高校教員の徒然日記

PMA~Positive Mental Attitude~

長野大学_国語_2023(令和5)年度_一般選抜中期日程_第3問

こんにちは。きんこです。

 

長野大学2023年度(令和5年度)一般選抜中期日程の国語第3問の解答解説です。

 

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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。

そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

kinkoshin.hatenablog.com

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この読み方、解き方を徹底することで入試問題を解けるようになるでしょう。

ぜひ身につけてください。


問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

長野大学のサイトで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。

 

http://www.nagano.ac.jp/admission/kakomon/index.html

 

では、始めます。

 

はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。

 

[解答]

 

3 増成隆士『現代の人間観と世界観』

 

問1 

A…ア

B…エ

C…ア


問2

 

問3

 

問4

人間の身体の内部構造を見ることを知的に重要だと認識し、人間一般の医学になった。(39字)

 

問5

生きている身体には、「生」たらしめる目に見えない何かが「宿って」いるという考え。(40字)

 


[解説]

形式段落での説明になります。

1~10まで形式段落に番号を振ってください。

 

問1 空欄補充

空欄補充の問題は、前後の文脈を確認して考えます。

各空欄を見ていきましょう。

 

われわれはよく知っている→いや、実のところ「われわれはよく知っている」というのは(空欄)→ほんとうによく知っているのは、医学者を中心として…

という流れです。

 

「いや」とありますから逆接です。

 

「知っている」の逆ですから、ここの内容は「知らない」となります。

 

主語が「『われわれはよく知っている』というのは」となっていますから、これに合う形で「われわれは知らない」となるような語句を選びます。

 

アの「言い過ぎ」となります。


人体についての今日の見方考え方の基本にあるのは、端的に言えば、医学的な見方考え方→より(空欄)に言えば、解剖学的な見方考え方

という流れです。

 

医学的な見方考え方を「よりどうしたもの」が解剖学的な見方考え方なのか、と考えます。

「医学的」よりも「解剖学的」の方が、より具体的に(こまかく、小さい範囲に)なっていますね。

 

エの「限定的」です。


空欄は形式段落8の「はじめ」にあります

ということは、この空欄は形式段落7と8とをつないでいると考えます。

 

形式段落7の内容は、「おわり」から「西洋では、人間の身体の内部構造をみていくことを「学」として高い位置に置き、医学は数学や天文学などと並ぶ学問とされた」です。

形式段落8の「はじめ」は「西洋医学(医学)のものの見方考え方がすんなりと成長したわけでもない」です。

 

「医学」の話題であることが分かりますね。

この「医学」がどうだったのかというと

形式段落7…高い位置にある学問

形式段落8…すんなりと成長しなかった

医学は高い位置にあった「のに」、すんなりと成長はしなかったんですね。

「のに」は逆接ですから、選択肢から逆接の語句を選びましょう。

 

アです。

 


問2 内容説明

傍線部は形式段落4の「はじめ」にあります

形式段落の「はじめ」にあるのですから、前の形式段落の「おわり」からつながっています。

 

形式段落3の「おわり」

ものの見方考え方=今日の人間は一般に、人間の身体は複雑に組み立てられている

 

次に、形式段落4を見ます。

傍線部は主語になっていますから後半を確認します。

傍線部(見方考え方)の基本=専門家と一般人に共通して、理科室で見た人体の骨格見本などのイメージがある

さらに形式段落4の「おわり」でまとめているはずです。

基本にある見方考え方=今と昔とでは、大きく違う

 

ここまでの確認で選択肢を見たいところですが、形式段落5の「はじめ」がちらっと眼に入りますね。

見てみると「人体についての今日の見方考え方の基本にあるのは」と同じ話題が続いていることに気づきます。

確認しましょう。

 

形式段落5の「はじめ」から

見方考え方の基本=解剖学的な見方考え方

形式段落5の「おわり」から

見方考え方=古代ギリシアの医学と古代ローマの解剖学の延長線上

 

