2018年度総合学力記述模試(7月進研記述模試)_国語_第1問(評論)_解説
こんにちは。北の大地で教員をしています「きんこ」と言います。
今日は私のブログを見てもらい、ありがとうございます。
今回は、2018年度7月進研記述模試(総合学力記述模試)の国語、第1問の解説です。
このブログにある「文章の読み方」や「マーク式問題の解き方」(記述模試でも記号問題はありますので)をどのように運用するのかに重点を置いています。
そのため、「文章の読み方」「マーク式問題の解き方」をお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。
まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
マーク式問題の解き方(センター対策)_評論文 - 高校教員の徒然日記
この読み方、解き方を徹底することで記述模試で点数を取ることができます。
ぜひ身につけてみてください。
問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。ご自分で用意してください。
実際に受験した方は持っていると思います。
受験していない方は学校にある場合がありますので、先生に相談してみてください。
(進研模試の過去問は学校に進研模試の集冊版があるはずです)
形式段落での説明がメインになります。今回はすでに1~17まで振られています。
では、始めます。
問1 漢字
すべて基本的な漢字です。これらが書けなかったとしたら漢字学習をすることをオススメします。
漢字検定2級レベルまでは完璧にしたい所ですが、時期が時期ですのでせめて準2級レベルまでは夏までに仕上げましょう。
ちなみに、今回は準2級までの漢字しか出題されていません。
問2 内容説明
ポイントは2つです。
①「どのようなことか」という内容説明問題(イコール問題)である。
→傍線部の言い換えるべき語句(「大地」「地球」)に注目する。
②形式段落のはじめの部分にある。
→この段落で説明がされていくはずである。
イコール問題だと分かれば「大地」と「地球」を言い換えてあげればいいのだということが分かります。そして、この2つについてはすでに述べられています。
「大地」については形式段落2で述べられています。
形式段落のはじめが「『大地』とは」で始まっているのですから、この形式段落が「大地」の説明だと分かります。また、「大地」が主語になっているのですから、その続きが「大地」の説明部分(言い換え部分)です。
(形式段落の作りは「この話するよ→説明→この話のまとめ」でした)
つまり「大地=世界の下方に位置し、人間が拘束される場所であり、世界の上方にある神々の座となる『天空』と対をなすもの」です。
「地球」については形式段落1と3で述べられています。
形式段落1では「地球=自然に属する一個の存在者」としか分かりませんので、形式段落3を見ます。
形式段落3も「地球は」で始まっているのですから、この形式段落も「地球」の説明です。また、「地球」が主語になっているのですから、その続きが「地球」の説明部分です。
(ここでも形式段落の作りを意識します)
つまり、「地球=宇宙に属する」であり、その次の一文が「宇宙」の説明なので「地球=宇宙に属する=ありとあらゆるものが断片として無差別に属する(太陽は太陽だし、地球は地球)
この2つを確認して選択肢の文末を見るだけで答えは出ます。
今回の場合は、選択肢の文末に来ているはず(選択肢は傍線部の言い換えだとすれば、後半に『地球』の説明が来ているはず)の「地球」だけ確認すれば答えは導けます。
選択肢を見てみましょう。
1「物理的法則によってすべてのことが説明可能な天体」→確認したものと違います。
2「ありとあらゆるものが差別なく存在する宇宙の構成要素の一つ」→OKです。
3「全体として調和的秩序が存在している場所」→確認したものと違います。ちなみにこれは形式段落2の最後にある「世界」の説明です。
4「人間の手によって改変可能な宇宙の構成要素の一つ」→確認したものと違います。
5「地殻プレートの変動によって恐ろしい天変地異が起きる場所」→確認したものと違います。
なお、前半の「大地」で選択肢を見てみると答えは1つに絞ることはできないかもしれません。やはり、選択肢は後半から見るようにしましょう。
答えは出ましたが、ポイント②「形式段落のはじめにある」は今回どのように使うかを説明しておきます。
この形式段落で傍線部を説明しているはずだという意識で読み、最後の「近代的自然観が台頭してきた」に注目します(形式段落の作りを意識)。
