高校教員の徒然日記

PMA~Positive Mental Attitude~

長野大学_小論文_2021年度_総合型選抜(AO入試)

こんにちは。きんこです。

 

長野大学(2021年度・令和3年度総合型選抜・AO入試)の小論文の解説です。

 


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問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。

www.nagano.ac.jp

   


このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。

そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。

まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。

現代文の力もつきますよ。

kinkoshin.hatenablog.com

 

では、はじめます。

 

課題文は宮嶋望『共鳴力 ダイバーシティが生み出す新得共働学舎の奇跡』(一部改変)です。

 

設問の解説の前に、長野大学が示していた、小論文における「評価のポイント」を確認しておきましょう。

現在の募集要項には小論文の評価のポイントが載っていませんが、以前は載っていました。

募集要項から消えたからといって、評価のポイントがガラッと変わってしまうことは考えにくいですから、参考になると思います。

以下の記事で詳しく紹介していますので、まだご覧になっていない方は読んでおくことをオススメします。

kinkoshin.hatenablog.com

 

上記のブログで示したように、課題文で筆者は何かしらに対して「問題」を提起しています。

その問題を捉えるのだという意識で課題文を読み進めるといいでしょう。

また、多くの場合、その問題についての筆者の意見が述べられています。

これが「筆者の主張」となります。

課題文で提起されている問題は何か、そしてその問題に対して筆者はどのように考えているかを読み取ることを意識しましょう。

 

設問1

 

課題文の要旨を200字以内で書く問題です。

 

まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。

『現代新国語辞典』(三省堂)によれば

「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」

です。

 

小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。

それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。

ちなみにこのブログで解説をしている長野大学名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。

ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。

 

先ほど確認したように、長野大学の課題文では何らかの「問題」が提起されているはずです。

読み取るべき筆者の主張は、「問題点そのもの」であったり、「問題に対する筆者の考え」であったりするということを意識しておくと取り組みやすくなります。

 

まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。

この力が求められていることも、長野大学のアドミッションポリシーから明らかです。
ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。


では、今回の課題文を読んでいきましょう。

 

形式段落ごとに見ていきますので1~5まで番号を振ってください。

課題文の書き抜きは青字で表示します。

 

ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とは

また異なる新たな価値が生まれる

自然界はそういう仕組みで成り立っている


課題文の「はじめ」です。

ここを押さえることができれば、今回の文章を読み解くことができます。

この段落でも、チーズも自然もこの仕組みだと述べており、第2段落からはこれを人間の社会の例で繰り返し述べていくだけです。

やはり「はじめ」は文章を読むときに、しっかりと意識したい部分です。

「はじめ」は「これからこの話するからね!」です。

 


こうした考え方は、人間の社会や個人の心にも広げることができる

世界に同じ人が二人と存在しないから、ハーモニーが生まれる

 

「こうした考え方」とは、第1段落の「ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれる」という考え方です。

自然界の仕組みが、人間にも当てはまると述べているわけですね。

第1段落の内容が分かっていれば、「世界に同じ人が二人と存在しない=ちがう性質のもの同士」「ハーモニーが生まれる=共鳴を起こすことで、新たな価値が生まれる」などの関係が分かり、同じことを繰り返していることが分かるでしょう

 


一方で、

人間の個性は、少しも変えられないほど不自由で厳格なものではない

人との関わりを調整しながら異なるもの同士がうまく響き合うことで、一人ひとりがもっていたものとはちがう新たな価値が全体として生まれてくる

一つの考えで全体を貫こうとする原理主義では、社会は成り立たない

 

「一方で」ということばに注意しましょう。

これは「Aがあり、一方でBもある」というように、2つの事柄を読み取る必要があることばです。

今回は、第2段落の内容「人はそれぞれ違ってその人だけの個性がある」と、第3段落の内容「人は変わることができる」とが、AとBに当たります。

「人には個性がある」と聞くと「変えられないもの」と感じるかもしれないけれど、そうじゃなくて変えられるよ、というのがこの段落の内容です。

 

ここも第1段落の「ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれる」の繰り返しだと分かります

 


共働学舎新得農場は、こういう考えによって運営されてきた

全体の中でたようなその人らしさを維持していくからこそ、うまく響き合ったときに素晴らしい世界が現れる

 

「こういう考え」は第1段落の内容です。

ここでは、「共働学舎新得農場」で同じ内容を繰り返しています

 


チーズ作りも、こうした考えの上にある

生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい

 

チーズ作りも同じ(第1段落の内容)だと述べ、「さらに考え、実践していきたい」とまとめられています。

これが筆者の主張ですね。

 


ということで、本文の読み取りが終了しました。

今回の課題文では、1つのことを繰り返し述べていたことが分かります。

 