形式段落6からは「解剖」の話題になっています。

形式段落5で確認したように「見方考え方の基本=解剖学的な見方考え方」なので確認の必要がありますね…。

形式段落6の「はじめ」から

解剖=外皮を切り、内部を見る。古くからある。

形式段落6の「おわり」から

古代インカでも解剖的なものが多少あった

 

この辺りでいいでしょう。

選択肢を確認します。

ア…理科室の人体の骨格見本などのイメージがあるのでした。

イ…専門家と一般人に共通していたのでした。

ウ…今と昔とでは大きく違うのでした。これが正解ですね。

エ…「古代ローマ→古代インカ」という流れではありません。

オ…解剖学的なものが多少あったんでした。

 

設問は「見方考え方」の内容説明ですから、そもそも「解剖」については関係ありません。

だから、形式段落5までで答えは出ます。

ただ、選択肢に「解剖」がある以上、確認はしたほうがいいですよね。

 


問3 内容説明

傍線部は形式段落7の「はじめ」にあります。

傍線部の前後に「が」「は」がありますから、この「イコール」を確認します。

さらに、形式段落の「なか」で説明され、「おわり」でまとめてくれるはずです。

ここに書くと、本文のほとんどになってしまうので省略しますね。

 

ポイントだけまとめます。

形式段落7

・人間という存在と怜悧に見るということ

・必要性にせまられて切り開くのとは違う

・西洋の見方考え方

・「学(知として重要な意味を持つ営み)」として高い位置に置いた

・医学は、数学や天文学と並ぶ学問とされた

 

「はじめ」が「この話するよ」、「おわり」が「それってこうだよね」なので、この段落(「はじめ」の傍線部)は「おわり」に出てきた「医学のものの見方考え方」とイコールです。

 

そして、この「医学」の話題は形式段落8にも続いています。

古代ギリシア、ローマにすでに始まっていた

・そのときそのときに病人に対処する「治療」に主眼を置くのではない

・人間一般についてのある方向からの知的探究と認識の学

・すんなりと成長して現代医科学的なものの見方考え方に至っているわけでもない

・途上で宗教的なものの見方考え方が立ちはだかった

 

これらを確認した上で、選択肢を見ます。

ア…直接述べられてはいませんが、先に「治療(解剖)」があって、そこに「知としての重要な意味を持つ営み」という意味づけをしたという順ではあります。ですから「絶対に違う」とは言えません。ここでは保留にしておきましょう。

イ…形式段落7の「おわり」に「術」は出てきますが、これを探求したとは述べられていませんし、それが「現在に自然につながった」とは述べられていません(形式段落8)。

ウ…治療に主眼を置くのではないのでした。

エ…形式段落8では「すんなりと成長して至っているわけでもない」とあります。これは、最終的には「至っている」ということですから「至るものではない」は違います。

オ…宗教的な考え方は「立ちはだかった」のであって、「促した」わけではありません。

イ~オは「絶対に」違います。

ということで、「絶対に違う」とは言えないアが答えとなります。

正答は導けますが、イマイチな設問のような気がしますね…

 


問4 内容説明

「どのように○○になったのか」と問われています。

答え方の基本は「………ように○○になった。」としたいところですが、字数制限が厳しい設問です。

 

設問は「西洋医学がどのように人間一般の学問になったのか」を問うています。

つまり、西洋医学は、もともと人間一般の学問ではなかったということです。

 

では、傍線部を含む一文で「西洋医学」について確認します。

西洋医学とは

古代ギリシア、ローマにすでに始まっていた

・人間一般についてのある方向からの知的探求と認識の学としての医学

・すんなりと成長して現代医科学的なものの見方考え方に至っているというわけでもない(最終的には至っている)

ですね。

つまり、次のような流れになります。

古代ギリシア、ローマ→人間一般についての医学→現代医科学的なものの見方考え方

 

今回の設問は、「古代ギリシア、ローマにすでに始まっていた」西洋医学が、どのようにして「人間一般についての医学」になったのか、この2つの間にはいったい何があったのか、ということを問うています。

 

古代ギリシア、ローマ」での医学とは、形式段落5で述べられていたものです。

古代ローマは「解剖学」でしたね。

 

