長野大学_小論文_2023年度_総合型選抜(AO入試)
こんにちは。きんこです。
長野大学(2023年度・令和5年度総合型選抜・AO入試)の小論文の解説です。
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長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。
このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。
そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。
まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
現代文の力もつきますよ。
では、はじめます。
課題文は田中治彦『成人式とは何か』です。
解説の前に、長野大学が示していた、小論文における「評価のポイント」を確認しておきましょう。
現在の募集要項には小論文の評価のポイントが載っていませんが、以前は載っていました。
募集要項から消えたからといって、評価のポイントがガラッと変わってしまうことは考えにくいですから、参考になると思います。
以下の記事で詳しく紹介していますので、まだご覧になっていない方は読んでおくことをオススメします。
上記のブログで示したように、課題文で筆者は何かしらに対して「問題」を提起しています。
その問題を捉えるのだという意識で課題文を読み進めるといいでしょう。
また、多くの場合、その問題についての筆者の意見が述べられています。
これが「筆者の主張」となります。
課題文で提起されている問題は何か、そしてその問題に対して筆者はどのように考えているかを読み取ることを意識しましょう。
設問1
課題文の要旨を200字以内で書く問題です。
まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。
『現代新国語辞典』(三省堂)によれば
「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です。
小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。
それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。
ちなみにこのブログで解説をしている長野大学や名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。
ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。
先ほど確認したように、長野大学の課題文では何らかの「問題」が提起されているはずです。
読み取るべき筆者の主張は、「問題点そのもの」であったり、「問題に対する筆者の考え」であったりするということを意識しておくと取り組みやすくなります。
今回の課題文も、このどちらかになっています。
課題文を読んで、どちらなのか判断してみてくださいね。
まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。
この力が求められていることも、長野大学のアドミッションポリシーから明らかです。
ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを読むことをオススメします。
では、今回の課題文を読んでいきましょう。
形式段落ごとに見ていきますので1~4まで番号を振ってください。
課題文の書き抜き(少し省略したりしていますが)は青字で表示します。
1
成人式には2つの起源があった。
もうひとつは、地方自治体が主催する形の成人式。
伝統的な成人儀礼がもつ意味は、それぞれが属する地域社会や共同体の一構成員として
そこに参加するための自覚を促すことであった。
子どもとして属していた共同体と大人としての務めを果たす共同体はほとんど同一である。
課題文のタイトルから分かるように「成人式」について述べられていくことが分かります。
伝統的な成人式(成人儀礼)には、大人になったらこれまで属してきた共同体のために尽くすことを自覚させるという役割があったようです。
2
これに対して
戦後日本社会においては、子ども時代に育ってきた社会と、成人してから働きが期待される社会とは異なっていることが多い。
その境目に成人式があり、子ども時代と、成人後活躍する社会がしばしば異なっている。
伝統的な成人式との対比です。
戦後日本社会では、子どもと大人の属する共同体が異なっており、その境目に成人式があります。
ここが伝統的な成人式との違いです。
3
現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。
現代の成人式の当初の意義は、戦後日本の復興を行うに当たって若者の力に期待したことにある。
そこでは、新生日本が(所属先として)想定されていた。
また
終身雇用を前提とした各企業が(所属先として)明確だった。
「現代の成人式の課題は」とありますから、ここがこの課題文が提起している「問題(課題)」となりそうです。
成人後に所属する社会が不明確なのが「問題」なんですね。
とはいえ、当初は「新生日本」や「各企業」が所属先として明確だったようです。
では、なぜ、現在は「所属先が不明確」になってしまうのでしょうか。
次の形式段落で述べられるはずです。
4
(所属先が)新生日本だったり各企業であることを支えたのは、戦後復興において共通の社会目標があったからだ。
従って、その目標を達成した1980年代には所属先が不明瞭になった。
成人式の当初の目的は浮遊し、晴れ着を着て祝福を受けるという形式だけが残った。
その先に2000年代の「荒れる」成人式が訪れた。
共通の社会目標があったから所属先を明確にできていたのに、その目標を達成したことで所属先が明確ではなくなってしまったことが分かります。
その結果、成人式の目的が浮遊し(曖昧になってしまい)、形式だけが残り、「荒れる」成人式へと続いていくわけです。
ということで、本文の読み取りが終了しました。
今回の課題文では、明確に「問題」が提起されていましたね。
その問題に対する筆者の考え(解決策)は述べられていませんので、問題点が筆者の主張と考えることができます。
以上のことを踏まえて、課題文の要旨をまとめてみましょう。
筆者の主張(提起している問題)は、第3段落の「はじめ」です。
現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。(39字)
これを中心にまとめていきます。
課題文のテーマは「成人式」ですから、まずは成人式の意義を加えます。
その意義から外れているから、上記の課題が生まれたんですよね。
第1段落の「なか」で通過儀礼としての成人儀礼の意義(意味)が述べられていました。
伝統的な成人儀礼がもつ意味は、それぞれが属する地域社会や共同体の一構成員としてそこに参加するための自覚を促すことであった。
子どもとして属していた共同体と大人としての務めを果たす共同体はほとんど同一である。
これをまとめると、こうなります。
