センター試験_古文文法_1993~2000
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今回はセンター試験国語第3問(古文)の文法問題1993年度~2000年度です(このうち5年度で文法問題が出題)。
文法は網羅的に学習することが好ましいですが、入試で問われることには傾向があるのも事実です。センター試験の過去問をやるだけでも大いに対策となるでしょう。
入試まで時間がある方は、文法の基礎から固めて最後の確認として取り組んでみてください。
入試までの時間が限られている方や、古文にそんなに時間が割けないよという方はこれに取り組んで、その都度文法事項を覚えてみてください。
同じ文法事項が繰り返し出てきますので、重要なものは自然と覚えることができるでしょう。
また、文法だけではなくセンター試験の過去問を効果的に使いたいという方はこちらの記事を読んでみてください。
では、始めましょう。
構成は以下の通りとなっています。
今回扱う全年度の問題→年度ごとの問題→解答→解説
まずは問題に取り組みます。文法問題は本文がなくても解けることが多いですが、本文がないと厳しいものもあります。それについては問題の部分でお伝えします。
問題に取り組む際に重要なことは、正答の選択肢だけではなく間違いの選択肢も含めてそれぞれの文法的説明ができるかどうかです。
これが自分で完璧にできたら解答だけの確認でいいでしょう。
1つでも説明ができなかった、もしくは説明が合っているか不安なものがあった場合は解説を読みましょう。
この解説の内容を「もの」にしていくことが、今回の目的です。
その年度では間違いの選択肢でも、他の年度では正答するために必要なことがあります。自分で説明できるまで繰り返してみてください。
[全問題]
1993年度
敬語
1994年度
傍線部C「まうけつべかめり」の文法的説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 「まうけ」は名詞、「つ」は助詞、「べか」は助動詞「べし」の未然形、「めり」は助動詞。
② 「まうけ」は名詞、「つ」は助詞、「べか」は助動詞「べし」の連体形撥(はつ)音(おん)便(びん)の無表記形、「めり」は助動詞。
③ 「まうけ」は動詞、「つ」は助動詞、「べか」は助動詞「べし」の連体形撥音便の無表記形、「めり」は助動詞。
④ 「まうけ」は動詞、「つ」は助動詞、「べか」は助動詞「べし」の未然形、「めり」は助動詞。
⑤ 「まうけつ」は動詞、「べか」は助動詞「べし」の連体形騒音便の無表記形、「めり」は助動詞。
1995年度
傍線部C「いづれの歌をか詠まむ」の「か」と「む」についての文法的説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
をとつ年のころより、「月に花に触れて歌詠め」と言へば、「いづれの歌をか詠まむ」と言ふ。
① 「か」は係助詞で反語、「む」は助動詞の連体形で勧誘の意を表す。
② 「か」は係助詞で疑問、「む」は助動詞の連体形で意志の意を表す。
③ 「か」は係助詞で反語、「む」は助動詞の終止形で意志の意を表す。
④ 「か」は係助詞で疑問、「む」は助動詞の連体形で推量の意を表す。
⑤ 「か」は係助詞で反語、「む」は助動詞の終止形で推量の意を表す。
1996年度
敬語
1997年度
波線部「えゆるされたまはねど」の「れ」と「ね」の文法的説明として正しいものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
① 「れ」は尊敬の助動詞――「ね」は打消の助動詞
② 「れ」は受身の助動詞――「ね」は打消の助動詞
③ 「れ」は完了の助動詞――「ね」は打消の助動詞
④ 「れ」は可能の助動詞――「ね」は完了の助動詞
⑤ 「れ」は自発の助動詞――「ね」は完了の助動詞
⑥ 「れ」は下二段活用の動詞語尾――「ね」は完了の助動詞
1998年度
なし
1999年度
