がある。

 

この2つをまとめます。

社会科学を学ぶことは、知るに値することを知ろうとする、そういう知的価値の追求である限りにおいて、それ自体として意味がある。ただし、社会科学の意味を考えるときには、時代を支えている、あるいはその動きを推進している思想にてらして考える必要がある。(121字)

 

コレに足していきます。

このままでは、後半の注意点の理由が分かりません。

理由は第2段落と第3段落前半の内容にあった「退廃」が起こるからです。

社会科学の自己目的という一面を忘れると、他の文化諸領域の要求に屈して、ことがらの真実、真理がかくされ、学問が成り立たないし、他の文化諸領域にも良くない影響を与えるという退廃が起こる。

ひたすら自己目的と考えて、社会科学なのに社会現象の現実の動きに関心を示さないというように、ただ学問のために学問をやるとなると、別の退廃が起こる。

 

コレを足してあげると

社会科学を学ぶことは、知るに値することを知ろうとする、そういう知的価値の追求である限りにおいて、それ自体として意味がある。ただし、社会科学の自己目的という一面を忘れると、他の文化諸領域の要求に屈して、ことがらの真実、真理がかくされ、学問が成り立たないし、他の文化諸領域にもよくない影響を与えるという退廃が起こる。また、ひたすら自己目的と考えて、社会科学なのに社会現象の現実の動きに関心を示さないというように、ただ学問のために学問をやるとなると、別の退廃が起こる。だから、社会科学の意味を考えるときには、時代を支えている、あるいはその動きを推進している思想にてらして考える必要がある。(291字)

 

一気に制限字数を超えてしまいました。

足した部分を短くします。

社会科学を学ぶことは、知るに値することを知ろうとする、そういう知的価値の追求である限りにおいて、それ自体として意味がある。ただし、社会科学の自己目的という一面を忘れると、ことがらの真理がかくされ学問が成り立たないし、他の文化諸領域にもよくない影響を与えることになる。また、社会科学なのに社会現象の現実の動きに関心を示さないというように、ひたすら自己目的と考えても退廃が起こる。だから、社会科学の意味を考えるときには、時代を支えている、あるいはその動きを推進している思想にてらして考える必要がある。(248字)

 

まだ48字も超えていますね。

もっと削らねばなりません。

社会科学を学ぶことは、知るに値することを知ろうとする知的価値の追求である限りにおいて、それ自体として意味がある。ただし、社会科学の自己目的という一面を忘れると、学問が成り立たないし、他の文化諸領域にもよくない影響を与える。また、社会科学をひたすら自己目的と考えても退廃が起こる。だから、社会科学の意味を考えるときには、時代を支えている、あるいはその動きを推進している思想にてらして考える必要がある。(199字)

 

これで完成です。

 


設問2

 

絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。

具体的には「筆者の主張をふまえ」を見落とさないことです。

筆者の主張をふまえて、自分はどのように考えるのかを述べる必要があります。

 

ということで、筆者の主張を確認します。

 

設問1より、

社会科学の意味を考えるときには、時代を支えている、あるいはその動きを推進している思想にてらして考える必要がある。

 

これを考える上での前提も確認しておきましょう。

①社会科学を学ぶことは、知的価値の追求である限りにおいてそれ自体として意味があり、自己目的の一面を持っている。

②自己目的を忘れてもいけないし、ひたすら自己目的となってもいけない。

 

①も②もしっかりと押さえておく必要があります。

 

社会科学を学ぶことは知的価値の追求であればそれ自体に意味はあるけれども、自己目的という一面があり、それを忘れても、そればかりになってもいけない。
だから、時代の要請に叶った思想にてらして社会科学の意味を考える必要があります。

 

この内容(筆者の主張)を踏まえて、あなたが考える「社会科学を学ぶ意味」を述べることになります。

ここでは「社会科学」に限定されて述べられていますが、「学問」全体として考えてみることも可能です。

長野大学のどの学部に進むにしろ、課題文で述べられていることと無関係ではいられないはずです。

知的価値の追求のために学問はするが、そのときには「時代」にも照らす必要がある。

「たしかにその通りだ」と考える人が多いのではないでしょうか。

 

ですから、自分が学問をする意味は何か、ということに対して自分の意見を述べるような形になりそうです。

 

その際、課題文で述べられていない「別の退廃」の具体的内容に触れることができるといいですね。

自己目的のために学問をやるだけでは、具体的にどのような問題が起きると考えられますか。

それを明らかにすることで、時代の要請を意識しなければいけないということに繋げるといいでしょう。

 