つまり、傍線部の「近代という時代」は「近代的自然観」なわけです。すると、これを説明していたのは形式段落4だと分かります。
形式段落4の最後は「近代的自然概念」とあるので、ここで説明されていると判断できるからです(これまた形式段落の作りを意識)。形式段落4の中程に「近代の唯物論的自然科学」という言葉があるので、これが傍線部の「近代という時代」の言い換えとなるわけです。答えの選択肢にこの言葉が出てくるのは、これが理由です。
「文章の読み方」を意識すると、ほとんどの問題は傍線部の近くに答えの根拠があることが分かります。しかし、この問題は傍線部の近くに答えがないパターンでした。
このパターンはたびたび見かけますので構造を確認しておきます。
次のような文章構造、傍線部の位置になっている場合に、今回のように答えの根拠が離れた箇所になります。
形式段落1~5 Aの説明
形式段落6~8 Bの説明
形式段落9 まとめとして「AとBは…」という文章になっていて、「AとBは」の「A」の部分に傍線部が引かれている。
「A」の説明はすでに終わっているので、Aに関する問題は形式段落1~5の部分を読んで答えることになります。
今回はまさにこの構造となっていて、AもBも読み取るような問題だったと言えます。
「近代」も読み取ると考えると、Bの説明のあとにCまであったということです。
問3 理由説明
ポイントは3つです。
①「なぜか」という理由説明問題である。
②形式段落のおわりの部分にある。
→この段落で説明がされている、もしくは、次の段落に説明が続いているはずである。
③設問にある「皮肉」のニュアンスを反映する。
なぜ地球人が宇宙人なのかが問われています。
ここまでの内容にはその理由が述べられていないことは明らかなので(「宇宙人」という言葉がはじめて出てきたのですから!)次の形式段落に説明があると考えます。
そのような意識で形式段落8のはじめの一文を読むと「この新種のエイリアンたち」という表現に気づくはずです。もちろんこれが「宇宙人」です。
そして、この段落では「エイリアンたちが地上で何をしているか」が述べられています。中程に説明が長々とありますが形式段落のまとめである最後を見ると「世界破壊活動」をしていると分かります。
つまり、「世界を破壊する活動をしているから」宇宙人だと述べたわけです。
これが解答の文末になります。記述の問題もまずは一言で答えてみることが重要です。
次に、設問にある「皮肉」のニュアンスを加えます。
「皮肉」とは学研『現代新国語辞典』に「相手の欠点・弱点などを、遠まわしに意地悪く非難すること」とあります。
もっと分かりやすくいうと「本当は『ダメ』なのに『素晴らしい』と言うことで逆に悪口になること」です。
たとえば、背が低いことをコンプレックスにしている人に向かって「バスケやバレーの選手みたいだね」と言ったり、自分が不細工だと思っている人に向かって「ジャニーズからオファー来るに違いないね」と言ったりすることです。
先ほど導いた解答の文末は「皮肉」の「素晴らしい」の方に当たるので(答えの後半なのですから)、考えるべきは「ダメ」のほうです。つまり、本当はマイナスなことがあるのに破壊活動をしているから皮肉めいた言い方をしているわけです。
この意識で読み進めると、形式段落10が「人類は宇宙人になりきれない」と始まっています。ここにマイナスのことが述べられていそうですね。
この形式段落の終わりには「ヒトは宇宙空間に生きられない、世界内存在で大地の住人であることを克服できない」とあります。宇宙空間に生きられないのに宇宙人ぶっているわけです。
「皮肉」のニュアンスでまとめてみると「本当は宇宙では生きられないのに、宇宙人ぶって世界を破壊する活動をしているから」となります。
問4 理由説明
ポイントは3つです。
①「なぜか」という理由説明問題である。
②形式段落のはじめの部分にある。
→この段落で説明がされていくはずである。
③「そればかりではない」という言葉に注目する。
「物」を「守るべき」理由が問われています。
答え方としては「物」がどのようなものであるかを説明すればいいでしょう。
たとえば、「子ども」を「守るべき」理由を答えるとしたら「子どもは弱い存在であり、人類を存続させる大切な存在であるから」などとなります。まずは、このように解答のフレームを作ることが大切です(今回であれば「物」を主語にしようというような)。
今回は「物」を主語にして答えてみます。
傍線部は形式段落のはじめにあるので、この形式段落で説明がされていくはずです。