傍線部(a)~(f)についての文法的説明として正しくないものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
a 十(と)年(とせ)まり七(なな)年(とせ)になむなれれば
b 公(おほやけ)事(ごと)さし合ひぬべかめれば
c いたはりおこたりなば
d 憂ひ嘆かれしを
e この事にあへるも
f あり果てぬ世にはあれども
① (a)「れれ」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「り」の已然形が接続したもの。
② (b)「ひぬ」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「ぬ」の終止形が接続したもの。
③ (c)「りな」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「ぬ」の未然形が接続したもの。
④ (d)「れし」は、尊敬の助動詞「る」の連用形に、過去の助動詞「き」の連体形が接続したもの。
⑤ (e)「へる」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「り」の連体形が接続したもの。
⑥ (f)「てぬ」は、完了の助動詞「つ」の未然形に、打消の助動詞「ず」の連体形が接続したもの。
2000年度
傍線部(a)~(h)の「し」のうち、サ行変格活用動詞・形容詞の一部・過去の助動詞、のいずれでもないものが二つある。それはどれか。正しい組合せを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
a かの人の入りにし方に入れば
b あなおそろし。
c 音し給(たま)へ」とのたまふ
d あさましき住まひし侍(はべ)れば
e 『うときより』としもいふなれば
f おぼつかなきこそ頼もしかなれ。
g 誰(たれ)と聞こえし」など
h かき鳴らしてゐたれば
① (a)と(d) ② (b)と(e)
③ (c)と(f) ④ (d)と(g)
⑤ (e)と(h)
では、年度ごとに解答・解説をしていきます。
[問題]
1994年度
傍線部C「まうけつべかめり」の文法的説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 「まうけ」は名詞、「つ」は助詞、「べか」は助動詞「べし」の未然形、「めり」は助動詞。
② 「まうけ」は名詞、「つ」は助詞、「べか」は助動詞「べし」の連体形撥(はつ)音(おん)便(びん)の無表記形、「めり」は助動詞。
③ 「まうけ」は動詞、「つ」は助動詞、「べか」は助動詞「べし」の連体形撥音便の無表記形、「めり」は助動詞。
④ 「まうけ」は動詞、「つ」は助動詞、「べか」は助動詞「べし」の未然形、「めり」は助動詞。
⑤ 「まうけつ」は動詞、「べか」は助動詞「べし」の連体形騒音便の無表記形、「めり」は助動詞。
[解答]
③
[解説]
見た瞬間に「あ、これだ」となってほしい事項が2つあります。
①「あ・か・ざ・た・な」につく「なり」「めり」は(伝聞)推定助動詞(伝聞の意味があるのは「なり」のみ)。特に「なり」の識別で必要な知識ですが、今回は「めり」で出題されています。
「なり」で説明します。本来の形は「あるなり」「かるなり」「ざるなり」「たるなり」「なるなり」ですが、この「る」が撥音便となり「あんなり」「かんなり」「ざんなり」「たんなり」「なんなり」となることがあります。そして、その「ん」が無表記となり「あなり」「かなり」「ざなり」「たなり」「ななり」の形となるわけです。
ですから「あるなり=あんなり=あなり」ということです。
なお、「あ・か・ざ・た・な」がそれぞれ何かも知っておきましょう。
「あ」はラ変「あり」連体形、「か」は形容詞(もしくは形容詞型の活用語)の連体形、「ざ」は打消「ず」連体形、「た」は完了「たり」連体形、「な」は断定「なり」連体形です。
