高校教員の徒然日記

PMA~Positive Mental Attitude~

長野大学_小論文_2023年度_総合型選抜(AO入試)

こんにちは。きんこです。

 

長野大学(2023年度・令和5年度総合型選抜・AO入試)の小論文の解説です。


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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。

そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。

まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。

現代文の力もつきますよ。

kinkoshin.hatenablog.com


では、はじめます。

 

課題文は田中治彦『成人式とは何か』です。

 

解説の前に、長野大学が示していた、小論文における「評価のポイント」を確認しておきましょう

現在の募集要項には小論文の評価のポイントが載っていませんが、以前は載っていました。

募集要項から消えたからといって、評価のポイントがガラッと変わってしまうことは考えにくいですから、参考になると思います。

以下の記事で詳しく紹介していますので、まだご覧になっていない方は読んでおくことをオススメします。

kinkoshin.hatenablog.com

 

上記のブログで示したように、課題文で筆者は何かしらに対して「問題」を提起しています。

その問題を捉えるのだという意識で課題文を読み進めるといいでしょう。

また、多くの場合、その問題についての筆者の意見が述べられています。

これが「筆者の主張」となります。

 

課題文で提起されている問題は何か、そしてその問題に対して筆者はどのように考えているかを読み取ることを意識しましょう。

 

設問1

 

課題文の要旨を200字以内で書く問題です。

 

まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。

『現代新国語辞典』(三省堂)によれば

「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です。

小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。

それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。

ちなみにこのブログで解説をしている長野大学名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。

ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。

 

先ほど確認したように、長野大学の課題文では何らかの「問題」が提起されているはずです。

読み取るべき筆者の主張は、「問題点そのもの」であったり、「問題に対する筆者の考え」であったりするということを意識しておくと取り組みやすくなります。

 

今回の課題文も、このどちらかになっています。

課題文を読んで、どちらなのか判断してみてくださいね。

 

まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。

この力が求められていることも、長野大学のアドミッションポリシーから明らかです。

ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを読むことをオススメします。


では、今回の課題文を読んでいきましょう。

 

形式段落ごとに見ていきますので1~4まで番号を振ってください。

課題文の書き抜き(少し省略したりしていますが)は青字で表示します。

 

成人式には2つの起源があった。

ひとつは、通過儀礼としての成人儀礼

もうひとつは、地方自治体が主催する形の成人式。

伝統的な成人儀礼がもつ意味は、それぞれが属する地域社会や共同体の一構成員として

そこに参加するための自覚を促すことであった。

子どもとして属していた共同体と大人としての務めを果たす共同体はほとんど同一である。


課題文のタイトルから分かるように「成人式」について述べられていくことが分かります。

伝統的な成人式(成人儀礼)には、大人になったらこれまで属してきた共同体のために尽くすことを自覚させるという役割があったようです。

 

これに対して

戦後日本社会においては、子ども時代に育ってきた社会と、成人してから働きが期待される社会とは異なっていることが多い。

その境目に成人式があり、子ども時代と、成人後活躍する社会がしばしば異なっている。

 

伝統的な成人式との対比です。

戦後日本社会では、子どもと大人の属する共同体が異なっており、その境目に成人式があります。

ここが伝統的な成人式との違いです。

 

現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。

現代の成人式の当初の意義は、戦後日本の復興を行うに当たって若者の力に期待したことにある。

そこでは、新生日本が(所属先として)想定されていた。

また

終身雇用を前提とした各企業が(所属先として)明確だった。

 

「現代の成人式の課題は」とありますから、ここがこの課題文が提起している「問題(課題)」となりそうです。

成人後に所属する社会が不明確なのが「問題」なんですね。

とはいえ、当初は「新生日本」や「各企業」が所属先として明確だったようです。

では、なぜ、現在は「所属先が不明確」になってしまうのでしょうか。

次の形式段落で述べられるはずです。

 

(所属先が)新生日本だったり各企業であることを支えたのは、戦後復興において共通の社会目標があったからだ。

従って、その目標を達成した1980年代には所属先が不明瞭になった。

成人式の当初の目的は浮遊し、晴れ着を着て祝福を受けるという形式だけが残った。

その先に2000年代の「荒れる」成人式が訪れた。

 

共通の社会目標があったから所属先を明確にできていたのに、その目標を達成したことで所属先が明確ではなくなってしまったことが分かります。

その結果、成人式の目的が浮遊し(曖昧になってしまい)、形式だけが残り、「荒れる」成人式へと続いていくわけです。


ということで、本文の読み取りが終了しました。

 

今回の課題文では、明確に「問題」が提起されていましたね。

その問題に対する筆者の考え(解決策)は述べられていませんので、問題点が筆者の主張と考えることができます。

 

以上のことを踏まえて、課題文の要旨をまとめてみましょう。

 

筆者の主張(提起している問題)は、第3段落の「はじめ」です。

現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。(39字)

これを中心にまとめていきます。

 

課題文のテーマは「成人式」ですから、まずは成人式の意義を加えます

その意義から外れているから、上記の課題が生まれたんですよね。

第1段落の「なか」で通過儀礼としての成人儀礼の意義(意味)が述べられていました。

 

伝統的な成人儀礼がもつ意味は、それぞれが属する地域社会や共同体の一構成員としてそこに参加するための自覚を促すことであった。

子どもとして属していた共同体と大人としての務めを果たす共同体はほとんど同一である。

 

これをまとめると、こうなります。

成人儀礼がもつ意味は、属する地域社会や共同体の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。

 

続いて、第2段落からは戦後日本社会における成人式について述べられています。

成人式の意義は第3段落の「なか」で述べられていました。

 

現代の成人式の当初の意義は、戦後日本の復興を行うに当たって若者の力に期待したことにある。

そこでは、新生日本が(所属先として)想定されていた。

終身雇用を前提とした各企業が(所属先として)明確だった。

 

これをまとめると

現代の成人式の当初の意義は、新生日本や各企業を所属先として明確にし、戦後復興を行う若者に期待したことにある。

 

以上の2つをまとめると、成人儀礼、成人式の意義となります。

成人儀礼や成人式の意義は、成人後の所属先の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。

 

筆者の主張を合わせて

成人儀礼や成人式の意義は、成人後の所属先の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。(83字)

 

前半と後半の繋がりが悪いですね。

そこで、なぜ所属先が不明確になってしまったかを加えましょう。

第4段落で述べられていますね。

 

(所属先が)新生日本だったり各企業であることを支えたのは、戦後復興において共通の社会目標があったからだ。

従って、その目標を達成した1980年代には所属先が不明瞭になった。

 

まとめると

戦後復興において共通の社会目標があったため、所属先は新生日本や各企業と明確だった。しかし、1980年代にその目標が達成されると所属先が不明瞭になった。

 

これを加えます。

成人儀礼や成人式の意義は、成人後の所属先の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。戦後復興において共通の社会目標があったため、所属先は新生日本や各企業と明確だった。しかし、1980年代にその目標が達成されると所属先が不明瞭になった。現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。(158字)

2文目が唐突な感じがするので、主語を加えます。

成人儀礼や成人式の意義は、成人後の所属先の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。現代における成人式は戦後復興において共通の社会目標があったため、所属先は新生日本や各企業と明確だった。しかし、1980年代にその目標が達成されると所属先が不明瞭になった。現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。(168字)

 

次に、所属先が不明瞭になった結果、成人式がどのようになったかを加えます。

成人式が、その意義(意味)を失ってマイナスの方向に向かっているから課題(問題)なわけです。

第4段落に述べられていました。

 

成人式の当初の目的は浮遊し、晴れ着を着て祝福を受けるという形式だけが残った。

その先に2000年代の「荒れる」成人式が訪れた。

 

この内容を加えてあげます。

成人儀礼や成人式の意義は、成人後の所属先の構成員として務めを果たす自覚を促すことだった。現代における成人式は戦後復興において共通の社会目標があったため、所属先は新生日本や各企業と明確だった。しかし、1980年代にその目標が達成されると所属先が不明瞭になり、「荒れる」成人式が訪れた。成人式の課題は、晴れ着を着て祝福を受けるという形式だけが残り、成人後の所属先を明確にできなくなっていることである。(198字)

これでオッケーですね。

 


設問2

 

絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。

具体的には「設問文の内容に関して」を見落とさないことです。

設問文の内容、つまり筆者の主張をふまえて、自分はどう考えるのかを述べる必要があります。

 

ということで、筆者の主張を確認します。

設問1より、

現代の成人式の課題は、成人後どのような社会に所属するかが不明確なところにある。

これが主張です。

 

成人後の所属先を明確にするという成人式の意義が失われており、それが「荒れる」成人式をもたらしているんですね。

この課題(問題)に対するあなたの考えを書けばいいことになります。

それは、ずばり「成人式の意義について」となるでしょう。

 

第2段落「はじめ」にあるように、現代では子ども時代に所属していた社会と、成人してから所属する社会とが異なっています。

第4段落にあったように、戦後復興というような共通の社会目標もありません。

成人後の所属先が不明確な状況のなかで、「成人式の意義」を何に見出すことができるかが問われています。

 

今回、大学があなたに問うているのは、これから成人するあなたの「生きていく方向」と言えるでしょう。

 

前近代社会のように子ども時代と大人時代に属する共同体を同一にするのか(これは非現実的ですが)、戦後日本社会のように共通の目標を持つのか(「西洋に追いつけ、追い越せ」という強い欲求を全員が持つことができるかは難しいかもしれませんが)、それとも他の何かを見出すのか、が問われています。

 

