高校教員の徒然日記

PMA~Positive Mental Attitude~

長野大学_国語_2018(平成30)年度_推薦入試

こんにちは。きんこです。

 

長野大学(平成30年度推薦入試)の国語の解答解説です。

 


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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。

そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。

まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。

 

kinkoshin.hatenablog.com

kinkoshin.hatenablog.com

kinkoshin.hatenablog.com


この読み方、解き方を徹底することで入試問題を解けるようになるでしょう

ぜひ身につけてください。

 


問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。

www.nagano.ac.jp

 


はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。

 

では、始めます。

 

[解答]

 

1 語句

 

問1

(1)③  (2)②  (3)③  (4)①

 

問2

(1)③  (2)③  (3)④  (4)①

 

問3

(1)②  (2)①

 

2 暉峻淑子『対話する社会へ』

 

問1 

A カ  B イ  C ケ  D オ

 

問2

人間として~る話し合い

 

問3

自分の考えや感情が、他者との対話で、よりよいものに高められる達成感を味わう経験。(40字)

 

問4

現代社会は個性や生活の多様化や階層の分離の固定化が進んでいるため、物事を相対的、多角的にとらえ直し、明確な論拠で議論をし、合意に到達する社会を目指すべきだ。(78字)

 

3 西垣通集合知とは何か」

 

問1

知は、変動する環境世界に適応するための生命的な行動ルールとして自分で動的に創りだしたものだから。(48字)

 

問2

(警告している内容)

筆者は、汎用人工知能の客観的、機械的な管理は、現実の細かい状況に即応できない融通のきかないものになる可能性があると警告している。

(知が停滞するような具体例と対処)

省略

 


[解説]

 

 

問1 語句の意味

 

幅広く語句の意味が問われています。

市販の現代文単語帳や語句の問題集を1冊仕上げましょう

幅広い語句が問われるため、いわゆる評論語だけではなく四字熟語や故事成語、慣用句なども収録されているものをオススメします。

また、教科書や問題集、模試などでわからない言葉が出てきたら、その都度調べることを習慣としましょう

 

 

問2 語句

 

問1の逆パターンです。

対策は問1と変わりません。

 

 

問3 語句の用例

 

語句の正しい使い方を答える問題です。

対策は問1と変わりません。

 


 

形式段落での説明になります。

1~21まで形式段落に番号を振ってください。

(7ページ、「口答えするな」が3、「たとえば」が4、「昔も今も」が5です)

 

問1 空欄補充(語句)

 

空欄補充問題は、空欄前後の文脈から判断できることがほとんどです。

まずは空欄を含む一文をしっかり確認し、何について述べている一文なのかを確認します。

その上で、どのような語句を補充するのかを考えます。

 

 

おかしいと思っても、上の立場の人への忖度や自己(A)から意見を述べることを躊躇する」という流れです。

上の立場の人に遠慮すること、「自己」に続く内容であることから考えて「(自分を)守る」というような語が入りそうです。

選択肢から「保身」だと分かります。

もしかすると「弁護」と迷った方がいるかもしれません。

「弁護」とは「利益になることを主張し、その立場を守ること」です。「主張する」んですね。しかし、本文では「意見を述べない」のですから「弁護」は不適当だと判断します。

 

市民の人格権を守るためには、(A:保身)のための(B)は有害無益だ」という流れです。

形式段落1からの流れ、次の一文の「和をもって協調するだけではダメ」という流れから「述べない」というような語が入りそうです。

選択肢から「沈黙」だと分かります。

また、形式段落8では「誰も批判者がいない(B)の社会」とあります。

修飾語は被修飾語とイコールの関係ですから「批判者がいない」=「Cの社会」となります。

ここからも「沈黙」だと分かりますね。

 

昔も今も、自分の考えを率直に言えば『(C)をやめるべきだ』となるが、それを怖れて(C)当時は自由に述べることが禁じられていた」という流れです。

(C)が「当時」に続くというのがポイントです。

選択肢の中で「当時」に続くのは「圧政」か「戦争」しかありません。

続く形式段落6、7で「軍隊の延長」「戦場の兵士」などの言葉があることから「戦争」を選ぶことができます。

 

今も(D)の自由のない国のニュースを見ると、日本の過去を思い出す」という流れです。

「日本の過去」といは形式段落5~7で述べられていた「自由な意見を述べられなかった当時」のことです。

「意見を述べる」というような語が入りそうです。

選択肢から「言論」だと分かります。

「自由のない」に続くことから、勢いで「表現」にした方がいるかもしれませんが(表現の自由の方が聞き慣れているような気がするので)、「意見を述べる」と「表現」は違いますね。

「表現」というのは「意見の言い方」と言い換えることができ、「述べる」ことではありません。

 


問2 語句の定義

 