このうち、特に大事なのは「な」が断定だということです。「ななり」の「なり」が伝聞推定なのですから、「な」が伝聞推定にはならないことは確実ですから「断定」と判断できます(これも「な」「なり」の識別などで問題に絡むことがあります)。
今回は「かめり」の形がありますから、見た瞬間に「あ・か・ざ・た・な+なり・めりの形だ!」と分かってほしいところです。で、この「か」は「べし」の連体形「べかる」ということです。「べし」は形容詞型す。
②「完了の助動詞+推量の助動詞」は格述用法「きっと~、必ず~」。
完了の助動詞「つ」「ぬ」に推量の助動詞「む」「べし」「らむ」「けむ」などが付いている場合は、「つ」「ぬ」は完了ではなく「強意」の意味となり「きっと~だろう」「必ず~だろう」などと訳します。よく出てくる次の形は覚えておきます。
「てむ・なむ」「つべし・ぬべし」「つらむ・ぬらむ」
この3パターンが頻出です。
今回は「つべし」の形がありますから、見た瞬間に「完了『つ』が『きっと・必ず』と訳す強意になるやつだ!」と分かってほしいところです。
なお、この用法の「つ」「ぬ」の文法的説明は「完了(強意)」となっていることが多く、絶対に「強意」と答えなくてはいけないというわけではないことが多いです。
この2つは頻出の文法事項ですので必ず覚えましょう。
で、残った「もうけ」ですが、「つ」という助動詞に付いているのですから「用言(動詞)」に決まっています。用言以外に接続する助動詞は「(断定の)なり」「(断定の)たり」「ごとし」だけです。
[問題]
傍線部C「いづれの歌をか詠まむ」の「か」と「む」についての文法的説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
をとつ年のころより、「月に花に触れて歌詠め」と言へば、「いづれの歌をか詠まむ」と言ふ。
① 「か」は係助詞で反語、「む」は助動詞の連体形で勧誘の意を表す。
② 「か」は係助詞で疑問、「む」は助動詞の連体形で意志の意を表す。
③ 「か」は係助詞で反語、「む」は助動詞の終止形で意志の意を表す。
④ 「か」は係助詞で疑問、「む」は助動詞の連体形で推量の意を表す。
⑤ 「か」は係助詞で反語、「む」は助動詞の終止形で推量の意を表す。
[解答]
②
[解説]
係助詞の「や・か」には疑問と反語の2つの意味があります。反語とは「~か、いや~ない」という用法です。
反語の例:私はどうして嘘をつくだろうか(いや、つかない)。
反語の解釈が選択式の問題になった場合は、( )の「いや」以下が書かれている場合と書かれていない場合がありますので、どちらの形でも判断できるようにしておきます。
記述ならば、「反語」って分かってることを示すために「いや」以下もしっかりと書くことが望ましいでしょう。
今回は「月や花に触れて歌を詠め」という内容に続いていますから反語ではなく疑問と判断します。
次に「む」の活用形ですが、これは係り結びですね。
文中に「ぞ・なむ・や・か」があれば文末は連体形に、「こそ」があれば已然形になるのでした。
「む」の意味は「推量・意志・勧誘・仮定・婉曲」です。
「スイカ買え」と覚えましょう。
訳すときにはまず大きく2つに分けます。
文末にある場合…スイカ(推量・意志・勧誘)
文中にある場合…買え(仮定・婉曲)
「スイカ」のどれかという判断ですが、「と」の上に来ている場合は「意志」の可能性が高くなります。まずは「意志」で訳してみて、文脈上おかしくなりそうならば推量か勧誘と判断します。
「買え」のどちらかという判断ですが、センターレベルでは問われません。とりあえず婉曲「~ような」で訳すとほとんどの場合、意味は通じます。
が、一応厳密に説明しておくと「仮定は『助詞+む』」「婉曲は『体言+む』」です。
今回は「と」の上の「む」ですから「意志」と判断し訳してみます。
「どの歌を詠もうか」となり、文脈上からもおかしくありませんから「意志」です。
[問題]
1997年度
波線部「えゆるされたまはねど」の「れ」と「ね」の文法的説明として正しいものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