いずれにせよ、現代において、成人式はどのような意味を持つことができるのかを考える必要があります。

簡単ではないですが、自分なりの考えを述べてみましょう。


以上のことを踏まえて、自分がどのように考えるかを400字で述べましょう。

基本の構成はこうなるのでした。

第1段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる

第2段落 自分の意見の理由、具体例

第3段落 意見のまとめ

2段落構成にする場合は、上記の「第2段落」の内容を第1段落か第3段落に振り分けることになります。

 

第1段落の筆者の主張を踏まえる部分では、筆者が提起していると考えられる「問題」をしっかりと踏まえていることが分かる書き方にできるといいですね(以前までは評価のポイントと明示されていました)。

今回の「問題」は「成人後の所属先を明確にするという成人式の意義が失われてしまった」ということですから、それを踏まえた上で自分なりの「成人式の意義」を述べることができるかどうかが鍵となります。


第2段落では、自分が考える「成人式の意義」についての理由を述べていくことになりそうです。

その内容に適切な具体的事例を加えることができるといいでしょう。

それらを踏まえて、最後にあらためて自分の意見(成人式の意義)を明示しましょう。


以上で書くと、合格できる小論文になります。

 

書き方や表現、意見の内容などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。


これからも多くの過去問に取り組んでみましょう。

とはいえ、長野大学は過去問が少ないので、名寄市立大学の課題文を使って練習するのもアリですよ。

 

では、終わります。


今回以外の長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 

ついでに名寄市立大学のリンクも貼っておきます。

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長野大学_国語_2023(令和5)年度_一般選抜中期日程_第3問

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長野大学2023年度(令和5年度)一般選抜中期日程の国語第3問の解答解説です。

 

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では、始めます。

 

はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。

 

[解答]

 

3 増成隆士『現代の人間観と世界観』

 

問1 

A…ア

B…エ

C…ア


問2

 

問3

 

問4

人間の身体の内部構造を見ることを知的に重要だと認識し、人間一般の医学になった。(39字)

 

問5

生きている身体には、「生」たらしめる目に見えない何かが「宿って」いるという考え。(40字)

 


[解説]

形式段落での説明になります。

1~10まで形式段落に番号を振ってください。

 

問1 空欄補充

空欄補充の問題は、前後の文脈を確認して考えます。

各空欄を見ていきましょう。

 

われわれはよく知っている→いや、実のところ「われわれはよく知っている」というのは(空欄)→ほんとうによく知っているのは、医学者を中心として…

という流れです。

 

「いや」とありますから逆接です。

 

「知っている」の逆ですから、ここの内容は「知らない」となります。

 

主語が「『われわれはよく知っている』というのは」となっていますから、これに合う形で「われわれは知らない」となるような語句を選びます。

 

アの「言い過ぎ」となります。


人体についての今日の見方考え方の基本にあるのは、端的に言えば、医学的な見方考え方→より(空欄)に言えば、解剖学的な見方考え方

という流れです。

 

医学的な見方考え方を「よりどうしたもの」が解剖学的な見方考え方なのか、と考えます。

「医学的」よりも「解剖学的」の方が、より具体的に(こまかく、小さい範囲に)なっていますね。

 

エの「限定的」です。


空欄は形式段落8の「はじめ」にあります

ということは、この空欄は形式段落7と8とをつないでいると考えます。

 

形式段落7の内容は、「おわり」から「西洋では、人間の身体の内部構造をみていくことを「学」として高い位置に置き、医学は数学や天文学などと並ぶ学問とされた」です。

形式段落8の「はじめ」は「西洋医学(医学)のものの見方考え方がすんなりと成長したわけでもない」です。

 

「医学」の話題であることが分かりますね。

この「医学」がどうだったのかというと

形式段落7…高い位置にある学問

形式段落8…すんなりと成長しなかった

医学は高い位置にあった「のに」、すんなりと成長はしなかったんですね。

「のに」は逆接ですから、選択肢から逆接の語句を選びましょう。

 

アです。

 


問2 内容説明

傍線部は形式段落4の「はじめ」にあります

形式段落の「はじめ」にあるのですから、前の形式段落の「おわり」からつながっています。

 

形式段落3の「おわり」

ものの見方考え方=今日の人間は一般に、人間の身体は複雑に組み立てられている

 

次に、形式段落4を見ます。

傍線部は主語になっていますから後半を確認します。

傍線部(見方考え方)の基本=専門家と一般人に共通して、理科室で見た人体の骨格見本などのイメージがある

さらに形式段落4の「おわり」でまとめているはずです。

基本にある見方考え方=今と昔とでは、大きく違う

 

ここまでの確認で選択肢を見たいところですが、形式段落5の「はじめ」がちらっと眼に入りますね。

見てみると「人体についての今日の見方考え方の基本にあるのは」と同じ話題が続いていることに気づきます。

確認しましょう。

 

形式段落5の「はじめ」から

見方考え方の基本=解剖学的な見方考え方

形式段落5の「おわり」から

見方考え方=古代ギリシアの医学と古代ローマの解剖学の延長線上

 

形式段落6からは「解剖」の話題になっています。

形式段落5で確認したように「見方考え方の基本=解剖学的な見方考え方」なので確認の必要がありますね…。

形式段落6の「はじめ」から

解剖=外皮を切り、内部を見る。古くからある。

形式段落6の「おわり」から

古代インカでも解剖的なものが多少あった

 

この辺りでいいでしょう。

選択肢を確認します。

ア…理科室の人体の骨格見本などのイメージがあるのでした。

イ…専門家と一般人に共通していたのでした。

ウ…今と昔とでは大きく違うのでした。これが正解ですね。

エ…「古代ローマ→古代インカ」という流れではありません。

オ…解剖学的なものが多少あったんでした。

 

設問は「見方考え方」の内容説明ですから、そもそも「解剖」については関係ありません。

だから、形式段落5までで答えは出ます。

ただ、選択肢に「解剖」がある以上、確認はしたほうがいいですよね。

 


問3 内容説明

傍線部は形式段落7の「はじめ」にあります。

傍線部の前後に「が」「は」がありますから、この「イコール」を確認します。

さらに、形式段落の「なか」で説明され、「おわり」でまとめてくれるはずです。

ここに書くと、本文のほとんどになってしまうので省略しますね。

 

ポイントだけまとめます。

形式段落7

・人間という存在と怜悧に見るということ

・必要性にせまられて切り開くのとは違う

・西洋の見方考え方

・「学(知として重要な意味を持つ営み)」として高い位置に置いた

・医学は、数学や天文学と並ぶ学問とされた

 

「はじめ」が「この話するよ」、「おわり」が「それってこうだよね」なので、この段落(「はじめ」の傍線部)は「おわり」に出てきた「医学のものの見方考え方」とイコールです。

 

そして、この「医学」の話題は形式段落8にも続いています。

古代ギリシア、ローマにすでに始まっていた

・そのときそのときに病人に対処する「治療」に主眼を置くのではない

・人間一般についてのある方向からの知的探究と認識の学

・すんなりと成長して現代医科学的なものの見方考え方に至っているわけでもない

・途上で宗教的なものの見方考え方が立ちはだかった

 

これらを確認した上で、選択肢を見ます。

ア…直接述べられてはいませんが、先に「治療(解剖)」があって、そこに「知としての重要な意味を持つ営み」という意味づけをしたという順ではあります。ですから「絶対に違う」とは言えません。ここでは保留にしておきましょう。

イ…形式段落7の「おわり」に「術」は出てきますが、これを探求したとは述べられていませんし、それが「現在に自然につながった」とは述べられていません(形式段落8)。

ウ…治療に主眼を置くのではないのでした。

エ…形式段落8では「すんなりと成長して至っているわけでもない」とあります。これは、最終的には「至っている」ということですから「至るものではない」は違います。

オ…宗教的な考え方は「立ちはだかった」のであって、「促した」わけではありません。

イ~オは「絶対に」違います。

ということで、「絶対に違う」とは言えないアが答えとなります。

正答は導けますが、イマイチな設問のような気がしますね…

 


問4 内容説明

「どのように○○になったのか」と問われています。

答え方の基本は「………ように○○になった。」としたいところですが、字数制限が厳しい設問です。

 

設問は「西洋医学がどのように人間一般の学問になったのか」を問うています。

つまり、西洋医学は、もともと人間一般の学問ではなかったということです。

 

では、傍線部を含む一文で「西洋医学」について確認します。

西洋医学とは

古代ギリシア、ローマにすでに始まっていた

・人間一般についてのある方向からの知的探求と認識の学としての医学

・すんなりと成長して現代医科学的なものの見方考え方に至っているというわけでもない(最終的には至っている)

ですね。

つまり、次のような流れになります。

古代ギリシア、ローマ→人間一般についての医学→現代医科学的なものの見方考え方

 

今回の設問は、「古代ギリシア、ローマにすでに始まっていた」西洋医学が、どのようにして「人間一般についての医学」になったのか、この2つの間にはいったい何があったのか、ということを問うています。

 

古代ギリシア、ローマ」での医学とは、形式段落5で述べられていたものです。

古代ローマは「解剖学」でしたね。

 

そして、単に「解剖」としての治療が、なぜ「人間一般についての医学」になったのかというと、形式段落7に述べられているような変化が起きたからです。

 

すなわち、「必要に迫られて人体を切り開いていた=単なる解剖としての治療」が「知的に重要なこととして認識された、『学(知として重要な意味を持つ営み)』として高い位置に置かれるようになった」から、「人間一般についての医学」になったと考えられます。

 

これをまとめていきましょう。

形式段落7の「はじめ」と「おわり」の部分を使いましょう(同じことが若干異なる表現で述べられています)。

人間の身体を開けて、その内部構造をみていくということを、単なる「術」ではなく知として重要な意味を持つ営み、すなわち「学」として、高い位置に置いたことによって、人間一般の医学になった。(91字)

