長野大学_国語_2022(令和4)年度_学校推薦型選抜(推薦入試)_第2問
こんにちは。きんこです。
長野大学2022年度(令和4年度)学校推薦型選抜(推薦入試)の国語第2問の解答解説です。
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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。
そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
この読み方、解き方を徹底することで入試問題を解けるようになるでしょう。
ぜひ身につけてください。
問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。
長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。
はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。
では、始めます。
[解答]
井上忠司『「世間体」の構造』より
問1
(ア)がいねん (イ)ていさい (ウ)どあい (エ)ばくぜん
問2
(1)重層 (2)厳密 (3)飛躍 (4)偏見
問3
客観的に属している集団だけでなく主観的な〈帰属意識〉を持っている集団を含むもの。(40字)
自分が実際に属している集団と、自分の態度や行動のよりどころとする集団。(35字)
客観的に規定される集団だけでなく、心理的に関係づけている主観的な集団を含むもの。(40字)
問4
自分が実際に所属している家族、親族、地域社会、学校、職場、団体、等々の客観的に規定される集団。(47字)
問5
ア、ウ
問6
イ、ウ
問7
自分の生活空間のうち、動的に揺れ動く自分が属している範囲のウチ以外のソトから、自分の態度や行動のよりどころとし、自分が心理的に関係づけている集団までのもの。(78字)
自分の生活空間として、自分の態度や行動のよりどころとし、自分が心理的に関係づけている集団の中の、動的に揺れ動く自分が属している範囲のウチ以外のソト側の空間。(78字)
[解説]
形式段落での説明になります。
1~8まで形式段落に番号を振ってください。
問1 漢字(読み)
これは完答したいところです。
ちなみに「漠然」の「漠」が漢字検定準2級の漢字であり、その他はそれ以下の級です。
問2 漢字(書き取り)
漢字検定2級まで取得していればまったく問題ありません(準2級でも大丈夫そうです)。
今回は「偏見」の「偏」のみ準2級の漢字で、その他はそれ以下の級です。
長野大学は準2級までの漢字しか出ていないですね。
「偏見」が難しかったかもしれません。
文脈から「偏見」の意味を見出すのが難しいからです。
とはいえ、「ヘンケン」は「偏見」しかないので、これを答えるしかないのですが。
問3 内容説明
筆者がとらえている広義な集団がどのようなものかを説明する問題です。
まず「広義」の意味をしっかりと押さえます。
広義…(あることばの意味の範囲を広く考えた場合の)広い意味(三省堂『現代新国語辞典』)。
筆者は、通常考えられている「集団」を、さらに広げたところまでを「集団」としているというニュアンスになります。
傍線部aを含む一文は形式段落4の「はじめ」ですから、このあと「なかほど」で説明され、「おわり」でまとめられると考えます。
そういう意識で読み進めると
階級や階層は「集団」ではないが、客観的な規定とはべつに、だれもが主観的な〈帰属意識〉をもっている。
階級や階層の問題に「準拠集団」の考え方を適用することで研究が進んでいる。
ということが読み取れます。
つまり、ここで筆者が述べている「集団」とは
「客観的な規定の集団(これが通常考えられている「集団」)」と「主観的な〈帰属意識〉のある集団(これが筆者が「集団」を広げている部分)」のどちらも含まれているものである
と分かります。
筆者は、客観的な集団だけでなく、主観的な集団も「集団」だと考えているということです。
客観的に属している集団だけでなく主観的な〈帰属意識〉を持っている集団を含むもの。(40字)
これが答えですね。
なお、この問題は複数の解答がありえます。
形式段落1~3の内容を読むと、「集団」において「準拠集団」と「所属集団」を対比で述べていることは明白です。
そして、先ほどの解答例の前半部分(客観)が「所属集団」であり、後半部分(主観)が「準拠集団」です。
つまり、筆者がとらえる広義の集団とは
「所属集団」だけでなく「準拠集団」をも含むもの
ということになるでしょう。
「所属集団」も「準拠集団」も形式段落2や3で説明されていますから、そこから解答を作るとこうなります。
形式段落2の内容で作成
自分が実際に属している集団と、自分の態度や行動のよりどころとする集団。(35字)
形式段落3の内容で作成
客観的に規定される集団だけでなく、心理的に関係づけている主観的な集団を含むもの。(40字)
はじめに示した解答例も、この2つの解答例もすべてベースは