長野大学の課題文では「問題」が提起されていることが多いのですが、今回は明確には問題提起がされていませんでした。

とはいえ、筆者の主張は読み取りやすいですし、もし「問題」が提起されていると考えるのであれば、第3段落の「おわり」を問題だと考えることができます。

一つの考えで全体を貫こうとする原理主義では、社会は成り立たない

これを「問題」と捉えることもできるでしょう。

この問題に対する解決策が筆者の主張であると言えます。

 


以上のことを踏まえて、課題文の要旨をまとめてみましょう。

 

まずは、筆者の主張は、最後に書かれていたことでいけそうです。

生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。(48字)

これを中心にまとめていきます。

 

まずは、チーズ作りをしているのは註から筆者が設立した共働学舎新得農場だと分かりますから、それを加えます。

共働学舎新得農場では、生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。(59字)


次に、ここにある「生きものたちの原点」というのが何かを説明してあげます。

1でチーズや自然界の例で述べられ、2~3で人間の社会や個人の心の例で述べられ、4で共働学舎新得農場の例で述べられていることです。

繰り返し述べられていたことですね。

まとめとしては第1段落の表現でいいでしょう。

自然界は、ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれるという仕組みで成り立っている。

また、この考えは共働学舎新得農場の運営の考えでもありました。


これらを加えると、

自然界は、ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれるという仕組みで成り立っている。こういう考えで運営されてきた共働学舎新得農場では、生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。(147字)


字数も余っていますし、前半と後半のつながりがイマイチなので、間に「人間の社会と個人の心」も同じであるという内容を入れましょう。

こうした考え方は、人間の社会や個人の心にも広げることができる

心に「も」とあるので、他に何があるのでしょうか。

第2段落の前、つまり第1段落で説明されていたチーズ作り、つまり「人間のもの作り」ですね。

こうした考え方は、人間のもの作りや人間の社会、個人の心にも広げることができる。


まとめます。

自然界は、ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれるという仕組みで成り立っている。こうした考え方は、人間のもの作りや人間の社会、個人の心にも広げることができる。このような考えで運営されてきた共働学舎新得農場では、生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。(187字)


これでいいのですが、最後の「生きものたちの原点」が何を意味しているのかはっきりしていません。

それは、はじめの一文と「生きものたちの原点」が離れているからです。

かといって、この順で書くことを変えることは難しいので、「生きものたちの原点=自然界の仕組み」であることを書くことでフォローします。

(これは、第1段落で述べられていたことです)

自然界は、ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれるという仕組みで成り立っている。こうした考え方は、人間のもの作りや人間の社会、個人の心にも広げることができる。このような考えで運営されてきた共働学舎新得農場では、生きものたちの原点である自然界の仕組みに根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。(197字)

 


設問2

 

絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。

具体的には「筆者の主張をふまえ」を見落とさないことです。

筆者の主張をふまええて、自分はどのように考えるのかを述べる必要があります。

 

ということで、筆者の主張を確認します。

設問1より、

生きものたちの原点に根ざしたチーズ作りやもの作りについて、これからさらに考え、実践していきたい。

これが主張です。

「生きものたちの原点」を確認することが必要ですね。

生きものたちの原点
=ちがう性質のもの同士が響き合い共鳴を起こすことで、それぞれが持っていた性質とはまた異なる新たな価値が生まれること


課題文から読み取るべき筆者の主張は

ちがう性質のもの同士が共鳴、調整するから、新たな価値が生まれ、すばらしい世界になるから、それを大事にしたい。

とまとめることができます。

 

今回、大学があなたに問うているのは、あなたの「生き方」、具体的に言えば「学生生活の送り方」や「大学での学ぶ姿勢」についての考えと言えるでしょう。

大学が示しているアドミッションポリシーとも合いますね。

 


以上のことを踏まえて、自分がどのように考えるかを400字で述べましょう。

 

基本の構成はこうなるのでした。

第一段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる
第二段落 自分の意見の理由、具体例
第三段落 意見のまとめ

二段落構成にする場合は、上記の「第二段落」の内容を第一段落か第三段落に振り分けることになります。

 

第1段落の筆者の主張を踏まえる部分では、筆者が提起していると考えられる「問題」をしっかりと踏まえていることが分かる書き方にできるといいですね(以前までは評価のポイントと明示されていました)。

「一つの考えで全体を貫こうとする態度では社会は成り立たないのだから○○すべきだ」のようになるでしょうか。

 

第2段落では自分の体験などを具体的に述べましょう。

うまくいったこと、失敗したことのどちらも書くことができそうです。

 

それらを踏まえて、最後にあらためて自分の意見を明示しましょう。

単に筆者の主張を繰り返すだけでなく、もう一歩踏み込んで自分の考えを付け足すことが必要ですよ。


以上で書くと、合格できる小論文になります。

 

書き方や表現、意見の内容などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。


これからも過去問に取り組んでみましょう。

長野大学は過去問が少ないので、名寄市立大学の課題文を使って練習するのもアリですよ。

 

では、終わります。


今回以外の長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

ついでに名寄市立大学のリンクも貼っておきます。

kinkoshin.hatenablog.com

 


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