40字以内にしていきますが、ちょっと大変です。

はじめに書いたように、今回の答え方の基本は「………ように(によって)○○になった。」ですからね。

ここの部分は外さないようにします。

人間の身体の内部構造を見ることを、知として重要な意味を持つ営みと考えたことにより人間一般の医学になった。(52字)

まだまだですね。

人間の身体の内部構造を見ることを知的に重要だと認識し、人間一般の医学になった。(39字)

これでキレイにまとまりました。

 

ちなみに…形式段落8の「おわり」から始まる「宗教的なものの見方考え方」や「心」についてを解答とした方がいるかもしれません。

ここの部分は

古代ギリシア、ローマ→人間一般についての医学→現代医科学的なものの見方考え方

この流れの後半(人間一般についての医学→現代医科学的なものの見方考え方)の間にあるものですから、今回の解答にはなりませんよ。

 


問5 内容説明

形式段落9ではじめて「心」について述べられます。

形式段落9「おわり」に「問題は、古くから、『心』はどこにあるのか、という問題の立て方で、論じられてきた」とあります。

形式段落10でコレがつながっていきます

そして、それが設問の解答です。

形式段落10の内容を読み取れば、解けるということです。

はじめ…問題(「心」はどこにあるのか)が、そういう問題の立て方で論じられてきたのは不思議でない

なか…生きている身体と死体は身体そのものとしては基本的に変わらないから、生きている身体にはその「生」の「生」たるゆえんのものが目に見えないものとして「宿って」いるという説明はたいていのひとが考えそう

おわり…したがって、たいていのひとの同感する、説明であろうからである

「心」はどこにあるのかという問題は、「なか」で述べられたような理由で、たいていのひとが同感するだろうから論じられてきたわけですね。

この「なか」をまとめると、設問の解答になります。

 

設問は「どのような考えから提起されたのか」となっていますから、「~考え。」とまとめます。

生きている身体にはその「生」の「生」たるゆえんのものが目に見えないものとして「宿って」いるという考え。(51字)

「心」の問題につながる考えですから「目に見えない」は削らない方がいいでしょう。

「心」って目に見えないものですよね。

また、「生」「宿って」にはカギ括弧がついています。

これは筆者はわざわざつけているわけです(意味がある)から、外してはいけません

生きている身体には「生」たるゆえんの目に見えないものが「宿って」いるという考え。(40字)

本文のことばと使うとこうなりますね。

これをもう少し格好良くすると次のようになります。

生きている身体には、「生」たらしめる目に見えない何かが「宿って」いるという考え。(40字)


以上が第3問の解説です。


内容をしっかりと読み取れているかを、文脈方向から空欄補充問題として、説明問題として選択問題や記述問題で問うています。

 

第1問の語彙力と合わせて、長野大学のオーソドックスな形と言えるでしょう。

中期日程の過去問だけでなく、推薦の過去問もまったく同じ傾向です。

対策としてどちらにも取り組むのがいいでしょう。


とはいえ、私が紹介している「文章の読み方」を知っていれば、空欄補充問題も記述問題もできますね。

「文章の読み方」は知っているかどうかです。

それほど時間はかかりませんので、読んでみてくださいね。

しつこいと思いますが、リンクをはっておきます。

kinkoshin.hatenablog.com

 

頑張ってください。

 

では、これで終わります。


他の年度や国語の勉強の仕方はこちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 


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長野大学_国語_2023(令和5)年度_一般選抜中期日程_第1問・第2問

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では、始めます。

 

はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。

 

[解答]

 

1 語句

 

問1

(1)⑤  (2)⑤  (3)①  (4)③

 

問2

(1)③  (2)②  (3)④ 

 

問3

(1)②  (2)③  (3)②

 

2 森博嗣『自分探しと楽しさについて』

 

問1 

自分が求めている生き方が分からず、じっくりと考えている状態。(30字)

 

問2

 

問3

A…イ

B…エ

C…ウ

 

問4

 

問5

自分の生き方のヒントになるようなものや、自分の背中を押してくれるような言葉。(38字)

 

[解説]

 

1 語句

 

問1 語句の意味

幅広く語句の意味が問われます。

市販の現代文単語帳や語句の問題集を1冊仕上げましょう。

幅広い語句が問われるため、いわゆる評論語だけではなく四字熟語や故事成語、慣用句、カタカナ語なども収録されているものをオススメします。

また、教科書や問題集、模試、日常生活などでわからない言葉が出てきたら、その都度調べることを習慣としましょう

 

問2 語句

問1の逆パターンで、意味から語句を選ぶことが問われます。
対策は問1と変わりません。

なお、カタカナ語を幅広く収録しているものはなかなかありません。

Quizletというアプリで「カタカナ語カード」を作成してあるので活用してみてください。

Quizletや、その使い方については次のリンクからどうぞ!

kinkoshin.hatenablog.com

 

問3 語句の用例

語句の正しい使い方を答える問題です。

慣用的な使い方を意識しましょう。

たとえば、(1)④の「機微に富んだ」は正しくは「機知に富む」という慣用表現です。

基本的な対策は問1と変わりません。

 


2 森博嗣『自分探しと楽しさについて』

 

形式段落での説明になります。

1~10まで形式段落に番号を振ってください。

 

問1 内容説明

傍線部は本文・形式段落1の「はじめ」にありますので、この形式段落か、ここから始まる意味段落か、本文全体で説明がされていくと考えます。

つまり、傍線部付近で答えることができるかもしれないし、最後でまとめられるかもしれません。

そのような意識で読んでいきます。

 

形式段落1

はじめ…「自分を探す」というのは、奇妙な言葉だ。

おわり…目的と種皮王がちゃらんぽらんな感じがして、非常に不思議だ。

ここでは、「自分を探す」のがどのような状態かは述べられておらず、「奇妙」なことの説明で終わっています。

 

形式段落2

はじめ…ようするに、じっくりと考える時間が欲しい、というだけのことかもしれない。

おわり…そういう能力(海外の田舎とかで自分が求めている生き方が見つかると信じる想像能力)のある人は、自分を見つけられるだろう。

形式段落1をうけて「ようするに」で始まっています。

「ようするに」は、まとめをあらわすことばです(「つまり」などと同じ)。
てことは、「イコール」ですね。

形式段落1で述べた「自分を探す」ことをまとめてくれていると分かります。

 

「自分を探す」状態とは

じっくりと考える時間が欲しい

状態だと判断できます。

 

では、「何」を考えるのでしょうか。

それを明確にするために、形式段落3を見ます。

 

形式段落3

はじめ…簡単にいえば、自分が何を欲しがっているのかがわからない、という状態かもしれない。

おわり…他者の生き方を観察し、誰かの真似をしようとすると、必ず無理が生じる。

形式段落2をうけて「簡単に言えば」で始まっています。

当然、「イコール」ですね。

 

「自分を探す」状態とは

自分が何を欲しがっているのかがわからない、という状態

だと判断できます。

 

てことは、形式段落2で保留になっていた、考える「何か」は「自分が欲しがっているもの」となるでしょう。

つまり、「自分を探す」状態とは

自分が欲しがっているものがわからず、それをじっくりと考える時間が欲しい状態

と言えそうです。

 

では、「自分が欲しがっているもの」とは何でしょうか。

形式段落3の「はじめ」は形式段落2の「おわり」から繋がっています。

すると、「自分が欲しがっている何か」が具体的に述べられていることが分かるはずです。
そう、「自分が求めている生き方」ですね。

これを書いてあげます。

自分が求めている生き方がわからず、それをじっくりと考える時間が欲しい状態。(37字)

これを30字以内にしてあげます。

「時間が欲しい」とありますが、形式段落2や3、次の4から分かるように、実際に考えているわけですから「時間が欲しい」はカットしてしまいしょう。

自分が求めている生き方が分からず、じっくりと考えている状態。(30字)

 


問2 理由説明

傍線部は形式段落3の「おわり」にあります

しかも、「つまり」で始まっています

形式段落3の「まとめ(こういうことだよ)」の部分だと分かります。

 

ということで、形式段落3の「なか」に説明があると考えます。

逆接の「ところが」がありますから、その後に注目しましょう。

自分の生き方はどこにもない。似たようなものはあっても、自分にマッチするかは分からない。

つまり、自分と他者は違うから傍線部だと述べているわけですね。

てことで、答えはウです。

 

ちなみに、エやオは形式段落4、5の内容です。

形式段落3とこれらの関係は分かっていますか?(超大事ですよ!)