① 「れ」は尊敬の助動詞――「ね」は打消の助動詞
② 「れ」は受身の助動詞――「ね」は打消の助動詞
③ 「れ」は完了の助動詞――「ね」は打消の助動詞
④ 「れ」は可能の助動詞――「ね」は完了の助動詞
⑤ 「れ」は自発の助動詞――「ね」は完了の助動詞
⑥ 「れ」は下二段活用の動詞語尾――「ね」は完了の助動詞
[解答]
②
[解説]
まず品詞分解すると「え/ゆるさ/れ/たまは/ね/ど」です。
「ゆるされ」が一語だとすると「ゆるさる」という動詞になってしまい「これは変だ」と分かると思います。
今回、知っておくべき事項は2つです。
①「る・れ」の識別
これは2つの段階で考えます。
ⅰ 接続
「る・れ」には完了存続「り」の場合と、受身尊敬可能自発「る」の場合とがあります。
完了存続「り」の接続は、サ変の未然形と四段の已然形(サ未四已「り」かちゃんと覚えるのでした)です。
受身尊敬可能自発「る」の接続は、四段ナ変ラ変の未然形です。
サ変未然形は「せ」、四段已然形は「e」の音であり、四段未然形は「a」、ナ変未然形は「な」、ラ変未然形は「ら」です。
サ変とかナ変とかという判断でなく、接続の音だけで判断できますね。
なお、接続とは上にある語の活用形が決まるということでしたね。
「a」の音に接続している→受身尊敬可能自発「る」
「e」の音に接続している→完了存続「り」
今回は「ゆるさ」と「さ=aの音」に接続してるので受身尊敬可能自発「る」だと分かります。
ⅱ 受身・尊敬・可能・自発の訳し分け
「る・らる」の4つの意味の訳し分けです。
受身…そのまま「(~に)~られる・される」と訳すことができる。
尊敬…主語が高位の人、「仰せらる」のように尊敬語についている。この2つの場合は尊敬と判断します。また、「れ給ふ」「られ給ふ」の形は絶対に尊敬でないということも覚えます。
可能…下に打消の語がある。
自発…心情動詞・知覚動詞に接続している。心情動詞・知覚動詞の例として「思ひやる」「泣く」「おどろく」「知る」「見る」などがあります。心情動詞・知覚動詞を見分ける必要はありませんので、これらの感情や知覚(五感)に関わる語に接続していたら自発だと判断します。
今回は「ゆるす」という動詞に接続しており(自発ではない)、「れたまふ」の形であること(尊敬ではない)、下に打消の語がないこと(可能ではない)、そのまま自然に訳せることから「受身」だと分かります。
②「ぬ・ね」の識別
2つの段階で考えるようにします。
ⅰ 接続(上)
「ぬ・ね」には打消「ず」の連体形「ぬ」、已然形「ね」の場合と、完了「ぬ」の終止形「ぬ」、命令形「ね」の場合とがあります。
ちなみに打消「ず」の活用は「ず・ざら/ず・ざり/ず/ぬ・ざる/ね・ざれ/ざれ」(20回言えば覚えます)、完了「ぬ」の活用は「な/に/ぬ/ぬる/ぬれ/ね」(ナ変型)です。
打消「ず」の接続は未然形、完了「ぬ」の接続は連用形です。
今回は上の語が「たまは」です。「は」のように「a」の音になるのは未然形しかありません。今回の「ね」は打消「ず」已然形だと分かります。
ⅱ 接続(下)
ⅰで確認したように、「ぬ」は打消なら連体形、完了なら終止形、「ね」は打消なら已然形、完了なら命令形です。
ということは、下に来ている語の接続が分かれば打消か完了か判断できますね。
今回は「ど」という逆接の接続助詞に接続していて、これは已然形接続です。
このことからも、今回の「ね」は打消「ず」已然形だと分かります。
[問題]
1999年度
傍線部(a)~(f)についての文法的説明として正しくないものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
a 十(と)年(とせ)まり七(なな)年(とせ)になむなれれば
b 公(おほやけ)事(ごと)さし合ひぬべかめれば
c いたはりおこたりなば
d 憂ひ嘆かれしを
e この事にあへるも
f あり果てぬ世にはあれども
① (a)「れれ」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「り」の已然形が接続したもの。
