高校教員の徒然日記

PMA~Positive Mental Attitude~

長野大学_小論文_2019年度_総合型選抜(AO入試)

こんにちは。きんこです。

 

長野大学(2019年度・平成31年度総合型選抜・AO入試)の小論文の解説です。

 


Twitterでは新着記事や役立つ情報をお知らせしているのでぜひフォローしてください。

また、質問もこちらからどうぞ(^_^)

 

 

問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。

www.nagano.ac.jp


このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。

そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。

まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
現代文の力もつきますよ。

kinkoshin.hatenablog.com

 


では、はじめます。

課題文は伊丹敬之『創造的論文の書き方』です。

 


設問1

 

課題文の要旨を200字以内で書く問題です。

まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。

『現代新国語辞典』(三省堂)によれば 

「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です。 

小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。

それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。

ちなみにこのブログで解説をしている長野大学名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。

ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。

 

まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。

ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。

 


では、今回の課題文を読んでいきましょう。

形式段落ごとに見ていきますので1~10まで番号を振ってください。

 

見切りをつける、見切るということは、研究や文章書きを進めるために必要だ。

 

きっと、これが筆者の主張ですね。

「必要だ」という言葉は「主張」を示している可能性が高い強いニュアンスを持つ言葉です

「見切る」ことがどういうことかを意識して読んでいきましょう。

 

見切るとは、現状に区切りをつけて、前へ進むことを決断することだ。

 

「はじめ→なかほど→おわり」の形を意識すると、簡単に内容を掴めます。

「なかほど」は「見切ること」「現状に区切りをつけて、前へ進むことを決断すること」の説明(具体例)になっていることが分かるでしょう。

 

研究も文章書きも進むためには、見切らないと進まない。

 

見切らなかったらどうなるかということが書かれています。

これまでとは反対の視点から書かれているだけで、内容としては繰り返しです。

 

見切ることが必要だ。

見切れるためには、そこで見切っていいという相場観をもてなければいけない。

 

見切ることが必要だというのは繰り返しですが、そのために「相場観」を持つ必要があるという条件を示しています

「相場観」の具体的な説明は「なかほど」から「おわり」で説明されています。

 

相場観を上手く持たないと上手くいかない。

 

繰り返しですね。

相場観が必要なのです。

 

見切るための工夫は、信頼できる人に相談することや、納期を自分で設定するといった当たり前のことだが、それは自分で納得をしながら見切るためにすることだ。

この工夫は、人間という弱い存在が見切るという強いアクションをとれるようにするためである。

 

見切るための工夫は自分で納得しながら見切るためです。

「自分で納得する」ということは、形式段落4の言葉で言い換えれば「これでいいという相場観を持つ」ということになるでしょう。

つまり、「自分で納得する=相場観をもつ」ということです。

 

また、ここで重要なのは、人間が弱いということ、見切ることが強いアクションだと述べていることです。

この表現から、人間にとって納得感・相場観をもって「見切る」ことが簡単ではないということを読み取りましょう。

 

見切れるようになるためには、見切ることがやり直しのきくことだと意識することだ。

 

見切れるようになるための条件(必要なこと)です

見切って判断することは、それがすべての決断ではないという意識が必要なんです。

やり直しがいつでもオッケーという意識をもって、見切ることが必要なんですね。

それは、そうしないと「研究も文章書きも前に進まない」からでした。

 

「壁は三度塗り」だ。

 

職人の例を挙げて、やり直すことが重要だということを説明しています。

 

壁職人は全体を見て、見切るか見切らないかを判断する。

 

職人の例が続いていますが、ここには新しい観点があります。

それは、見切るか見切らないかの判断は「全体」を見て決まるということです

形式段落4にあった「相場観」に繋がりそうです

 

10

全体感が相場観の大切な部分だ。

全体感があるから、部分を見切れる。

 

やはり形式段落9の内容が続いていましたね。

こうやって先を予想しながら読む習慣をつけましょう

 


いかがですか。

今回の課題文は一言で要旨をまとめることが容易なのではないでしょうか。

それは形式段落1の内容ですね。

つまり 

研究や文章書きを進めるためには、見切りをつけるということが必要だ。 

これを中心に200字にしていきます。

足していく内容も難しくないと思います。

課題文「なかほど」から「おわり」にかけて述べられていたのは、「見切る」ために必要なことです

それをまとめてあげればいいでしょう。

 

具体的には(形式段落の順で確認すると) 

・そこで見切っていいという相場観をもつこと。
・見切ることは二度と戻らないことを決断するのではなく、やり直せることを意識すること。
・全体を見て見切る判断をすること。 

