長野大学_国語_2023(令和5)年度_学校推薦型選抜(推薦入試)_第1問
こんにちは。きんこです。
長野大学2023年度(令和5年度)学校推薦型選抜(推薦入試)の国語第1問の解答解説です。
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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。
そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
この読み方、解き方を徹底することで入試問題を解けるようになるでしょう。
ぜひ身につけてください。
問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。
長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。
はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。
では、始めます。
[解答]
1 山竹信二『「本当の自分」の現象学』より
問1
(1)鍛 (2)培 (3)執着
問2
1…オ
2…カ
3…ウ
問3
エ
問4
ア
問5
イ
問6
安楽への欲望と自我の欲望に対して、納得できるほうを選択した後に考えられる自分。(39字)
[解説]
形式段落での説明になります。
1~9まで形式段落に番号を振ってください。
問1 漢字(書き取り)
漢字自体は難しくありません。漢字検定2級まで取得していればまったく問題ありません(準2級でも大丈夫そうです)。
今回は「鍛」が3級、「培」が準2級、「執」が4級の漢字です。
2023年度は第2問で漢字の出題がないので、この3問だけとなっています。
ただ、2022年度は18問、2021年度は10問、2020年度は12問、2019年度は10問でした。
漢字学習は必須です。
問2 空欄補充
空欄補充の問題は、前後の文脈を確認して考えます。
1
「迷いが生じる。(空欄)、~からだ。」という流れです。
空欄には「理由」を表す語句が入ると考えられますね。
選択肢には「なぜなら」のような理由をズバッと示すものはありませんので、他の選択肢を当てはめてみます。
すると、「それは~だからだ」という表現が見つかります。
これも「理由」を示す表現です。
「それ」は直前の内容ですから、「迷いが生じるのは、~からだ」となるわけです。
ちなみに、形式段落6の2文目にもこの表現があります。
2
形式段落2の「はじめ」が空欄になっていますから、形式段落1と2の関係を示す語句が入ります。
形式段落1は「私たちは自らの行為を選択するとき、人間の欲望は動物のように単一ではないから迷いが生じる」という内容です。
形式段落2は「食べる」という行為を選択するときの動物と人間の例です。
形式段落1の「行為の選択」の例として、形式段落2で「食べる」を挙げているわけです。
「例」を示す語句が入るので「たとえば」ですね。
3
形式段落3の「はじめ」が空欄になっていますから、形式段落2と3の関係を示す語句が入ります。
形式段落2は、「おわり」から「人間は複数の欲望の間で葛藤する」です。
形式段落3は、「はじめ」から「葛藤があるのは、人間が自由な存在であることを示す」です。
形式段落2は「マイナス」であり、形式段落3は「プラス」です。
逆接を示す「しかし」が入りますね。
問3 理由説明
傍線部は形式段落5の「はじめ」にありますから、この段落でその理由が述べられていると考えます。
「おわり」を見ると、「そのことが自己了解できたから、私は納得して自由な選択をした」とあります。
ここでの「自由な選択」とは「辞めなかった」ことですから、その理由は「そのことが自己了解できたから」となります。
「そのこと」の指す内容は直前の「相反する欲望はどちらも自分の欲望で、どちらか一方だけが『本当の自分』ではないこと」です。
ここまで読み取って選択肢を確認するとエだと分かります。
なお、イを選んでしまったという方が多いかもしれません。
この内容は形式段落5の「なか」の内容ですからね。
ただし、これはよく読むと「一度決めたことを貫く人間が私の理想像だったので、…屈辱的なことだった」となっているので、ここは「屈辱的なことだった」理由だと分かります。
なぜ「屈辱的」だったかというと、選択肢イだというわけです。
傍線部の直後に「~ので」とあっても、それが傍線部の理由かどうかをしっかりと確認しましょう。
問4 内容説明
傍線部を含む一文を確認します。
ポイントは3つです。
①形式段落の「はじめ」にある
②これ=傍線部
③「も」がある
①
形式段落の「はじめ」にあるということは、前の形式段落の内容を受けているということです。
形式段落6は「人間の欲望」についての内容です。
人間の欲望は「複数の欲望(相反する欲望)に分裂し葛藤を引き起こしている」ことを読み取ります(形式段落6の「はじめ」と「おわり」がこの内容になっていますね)。
また、傍線部の内容について形式段落7で述べられていくことも分かります。
②
「これ」は直前の内容、つまり形式段落6です。①で確認した内容です。
③
「も」は要注意の助詞です。
これは何かと何かが同じだということであり、もう一方の内容はすでに述べられているものです。
「『本当の自分』の確信」は何と同じなのかを考える必要があります。
①~③を確認すれば
これ(①の内容)は、「本当の自分」の確信「も」同じだ。
から
これ(①の内容)=「本当の自分」の確信
と分かります。
つまり、「人間の欲望について=本当の自分の確信」なわけです。
設問では「本当の欲望」と「本当の自分」との関係を問われており、イコールの関係だと分かります。
では、どのように同じかというと①で確認した「欲望」のように同じなわけです。
複数の欲望(相反する欲望)に分裂し葛藤を引き起こしている
