長野大学_小論文_2018年度_AO入試
こんにちは。きんこです。
長野大学(2018年度・平成30年度AO入試)の小論文の解説です。
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長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。
このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。
そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。
まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
現代文の力もつきますよ。
では、はじめます。
設問1
課題文の要旨を200字以内で書く問題です。
まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。
『現代新国語辞典』(三省堂)によれば
「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です。
小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。
それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。
ちなみにこのブログで解説をしている長野大学や名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。
ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。
まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。
ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。
では、今回の課題文を読んでいきましょう。
形式段落ごとに見ていきますので1~14まで番号を振ってください。
今回は各形式段落が短く「はじめ→なかほど→おわり」はあまり使えませんので、それぞれをまとめていくという形で見ていきましょう。
1
「津波てんでんこ」は「周囲に構わず各自ばらばらに逃げろ」という意味だ。
「津波てんでんこ」のこの意味が本文全体で言いたいことを具体例だと考えます。
2
私利私欲(自分勝手)を否定しない公共性(利他心)の考え方が大事だ。
これが筆者の考え、主張だと考えることができます。
これが「津波てんでんこ」と繋がっていくはずです。
3
「津波でんでんこ」の底にあるのはどんな考えか。
これが筆者の考えに繋がるのでしょう。
4
釜石小学校の児童は東日本大震災で的確な非難行動をして全員無事だった。
具体的な説明が始まりましたね。
5
どうやって肉親との「絆」を断ち切るのか。
具体的な説明が続きます。
6
「絆」を断ち切っていない。
周囲を「信頼」して自分も1人で逃げる。
「絆」とはお互いに自力で非難活動を行うことの「信頼関係を築き上げておく」ことだ。
形式段落1の「津波てんでんこ」の底にある考えですね。
周囲を信頼して、自分1人で逃げるから、皆が助かったわけです。
私利私欲(自分1人で逃げる)が公共性(皆が助かる)と繋がっていますね。
そして、それを結び付けているのが「信頼」「絆」だと分かります。
設問2の自分の考えの方向性が見えてきますね。
7
「絆」が「信頼」で補強されている。
「信頼」があって「絆」があるわけです。
8
「一人一人が私利私欲に走るが、それを非難しないようにしよう」と「一人一人が自立して自助の行動に出ることを「信頼」して各自避難しよう」というのは違うが、繋がっている。
形式段落6で述べたことの繰り返し(言い換え)です。
こちらの表現の方が「まとめ」となっています。
9
ラグビー元日本代表監督の平尾が述べている。
具体例の2つめです。
当然「津波てんでんこ」と同じ内容(+α)になると予想されます。
10
日本でチームワークというと野球のような「上意下達の世界」をイメージするが、ラグビーは違う。
どう違うかが大事なところです。
次の形式段落に繋がります。
11
ラグビーでは「攻守の切り替え」が全員の意志が共有される形で瞬時に起こらなければいけない。
全員の意志が瞬時に共有されなければいけないということは、各自で判断しなければ「瞬時」にはなりません。
「津波てんでんこ」の「一人一人が自立して自助の行動に出ることを「信頼」して各自避難しよう」ということと繋がりますね。
12
「自発性」がなければ一人で判断することができませんね。
13
リスク、一つの挑戦があるが、それを一人の判断で跳び越えている。
「跳ぶ」とは相手を「成熟した個人」と「信頼」することだ。
形式段落12で確認したように一人で判断するには自発性が必要です。
そして、その自発性によって、相手を信頼するという挑戦ができるのです。
この内容も設問2の自分の意見の方向性として使えそうですね。
14
「絆」はこのような「信頼」に裏打ちされると強固なものになる。
「私利私欲」の私が信頼し、信頼されているという自覚をもったとき、「私利私欲」が「私」に育つ。
形式段落13の流れから考えると、「私利私欲」の私が自発性をもって相手を信頼し、また、相手からも信頼されているというお互いが信頼し合っているという関係が「単なる私利私欲」を「私」へと育てる、となります。
大事なのは、ここでいう「私」が何なのかです。
これは形式段落14の中程の構造から読み解きます。
「信頼」するのは私である。その私の素が「私利私欲」。つまり足場は「私」で…
「つまり」は「イコール」を示しますから、「私」はその前に書かれている内容です。
ここで抜き出した部分のはじめにある「私」には「」がありません。
ということは「はじめにある私」と「つまり後にある私」の違いが「」がつくかどうかの違いです。