以上の内容で400字で書きます。

基本の構成はこうなるのでした。

第一段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる

第二段落 自分の意見の理由、具体例

第三段落 意見のまとめ

二段落構成にする場合は、上記の「第二段落」の内容を第一段落か第三段落に振り分けることになります。

 

特に第一段落の筆者の主張を踏まえる部分では、筆者が提起している「問題」をしっかりと踏まえていることが分かる書き方にすることが重要です(評価のポイントですからね!)。

 

以上で書くと、合格できる小論文になりますよ。

 

書き方や表現などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。


これからも過去問に取り組んでみましょう。

長野大学は過去問が少ないので、名寄市立大学の課題文を使って練習するのもアリですよ。

 

では、終わります。


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解説なしの解答のみとなっていますのでご容赦ください。

 

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では、始めます。

 

問題1

 

問1

a そば  b うわめづか  c てすう  d そそのか  e がてん  f 人事(他人事)

 

問2

1人目…オ-1  2人目…ウ-4  3人目…エ-1  4人目…カ-なし  5人目…イ-2  6人目…ア-3

 

※4人目の「久保福子」は、「りき」の息子である「久保久雄」の妻であると考えられ、適当な選択肢がありません。

「みどり」は「木戸くら」が登場する前に会話の中で名前が出ていますが、実際に登場するのは「木戸くら」が登場してからなので、その順にしています。

 

問3

 

問4

時江がりきを引き取ること。(13字)

 

問5

これも閉山のぎせいなんよ(12字)

 

問6

 

問7

りきの死に責任を感じているが、そのことを周囲に知られたくないから。(33字)

 

問8

長男…祖母の通夜の場にいないこと。(14字)

義兄…長男がいつ来るのかと急かしたこと。(17字)


問題2

 

問1

a りんかく  b 自在  c 提供  d い  e 根拠  f 極端  g と

 

問2

1 オ  3 ア

 

問3

 

問4

(1)漢字の音訓を転用して、音が同じ日本語の表記に用いる(25字)

(2)アキということばは、「阿伎」とも「安吉」とも書かれています(29字)

 

※(2)は「。」をつけても大丈夫です。

 

問5

ひらがなが数えられるものであること。(18字)

 

問6

 

問7

 

問8

モーグルの「こぶ」のように、でこぼこと崩れてゆく(24字)

 

問9

 

問10

ア ×  イ ○  ウ ×  エ ○

 

以上です。

 

答えを出すのに悩ましい問題もありました。

 

頑張ってくださいね。

 

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北海道文教大学_国語_2021(3科目型入試)_解答

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解説なしの解答のみとなっていますのでご容赦ください。

 

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北海道文教大学のHPから入手できますので、ご準備をお願いします。

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では、始めます。

 

問題1

 

問1

a 達者  b 隣  c 予兆  d へた  e じょうず  f 歯  g 隠  h ほ

 

問2

 

字が下手なこと。(8字)

 

問3

 

 

問4

 

 

問5

 

努力不足

 

問6

 

ちゃんと教~している。(75字)

 

問7

 

中途半端

 

問8

 

ア 違う  イ 文字  ウ すらすら  エ ぐったり  オ 聞き  カ 間違える  キ 読ん  ク 集中

 

問9

 

よのなかは、はじめから上手くすんなりできる子のほうが得をするようになっている。(39字)


問題2

 

問1

 

a けが  b 前提  c 素朴  d 運行  e 除外  f 形状  g 覆  h 痕跡

 

問2

 

1 ア  2 ウ

 

問3

 

 

問4

 

ツタンカーメン王は、足が速かったこと。(19字)

ツタンカーメン王の声は、低かったこと。(19字)

 

これらのように、実際にツタンカーメン王と関わったことで分かること(推測なしで目の前で見たような事実)を答える。

 

問5

 

証拠や理論に依存しているはずだ(15字)

 

問6

 

過去を推測するためには、記憶だけでなく証拠や理論による保証が必要だから。(36字)

 

問7

 

 

問8

 

 

問9

 

過去の経験から獲得した記憶と、過去そのものについての記憶との区別が必要だという考えの契機になるから。(50字)

 

問10

 

保証の仕組み込みで、過去の想起はまさに過去の想起となるところ。(31字)

 

以上です。

 

答えを導きにくい設問もありましたね。

 

頑張ってください。

 

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長野大学_小論文_2021年度_総合型選抜(AO入試)

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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。

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では、はじめます。

 

課題文は宮嶋望『共鳴力 ダイバーシティが生み出す新得共働学舎の奇跡』(一部改変)です。

 