最後の「全体を見て、部分を判断すること」は1つめの「相場観」の大切な部分なので、「見切る」ために必要なこととしては1つにまとめなければいけません。

 

ですから、足していく内容はこうなります。 

・全体を見て、見切るか見切らないかを判断できる相場観をもつこと。
・見切ることは二度と戻らないことを決断するのではなく、やり直せることを意識すること。 

 また、形式段落6で確認した内容も見落とせません。

 

・弱い人間が見切るという強いアクションを自分で納得してする(相場観をもつ)ために、信頼できる人に相談するなどの工夫がある。 

ここからは、次の内容を読み取りました。 

・自分が納得しながら(相場観をもって)見切ることは難しい。 

 


以上の内容を200字でまとめます。

 

書く順としては「前に進むには見切ることが必要→とはいえ難しいから工夫もある→やり直せる意識と全体感に基づく相場観をもてば見切れるようになる」となるでしょう

 

*「前に進むには見切ることが必要→やり直せる意識と全体感に基づく相場観をもてば見切れるようになる→とはいえ難しいから工夫もある」という順もありえなくはありませんが、最後に来る内容は「工夫」よりも課題文全体に占める割合が大きい「見切るために必要なこと」のほうがいいと思います。

 

研究や文章書きを前へと進めるには見切ることが必要だ。弱い存在である人間は見切るために信頼できる人への相談や納期の設定などをする。その工夫によって自分なりの相場観を持ちながら見切ることができる。また、見切ることが二度と戻らないという決断ではなくやり直しが可能だという意識や、作業の全体を見て目の前の部分を見切っていいか、見切らない方がいいかという判断ができる相場観をもつことで、見切ることが可能になる。(200字) 

 


設問2

 

絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです

具体的には「筆者の主張をふまえ」を見落とさないことです。

自分勝手な意見を書くのではなく、筆者の主張をふまえて自分の意見を述べる必要があります。

 

ということで、筆者の主張を確認します。

設問1より、 

研究や文章書きを進めるためには、見切りをつけるということが必要だ。 

そして、このためには「全体を見て、見切るか見切らないかを判断できる相場観をもつこと」「見切ることは二度と戻らないことを決断するのではなく、やり直せることを意識すること」が必要であると述べられていました。

また、見切るという行為が難しいからこそ、信頼できる人に相談したり、納期を設定したりするといった工夫によって相場観をもって見切ることができるとも述べていました。


長野大学_小論文_傾向と対策 - 高校教員の徒然日記」でお伝えした「どのように生きていくかという人間性(今回はズバリ学問に向き合う姿勢)」が課題文の内容(筆者の主張)だったということです。


このことについて、自分の意見の方向性を考えます。

今回はいくつかのポイントがありますので、どこに照準を合わせるかで自分の意見の方向が変わりそうです。

 

具体的には 

相場観をもって見切るための工夫をする、見切るということへの意識(何度でもやり直せる)、全体を見ることが重要… 

など、どこに照準を合わせても自分なりの意見を述べることができるでしょう。

 

ただ、はずしてはいけないのは、これらがすべて「研究や文章書き、つまり学問を前に進めるために必要なことである」に繋がるということです

どのような形で述べるにしろ、最終的には「自分が学問を進める上で見切るということが必要だ」ということになるでしょう。

 

筆者の主張に反論して「前に進めるために見切る必要はない」とか「相場観や全体感がなくてもかまわない」という論調で書くことは厳しいと思います。

 

自分の体験を振り返ると、いずれかに該当するようなことが誰にでもあることと思います。

具体的に述べることができそうなもので書くといいでしょう。


以上の内容で400字で書きます。

基本の構成はこうなるのでした。 

第一段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる
第二段落 自分の意見の理由、具体例
第三段落 意見のまとめ 

二段落構成にする場合は、上記の「第二段落」の内容を第一段落か第三段落に振り分けることになります。


以上で書くと、合格できる小論文になりますよ。

 

書き方や表現などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。

 


これからも過去問に取り組んでみましょう。

長野大学は過去問が少ないので、名寄市立大学で練習するのもアリですよ(長野大学と同じくHPから過去問をダウンロードできます)。

 

では、終わります。


今回以外の長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 

ついでに名寄市立大学のリンクも貼っておきます。

kinkoshin.hatenablog.com

 


Twitterでは新着記事や役立つ情報をお知らせしているのでぜひフォローしてください。

また、質問もこちらからどうぞ(^_^)