(しつこいですが形式段落の作りを意識して読みます)
形式段落の中程に「物たちによって世界は守られ、その世界のおかげで人間の生活は守られる」とあります。
「物」を主語にすると「物が世界を守り、その世界が人間の生活を守っている」となります。「物」が「人間の生活」を守っているのですから、その「物」を「守るべき」理由になりますね。これが1つめの要素です。
これで解答が作ることができる問題が多いのですが、今回はこれだけではダメです。
なぜなら、次の形式段落14のはじめが「そればかりではない」と始まっているからです。この「それ」の指す内容は先ほど確認した内容です。
つまり、「物」は「人間の生活を守っている」だけではないということです。だとすると、形式段落14でも「物」の説明が続くことになります。「そればかりではない」と始まっているのですから、この形式段落でその説明がされていくはずです。
(形式段落の作りですよ)
そのような意識で形式段落14を読むと、中程に「物は個体の生命を優に超えて存続する」「物たちは、既在の人々が伝えようとしたものを、今日の我々に守り伝え、将来の人びとへ伝えてゆく」とあります。
つまり、「物」は「人びとが伝えようとしたことを過去から現在、未来へと伝えてゆくことができる」ことができるということです。これも「物」を「守るべき」理由になります。これが2つめの要素です。
この2つの要素をまとめると答えになります。
問5 内容説明
ポイントは2つです。
①「どういうことか」という内容説明問題(イコール問題)である。
→傍線部を言い換えるということである。
②本文のおわりにある(しかも、形式段落は傍線部のみ)。
→前の段落から内容が続いてきているはずである。
③設問に「本文全体を踏まえて」という条件がある。
傍線部の言い換え問題なので、どこを言い換えるべきかを考えます。
前半の「伝えていくべき物を労わる」はあまり言い換えることができませんね。せいぜい「伝えていくべき物を大切にする」くらいです。
後半の「世界への愛のレッスン」はどうでしょうか。「世界への愛」は説明の必要がありそうです。「レッスン」は「練習」とできますね(簡単な英語だから大丈夫ですよね?)
ここまでで「伝えていくべき物を大切にすることが、世界への愛の練習だということ」となります。
次にポイント②です。
形式段落17(傍線部)にどのように内容が続いてきたかを確認します。形式段落16の終わりには「町を愛する」という表現、中程には「町を受け継ぎ、大切に守り、後代に受け渡していく」という内容があります。「世界への愛」の説明のようではないですか?形式段落16のはじめは「世界が壊れる」なんていう表現で始まっているから、やはり「世界への愛」の説明のようです。
さらにさかのぼり形式段落15を見ていると、終わりが「物への労わりは、世界への愛に通じ、しかもそれが同時に、われわれ自身を愛することへと通ずる」となっています。
先ほど確認した「伝えていくべき物を大切にすることが、世界への愛の練習だということ」とほぼ同じ表現だと気づきますか。ここをそのまま使い、さらにこの「世界への愛」が形式段落16の内容のようです。
ここまでをまとめると、「伝えていくべき物を大切にすることが、町を受け継ぎ、大切に守り、後代に受け渡していくという世界への愛に通じ、同時に、われわれ自身を愛することの練習に通じるということ」となりそうです。
町=世界でしょうから「伝えていくべき物を大切にすることが、世界を受け継ぎ、大切に守り、後代に受け渡していくことになり、われわれ自身をも愛することの練習になるということ」とまとめることができます。
これが傍線部の言い換えとなります。
これに「本文全体を踏まえて」という点を加えます。
このような問題に対する考え方がこれです。
①まずメインとなる答えを作る。
②その答えに、内容説明、理由説明、対比、条件のいずれかを加える。
以上です。
これだけではよく分かりませんね。もう少し説明します。
メインとなる答えというのは、これまで通りの形式段落の作りから内容を読み取ったり、指示語の内容を示したり、設問条件のニュアンスを出したり(問3の「皮肉」のように)した答えのことで、まず一言で答えたものです。ここまでは、これまでの解答の作り方でいけるはずです。
次に、その答えに制限字数に合わせて内容を肉付けしていきます。その肉付けする内容が「内容説明、理由説明、対比、条件」のいずれかになります。
内容説明…先ほどの「世界への愛」のように、わかりにくい言葉を言い換えたり、その言葉に修飾部分(説明する文)を加える。
理由説明…メインの答えに対する理由を加える。