 

形式段落3の「おわり(傍線部)」の具体例(無理が生じている)です。

ここは傍線部と「イコール」の関係なんですね。

だから、理由ではありません。

 


問3 空欄補充

空欄補充問題は、前後の文脈から判断することが鉄則です。

では、各空欄を見ていきましょう。

 

万能薬はない→どんなに(空欄)が認められている方法「であっても」→人間の場合、効く場合もあれば効かない場合もある

という流れです。

 

ポイントは「であっても」です。

これは逆接ですね。

 

「効いたり効かなかったり」の逆の内容になるように空欄にことばを入れます。

「効いたり効かなかったり」の逆ということは、「必ず効く」もしくは「必ず効かない」となるでしょう。

「万能薬はない」という流れですから、「必ず効く」というような内容が入りますね。

「有効性」です。


情報を広く集めて(空欄)として解説→こういう全体傾向があると示し「ても」→ある一人に効き目がなければ価値はない

という流れです。

 

情報を広く集める空欄全体傾向

ということが分かります。

 

さらに、逆接の「ても」があります

「ある一人に効くかどうか」の逆の内容になるように空欄にことばを入れます。

「ある一人」ではなく「皆・全体」という内容が入りそうです。

「一般論」しかありませんね。

 

ちなみに「一般」の対義語は「特殊」です。


そういう人は…言葉を見つけようとしている。→自覚はないかもしれない「が」→(空欄)にそう見える。

という流れです。

 

これまた逆接の「が」がありますね。

 

「自覚がないかもしれない」つまり、そういう人には「そういう意識、気持ち、考え」がないと言っている訳です。

これと逆の内容のことばを入れます。

「客観」がありますね。

さきほどの「そういう意識、気持ち、考え」は「主観」と言えます。

 

今回はA~Cすべて、「逆接」がポイントになっていました。

こんなことは珍しいですが、「逆接」を意識することは大切だということが分かったのではないでしょうか。

 


問4 空欄補充

空欄補充の問題は、前後の文脈を確認して考えます。

 

空欄は形式段落10の「はじめ」にあります。

また、本文全体の「おわり」にあるとも言えます。

 

この両面から考えていきましょう。

 

形式段落10の「はじめ」にあるので、形式段落9をうけています。

 

形式段落9は「たとえば」で始まっていることから分かるように具体例です。

では、何の具体例なのでしょうか。

それは、形式段落8の「おわり」の「そういう人は…言葉を見つけようとしている」です。

つまり、「『自分探し』のヒントや言葉を見つけようとしている」ことの具体例をうけて、「結局のところ」とつながっています。

「結局のところ」は「イコール」ですから、「『自分探し』のヒントや言葉を見つけようとしている」ことと同じことを述べようとしていることが分かります。

 

また、空欄は主語になっています。

「は」の後は

背中を誰かに叩いてもらいたい、という気持ちから生じる

です。

これは先ほどの「『自分探し』のヒントや言葉を見つけようとしている」の後半と同じですね。

てことは、空欄には「自分探し」が入ると判断できます。


次に、空欄が本文全体の「おわり」にあるという方向で考えてみます。

 

本文の「はじめ」は「自分を探す」の説明から始まっていました。

この文章は「自分を探すこと」について述べてきたわけです。

ということは、「おわり」では「自分を探すっていうのは、こういうことだよね」となっていると考えられます。

 

こちらからも、形式段落10の「はじめ」にある主語が「自分探し」になるのではないかと分かります。

 

では、選択肢を見てみましょう。

ずばっと「自分探し」があればいいのですが、どうやら具体的なことが書かれているようです。

この中で「自分探し」になっているのは、どれか探します。

アですね。

 

もしかすると、ウを選んでしまったかもしれません。

これは「普段の生活とはまったく違うことを体験して自分を探す」が違います。

違うことを体験することが、「自分を探す」ことだとは述べられていません。

 


問5 内容説明

傍線部は形式段落8の「はじめ」にあります

ということは、これの説明が「なか」にあるはずです。

確認すると

そういう人は、大きく期待はしていないものの、少しでもヒントになるようなもの、あるいは、自分に勢いをつけてくれる言葉を見つけようとしている

が見つかります。

これが多くの人が求めているものでしょう。

 

短くすると

ヒントになるようなもの、自分に勢いをつけてくれる言葉。(27字)

 

「ヒントになる」とありますが、「何」の「ヒント」なのでしょうか。

本文を読み、問1などを考えてきたならば分かりますね。

「自分の生き方のヒント」です。

入れてあげます。

自分の生き方のヒントになるようなもの、自分に勢いをつけてくれる言葉。(34字)

 

これでもいいかもしれませんが、後半がイマイチよく分かりませんね。

もっといい表現にしてあげましょう。

ここの部分(形式段落8の「おわり」)をうけて、形式段落9に具体例が述べられていました。

そこには、次のような表現があります。

ぽんと背中を叩かれる

自分を叩いてくれた

また、これをまとめた形式段落10の「はじめ」にも似たような表現があります。

背中を誰かに叩いてもらいたい

これらから、「自分に勢いをつけてくれる=自分の背中を叩いてくれる」だと分かります。

慣用表現的には「背中を押す(押してもらう)」の方が「自分に勢いをつけてくれる」に合いますので、そちらを使ってまとめましょう。

自分の生き方のヒントになるようなものや、自分の背中を押してくれるような言葉。(38字)

 


以上が第1問、第2問の解説です。


第1問、第2問ともに語彙力が求められていることが分かったと思います。

語句の参考書や先ほど紹介したQuizletなどでの学習は必須です。

 

また、私が紹介している「文章の読み方」を知っていれば、空欄補充問題も記述問題もできることも分かったのではないでしょうか。

「文章の読み方」は知っているかどうかです。

それほど時間はかかりませんので、読んでみてくださいね。

しつこいですが、リンクをはっておきます。

kinkoshin.hatenablog.com

 

長野大学の入試問題は漢字などの語句の問題に始まり、文脈から解ける空欄補充、基本的な読解力、表現力などを問うてきます。

それは、一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜で同じ傾向です

自分が受験する選抜区分だけでなく、他の過去問もやってみることをオススメします。

2023年度の学校推薦型で語句の問題として出題された「サブスクリプション」は、2021年度の中期日程で語句問題の選択肢として登場していました。

どう考えても、過去問はすべてやったほうがいいですよね。

 

頑張ってください。

 

では、これで終わります。


他の年度や国語の勉強の仕方はこちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 


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長野大学_国語_2023(令和5)年度_学校推薦型選抜(推薦入試)_第2問

こんにちは。きんこです。

 

長野大学2023年度(令和5年度)学校推薦型選抜(推薦入試)の国語第2問の解答解説です。

 

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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。

そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。まだご覧

になっていない方は以下のリンクからご覧ください。

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この読み方、解き方を徹底することで入試問題を解けるようになるでしょう。

ぜひ身につけてください。

 

問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。

www.nagano.ac.jp

   


はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。

 

では、始めます。

 

[解答]

 

2 小塚荘一郎『AIの時代と法』より

 

問1 

(1)イ  (2)エ 

 

問2 

1…②

2…③

3…①

4…②

 

問3 

 

問4

ア、イ、エ

 

問5

製造物責任法が適用される「製造物」は有体物であり、ソフトウェアは含まれないから。(40字)

②一定水準までのバグや不具合があっても、製造物責任法の「欠陥」には当たらないから。(40字)


[解説]

 

形式段落での説明になります。

1~6まで形式段落に番号を振ってください。


問1 語句の意味

推薦入試で語句の意味が問われたのは初めてです。

中期日程では必ず問われていますが…。

これが加わったことで漢字の読み書きの問題が減少したのかもしれません。

 

問われている語句は特別難しいわけではありませんが、サブスクリプションなどのカタカナ語は頻出です。

カタカナ語の学習はなかなかできないと思うので(適当な問題集などが少ない)、私のQuizletを使ってみてください。

また、日常で何気なく使われているカタカナ語を調べる習慣をつけることをオススメします。

今回問題になったサブスクリプション(サブスク)はその典型です。

長野大学中期日程の過去問を解くのもオススメです。2021年度入試でサブスクリプションが選択肢にありましたよ。

 

kinkoshin.hatenablog.com

 

 

問2 空欄補充

空欄補充の問題は、前後の文脈を確認して考えます。

 

直前の「ソフトウェアは動産にはならない」から続いていることを確認します。

空欄を含む一文は「(空欄)は…物理的な形のあるものに限られているからである」となっていますから、直前の内容(ソフトウェアは動産にならない)の理由です。

「動産」の説明箇所だと判断できます。

 

上記の続きで「したがって、(空欄)は製造物ではない」となっていることを確認します。

ソフトウェアは動産にはならない。動産は…からだ。したがって、(空欄)は製造物ではない」という流れですから、「ソフトウェア」が入ると容易に判断できます。

 

これが最も難しいかもしれません。

空欄が「 」で囲まれていて、本文において「 」で囲まれているのは「製造物」だけだという判断でも正答にはなるのですが…。

 

空欄補充はあくまで文脈で考えることが基本です。

 

空欄は形式段落4の「なか」にあります。

形式段落のつくりを見てみましょう。

はじめ…ソフトウェアが動産に組み込まれている場合、動産は「製造物」になる。

なか(空欄の部分)…ソフトウェアが「(空欄)」にあたるかどうか不明瞭だ。

おわり…「製造物」にはソフトウェアも含むという解釈の余地があるのであろう。

「ソフトウェア」と「製造物」の関係について述べている形式段落であると分かります。

この流れを読み取って「製造物」を選択できると、相当な国語力があると判断できそうです。

 

この問題がなぜ難しいかというと、直前直後だけでなく形式段落全体を見る必要があるからです。

空欄補充の問題を解く際には、まず「直前直後の文脈」から考えてみて、それだけでは判断がつかない場合、「形式段落のつくり」から考えてみましょう。

 

空欄を含む一文を次のように簡単にすると何が入るか容易に判断できます。

(空欄)を有体物に限定しない考え方をとっているため、「製造物」にはソフトウェアも含む。

「動産」しか入りませんね。

 


問3 内容説明

バグに関して述べられている箇所は形式段落5と6です。

 

形式段落5

・バグや不具合が時間の経過とともに発見され、アップデートで改善されるというソフトウェアの特性
・一定水準までのバグがあっても「通常」の安全性は害されていないという解釈になる

形式段落6

・バグが後から発見されたならば、不具合を修正するプログラムをすぐに配布することを前提にしている(事後的に、適切な対応がタイムリーにとられるかどうかがユーザーにとって重要)

まとめると

引き渡しの時点では一定水準までのバグがあっても「通常」の安全性は害されていないという解釈になり、バグや不具合が時間の経過とともに発見された場合、不具合を修正するプログラムをすぐに配布することを前提にしている(事後的に、適切な対応がタイムリーにとられるかどうかがユーザーにとって重要である)。