設問の解説の前に、長野大学が示していた、小論文における「評価のポイント」を確認しておきましょう。

現在の募集要項には小論文の評価のポイントが載っていませんが、以前は載っていました。

募集要項から消えたからといって、評価のポイントがガラッと変わってしまうことは考えにくいですから、参考になると思います。

以下の記事で詳しく紹介していますので、まだご覧になっていない方は読んでおくことをオススメします。

kinkoshin.hatenablog.com

 

上記のブログで示したように、課題文で筆者は何かしらに対して「問題」を提起しています。

その問題を捉えるのだという意識で課題文を読み進めるといいでしょう。

また、多くの場合、その問題についての筆者の意見が述べられています。

これが「筆者の主張」となります。

課題文で提起されている問題は何か、そしてその問題に対して筆者はどのように考えているかを読み取ることを意識しましょう。

 

設問1

 

課題文の要旨を200字以内で書く問題です。

 

まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。

『現代新国語辞典』(三省堂)によれば

「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」

です。

 

小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。

それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。

ちなみにこのブログで解説をしている長野大学名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。

ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。

 

先ほど確認したように、長野大学の課題文では何らかの「問題」が提起されているはずです。

読み取るべき筆者の主張は、「問題点そのもの」であったり、「問題に対する筆者の考え」であったりするということを意識しておくと取り組みやすくなります。

 

まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。

この力が求められていることも、長野大学のアドミッションポリシーから明らかです。
ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。


では、今回の課題文を読んでいきましょう。

 

形式段落ごとに見ていきますので1~5まで番号を振ってください。

課題文の書き抜きは青字で表示します。

 

ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とは

また異なる新たな価値が生まれる

自然界はそういう仕組みで成り立っている


課題文の「はじめ」です。

ここを押さえることができれば、今回の文章を読み解くことができます。

この段落でも、チーズも自然もこの仕組みだと述べており、第2段落からはこれを人間の社会の例で繰り返し述べていくだけです。

やはり「はじめ」は文章を読むときに、しっかりと意識したい部分です。

「はじめ」は「これからこの話するからね!」です。

 


こうした考え方は、人間の社会や個人の心にも広げることができる

世界に同じ人が二人と存在しないから、ハーモニーが生まれる

 

「こうした考え方」とは、第1段落の「ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれる」という考え方です。

自然界の仕組みが、人間にも当てはまると述べているわけですね。

第1段落の内容が分かっていれば、「世界に同じ人が二人と存在しない=ちがう性質のもの同士」「ハーモニーが生まれる=共鳴を起こすことで、新たな価値が生まれる」などの関係が分かり、同じことを繰り返していることが分かるでしょう

 


一方で、

人間の個性は、少しも変えられないほど不自由で厳格なものではない

人との関わりを調整しながら異なるもの同士がうまく響き合うことで、一人ひとりがもっていたものとはちがう新たな価値が全体として生まれてくる

一つの考えで全体を貫こうとする原理主義では、社会は成り立たない

 

「一方で」ということばに注意しましょう。

これは「Aがあり、一方でBもある」というように、2つの事柄を読み取る必要があることばです。

今回は、第2段落の内容「人はそれぞれ違ってその人だけの個性がある」と、第3段落の内容「人は変わることができる」とが、AとBに当たります。

「人には個性がある」と聞くと「変えられないもの」と感じるかもしれないけれど、そうじゃなくて変えられるよ、というのがこの段落の内容です。

 

ここも第1段落の「ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれる」の繰り返しだと分かります

 


共働学舎新得農場は、こういう考えによって運営されてきた

全体の中でたようなその人らしさを維持していくからこそ、うまく響き合ったときに素晴らしい世界が現れる

 

「こういう考え」は第1段落の内容です。

ここでは、「共働学舎新得農場」で同じ内容を繰り返しています

 


チーズ作りも、こうした考えの上にある

生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい

 

チーズ作りも同じ(第1段落の内容)だと述べ、「さらに考え、実践していきたい」とまとめられています。

これが筆者の主張ですね。

 


ということで、本文の読み取りが終了しました。

今回の課題文では、1つのことを繰り返し述べていたことが分かります。

 

長野大学の課題文では「問題」が提起されていることが多いのですが、今回は明確には問題提起がされていませんでした。

とはいえ、筆者の主張は読み取りやすいですし、もし「問題」が提起されていると考えるのであれば、第3段落の「おわり」を問題だと考えることができます。

一つの考えで全体を貫こうとする原理主義では、社会は成り立たない

これを「問題」と捉えることもできるでしょう。

この問題に対する解決策が筆者の主張であると言えます。

 


