長野大学_小論文_2022年度_総合型選抜(AO入試)
こんにちは。きんこです。
長野大学(2022年度・令和4年度総合型選抜・AO入試)の小論文の解説です。
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長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。
このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。
そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。
まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
現代文の力もつきますよ。
では、はじめます。
課題文は小川さやか「世界が存在する偶然を」『アステイオン』91所収です。
設問の解説の前に、長野大学が示していた、小論文における「評価のポイント」を確認しておきましょう。
現在の募集要項には小論文の評価のポイントが載っていませんが、以前は載っていました。
募集要項から消えたからといって、評価のポイントがガラッと変わってしまうことは考えにくいですから、参考になると思います。
以下の記事で詳しく紹介していますので、まだご覧になっていない方は読んでおくことをオススメします。
上記のブログで示したように、課題文で筆者は何かしらに対して「問題」を提起しています。
その問題を捉えるのだという意識で課題文を読み進めるといいでしょう。
また、多くの場合、その問題についての筆者の意見が述べられています。
これが「筆者の主張」となります。
課題文で提起されている問題は何か、そしてその問題に対して筆者はどのように考えているかを読み取ることを意識しましょう。
設問1
課題文の要旨を200字以内で書く問題です。
まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。
『現代新国語辞典』(三省堂)によれば
「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です。
小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。
それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。
ちなみにこのブログで解説をしている長野大学や名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。
ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。
先ほど確認したように、長野大学の課題文では何らかの「問題」が提起されているはずです。
読み取るべき筆者の主張は、「問題点そのもの」であったり、「問題に対する筆者の考え」であったりするということを意識しておくと取り組みやすくなります。
まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。
この力が求められていることも、長野大学のアドミッションポリシーから明らかです。
ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。
では、今回の課題文を読んでいきましょう。
形式段落ごとに見ていきますので1~7まで番号を振ってください。
課題文の書き抜きは青字で表示します。
1
この百年に、人類の社会の大部分は、不確実性・不透明性を削減・縮小することを目指して発展してきた。
確実性を増大させ、個人と社会の安定性や安全性を高めていくことが、人類の幸福につながると信じられてきた時代だった。
形式段落の「はじめ」も「おわり」も同じことが述べられています。
人類の発展=不確実性の縮小=確実性の増大=個人と社会の安定=人類の幸福
とまとめることができます。
2
けれども
人類の社会は、予測不可能な事柄や偶然性の存在によっても成り立ってきた。
それは、他社や社会に対する能動的な働きかけを引き起こす原動力。
偶然に成功することは、他社や社会を肯定的に意味づける契機。
逆接から始まっていますから、筆者の主張がありそうです。
予測不可能な事柄や偶然性が重要だと言いたいのでしょう。
3
偶然性は、友情や愛情、贈与、返礼、創造性、独自性などを生み出した。
偶然性が重要である理由が述べられています。
偶然性があるからこそ、これらがあるのです。
4
それゆえ(だから)
不確実性を削減していく動きが進展するならば、
あらゆる側面に「不確実性・不可知性」を再創造していく時代になると予想している。
第2段落での主張をさらに進めています。
偶然性が重要なのに、この百年にそれが削減されているから、今後、偶然性(不確実性)を再創造する時代となる。
これが筆者の主張です。
5
香港のタンザニア人は、偶然に応答した相手に賭けるという方法で商売する。
長いけれど、まとめるとコレだけです。
偶然性・不確実性の例ですね。
6
香港のタンザニア人は、偶然に応答する者が現れると「彼/彼女は私のことが好きだ」と語る。
むしろ、この無根拠で幸せな確信のために、誰が信用できるかわからないという不確実性のある世界とそこへの自己の投企を肯定している。
「投企」ということばが難しいですが、全体の内容はわかると思います。
香港のタンザニア人は、偶然による無根拠で幸せな確信のために、不確実性のある社会で生きているという感じでしょうか。
第1段落の内容とは逆ですね。
第1段落では「人類の幸福=不確実性の縮小=確実性の増大」でしたから。
タンザニア人は「幸せ=偶然」です。
「むしろ」がありますから、後半の内容が注目すべき箇所です。
筆者の主張を裏付ける内容となっていることがわかります。
なお、「投企」とは「自分とは何かを考え、未来に向かって自分を創っていく」というような意味です。
つまり、「自分の未来」のために「不確実性のある世界」に身を投じているという意味になります。
7
百年後の人類が、既に獲得した物質的・精神的な豊かさを捨てずに原初的な人類のユートピアを実現しているなら、
予想外の可能性のない世界の隙間に、自身と世界が存在するまったき偶然それ自体の豊かさを復活させているはずだ。
第4段落で述べた「偶然性(不確実性)を再創造する時代」を具体的に述べています。
やはり主張は第4段落の内容ですね。
ということで、本文の読み取りが終了しました。
長野大学の課題文では「問題」が提起されていることが多いのですが、今回は明確には問題提起がされていませんでした。
とはいえ、筆者の主張は読み取りやすいですし、もし「問題」が提起されていると考えるのであれば、第1段落で述べられていた「この百年の人類の発展のあり方(不確実性の削減)」を問題視していると考えることができます。