② (b)「ひぬ」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「ぬ」の終止形が接続したもの。
③ (c)「りな」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「ぬ」の未然形が接続したもの。
④ (d)「れし」は、尊敬の助動詞「る」の連用形に、過去の助動詞「き」の連体形が接続したもの。
⑤ (e)「へる」は、動詞の活用語尾に、完了の助動詞「り」の連体形が接続したもの。
⑥ (f)「てぬ」は、完了の助動詞「つ」の未然形に、打消の助動詞「ず」の連体形が接続したもの。
[解答]
⑥
[解説]
1つずつ確認します。
①「七年になむなれれば」を品詞分解すると「七年/に/なむ/なれ/れ/ば」です。
もし、「れ」の上にスラッシュを入れると「七年/に/なむ/な/れ/れ/ば」となり、「れ」の上の「『な』って何?」となってしまいますね。
てことで、「なれ」は動詞です。
「れ」は1997年度の「る・れ」の識別で確認したように「e」の音に接続しているときは完了存続「り」です。
「り」の活用は「ら/り/り/る/れ/れ」とラ変型です。
ちなみに、最後が「り」で終わる語はすべてラ変型です(「なり」とか「たり」とか「めり」とか)。
②「合ひぬべかめれば」を品詞分解すると「合ひ/ぬ/べか/めれ/ば」です。
1994年度で確認した「ぬべし」の形がありますね!
この「ぬ」は強意(完了)です。
また、「ひ」の上にスラッシュを入れると「合/ひぬ/べか」となり、「『合』だけなわけがあるか!」となってしまいますね。
「合ふ」という動詞です。
③「いたはりおこたりなば」を品詞分解すると「いたはり/おこたり/な/ば」です。
「り」の上にスラッシュを入れると「おこた/り/ば」となり「『おこた』って何?」となりますから「おこたる」という動詞だと分かります。
また、「な」は「おこたる」という用言に接続しているので助動詞です。
「な」のような「a」の音はすべて未然形です。
未然形が「な」となる助動詞は完了(強意)「ぬ」しかありません。
④「憂ひ嘆かれしを」を品詞分解すると「憂ひ/嘆か/れ/し/を」です。
「れ」は1997年度の「る・れ」の識別で確認したように「a」の音に接続していたら受身尊敬可能自発でした。
「嘆く」という心情動詞についているから「自発」の可能性がありますが、「嘆かれる」と受身でも訳せるので、文脈が分からない傍線部だけではどちらか判断できません。
次に「し」です。
これは見た瞬間に過去「き」だと分かってほしいところです。
「き」の活用は「せ/○/き/し/しか/○」です。20回声に出して覚えましょう。
この選択肢はこの段階では「受身」か「自発」かの判断がつかないので保留となります。
⑤「この事にあへるも」を品詞分解すると「この/事/に/あへ/る/も」です。
「へ」の上にスラッシュを入れると「『あ』とは?」となるので「あふ」という動詞だと分かります。
「る」は1997年度の「る・れ」の識別で確認したように「e」の音に接続していたら完了存続「り」でした。
⑥「あり果てぬ世にはあれども」を品詞分解すると「あり/果て/ぬ/世/に/は/あれ/ども」です。
「て」の上にスラッシュを入れると「『果』とは?」となるので「果つ」という動詞だと分かります。
「ぬ」は1997年度の「ぬ・ね」の識別で確認したように、体言(名詞)に続いてるので連体形だと分かり、連体形の「ぬ」は打消「ず」でした。
選択肢では「て」が完了の助動詞となっていますから、これが絶対に間違っている選択肢だと分かります。
⑥が絶対に間違っていますから④の選択肢は合っていたということですので、「れ」は選択肢にあるように受身だったと分かります。
[問題]
2000年度
傍線部(a)~(h)の「し」のうち、サ行変格活用動詞・形容詞の一部・過去の助動詞、のいずれでもないものが二つある。それはどれか。正しい組合せを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