となるでしょう。

 

以上を踏まえると、アが適切だと判断できます。

ちなみに他の選択肢は

イ…形式段落6に「なかなか対処できない」とあります。

ウ…形式段落6に「事後的に、適切な対応がタイムリーにとられるかどうかがユーザーにとって重要」とあります。

エ…「バグが軽微かどうかによって民法にもとづくことになる」とは本文では述べられていません。

 


問4 内容合致

各選択肢を本文と照らし合わせて判断するしかありません。

この手の問題はどうしても時間がかかってしまいますが、根気よく確認しましょう。

 

ア…形式段落4の「はじめ」の内容です。

イ…前半は形式段落3の「なか~おわり」の内容、後半は形式段落4の「おわり」の内容です。

ウ…問3のイでも確認したように形式段落6の「なか」に「なかなか対処できない」とあります。

エ…問3で確認したように形式段落6の「はじめ」の内容です。

オ…形式段落3の「なか」に「日本の法律では、ソフトウェアは動産にはならない」とあります。

 


問5 理由説明

問題1問6の記述問題では「文中のことばを用い」とありましたが、この設問にはその指示がありません。

ということは、必ずしも文中のことばを使う必要がないわけです。

問題1との差別化を図って、このような出題をしたと考えると「なるべく自分のことばで答えてみてね」という出題者のねらいが見えてきます。

事実、本文中のことばだけで40字におさめるのは困難です。

まずは本文中のことばで解答を作成し、それを40字に縮める際に「自分のことば」で表現してみましょう。

 

1つめの理由

形式段落4の「はじめ」に「すると、ソフトウェアが原因で損害が発生しても、製造物責任の問題にはならないことになる」とありますから、「すると」の直前の内容が理由の1つめとなります。

ということで、形式段落3に書かれていることをまとめるとこうなります。

製造物責任法は、製造物に欠陥があって、そのために損害が発生した場合に、損害賠償責任を負う。製造物責任法にいう「製造物」は「製造又は加工された動産」を意味する。しかし、日本の法律では動産は有体物に限られるため、ソフトウェアは製造物ではない。

これが理由の1つめですね。

これを40字以内にまとめる必要があるわけです。

設問は「ソフトウェアに不具合があっても製造物責任法では問題にならないのはなぜか」ですから、それに合った答え方にします。

その際、次の内容は入れる必要があるでしょう。

製造物責任法にいう「製造物」とは有体物である

・ソフトウェアは有体物ではないから製造物ではない

以上の内容が含まれるように「自分のことば」で表現します。

というか、本文中のことばだけではまとめることが困難です。

こんな感じでどうでしょうか。

製造物責任法が適用される「製造物」は有体物であり、ソフトウェアは含まれないから。(40字)

 

2つめの理由

形式段落6の「なか」に「これは製造物の引き渡しよりも後の時点の問題なので、製造物責任法の『欠陥』概念ではなかなか対処できない」とありますから、ここの前半部分が理由の2つめとなります(「ので」がありますね)。

単に「製造物の引き渡しよりも後の時点の問題だから」では意味が分かりません。

 

「これ製造物の引き渡しよりも後の時点の問題」なので、「これ」の指す内容を確認します。

指示語の内容は直前ですね。

ソフトウェアの場合、事後的に、適切な対応がタイムリーにとられるかどうかが重要

でも、これも「理由」としては適当ではありませんね。

だって、設問で問われているのは「ソフトウェアに不具合があっても製造物責任法では問題にならないのはなぜか」ですからね。

 

「ソフトウェアの場合…」の直前に「つまり」があります。

「つまり」は「イコール」なので、さらに前を見ましょう。

このような考え方は、バグが後から発見されたならば、不具合を修正するプログラムをすぐに配布することを前提にしている

う~ん、これも設問への答えにはならなさそうです。

バグが後から発見されたならば、不具合を修正するプログラムをすぐに配布することを前提にしているから、(ソフトウェアに不具合があっても製造物責任法では問題にならない)

これでは、なんで製造物責任法で問題にならないかさっぱり分かりません。

 

てことで、次は「このような考え方」の内容を確認します。

だって、これも「は」があるから「イコール」です。

 

指示語の指す内容は基本的に直前なので「このような考え方」の指す内容は、形式段落5の「おわり」です。

製造物責任法では「欠陥」を「通常有すべき安全を欠いていること」と定義しているので、一定水準までのバグがあっても「通常」の安全性は害されていないという解釈

ここまでさかのぼってくると、設問の理由になりそうです。

製造物責任法では「欠陥」を「通常有すべき安全を欠いていること」と定義しているので、一定水準までのバグがあっても「通常」の安全性は害されていないという解釈になるので、(ソフトウェアに不具合があっても製造物責任法では問題にならない)

これを「自分のことば」で40字にしてみましょう。

一定水準までのバグや不具合があっても、製造物責任法の「欠陥」には当たらないから。(40字)

 

記述問題は基本的に「本文中のことば」で答えを作成することから始めます。

ただ、今回のように指定字数におさめるために「自分のことば」で表現する場合があると覚えておきましょう。

間違っても、すべてを「自分のことば」で答えるわけではありません。

解答で使うべき語句(キーワード)は本文中にあるのが基本です。

「自分のことば」とは本文中にあるキーワードを使って、意味を変えずに文章化するということです。

このことを忘れてはいけませんよ。

 


以上が第2問の解説です。

 

長野大学が公立化してから数年経ち、入試問題もある程度傾向が決まってきたようです。

文章を正しく読み内容説明ができること(選択・記述)、文脈を判断できること(空欄補充)、語彙力があること(漢字・語句の意味)の3点が問われています。

これまでは中期日程で問われていた「語句の意味」が出題されたことからも、語彙力を求めていることが分かります。

また、2021年度まで問われていた「自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること」を問う設問は2年連続で出題されていません。

とはいえ、再び出題されることもあるかもしれませんから、こちらは総合型選抜対策にもなる小論文の練習をするといいでしょう。

 

こう考えると、推薦入試の過去問をやるだけではなく、総合型選抜や中期日程の過去問をやることも重要な対策となりそうです。

 

文章を正しく読む力が試される設問に関しては、私のブログにある「文章の読み方」を意識していれば解くことができます。

大事なのは、常に同じ読み方をしてみることです。

そのためには、一度取り組んだ問題を復習し、このブログで説明したような流れで考えることができるかを試すといいでしょう。

 

長野大学の入試問題は漢字などの語句の問題に始まり、文脈から解ける空欄補充、基本的な読解力、表現力などを問うてきます。

特別な力などではなく「基本的な国語力」を試す問題と言えます。

この問題を解けるようになることは、皆さんの人生においてプラスの何かをもたらしてくれるでしょう。
「入試問題」だからやるのではなく、自分の力を高めるためにも取り組んでもらいたいと思います。

頑張ってくださいね。

 

では、これで終わります。


他の年度や国語の勉強の仕方はこちらからご覧ください。

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長野大学_国語_2023(令和5)年度_学校推薦型選抜(推薦入試)_第1問

こんにちは。きんこです。

 

長野大学2023年度(令和5年度)学校推薦型選抜(推薦入試)の国語第1問の解答解説です。

 

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そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。

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この読み方、解き方を徹底することで入試問題を解けるようになるでしょう。

ぜひ身につけてください。

 

問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。

www.nagano.ac.jp

   


はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。

 

では、始めます。

 

[解答]

 

1 山竹信二『「本当の自分」の現象学』より

 

問1 

(1)鍛  (2)培  (3)執着

 

問2

 

1…オ

2…カ

3…ウ

 

問3 

 

問4

 

問5

 

問6


安楽への欲望と自我の欲望に対して、納得できるほうを選択した後に考えられる自分。(39字)


[解説]

 

形式段落での説明になります。

1~9まで形式段落に番号を振ってください。


問1 漢字(書き取り)

 

漢字自体は難しくありません。漢字検定2級まで取得していればまったく問題ありません(準2級でも大丈夫そうです)。

今回は「鍛」が3級、「培」が準2級、「執」が4級の漢字です。

 

2023年度は第2問で漢字の出題がないので、この3問だけとなっています。

ただ、2022年度は18問、2021年度は10問、2020年度は12問、2019年度は10問でした。

漢字学習は必須です。

 


問2 空欄補充

 

空欄補充の問題は、前後の文脈を確認して考えます。

 

 

迷いが生じる。(空欄)、~からだ。」という流れです。

 

空欄には「理由」を表す語句が入ると考えられますね。

選択肢には「なぜなら」のような理由をズバッと示すものはありませんので、他の選択肢を当てはめてみます。

すると、「それは~だからだ」という表現が見つかります。

これも「理由」を示す表現です。

「それ」は直前の内容ですから、「迷いが生じるのは、~からだ」となるわけです。

 

ちなみに、形式段落6の2文目にもこの表現があります。

 

 

形式段落2の「はじめ」が空欄になっていますから、形式段落1と2の関係を示す語句が入ります。

 

形式段落1は「私たちは自らの行為を選択するとき、人間の欲望は動物のように単一ではないから迷いが生じる」という内容です。

形式段落2は「食べる」という行為を選択するときの動物と人間の例です。

 

形式段落1の「行為の選択」の例として、形式段落2で「食べる」を挙げているわけです。

「例」を示す語句が入るので「たとえば」ですね。

 

 

形式段落3の「はじめ」が空欄になっていますから、形式段落2と3の関係を示す語句が入ります。

 

形式段落2は、「おわり」から「人間は複数の欲望の間で葛藤する」です。

形式段落3は、「はじめ」から「葛藤があるのは、人間が自由な存在であることを示す」です。

 