不確実性・不透明性を削減・縮小することが幸福につながると信じられてきたが、本当にそうなのか
これを「問題」と捉えることもできるでしょう。
この問題に対する答えが筆者の主張であると言えます。
以上のことを踏まえて、課題文の要旨をまとめてみましょう。
筆者の主張は、第4段落の内容でまとめます。
不確実性を削減していく動きが進展するならば、あらゆる側面に「不確実性・不可知性」を再創造していく時代になるはずだ。(57字)
これを中心にまとめていきます。
まずは、筆者がこのように考える理由を加えます。
不確実性、つまり偶然性が重要だからですね。
第2段落の内容です。
人類の社会は、予測不可能な事柄や偶然性の存在によっても成り立ってきた。このまま不確実性を削減していく動きが進展するならば、あらゆる側面に「不確実性・不可知性」を再創造していく時代になるはずだ。(96字)
はじめの一文に「偶然性の存在によって『も』成り立ってきた」とありますから、もう1つも書かなくてはいけません。
第1段落の内容である、これまでのことですね。
この百年に、人類の社会の大部分は、不確実性・不透明性を削減・縮小することを目指し、確実性を増大させ、個人と社会の安定性や安全性を高めていくことが、人類の幸福につながると信じてきた。しかし、人類の社会は、予測不可能な事柄や偶然性の存在によっても成り立ってきた。このまま不確実性を削減していく動きが進展するならば、あらゆる側面に「不確実性・不可知性」を再創造していく時代になるはずだ。(190字)
おっと、もう200字程度になってしまいました。
ここで終わりたいところですがダメです。
それは、最後の「不確実性・不可知性」を再創造していく時代がどういう時代か、課題文で述べられていたからです。
ここは「再創造していく時代」がどのような時代なのか書いておきたいところです。
最後の部分を第7段落の内容と差し替えます。
この百年に、人類の社会の大部分は、不確実性・不透明性を削減・縮小することを目指し、確実性を増大させ、個人と社会の安定性や安全性を高めていくことが、人類の幸福につながると信じてきた。しかし、人類の社会は、予測不可能な事柄や偶然性の存在によっても成り立ってきた。百年後の人類が既に獲得した物質的・精神的な豊かさを捨てずに原初的な人類のユートピアを実現しているなら、予想外の可能性のない世界の隙間に、自身と世界が存在するまったき偶然それ自体の豊かさを復活させているはずだ。(233字)
33字超えていますので、内容を変えずに短くして完成です。
この百年、人類の社会は不確実性・偶然性を削減し、確実性を増大させ個人と社会の安定性や安全性を高めていくことを目指して発展してきた。しかし、人類の社会は、予測不可能な事柄や偶然性の存在によっても成り立ってきた。百年後、人類が物質的・精神的な豊かさを捨てずに原初的な人類のユートピアを実現しているなら、不確実性のない世界の隙間に、自身と世界が存在する偶然それ自体の豊かさを復活させているはずだ。(195字)
コレで十分ですが、2文目を具体的にしてもいいでしょう。
そのまま差し替えると200字を超えてしまうため、1文目も短くしてまとめます。
この百年、人類の社会は不確実性・偶然性の削減と、確実性の増大とが人類の幸福につながると信じ発展してきた。しかし、予測不可能な出来事や偶然は、人間の持つ根源的な脆弱性を開示し、他者や社会を肯定的に意味づける契機になる。百年後、人類が物質的・精神的な豊かさを捨てずに原初的な人類のユートピアを実現しているなら、不確実性のない世界の隙間に、自身と世界が存在する偶然それ自体の豊かさを復活させているはずだ。(199字)
設問2
絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。
具体的には「筆者の主張をふまえ」を見落とさないことです。
筆者の主張をふまえて、自分はどのように考えるのかを述べる必要があります。
ということで、筆者の主張を確認します。
設問1より、
不確実性を削減していく動きが進展するならば、あらゆる側面に「不確実性・不可知性」を再創造していく時代になるはずだ。
これが主張です。
人類には、不確実性・不可知性・偶然性が必要だということを押さえればいいですね。
今回、大学があなたに問うているのは、人類の「生き方」と言えるでしょう。
人類が幸福になるには、確実な社会を目指した方がいいのか、それとも偶然性も必要とした方がいいのか、ということです。
もちろん、人類には「あなた」も含まれますから、「あなたの生き方」を問うているとも言えます。
これから大学に入学したとして、そこで出会う仲間とは「偶然」出会うことになります。
課題文の第3段落の内容を考えると「偶然性が必要だ」という方向で書くことになるでしょう。
また、第2段落の「予測不可能な出来事や偶然は、人間の持つ根源的な脆弱性を開示し、他者や社会を肯定的に意味づける契機になる」という内容からも「偶然性が必要だ」という方向で書くことになりそうです。
以上のことを踏まえて、自分がどのように考えるかを400字で述べましょう。
基本の構成はこうなるのでした。
第1段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる
第2段落 自分の意見の理由、具体例
第3段落 意見のまとめ
2段落構成にする場合は、上記の「第2段落」の内容を第1段落か第3段落に振り分けることになります。
第1段落の筆者の主張を踏まえる部分では、筆者が提起していると考えられる「問題」をしっかりと踏まえていることが分かる書き方にできるといいですね(以前までは評価のポイントと明示されていました)。
今回の「問題」は「人類が不確実性の削減を目指して発展してきた」ということですね。
これだけではダメだよね、というのが筆者の主張だったわけです。
第2段落では「偶然性」の重要性を具体的に述べることで理由に繋げることができそうです。
それらを踏まえて、最後にあらためて自分の意見を明示しましょう。
単に筆者の主張を繰り返すだけでなく、もう一歩踏み込んで自分の考えを付け足すことが必要ですよ。
以上で書くと、合格できる小論文になります。
書き方や表現、意見の内容などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。
これからも過去問に取り組んでみましょう。
長野大学は過去問が少ないので、名寄市立大学の課題文を使って練習するのもアリですよ。
では、終わります。
今回以外の長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。
ついでに名寄市立大学のリンクも貼っておきます。
要約練習にも使えますよ!
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