また、傍線部は形式段落7の「はじめ」にあります。
形式段落7で傍線部の説明がされていくはずだという意識で読み進めていくと、「本当の自分」にも相反するものがあるという内容だと分かります。
「人間の欲望」も「本当の自分」も相反するものがあり、そのせいで葛藤がある。
ここまで読み取れば、選択肢アだと分かります。
なお、選択肢ウを選んでしまった人が多いかもしれません。
使われている語句は形式段落6、7のものですから。
しかし、これは順番が違います。
「複数の欲望・本当の自分に分裂しているから、そこに葛藤が生まれる」という順なのに、選択肢では「葛藤が生まれ、分裂している」という順になっています。
このように、本文中の語句が使われているけれども、その順序や因果関係が逆になっているという「ひっかけ選択肢」に注意しましょう。
問5 空欄補充
空欄補充の問題は、前後の文脈を確認して考えます。
今回は空欄の直前に「という」があります。
「という」を含め、「修飾部と被修飾部」は「イコール」の関係でした。
空欄には、「自らの意志で行為を選び取る」と「イコール」の内容が入ると分かります。
これだけで選択肢イだと分かります。
「自らの意志で選択する」というのは「自由に選択する」ということですからね。
ちなみに、もう1つの考え方も示しておきます。
空欄の直後に「それこそが自己了解によって得られるものだ」とあります。
「それ」の指す内容が空欄ですから、「空欄=自己了解によって得られるもの」です。
この「自己了解によって得られるもの」が何かを本文から読み取ってみます。
すると、形式段落5の「おわり」に着目できます。
「自己了解できたからこそ、私は自由な選択をした」の部分です。
自己了解によって、自由な選択を得ることができたわけです。
(形式段落5は「欲望」の話題で、空欄部分は「本当の自分」の話題ですが、問4で確認したように、この2つは同じものだと考えることができます)
自己了解によって得られるもの=自由な選択
こちらの考え方からも選択肢イだと分かります。
問6 内容説明
傍線部を含む一文から
「本当の自分」=事後的に想定された自己像
だと分かります。
つまり、この設問は「本当の自分」とはどのようなものかが問われているイコール問題です。
まずは傍線部を言い換えてみます。
事後的に想定された自己像=何かが終わった後に考えられる自分
です。
「何」が終わった後の自分かを読み取ればイケそうです。
傍線部は形式段落9の「はじめ」にありますから、形式段落8の内容を受けています。
形式段落8「はじめ」は「相反する自分の欲望に気づくと、どちらが『本当の自分』の欲望か混乱する」であり、
「おわり」は「分裂した(相反した)欲望に気づけば、どちらを優先すべきかを考えることができる」です。
さらに、形式段落9の「なか」(「はじめ」の説明部分)に注目すると
「重要なのは、どの欲望に準じた行為を選択すれば納得できるのか」
が、「本当の自分」にとって重要なことを述べていると分かります。
「本当の自分」とは
事後的に想定された自己像=何かが終わった後に考えられる自分
と言い換えましたから、この「何」とは
・分裂した欲望に気づけば、どちらの欲望を優先すべきかを考えることができる
・どの欲望に準じた行為を選択すれば納得できるか
から、「分裂した欲望に気づき、それに対して納得できるほうを選択すること」だと考えられます。
これを「何」のところに差し込み、
分裂した欲望に気づき、どちらの欲望を優先すべきかを考え、納得できるほうを選択した後に考えられる自分
だと言えます。
では、この「分裂した欲望」とは何でしょうか。
これは形式段落6の「なか」で述べられています。
「安楽への欲望」と「自我の欲望」
これを先ほどの「分裂した欲望」のところに差し込みます。
安楽への欲望と自我の欲望に気づき、どちらの欲望を優先すべきかを考え、納得できるほうを選択した後に考えられる自分。(55字)
40字以内という字数制限がありますから、意味が変わらないように削ります。
安楽への欲望と自我の欲望に対して、納得できるほうを選択した後に考えられる自分。(39字)
以上が第1問の解説です。
長野大学が公立化してから数年経ち、入試問題もある程度傾向が決まってきたようです。
文章を正しく読み内容説明ができること(選択・記述)、文脈を判断できること(空欄補充)、語彙力があること(漢字・語句の意味)の3点が問われています。
2021年度まで問われていた「自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること」を問う設問は2年連続で出題されていません。
とはいえ、再び出題されることもあるかもしれませんから、こちらは総合型選抜対策にもなる小論文の練習をするといいでしょう。
文章を正しく読む力が試される設問に関しては、私のブログにある「文章の読み方」を意識していれば解くことができます。
大事なのは、常に同じ読み方をしてみることです。
そのためには、一度取り組んだ問題を復習し、このブログで説明したような流れで考えることができるかを試すといいでしょう。
自分の意見を述べる設問に関して学習するのであれば、2021年度以前の過去問や、長野大学の総合型選抜の過去問をやることをオススメします。
私のブログで解説もしているので学習しやすいと思います。
先程も書いたように、長野大学の入試問題は漢字などの語句の問題に始まり、文脈から解ける空欄補充、基本的な読解力、表現力などを問うてきます。
特別な力などではなく「基本的な国語力」を試す問題と言えます。
この問題を解けるようになることは、皆さんの人生においてプラスの何かをもたらしてくれるでしょう。
「入試問題」だからやるのではなく、自分の力を高めるためにも取り組んでもらいたいと思います。
頑張ってくださいね。
では、これで終わります。
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