形式段落2は「マイナス」であり、形式段落3は「プラス」です。

逆接を示す「しかし」が入りますね。

 


問3 理由説明

 

傍線部は形式段落5の「はじめ」にありますから、この段落でその理由が述べられていると考えます。

 

「おわり」を見ると、「そのことが自己了解できたから、私は納得して自由な選択をした」とあります。

ここでの「自由な選択」とは「辞めなかった」ことですから、その理由は「そのことが自己了解できたから」となります。

 

「そのこと」の指す内容は直前の「相反する欲望はどちらも自分の欲望で、どちらか一方だけが『本当の自分』ではないこと」です。

 

ここまで読み取って選択肢を確認するとエだと分かります。

 

なお、イを選んでしまったという方が多いかもしれません。

この内容は形式段落5の「なか」の内容ですからね。

ただし、これはよく読むと「一度決めたことを貫く人間が私の理想像だったので、…屈辱的なことだった」となっているので、ここは「屈辱的なことだった」理由だと分かります。

なぜ「屈辱的」だったかというと、選択肢イだというわけです。

 

傍線部の直後に「~ので」とあっても、それが傍線部の理由かどうかをしっかりと確認しましょう。

 


問4 内容説明

 

傍線部を含む一文を確認します。

 

ポイントは3つです。

①形式段落の「はじめ」にある

②これ=傍線部

③「も」がある

 

形式段落の「はじめ」にあるということは、前の形式段落の内容を受けているということです。

形式段落6は「人間の欲望」についての内容です。

人間の欲望は「複数の欲望(相反する欲望)に分裂し葛藤を引き起こしている」ことを読み取ります(形式段落6の「はじめ」と「おわり」がこの内容になっていますね)。

また、傍線部の内容について形式段落7で述べられていくことも分かります。

 

「これ」は直前の内容、つまり形式段落6です。①で確認した内容です。

 

「も」は要注意の助詞です

これは何かと何かが同じだということであり、もう一方の内容はすでに述べられているものです。

 

「『本当の自分』の確信」は何と同じなのかを考える必要があります。

①~③を確認すれば

これ(①の内容)は、「本当の自分」の確信「も」同じだ。

から

これ(①の内容)=「本当の自分」の確信

と分かります。

 

つまり、「人間の欲望について=本当の自分の確信」なわけです。

 

設問では「本当の欲望」と「本当の自分」との関係を問われており、イコールの関係だと分かります。

 

では、どのように同じかというと①で確認した「欲望」のように同じなわけです。

複数の欲望(相反する欲望)に分裂し葛藤を引き起こしている

 

また、傍線部は形式段落7の「はじめ」にあります。

形式段落7で傍線部の説明がされていくはずだという意識で読み進めていくと、「本当の自分」にも相反するものがあるという内容だと分かります。

「人間の欲望」も「本当の自分」も相反するものがあり、そのせいで葛藤がある。

ここまで読み取れば、選択肢アだと分かります。

 

なお、選択肢ウを選んでしまった人が多いかもしれません。

使われている語句は形式段落6、7のものですから。

しかし、これは順番が違います。

複数の欲望・本当の自分に分裂しているから、そこに葛藤が生まれる」という順なのに、選択肢では「葛藤が生まれ、分裂している」という順になっています。

 

このように、本文中の語句が使われているけれども、その順序や因果関係が逆になっているという「ひっかけ選択肢」に注意しましょう

 


問5 空欄補充

 

空欄補充の問題は、前後の文脈を確認して考えます。

 

今回は空欄の直前に「という」があります。

「という」を含め、「修飾部と被修飾部」は「イコール」の関係でした。

空欄には、「自らの意志で行為を選び取る」と「イコール」の内容が入ると分かります。

これだけで選択肢イだと分かります。

「自らの意志で選択する」というのは「自由に選択する」ということですからね。

 

ちなみに、もう1つの考え方も示しておきます。

空欄の直後に「それこそが自己了解によって得られるものだ」とあります。

「それ」の指す内容が空欄ですから、「空欄=自己了解によって得られるもの」です。

この「自己了解によって得られるもの」が何かを本文から読み取ってみます。

 

すると、形式段落5の「おわり」に着目できます。

自己了解できたからこそ、私は自由な選択をした」の部分です。

自己了解によって、自由な選択を得ることができたわけです。

(形式段落5は「欲望」の話題で、空欄部分は「本当の自分」の話題ですが、問4で確認したように、この2つは同じものだと考えることができます)

 

自己了解によって得られるもの=自由な選択

 

こちらの考え方からも選択肢イだと分かります。

 


問6 内容説明

 

傍線部を含む一文から

「本当の自分」=事後的に想定された自己像

だと分かります。

 

つまり、この設問は「本当の自分」とはどのようなものかが問われているイコール問題です。

 

まずは傍線部を言い換えてみます

事後的に想定された自己像=何かが終わった後に考えられる自分

です。

 

「何」が終わった後の自分かを読み取ればイケそうです。

 

傍線部は形式段落9の「はじめ」にありますから、形式段落8の内容を受けています。

 

形式段落8「はじめ」は「相反する自分の欲望に気づくと、どちらが『本当の自分』の欲望か混乱する」であり、

「おわり」は「分裂した(相反した)欲望に気づけば、どちらを優先すべきかを考えることができる」です。

 

さらに、形式段落9の「なか」(「はじめ」の説明部分)に注目する

重要なのは、どの欲望に準じた行為を選択すれば納得できるのか

が、「本当の自分」にとって重要なことを述べていると分かります。

 

「本当の自分」とは

事後的に想定された自己像=何かが終わった後に考えられる自分

と言い換えましたから、この「何」とは

・分裂した欲望に気づけば、どちらの欲望を優先すべきかを考えることができる

・どの欲望に準じた行為を選択すれば納得できるか 

から、「分裂した欲望に気づき、それに対して納得できるほうを選択すること」だと考えられます。

 

これを「何」のところに差し込み、

分裂した欲望に気づき、どちらの欲望を優先すべきかを考え、納得できるほうを選択した後に考えられる自分

だと言えます。

 

では、この「分裂した欲望」とは何でしょうか。

これは形式段落6の「なか」で述べられています。

「安楽への欲望」と「自我の欲望」

 

これを先ほどの「分裂した欲望」のところに差し込みます。

安楽への欲望と自我の欲望に気づき、どちらの欲望を優先すべきかを考え、納得できるほうを選択した後に考えられる自分。(55字)

40字以内という字数制限がありますから、意味が変わらないように削ります。

安楽への欲望と自我の欲望に対して、納得できるほうを選択した後に考えられる自分。(39字)

 

以上が第1問の解説です。

 

長野大学が公立化してから数年経ち、入試問題もある程度傾向が決まってきたようです。

文章を正しく読み内容説明ができること(選択・記述)、文脈を判断できること(空欄補充)、語彙力があること(漢字・語句の意味)の3点が問われています。

 

2021年度まで問われていた「自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること」を問う設問は2年連続で出題されていません。

とはいえ、再び出題されることもあるかもしれませんから、こちらは総合型選抜対策にもなる小論文の練習をするといいでしょう。


文章を正しく読む力が試される設問に関しては、私のブログにある「文章の読み方」を意識していれば解くことができます。

大事なのは、常に同じ読み方をしてみることです。

そのためには、一度取り組んだ問題を復習し、このブログで説明したような流れで考えることができるかを試すといいでしょう。

 

自分の意見を述べる設問に関して学習するのであれば、2021年度以前の過去問や、長野大学の総合型選抜の過去問をやることをオススメします。

私のブログで解説もしているので学習しやすいと思います。

 

先程も書いたように、長野大学の入試問題は漢字などの語句の問題に始まり、文脈から解ける空欄補充、基本的な読解力、表現力などを問うてきます。

特別な力などではなく「基本的な国語力」を試す問題と言えます。

この問題を解けるようになることは、皆さんの人生においてプラスの何かをもたらしてくれるでしょう。

「入試問題」だからやるのではなく、自分の力を高めるためにも取り組んでもらいたいと思います。

 

頑張ってくださいね。

 

では、これで終わります。


他の年度や国語の勉強の仕方はこちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 


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模試対策(国語)_高1、高2で問われる古典文法(全統模試)

こんにちは。きんこです。

 

今回は、高1、高2の全統模試で問われる古典文法についてお伝えします。

 


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模試を受ける意味でお伝えしたように、古文や漢文においては、各模試で「問われる文法や句法」がある程度設定されています

これは過去問から明らかなんですね。

kinkoshin.hatenablog.com

 

進研模試で問われる古典文法をまとめた記事はこちらです。

kinkoshin.hatenablog.com

 

 

全統模試では高1、高2に関わらず1年間でほぼ同じ内容で古典文法が問われています。

 

高1だろうが高2だろうが、1年間で古典文法を網羅することになります。

 

ただし、助詞についてはいつまでに何をということを明確にすることが難しいので、高1夏までに基本的な助詞を訳せるようにして、高2春にはすべての助詞を訳せるようにすることを目安としましょう。

 

(ちなみに、和歌の修辞法や文学史は高2で出題されます)

 

ですから、1年生のうちに頑張っておくと、2年生では復習の意味を兼ねて模試を受験でき、新しい文法事項は助詞だけ(和歌の修辞法や文学史は加わりますが)ということになります。

そして、2年生1月以降の模試では全範囲から問われ、定期的に復習することができます。

 

ということで、各模試までにどのような古典文法を学習して臨むべきかをまとめました。

これを知ることで、いつまでに何をすべきかが明らかになり、学習をスムーズに進めることができるはずです。

 

まず、模試が設定されている時期です(在籍している学校によって多少前後するかもしれません)。

 