「所属集団」だけでなく「準拠集団」をも含むもの
ですね。
じゃぁ、いったいどれが最も良いのでしょうか。
それは、このあとの設問(問4、問5、問7)を考えると、はじめに示したものが適当だろうという結論になります。
問4で「所属集団」、問5と問7で「準拠集団」をそれぞれ説明できるか(問5は具体例の選択)が問われているからです。
ですので、ここで2つめ、3つめの解答例にしてしまうと、問4や問7の答えとことばが重複してしまいます。
ということで、3つとも内容的には正解になると思いますが、他の設問との関係ではじめの解答例が最も良いと判断できます。
問4 内容説明
「所属集団」がどのようなものかを説明する問題です。
「所属集団」の説明は形式段落2と3でされています(実際には「所属集団」と「準拠集団」が対比で説明されていますね)。
「形式段落のつくり、主語になっている、修飾されている」の3つに注目して、どのように説明されているか読み取ります。
形式段落2
・私たちが所属している家族、親族、地域社会、学校、職場、団体、等々の集団
・自分が実際に属している集団
形式段落3
・客観的に規定される集団
この内容をそのまままとめると答えになります。
自分が実際に所属している家族、親族、地域社会、学校、職場、団体、等々の客観的に規定される集団。(47字)
問5 内容理解(具体例)
「準拠集団」の具体例を選択します。
このような問題は、いきなり選択肢を見るのではなく、「準拠集団」が何かを確認してから選択肢を確認します。
問3、問4でも確認してきたように、「準拠集団」の説明も形式段落2~4にあります。
形式段落2
・私たちが自分の態度や行動のよりどころとするような集団
形式段落3
・自分が心理的に関係づけている集団であり、主観的なもの
形式段落4
・主観的な〈帰属意識〉による集団
「準拠集団」とは、客観的なものではなく主観的なもの、つまり「その人の気持ちや考え方次第」のものと言えます。
「準拠集団」とは何かを押さえたところで、選択肢を見ていきましょう。
ア 「伝統文化を尊重する」というのは気持ちや考えですね。準拠集団です。
イ 「同窓会」は気持ちなどは関係なく、同じ中学校卒業であれば誰もが入っている集団です。こういうのが客観的な集団です。形式段落2のはじめに挙げられていた「学校」でもあります。所属集団です。
ウ 「愛犬家」というのは気持ちですね。準拠集団です。
エ 「働く人」は「会社」に所属している人ですね。形式段落2の「職場」に当たります。所属集団です。
オ 「患者の家族会」は気持ちなどではないですね。形式段落2の「家族」「団体」になります。所属集団です。
問6 内容理解
「世間は一定の構造を持っている」という筆者の主張に合うものを選びます。
傍線部は形式段落6の「おわり」にあります。
では、これは「何の話」の「まとめ」かを確認しましょう。
形式段落6の「はじめ」です。
人は、どこから「世間」と呼び、どこまでを「世間」とよぶのか。
なるほど。「世間とは何か」のまとめとして傍線部なわけです。
ですから、筆者が述べる「世間」とはどういうものかを確認することになります。
「世間」について述べられているのは、形式段落5からですね。
形式段落5
・一種の「準拠集団」
形式段落6
・「世間」のテリトリーを規定するものは個々人の主観
・「世間」はあいまいなもの
・個人の数だけ「世間」があることになりかねないが、準拠集団としての「世間」に着目すると一定の構造がある
形式段落7
・準拠集団としての「世間」を区別する基準は「ウチ」と「ソト」の観念
・「ウチ」とは、生活空間の自分が属している範囲
・「ソト」とは、生活空間の自分が属している範囲以外
・「ウチ」と「ソト」の基準は、人によって異なる
形式段落7は「世間」というより、「世間」を規定する「ウチ」と「ソト」との説明が主になっていますが、大事なので確認しておきます。
これらを確認したところで選択肢を見ていきます。
ア 「世間」は客観的なものではなく、主観的なものです(形式段落6)。
イ これが紛らわしい選択肢です。
選択肢を簡単にすると「個人の数だけ『世間』はない(『世間』は1つだ)」となります。
形式段落6に「個人の数だけ『世間』があることになりかねない」とありますが、その直後に「にもかかわらず」と筆者はそれを否定しています。
つまり、筆者は「個人の数だけ『世間』があると思われるかもしれないが、準拠集団として考えればそうではなく、『世間』は一定の構造を持っている(たくさんあるわけじゃない)」と主張しているわけです。ですから、この選択肢は筆者の主張に合っているものです。
ウ ウチとソトの区別は主観的なものです(形式段落7に「人によって異なる」とあります)。
エ 所属集団としての「世間」の話はされていません。
オ 成人になれば一定になるという話はされていません。
問7 内容説明
準拠集団としての「世間」を説明する問題です。
問6と考え方が重なるところも多いですが、次のような手順で考えていきます。
「世間」について述べられているのは形式段落5からでしたが、説明すべきは「準拠集団としての世間」なのば、傍線部bを含む一文に注目します。