そして、単に「解剖」としての治療が、なぜ「人間一般についての医学」になったのかというと、形式段落7に述べられているような変化が起きたからです。

 

すなわち、「必要に迫られて人体を切り開いていた=単なる解剖としての治療」が「知的に重要なこととして認識された、『学(知として重要な意味を持つ営み)』として高い位置に置かれるようになった」から、「人間一般についての医学」になったと考えられます。

 

これをまとめていきましょう。

形式段落7の「はじめ」と「おわり」の部分を使いましょう(同じことが若干異なる表現で述べられています)。

人間の身体を開けて、その内部構造をみていくということを、単なる「術」ではなく知として重要な意味を持つ営み、すなわち「学」として、高い位置に置いたことによって、人間一般の医学になった。(91字)

40字以内にしていきますが、ちょっと大変です。

はじめに書いたように、今回の答え方の基本は「………ように(によって)○○になった。」ですからね。

ここの部分は外さないようにします。

人間の身体の内部構造を見ることを、知として重要な意味を持つ営みと考えたことにより人間一般の医学になった。(52字)

まだまだですね。

人間の身体の内部構造を見ることを知的に重要だと認識し、人間一般の医学になった。(39字)

これでキレイにまとまりました。

 

ちなみに…形式段落8の「おわり」から始まる「宗教的なものの見方考え方」や「心」についてを解答とした方がいるかもしれません。

ここの部分は

古代ギリシア、ローマ→人間一般についての医学→現代医科学的なものの見方考え方

この流れの後半(人間一般についての医学→現代医科学的なものの見方考え方)の間にあるものですから、今回の解答にはなりませんよ。

 


問5 内容説明

形式段落9ではじめて「心」について述べられます。

形式段落9「おわり」に「問題は、古くから、『心』はどこにあるのか、という問題の立て方で、論じられてきた」とあります。

形式段落10でコレがつながっていきます

そして、それが設問の解答です。

形式段落10の内容を読み取れば、解けるということです。

はじめ…問題(「心」はどこにあるのか)が、そういう問題の立て方で論じられてきたのは不思議でない

なか…生きている身体と死体は身体そのものとしては基本的に変わらないから、生きている身体にはその「生」の「生」たるゆえんのものが目に見えないものとして「宿って」いるという説明はたいていのひとが考えそう

おわり…したがって、たいていのひとの同感する、説明であろうからである

「心」はどこにあるのかという問題は、「なか」で述べられたような理由で、たいていのひとが同感するだろうから論じられてきたわけですね。

この「なか」をまとめると、設問の解答になります。

 

設問は「どのような考えから提起されたのか」となっていますから、「~考え。」とまとめます。

生きている身体にはその「生」の「生」たるゆえんのものが目に見えないものとして「宿って」いるという考え。(51字)

「心」の問題につながる考えですから「目に見えない」は削らない方がいいでしょう。

「心」って目に見えないものですよね。

また、「生」「宿って」にはカギ括弧がついています。

これは筆者はわざわざつけているわけです(意味がある)から、外してはいけません

生きている身体には「生」たるゆえんの目に見えないものが「宿って」いるという考え。(40字)

本文のことばと使うとこうなりますね。

これをもう少し格好良くすると次のようになります。

生きている身体には、「生」たらしめる目に見えない何かが「宿って」いるという考え。(40字)


以上が第3問の解説です。


内容をしっかりと読み取れているかを、文脈方向から空欄補充問題として、説明問題として選択問題や記述問題で問うています。

 

第1問の語彙力と合わせて、長野大学のオーソドックスな形と言えるでしょう。

中期日程の過去問だけでなく、推薦の過去問もまったく同じ傾向です。

対策としてどちらにも取り組むのがいいでしょう。


とはいえ、私が紹介している「文章の読み方」を知っていれば、空欄補充問題も記述問題もできますね。

「文章の読み方」は知っているかどうかです。

それほど時間はかかりませんので、読んでみてくださいね。

しつこいと思いますが、リンクをはっておきます。

kinkoshin.hatenablog.com

 

頑張ってください。

 

では、これで終わります。


他の年度や国語の勉強の仕方はこちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 


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