対比…メインの答えの内容と対比されている内容を加える。
条件…メインの答えの内容に前提となる条件があるなら加える。
たとえば、こんな感じです。
メインの答えが「スマホを買ってもらったということ」だとします。
内容説明を加えると「新しい機能がたくさんついたスマホを買ってもらったということ」
理由説明を加えると「母との約束通りテストで満点を取ったのでスマホを買ってもらったということ」
対比を加えると「それまで使っていたガラケーではなくスマホを買ってもらったということ」
前提となる条件を加えると「中学3年生のとき、スマホを買ってもらったということ」
すべて合わせると「中学3年生のとき、母との約束通りテストで満点を取ったので新しい機能がたくさんついたスマホを買ってもらったということ」となります。
字数が多いときの考え方はすべてこれになります。
メインの答えを作る。
それに上の4つを加えていく。
4つのどれを加えるかは問題と字数によります。設問や本文内容から優先順位の高いものから加えていき、制限字数になったらそこまでとします。
4つめの「前提となる条件」が少しわかりにくいかもしれませんので具体例で補足します。
「近代において」「産業革命が起きた際」「欧米の社会では」などのように年代や場所などが限定される場合に加えます。いまいち分からないかもしれませんが、このことを知ってから模試や問題集の解答を見ると「あぁ、これか」ということがあるかと思います。
では、今回の問題に戻りましょう。
メインとなる答えは「伝えていくべき物を大切にすることが、世界を受け継ぎ、大切に守り、後代に受け渡していくことになり、われわれ自身をも愛することの練習になるということ」でした。
これに何を加えればいいかを考えます。
内容説明はすでに終えています。
理由説明はどうでしょうか。なぜ「物を大切にし世界を受け渡していこう」ということを述べているかというと、人類が「宇宙人」となり世界破壊活動をしているからです(前半の内容)。また、問3の内容から人類は宇宙では生きていけないのだから「世界を大切にしなければいけない」と読み取ることができます。今回はこの内容を足すことになります。
対比は理由説明と同じ内容になりますが「人類は物や世界を大切にするべき、自身を愛するべき」と「人類は世界を破壊している」が書けそうです。
前提となる条件は今回は必要なさそうです。時代の対比や場所の対比の文章ではありませんからね。
以上をまとめて「人類は宇宙では生きていけないので世界を破壊する活動をするのではなく、伝えていくべき物を大切にすることが世界を受け継ぎ後代に受け渡していくことになり、われわれ自身をも愛することの練習になるということ」となります。
模試の解答はこれをさらに言い換えて格好良くなっていますので、言い換える練習としてぜひ見てみてください。
ただ、模試の解答は本当に上手な文になっていますので、それを書けなくても仕方ありません(書けるに越したことはありませんが)。
大事なのは考え方のプロセスです。どのように読み、どのように答えを作るのかをしっかりと身につけましょう。
ですから、はじめは本文の言葉を使った解答でいいのです。そのレベルがある程度まで達したら上手な文章表現を試みてください。
問6 文章表現
文章表現問題は1つ1つ確認していくしかありませんので対策できません。
ただ、あくまで消去法でいくようにしましょう。微妙なのは残して、絶対に違うと分かったものから消去していきます。そして、残ったものを答えとするのです。
自分でそれぞれの選択肢の何が間違っているのかを考えてから、解答でどの部分が間違っているのかを確認しましょう。
いかがでしたか。
問5で記述問題の答えの作り方の説明があったため、かなり長くなってしまいました。
しかし、センター試験も記述試験もやるべきことは大きく変わらないということが分かったと思います。記述問題は「書く力」が要求されますが、書く内容を考える段階ではマーク式と同じなのです(今回であれば問5のメインの答えを考えるまでは同じです)。
ぜひ「文章の読み方」を意識して文章を読んでみましょう。現代文の問題を解いてみましょう。
国語の学力は上がります。センター試験でも個別入試でも武器にできるのです。
今後も他の問題を使ってブログを書こうと思います。自分で解いてみてブログで確認するという流れで勉強してみてください。
要望や質問は「お問い合わせフォーム」から受け付けていますのでご活用ください。
検討を祈っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。