成人儀礼がもつ意味は、属する地域社会や共同体の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。
続いて、第2段落からは戦後日本社会における成人式について述べられています。
成人式の意義は第3段落の「なか」で述べられていました。
現代の成人式の当初の意義は、戦後日本の復興を行うに当たって若者の力に期待したことにある。
そこでは、新生日本が(所属先として)想定されていた。
終身雇用を前提とした各企業が(所属先として)明確だった。
これをまとめると
現代の成人式の当初の意義は、新生日本や各企業を所属先として明確にし、戦後復興を行う若者に期待したことにある。
以上の2つをまとめると、成人儀礼、成人式の意義となります。
成人儀礼や成人式の意義は、成人後の所属先の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。
筆者の主張を合わせて
成人儀礼や成人式の意義は、成人後の所属先の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。(83字)
前半と後半の繋がりが悪いですね。
そこで、なぜ所属先が不明確になってしまったかを加えましょう。
第4段落で述べられていますね。
(所属先が)新生日本だったり各企業であることを支えたのは、戦後復興において共通の社会目標があったからだ。
従って、その目標を達成した1980年代には所属先が不明瞭になった。
まとめると
戦後復興において共通の社会目標があったため、所属先は新生日本や各企業と明確だった。しかし、1980年代にその目標が達成されると所属先が不明瞭になった。
これを加えます。
成人儀礼や成人式の意義は、成人後の所属先の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。戦後復興において共通の社会目標があったため、所属先は新生日本や各企業と明確だった。しかし、1980年代にその目標が達成されると所属先が不明瞭になった。現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。(158字)
2文目が唐突な感じがするので、主語を加えます。
成人儀礼や成人式の意義は、成人後の所属先の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。現代における成人式は戦後復興において共通の社会目標があったため、所属先は新生日本や各企業と明確だった。しかし、1980年代にその目標が達成されると所属先が不明瞭になった。現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。(168字)
次に、所属先が不明瞭になった結果、成人式がどのようになったかを加えます。
成人式が、その意義(意味)を失ってマイナスの方向に向かっているから課題(問題)なわけです。
第4段落に述べられていました。
成人式の当初の目的は浮遊し、晴れ着を着て祝福を受けるという形式だけが残った。
その先に2000年代の「荒れる」成人式が訪れた。
この内容を加えてあげます。
成人儀礼や成人式の意義は、成人後の所属先の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。現代における成人式は戦後復興において共通の社会目標があったため、所属先は新生日本や各企業と明確だった。しかし、1980年代にその目標が達成されると所属先が不明瞭になり、「荒れる」成人式が訪れた。成人式の課題は、晴れ着を着て祝福を受けるという形式だけが残り、成人後の所属先を明確にできなくなっていることである。(198字)
これでオッケーですね。
設問2
絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。
具体的には「設問文の内容に関して」を見落とさないことです。
設問文の内容、つまり筆者の主張をふまえて、自分はどう考えるのかを述べる必要があります。
ということで、筆者の主張を確認します。
設問1より、
現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。
これが主張です。
成人後の所属先を明確にするという成人式の意義が失われており、それが「荒れる」成人式をもたらしているんですね。
この課題(問題)に対するあなたの考えを書けばいいことになります。
それは、ずばり「成人式の意義について」となるでしょう。
第2段落「はじめ」にあるように、現代では子ども時代に所属していた社会と、成人してから所属する社会とが異なっています。
第4段落にあったように、戦後復興というような共通の社会目標もありません。
成人後の所属先が不明確な状況のなかで、「成人式の意義」を何に見出すことができるかが問われています。
今回、大学があなたに問うているのは、これから成人するあなたの「生きていく方向」と言えるでしょう。
前近代社会のように子ども時代と大人時代に属する共同体を同一にするのか(これは非現実的ですが)、戦後日本社会のように共通の目標を持つのか(「西洋に追いつけ、追い越せ」という強い欲求を全員が持つことができるかは難しいかもしれませんが)、それとも他の何かを見出すのか、が問われています。
いずれにせよ、現代において、成人式はどのような意味を持つことができるのかを考える必要があります。
簡単ではないですが、自分なりの考えを述べてみましょう。
以上のことを踏まえて、自分がどのように考えるかを400字で述べましょう。
基本の構成はこうなるのでした。
第1段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる
第2段落 自分の意見の理由、具体例
第3段落 意見のまとめ
2段落構成にする場合は、上記の「第2段落」の内容を第1段落か第3段落に振り分けることになります。
第1段落の筆者の主張を踏まえる部分では、筆者が提起していると考えられる「問題」をしっかりと踏まえていることが分かる書き方にできるといいですね(以前までは評価のポイントと明示されていました)。
今回の「問題」は「成人後の所属先を明確にするという成人式の意義が失われてしまった」ということですから、それを踏まえた上で自分なりの「成人式の意義」を述べることができるかどうかが鍵となります。
第2段落では、自分が考える「成人式の意義」についての理由を述べていくことになりそうです。
その内容に適切な具体的事例を加えることができるといいでしょう。
それらを踏まえて、最後にあらためて自分の意見(成人式の意義)を明示しましょう。
以上で書くと、合格できる小論文になります。
書き方や表現、意見の内容などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。
これからも多くの過去問に取り組んでみましょう。
とはいえ、長野大学は過去問が少ないので、名寄市立大学の課題文を使って練習するのもアリですよ。
では、終わります。
今回以外の長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。
ついでに名寄市立大学のリンクも貼っておきます。
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