高1

5月下旬 第1回全統高1模試

8月下旬 第2回全統高1模試

10月下旬 第3回全統高1模試

1月下旬 第4回全統高1模試

高2 

5月下旬 第1回全統高2模試

8月下旬 第2回全統高2模試

10月下旬 第3回全統高2模試

1月下旬 全統記述高2模試

     全統共通テスト高2模試   

 

では、それぞれの模試で出題される古典文法を見ていきましょう。

 

なお、助詞については「○○までに学ぶべき助詞」です。

たとえば、第3回高1模試に必要な助詞はそれまで(第1回高1、第2回高1)に学ぶべき助詞を含みますので注意してください。

古典文法の他に、文学史や和歌の修辞法も示しましたので参考にしてください。

 


第1回全統高1模試で出題される文法事項

 

五十音図歴史的仮名遣い、品詞、活用形

・直接問われることはありませんが、文法問題を解く際に必要となる知識です。

 

②用言(動詞、形容詞、形容動詞)、係助詞、音便

・文中の用言を基本形(終止形)に直せるようにします。

・文中の用言の活用形を判断します。

 


第2回全統高1模試で出題される文法事項

 

①用言(動詞、形容詞、形容動詞)、係助詞、音便

・活用の種類や活用形を判断できるようにします。

・用言を適切な形に直せるようにします。

 

②助詞(ば、にて・して、の・が、ど・ども、とも、係助詞)

・古文に頻出する助詞が問われます。

・訳すことができるようにします。

 


第3回全統高1模試で出題される文法事項

 

①助動詞と助詞の学習で押さえることと助動詞の接続

・直接問われることはありませんが、知っておく必要があります。

 

②助動詞、識別、訳し分け

・すべての助動詞が問われます。

・識別や訳し分けもできるようにします。

 


第4回全統高1模試で出題される文法事項

 

①敬語(敬語学習で押さえること、本動詞と補助動詞、覚えるべき敬語)

・敬語で学ぶべきことを確認します。

・覚えるべき敬語は30語程度です。

・尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれかを判断できるようにします。

・訳すことができるようにします。

 

②敬語(敬意の対象)

・「誰から誰への敬意か」を答えることができるようにします。

 


第1回全統高2模試で出題される文法事項

 

①用言(動詞、形容詞、形容動詞)、係助詞、音便

・活用の種類や活用形を判断できるようにします。

・用言を適切な形に直せるようにします。

 

②助詞、係助詞の特殊用法

・すべての助詞を訳すことができるようにします。

・特に、係助詞の特殊用法(反語の「やは・かは」、仮定の「くは・ずは」、訳を覚える「もぞ・もこそ」、逆接を訳出する「こそ」)は重要です。

 

文学史

・文学作品が成立した時代とジャンルが問われます。

・多くの場合、選択問題ですので作品名を見て成立した時代とジャンルが分かればいいでしょう。

 

 

第2回全統高2模試で出題される文法事項

 

①助動詞、識別、訳し分け

・すべての助動詞が問われます。

・識別や訳し分けもできるようにします。

 

②和歌の修辞法

・枕詞、掛詞、序詞、縁語の知識が必要です。

 

文学史

・文学作品が成立した時代とジャンルが問われます。

・多くの場合、選択問題ですので作品名を見て成立した時代とジャンルが分かればいいでしょう。

 


第3回全統高2模試で出題される文法事項

 

①敬語(敬語学習で押さえること、本動詞と補助動詞、覚えるべき敬語)

・敬語で学ぶべきことを確認します。

・覚えるべき敬語は30語程度です。

・尊敬語・謙譲語・丁寧語のどれかを判断できるようにします。

・訳すことができるようにします。

 

②敬語(敬意の対象)

・「誰から誰への敬意か」を答えることができるようにします。

 

③助詞

・助詞に関わる何らかの出題がある可能性が非常に高いです。

 

④和歌の修辞法

・枕詞、掛詞、序詞、縁語の知識が必要です。

 

文学史

・文学作品が成立した時代とジャンルが問われます。

・多くの場合、選択問題ですので作品名を見て成立した時代とジャンルが分かればいいでしょう。

 

 

全統記述高2模試、全統共通テスト高2模試で出題される文法事項

・全範囲から出題されます。

・助動詞に関するものが出題される傾向があります。

 


以上を学ぶことで、受験に必要な文法事項をほぼ網羅できます。

この流れで学習を進めてみましょう。

 

2年間、同じようなサイクルで学習をすることで古典文法を完璧に仕上げることを目指すといいと思います。

ここに示した文法がある程度完璧になったら、入試過去問題などで演習あるのみです。
そうすることで「復習」ができます。

また、ここで示されていない文法事項が出てきても、その都度覚えることが容易になっているはずです。

 

せっかく模試を受けるのですから、自分にとってプラスになるように受験しましょう。

頑張ってくださいね。

 

では、これで終わります。


「国語(評論)の勉強法」についての記事はこちらです。

kinkoshin.hatenablog.com

「古文の学習」についての記事はこちらです。
 

kinkoshin.hatenablog.com

「模試の復習方法」についての記事はこちらです。

kinkoshin.hatenablog.com

進研模試で問われる古典文法」についての記事はこちらです。

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長野大学_国語_2022(令和4)年度_学校推薦型選抜(推薦入試)_第2問

こんにちは。きんこです。

 

長野大学2022年度(令和4年度)学校推薦型選抜(推薦入試)の国語第2問の解答解説です。

 

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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています

そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。

 

kinkoshin.hatenablog.com

 

kinkoshin.hatenablog.com

kinkoshin.hatenablog.com

 

この読み方、解き方を徹底することで入試問題を解けるようになるでしょう。

ぜひ身につけてください。

 

問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。

www.nagano.ac.jp

   


はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。

 

では、始めます。

 

[解答]

 

井上忠司『「世間体」の構造』より

 

問1 

(ア)がいねん  (イ)ていさい  (ウ)どあい  (エ)ばくぜん

 

問2

(1)重層  (2)厳密  (3)飛躍  (4)偏見

 

問3 

客観的に属している集団だけでなく主観的な〈帰属意識〉を持っている集団を含むもの。(40字)

 

自分が実際に属している集団と、自分の態度や行動のよりどころとする集団。(35字)

 

客観的に規定される集団だけでなく、心理的に関係づけている主観的な集団を含むもの。(40字)
                                                                         
問4 

自分が実際に所属している家族、親族、地域社会、学校、職場、団体、等々の客観的に規定される集団。(47字)

 

問5

ア、ウ

 

問6

イ、ウ

 

問7

自分の生活空間のうち、動的に揺れ動く自分が属している範囲のウチ以外のソトから、自分の態度や行動のよりどころとし、自分が心理的に関係づけている集団までのもの。(78字)

 

自分の生活空間として、自分の態度や行動のよりどころとし、自分が心理的に関係づけている集団の中の、動的に揺れ動く自分が属している範囲のウチ以外のソト側の空間。(78字)

 

[解説]

 

形式段落での説明になります。

1~8まで形式段落に番号を振ってください。


問1 漢字(読み)

 

これは完答したいところです。

ちなみに「漠然」の「漠」が漢字検定準2級の漢字であり、その他はそれ以下の級です。


問2 漢字(書き取り)

 

漢字検定2級まで取得していればまったく問題ありません(準2級でも大丈夫そうです)

今回は「偏見」の「偏」のみ準2級の漢字で、その他はそれ以下の級です。

長野大学は準2級までの漢字しか出ていないですね。

「偏見」が難しかったかもしれません。

文脈から「偏見」の意味を見出すのが難しいからです。

とはいえ、「ヘンケン」は「偏見」しかないので、これを答えるしかないのですが。

 

問3 内容説明

 

筆者がとらえている広義な集団がどのようなものかを説明する問題です。

まず「広義」の意味をしっかりと押さえます。

広義…(あることばの意味の範囲を広く考えた場合の)広い意味(三省堂『現代新国語辞典』)。

筆者は、常考えられている「集団」を、さらに広げたところまでを「集団」としているというニュアンスになります。

 

傍線部aを含む一文は形式段落4の「はじめ」ですから、このあと「なかほど」で説明され、「おわり」でまとめられると考えます

 

そういう意識で読み進めると

階級や階層は「集団」ではないが、客観的な規定とはべつに、だれもが主観的な〈帰属意識〉をもっている。
階級や階層の問題に「準拠集団」の考え方を適用することで研究が進んでいる。

ということが読み取れます。

 

つまり、ここで筆者が述べている「集団」とは

「客観的な規定の集団(これが通常考えられている「集団」)」と「主観的な〈帰属意識〉のある集団(これが筆者が「集団」を広げている部分)」のどちらも含まれているものである

と分かります。

筆者は、客観的な集団だけでなく、主観的な集団も「集団」だと考えているということです。

客観的に属している集団だけでなく主観的な〈帰属意識〉を持っている集団を含むもの。(40字)

これが答えですね。

 

なお、この問題は複数の解答がありえます。

 

形式段落1~3の内容を読むと、「集団」において「準拠集団」と「所属集団」を対比で述べていることは明白です。

そして、先ほどの解答例の前半部分(客観)が「所属集団」であり、後半部分(主観)が「準拠集団」です。

つまり、筆者がとらえる広義の集団とは

「所属集団」だけでなく「準拠集団」をも含むもの

ということになるでしょう。

 

「所属集団」も「準拠集団」も形式段落2や3で説明されていますから、そこから解答を作るとこうなります。

 

形式段落2の内容で作成

自分が実際に属している集団と、自分の態度や行動のよりどころとする集団。(35字)

形式段落3の内容で作成

客観的に規定される集団だけでなく、心理的に関係づけている主観的な集団を含むもの。(40字)