形式段落6
・準拠集団としての「世間」に着目するとき、そこにはおのずから、「世間」は一定の構造をもっていることが知られる
ここから、「準拠集団としての世間」は「一定の構造」を持っている、すなわち、この構造を説明してあげると答えになることが分かります。
問6での手順と同じように、形式段落6の「はじめ」を見ます。
どこから「世間」と呼び、どこまでを「世間」と呼ぶのであろうか
この部分が「構造」の説明として使えそうですね。
(筆者が説明している世間とは)○○から○○までのもの。
これが答えの大枠(フレーム)です。
次に形式段落7を確認します。
・準拠集団としての「世間」を区別する基準は「ウチ」と「ソト」の観念
・「ウチ」とは、生活空間の自分が属している範囲
・「ソト」とは、生活空間の自分が属している範囲以外
・「ウチ」と「ソト」の基準は、人によって異なる
でした。
つまり、この「ウチ」以外である「ソト」からが「世間」と言えそうです。
(ウチが明らかに「世間」ではないことは分かりますよね)
自分の生活空間のうち、自分が属している範囲のウチ以外のソトから、○○までのもの。
次にどこまでが「世間」かを考えます。
これは「準拠集団」がどのようなものかを説明すればいいでしょう。
「準拠集団」とは問5で確認したように
・私たちが自分の態度や行動のよりどころとするような集団
・自分が心理的に関係づけている集団であり、主観的なもの
・主観的な〈帰属意識〉による集団
でした。
これを後半の○○に入れます。
自分の生活空間のうち、自分が属している範囲のウチ以外のソトから、自分の態度や行動のよりどころとし、自分が心理的に関係づけている集団までのもの。(71字)
もう少し足すことができるので、「『ウチ』と『ソト』の基準は、人によって異なる」という内容を入れましょう。
このままのことばでは上手に入れることが難しいので、形式段落7の「なかほど」の部分を使います。
・ウチとソトとの関係はダイナミック(動的)な関係だ
人によって異なるから、ウチとソトは動的、つまり「動く」わけですね。
これを足して答えとします。
自分の生活空間のうち、動的に揺れ動く自分が属している範囲のウチ以外のソトから、自分の態度や行動のよりどころとし、自分が心理的に関係づけている集団までのもの。(78字)
他の書き方も示しておきます。
先ほどの解答例までの流れが分かれば、準拠集団としての「世間」のイメージは次のようになりますよね。
準拠集団の中のウチ以外の部分
二重丸を書いて、その側の円が準拠集団、内側の円の内側がウチという感じです。
となると、先ほどの解答例は次のようにも説明できます。
自分の生活空間として、自分の態度や行動のよりどころとし、自分が心理的に関係づけている集団の中の、動的に揺れ動く自分が属している範囲のウチ以外のソト側の空間。(78字)
はじめの解答例の方が作りやすいと思いますが、こっちでもオッケーでしょう。
以上が第2問の解説です。
第1問と同じように、「対比」されているものをそれぞれ正しく読み取ることができるか、筆者の主張はどちら側かを読み取ることができるかが試される問題でした。
丁寧に文章を読み「何が何なのか」を押さえながら読みましょう。
はじめに紹介した私のブログの「文章の読み方」ができればバッチリです。
2021年度入試まで長野大学では、文章を正しく読めること、自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること、そして漢字や語句の意味などの語彙力が求められてきました。
このことは学校推薦型選抜(推薦入試)だろうと総合型選抜(AO入試)だろうと、一般選抜だろうと変わりませんでした。
ただ、2022年度入試では「自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること」をはかる設問は出題されていません。
もしかすると、文章を正しく読む力、語彙力だけを求めるようになったのかもしれません。
とはいえ、再び「自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること」をはかる設問が出題されることもあるかもしれませんから油断はできません。
自分の意見を述べる設問に関しては、過去の長野大学の小論文問題をやってみるのがいいかもしれません。
私のブログで解説もしているので見てみてください。
先程も書いたように、長野大学の入試問題は漢字などの語句の問題に始まり、文脈から解ける空欄補充、基本的な読解力、表現力などを問うてきます。
特別な力などではなく「基本的な国語力」を試す問題と言えます。
この問題を解けるようになることは、皆さんの人生においてプラスの何かをもたらしてくれるでしょう。
「入試問題」だからやるのではなく、自分の力を高めるためにも取り組んでもらいたいと思います。
頑張ってくださいね。
では、これで終わります。
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