抜き出した2文目から「私=私利私欲」であることは分かります(ここの私には「」がありません)
ということは、私利私欲の私が信頼することによって「私」となると読み取れます。
「私」=他を信頼する私
ということが言えますね。
これを先程のまとめに入れると
「私利私欲」の私が自発性をもって相手を信頼し、また、相手からも信頼されているというお互いが信頼し合っているという関係が「単なる私利私欲」を他を信頼する私へと育てる、となります。
これでもまだ「私」とはどういうものかがイマイチ分かりずらいですね。
「私利私欲」が「他を信頼する私」に育つのですから両者は異なります。
その違いを簡単に言うとこうなるでしょう。
「私利私欲」は「自分のためだけに勝手に考え行動する個人」のことであり、「他を信頼する私」は「他もベストを尽くしているはずだという強い信頼で結ばれた絆があるから、自分もベストを尽くすことが最善だと判断できる個人」のことです。
単に自分勝手に行動するのではなく、そこには「他への信頼」があるからこそ、ある意味自分勝手な行動をする(そして、その結果全体としてプラスになる)という感じでしょうか。
ここまで読めれば、筆者の「私利私欲を否定しない公共性の考え方が大事」という主張と重なることも分かります。
「津波てんでんこ」もラグビーも私利私欲(自分だけ助かる・その時の自分の判断がベスト)を否定しないからこそ、公共性(皆が助かる・チームの勝利に結びつく)に繋がるのですね。
ですから「津波てんでんこ」とラグビーの話を踏まえて筆者の主張を補強すると
信頼関係を築いた私利私欲は公共性に繋がるから、信頼関係に裏打ちされた私利私欲は重要だ。
ということになるでしょうか。
最後の段落には「釜石小学校の子どもたちが私に教えてくれた」とありますから
私利私欲と公共性を結び付けるものは信頼・絆だということに筆者は気づかされた。
と言えます。
ということで、この文章の要旨をまとめるとこうなります。
私利私欲を否定しない公共性の考え方が大事だが、そこには信頼に裏打ちされた絆があることが必要である。
200字にするために以下の内容を足します。
以上を踏まえてまとめるとこうなります(内容は同じですが前半部分のまとめ方を2つ示しておきます)。
一人一人が自立して自助の行動に出ることを信頼して各自避難する「津波てんでんこ」と、個人の自発性をもとに全員の意志を共有することが大切なラグビーに共通するのは、自発性をもったうえで一人一人が相手を成熟した個人だと信頼し行動することだ。この信頼関係が絆を強固にし、私利私欲である私を他を信頼する私に育てる。私利私欲を否定しない公共性の考え方が大事だが、そこには信頼に裏打ちされた絆があることが必要である。(200字)
「津波てんでんこ」を支えているのは一人一人が自立して自助の行動に出ることを信頼して各自避難することであり、ラグビーで大切なことは個人の自発性をもとに全員の意志を共有することだ。両者の共通点は一人一人が相手を成熟した個人だと信頼し行動することだ。その信頼が絆を強くし私利私欲の私を他を信頼する私に育てる。私利私欲を否定しない公共性の考え方が大事だが、そこには信頼に裏打ちされた絆があることが必要である。(200字)
設問2
絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。
具体的には「筆者の主張をふまえ」を見落とさないことです。
自分勝手な意見を書くのではなく、筆者の主張をふまえて自分の意見を述べる必要があります。
ということで、筆者の主張を確認します。
設問1より、
私利私欲を否定しない公共性の考え方が大事だが、そこには信頼に裏打ちされた絆があることが必要である。
そして、このためには「自発性」が必要であることも述べられていました。
「自発性」を持ち、相手を信頼するからこそ、私利私欲を超えた公共性が生まれるのでした。
「長野大学小論文の傾向と対策(リンク)」でお伝えした「どのように生きていくかという人間性」に通じることが課題文の内容(筆者の主張)だったということです。
このことについて、自分の意見の方向性を考えます。
今回はいくつかのポイントがありますので、どこに照準を合わせるかで自分の意見の方向が変わりそうです。
具体的には
自発性を中心に述べる、信頼関係を築くことを中心に述べる、信頼されることが自分を育てる…などどこに照準を合わせても自分なりの意見を述べることができるでしょう。
ただ、はずしてはいけないことは、これらはすべて「私利私欲が公共性に繋がる」ということです。
どのような形で述べるにしろ、最終的には「公共性を高めるために私利私欲である態度が必要だ」ということになるでしょう。
自分の体験を振り返ると、いずれかに該当するようなことが誰にでもあることと思います。
具体的に述べることができそうなもので書くといいかもしれませんね。
以上の内容で400字で書きます。
基本の構成はこうなるのでした。
第一段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる
第二段落 自分の意見の理由、具体例
第三段落 意見のまとめ
二段落構成にする場合は、上記の「第二段落」の内容を第一段落か第三段落に振り分けることになります。
以上で書くと、合格できる小論文になりますよ。
書き方や表現などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。
これからも過去問に取り組んでみましょう。
長野大学は過去問が少ないので、名寄市立大学で練習するのもアリですよ。
では、終わります。
今回以外の長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。
ついでに名寄市立大学のリンクも貼っておきます。
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