a かの人の入りにし方に入れば
b あなおそろし。
c 音し給(たま)へ」とのたまふ
d あさましき住まひし侍(はべ)れば
e 『うときより』としもいふなれば
f おぼつかなきこそ頼もしかなれ。
g 誰(たれ)と聞こえし」など
h かき鳴らしてゐたれば
① (a)と(d) ② (b)と(e)
③ (c)と(f) ④ (d)と(g)
⑤ (e)と(h)
[解答]
⑤
[解説]
「し」の識別の問題です。
「し」には設問にある「サ変『す』連用形」「形容詞の活用語尾」「過去『き』連体形」の場合の他に、強意の副助詞「し(しも・しぞ)」「動詞の一部」「過去『き』已然形の一部」の場合があります。
「強意の副助詞」か「動詞の一部」か「過去『き』已然形の一部」を見つけろということですね。
1つずつ見ていきます。
a 「にき」「にけり」の「に」は完了、「き」「けり」は過去です。
「き」の活用が「せ/○/き/し/しか/○」であり、連体形「し」已然形「しか」は古文に頻出しますので見た瞬間に「過去だ!」と分かるようになりましょう。
b 「おそろし」の「し」の上にスラッシュを入れると「『おそろ』って?」となりますから「おそろし」という形容詞だと分かります。
c これはちょっと難しいかもしれませんが、「音し」なんて形容詞はありえないし、「音」という体言(名詞)に接続しているから助動詞でもありません。「音がする」と訳すサ変動詞と判断します。
これが強意の副助詞だとしたら「音し給へ」の訳がおかしくなってしまいます(無理矢理訳すと「音をお与えください」みたいになります)。
d 「住まひし」と形容詞はなさそうです。
「侍り」という用言に続いているので連体形となる過去「き」でもありません(過去「き」が「し」となるのは連体形のとき、すなわち下に体言があるときですね)。
「住まいを(と)する」とサ変動詞では訳せます。
強意の副助詞とすると「住まいがございます」のような訳になります。絶対にないとは言い切れないので、ここでは保留とします。
e 「しも」「しぞ」の形は強意の副助詞です。
f 「頼もしかなれ」と見て、「あ!」と気づきましたか。
1994年度で確認した「あ・か・ざ・た・な+なり」の形ですね。
この「か」は形容詞(形容詞型)の活用語尾でした。
形容詞「頼もし」の連体形「頼もしかる」の撥音便「頼もしかん」の「ん」が無表記になっている形ですね。
g 文中に疑問の係助詞「や・か」があったり、疑問詞があると文末は連体形になります。
今回は「誰」が疑問詞です。
てことは、この「し」は連体形です。
連体形が「し」となるのは過去「き」ですね。
h 「かき鳴らして」を品詞分解すると「かき鳴らし/て」です。
「し」の上にスラッシュを入れると「かき鳴ら」が「かき鳴る」となり、そんな動詞はなさそうですね。
「かき鳴らす」ですから、この「し」は「動詞の一部」だと分かります。
解説はこれで終わりです。
今回の問題から分かることは「品詞分解できることが重要だ」ということです。
スラッシュ(/)を入れることができるようになることを1つの目標とすると良いと思います。
古文を読むときには、常にスラッシュを入れながら読みましょう。
ちなみに、現代文を読んでいるときは勝手にそうしているはずです。
これができることで、1つ1つの単語が理解できている、単語が集まった節が理解できているということに繋がります。
ぜひ、古文でも意識してみてください。
頑張ってください。
では、これで終わります。
他の年度の古文文法問題はこちらです。
センター対策の古文単語や文法、漢文の重要漢字や句法を確認する場合はQuizletが便利です。
次の記事もぜひご覧ください。
センター現代文の対策はこちらの記事をご覧ください。
マーク対策についてまとめたので古文漢文にも通じる部分が多くあります。
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