以上のことを踏まえて、課題文の要旨をまとめてみましょう。

 

まずは、筆者の主張は、最後に書かれていたことでいけそうです。

生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。(48字)

これを中心にまとめていきます。

 

まずは、チーズ作りをしているのは註から筆者が設立した共働学舎新得農場だと分かりますから、それを加えます。

共働学舎新得農場では、生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。(59字)


次に、ここにある「生きものたちの原点」というのが何かを説明してあげます。

1でチーズや自然界の例で述べられ、2~3で人間の社会や個人の心の例で述べられ、4で共働学舎新得農場の例で述べられていることです。

繰り返し述べられていたことですね。

まとめとしては第1段落の表現でいいでしょう。

自然界は、ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれるという仕組みで成り立っている。

また、この考えは共働学舎新得農場の運営の考えでもありました。


これらを加えると、

自然界は、ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれるという仕組みで成り立っている。こういう考えで運営されてきた共働学舎新得農場では、生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。(147字)


字数も余っていますし、前半と後半のつながりがイマイチなので、間に「人間の社会と個人の心」も同じであるという内容を入れましょう。

こうした考え方は、人間の社会や個人の心にも広げることができる

心に「も」とあるので、他に何があるのでしょうか。

第2段落の前、つまり第1段落で説明されていたチーズ作り、つまり「人間のもの作り」ですね。

こうした考え方は、人間のもの作りや人間の社会、個人の心にも広げることができる。


まとめます。

自然界は、ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれるという仕組みで成り立っている。こうした考え方は、人間のもの作りや人間の社会、個人の心にも広げることができる。このような考えで運営されてきた共働学舎新得農場では、生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。(187字)


これでいいのですが、最後の「生きものたちの原点」が何を意味しているのかはっきりしていません。

それは、はじめの一文と「生きものたちの原点」が離れているからです。

かといって、この順で書くことを変えることは難しいので、「生きものたちの原点=自然界の仕組み」であることを書くことでフォローします。

(これは、第1段落で述べられていたことです)

自然界は、ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれるという仕組みで成り立っている。こうした考え方は、人間のもの作りや人間の社会、個人の心にも広げることができる。このような考えで運営されてきた共働学舎新得農場では、生きものたちの原点である自然界の仕組みに根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。(197字)

 


設問2

 

絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。

具体的には「筆者の主張をふまえ」を見落とさないことです。

筆者の主張をふまええて、自分はどのように考えるのかを述べる必要があります。

 

ということで、筆者の主張を確認します。

設問1より、

生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。

これが主張です。

「生きものたちの原点」を確認することが必要ですね。

生きものたちの原点
=ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれること


課題文から読み取るべき筆者の主張は

ちがう性質のもの同士が共鳴、調整するから、新たな価値が生まれ、すばらしい世界になるから、それを大事にしたい。

とまとめることができます。

 

今回、大学があなたに問うているのは、あなたの「生き方」、具体的に言えば「学生生活の送り方」や「大学での学ぶ姿勢」についての考えと言えるでしょう。

大学が示しているアドミッションポリシーとも合いますね。

 


以上のことを踏まえて、自分がどのように考えるかを400字で述べましょう。

 

基本の構成はこうなるのでした。

第一段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる
第二段落 自分の意見の理由、具体例
第三段落 意見のまとめ

二段落構成にする場合は、上記の「第二段落」の内容を第一段落か第三段落に振り分けることになります。

 

第1段落の筆者の主張を踏まえる部分では、筆者が提起していると考えられる「問題」をしっかりと踏まえていることが分かる書き方にできるといいですね(以前までは評価のポイントと明示されていました)。

「一つの考えで全体を貫こうとする態度では社会は成り立たないのだから○○すべきだ」のようになるでしょうか。

 

第2段落では自分の体験などを具体的に述べましょう。

うまくいったこと、失敗したことのどちらも書くことができそうです。

 

それらを踏まえて、最後にあらためて自分の意見を明示しましょう。

単に筆者の主張を繰り返すだけでなく、もう一歩踏み込んで自分の考えを付け足すことが必要ですよ。


以上で書くと、合格できる小論文になります。

 

書き方や表現、意見の内容などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。


これからも過去問に取り組んでみましょう。

長野大学は過去問が少ないので、名寄市立大学の課題文を使って練習するのもアリですよ。

 

では、終わります。


今回以外の長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

ついでに名寄市立大学のリンクも貼っておきます。

kinkoshin.hatenablog.com

 


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