 

はじめに示した解答例も、この2つの解答例もすべてベースは

「所属集団」だけでなく「準拠集団」をも含むもの

ですね。

 

じゃぁ、いったいどれが最も良いのでしょうか。

それは、このあとの設問(問4、問5、問7)を考えると、はじめに示したものが適当だろうという結論になります。

 

問4で「所属集団」、問5と問7で「準拠集団」をそれぞれ説明できるか(問5は具体例の選択)が問われているからです。

ですので、ここで2つめ、3つめの解答例にしてしまうと、問4や問7の答えとことばが重複してしまいます。

ということで、3つとも内容的には正解になると思いますが、他の設問との関係ではじめの解答例が最も良いと判断できます。


問4 内容説明

 

「所属集団」がどのようなものかを説明する問題です。

 

「所属集団」の説明は形式段落2と3でされています(実際には「所属集団」と「準拠集団」が対比で説明されていますね)。

「形式段落のつくり、主語になっている、修飾されている」の3つに注目して、どのように説明されているか読み取ります。

 

形式段落2

・私たちが所属している家族、親族、地域社会、学校、職場、団体、等々の集団

・自分が実際に属している集団

 

形式段落3

・客観的に規定される集団

 

この内容をそのまままとめると答えになります。

自分が実際に所属している家族、親族、地域社会、学校、職場、団体、等々の客観的に規定される集団。(47字)


問5 内容理解(具体例)

 

「準拠集団」の具体例を選択します。

 

このような問題は、いきなり選択肢を見るのではなく、「準拠集団」が何かを確認してから選択肢を確認します

 

問3、問4でも確認してきたように、「準拠集団」の説明も形式段落2~4にあります。

 

形式段落2
・私たちが自分の態度や行動のよりどころとするような集団

 

形式段落3
・自分が心理的に関係づけている集団であり、主観的なもの

 

形式段落4
・主観的な〈帰属意識〉による集団

 

「準拠集団」とは、客観的なものではなく主観的なもの、つまり「その人の気持ちや考え方次第」のものと言えます。

 

「準拠集団」とは何かを押さえたところで、選択肢を見ていきましょう。

 

ア 「伝統文化を尊重する」というのは気持ちや考えですね。準拠集団です。

イ 「同窓会」は気持ちなどは関係なく、同じ中学校卒業であれば誰もが入っている集団です。こういうのが客観的な集団です。形式段落2のはじめに挙げられていた「学校」でもあります。所属集団です。

ウ 「愛犬家」というのは気持ちですね。準拠集団です。

エ 「働く人」は「会社」に所属している人ですね。形式段落2の「職場」に当たります。所属集団です。

オ 「患者の家族会」は気持ちなどではないですね。形式段落2の「家族」「団体」になります。所属集団です。

 

問6 内容理解

 

「世間は一定の構造を持っている」という筆者の主張に合うものを選びます。

 

傍線部は形式段落6の「おわり」にあります

では、これは「何の話」の「まとめ」かを確認しましょう。

形式段落6の「はじめ」です。

人は、どこから「世間」と呼び、どこまでを「世間」とよぶのか。

 

なるほど。「世間とは何か」のまとめとして傍線部なわけです。

ですから、筆者が述べる「世間」とはどういうものかを確認することになります。

 

「世間」について述べられているのは、形式段落5からですね。

 

形式段落5

・一種の「準拠集団」

 

形式段落6

・「世間」のテリトリーを規定するものは個々人の主観

・「世間」はあいまいなもの

・個人の数だけ「世間」があることになりかねないが、準拠集団としての「世間」に着目すると一定の構造がある

 

形式段落7

・準拠集団としての「世間」を区別する基準は「ウチ」と「ソト」の観念

・「ウチ」とは、生活空間の自分が属している範囲

・「ソト」とは、生活空間の自分が属している範囲以外

・「ウチ」と「ソト」の基準は、人によって異なる

 

形式段落7は「世間」というより、「世間」を規定する「ウチ」と「ソト」との説明が主になっていますが、大事なので確認しておきます。

 

これらを確認したところで選択肢を見ていきます。

 

ア 「世間」は客観的なものではなく、主観的なものです(形式段落6)。

イ これが紛らわしい選択肢です。

選択肢を簡単にすると「個人の数だけ『世間』はない(『世間』は1つだ)」となります。

形式段落6に「個人の数だけ『世間』があることになりかねない」とありますが、その直後に「にもかかわらず」と筆者はそれを否定しています
つまり、筆者は「個人の数だけ『世間』があると思われるかもしれない、準拠集団として考えればそうではなく、『世間』は一定の構造を持っている(たくさんあるわけじゃない)」と主張しているわけです。

ですから、この選択肢は筆者の主張に合っているものです。

ウ ウチとソトの区別は主観的なものです(形式段落7に「人によって異なる」とあります)。

エ 所属集団としての「世間」の話はされていません。

オ 成人になれば一定になるという話はされていません。

 

問7 内容説明

 

準拠集団としての「世間」を説明する問題です。

 

問6と考え方が重なるところも多いですが、次のような手順で考えていきます。

 

「世間」について述べられているのは形式段落5からでしたが、説明すべきは「準拠集団としての世間」なのば、傍線部bを含む一文に注目します。

 

形式段落6

・準拠集団としての「世間」に着目するとき、そこにはおのずから、「世間」は一定の構造をもっていることが知られる

 

ここから、「準拠集団としての世間」は「一定の構造」を持っている、すなわち、この構造を説明してあげると答えになることが分かります。

 

問6での手順と同じように、形式段落6の「はじめ」を見ます

どこから「世間」と呼び、どこまでを「世間」と呼ぶのであろうか

 

この部分が「構造」の説明として使えそうですね。

(筆者が説明している世間とは)○○から○○までのもの。

これが答えの大枠(フレーム)です。

 

次に形式段落7を確認します。

・準拠集団としての「世間」を区別する基準は「ウチ」と「ソト」の観念

・「ウチ」とは、生活空間の自分が属している範囲

・「ソト」とは、生活空間の自分が属している範囲以外

・「ウチ」と「ソト」の基準は、人によって異なる

でした。

 

つまり、この「ウチ」以外である「ソト」からが「世間」と言えそうです。

(ウチが明らかに「世間」ではないことは分かりますよね)

自分の生活空間のうち、自分が属している範囲のウチ以外のソトから、○○までのもの。

 

次にどこまでが「世間」かを考えます。

これは「準拠集団」がどのようなものかを説明すればいいでしょう。

 

「準拠集団」とは問5で確認したように

・私たちが自分の態度や行動のよりどころとするような集団

・自分が心理的に関係づけている集団であり、主観的なもの

・主観的な〈帰属意識〉による集団

でした。

 

これを後半の○○に入れます。

自分の生活空間のうち、自分が属している範囲のウチ以外のソトから、自分の態度や行動のよりどころとし、自分が心理的に関係づけている集団までのもの。(71字)

 

もう少し足すことができるので、「『ウチ』と『ソト』の基準は、人によって異なる」という内容を入れましょう。

このままのことばでは上手に入れることが難しいので、形式段落7の「なかほど」の部分を使います。

・ウチとソトとの関係はダイナミック(動的)な関係だ

人によって異なるから、ウチとソトは動的、つまり「動く」わけですね。

これを足して答えとします。

自分の生活空間のうち、動的に揺れ動く自分が属している範囲のウチ以外のソトから、自分の態度や行動のよりどころとし、自分が心理的に関係づけている集団までのもの。(78字)

 

他の書き方も示しておきます。

先ほどの解答例までの流れが分かれば、準拠集団としての「世間」のイメージは次のようになりますよね。

準拠集団の中のウチ以外の部分

二重丸を書いて、その側の円が準拠集団、内側の円の内側がウチという感じです。

となると、先ほどの解答例は次のようにも説明できます。

自分の生活空間として、自分の態度や行動のよりどころとし、自分が心理的に関係づけている集団の中の、動的に揺れ動く自分が属している範囲のウチ以外のソト側の空間。(78字)

 

はじめの解答例の方が作りやすいと思いますが、こっちでもオッケーでしょう。

 


以上が第2問の解説です。

 

第1問と同じように、「対比」されているものをそれぞれ正しく読み取ることができるか、筆者の主張はどちら側かを読み取ることができるかが試される問題でした。

 

丁寧に文章を読み「何が何なのか」を押さえながら読みましょう

はじめに紹介した私のブログの「文章の読み方」ができればバッチリです。

 

2021年度入試まで長野大学では、文章を正しく読めること、自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること、そして漢字や語句の意味などの語彙力が求められてきました。

このことは学校推薦型選抜(推薦入試)だろうと総合型選抜(AO入試)だろうと、一般選抜だろうと変わりませんでした。

ただ、2022年度入試では「自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること」をはかる設問は出題されていません

もしかすると、文章を正しく読む力、語彙力だけを求めるようになったのかもしれません。

とはいえ、再び「自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること」をはかる設問が出題されることもあるかもしれませんから油断はできません

自分の意見を述べる設問に関しては、過去の長野大学の小論文問題をやってみるのがいいかもしれません。

私のブログで解説もしているので見てみてください。

 

先程も書いたように、長野大学の入試問題は漢字などの語句の問題に始まり、文脈から解ける空欄補充、基本的な読解力、表現力などを問うてきます。

特別な力などではなく「基本的な国語力」を試す問題と言えます。

この問題を解けるようになることは、皆さんの人生においてプラスの何かをもたらしてくれるでしょう。

「入試問題」だからやるのではなく、自分の力を高めるためにも取り組んでもらいたいと思います。

 

頑張ってくださいね。

 

では、これで終わります。


他の年度や国語の勉強の仕方はこちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 

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