筆者の言う「対話」がどういうものであるかを本文中から抜き出す問題です。

つまり、「筆者の言う『対話』とはどういうものか」というイコール問題(言い換え問題)ということです。

 

イコール(言い換え)問題の基本的な考え方は、「その語句が主語になっている」部分か「その語句が修飾されている」部分に注目することでした

 

 

例 「花」はどういうものか。

①花は赤く美しい。

②赤く美しい花。

これらから「赤く美しいもの」という答えが導けます。 

 

ですから、本文から「対話」が主語になっている部分、もしくは修飾されている部分を探します。

 

すると、形式段落14に「対話は」と主語になっている部分があることが分かるはずです。
その一文が「対話」の定義となります。

 

40字以上50字以内という制限がありますから、しっかりと字数を数えて答えます。

字数を数えずに「この辺だ」という感じで抜き出すと間違う可能性があるので、必ず数えてくださいね

 


問3 内容説明

 

どのような経験をすれば反対意見を述べることに躊躇しなくなるかが問われています。

 

傍線部aまでは「反対意見を述べることができなかった」ことがずっと述べられてきましたから、傍線部の後からその対策について述べられていそうです。

 

そのような意識で傍線部aの後を読んでいくと、形式段落15の2文目「そのことを経験によって知っている人は、対話を忌避しようとはしません」に気付くことができるでしょう。

そのことを経験して知っている人は、対話をする(反対意見も述べる)」のです。

「そのこと」の指す内容が答えだと分かります。

 

指示語の指す内容は、基本的に直前です

形式段落15の一文目「自分の考えや感情が、他者との言葉の往復によって、よりよいものに高められていく達成感」が指す内容でしょう。

 

字数制限があること、「達成感」の述語を適切に加えること、問われているのは「どのような経験か」なので文末を「経験」にすることの3点に注意して答えを作ります。

 

 

問4 筆者の主張

 

現代社会はどのようなものか」と「目指すべき社会はどのようなものか」の2つが問われています。

 

まず「現代社会はどのようなものか」です。

現代社会」について述べている箇所を探します。

その際、問2でお伝えしたことを意識して読んでみてください。

 

すると、形式段落16に「日常」という語を見つけることができます。

「日常」というのは「現在のこと」でしょうから「現代」のことを述べている形式段落だと考えます。

 

この段落を確認すると、「○○社会ではない」という文が2つ出てきます。

ということは、現代社会は「○○でない社会」と言えそうです。

つまり、現代社会は「よりよい解決をめざして、討議・討論を重ねて決めていかない社会」であり「物事を相対的、多角的にとらえ直し、論拠を明確にして議論をし、合意で到達しない社会」であるということです。

 

と同時に、現在「○○でない社会」でダメだということを筆者は述べているわけですから、「○○な社会」が目指す社会のような気がします。

とはいえ、ここではそれは置いておきましょう(今考えているのは「現代社会はどのようなものか」なので)。

 

また、続く形式段落18では「現実に社会が」という部分を見つけることができます。

「現実に社会がこうなっている」という内容でしょうから、この部分も筆者の言う「現実の社会」つまり「現代社会」だと考えられます。

現代社会は「急速に個人化して、個性の違いや生活の多様化が進み、階層の分離が固定化していく」社会だということです。


次に「目指すべき社会はどのようなものか」です。

 

傍線部bは「対話することが大事な社会」ですから、これが目指すべき社会です。

ですから、これを言い換えてあげます。

 

「対話すること」とは問2で確認した内容でした。

 

では、なぜ「対話すること(考えや感情を語る話し合い)」が大事なのでしょうか。

ここまで考えて、先程の「○○な社会」に戻ります。

 

「対話する」=「討議・討論、議論をする」と言えます。

そして、「討議・討論、議論をする」ことで「よりよい解決」ができたり、「合意」できたりするわけです

これが、対話することが大事な理由だと考えられます。

 

以上の内容を80字以内でまとめます。

 

その際、「よりよい解決をめざして、討議・討論を重ねて決めていく社会」と「物事を相対的、多角的にとらえ直し、論拠を明確にして議論をし、合意で到達する社会」とは、ほぼ同じ内容と言えるので、より詳しい内容である後者をメインに使うといいでしょう。

 


 

形式段落での説明になります。

1~17まで形式段落に番号を振ってください。

 

問1 理由説明

 

傍線部にある「主観」「一人称」の意味が分からなければ答えることができないので意味を確認します。

 

主観…自分だけの見方や考え方、感じ方のこと。ちなみに対義語は「客観」です。

一人称…自分自身を指す言葉。「私」など。ちなみに二人称は「あなた」、三人称は「彼、彼女、それ」などです。 

 

傍線部は「知は、自分だけの見方や考え方、感じ方だ」と言い換えることができます。

で、それが何故かという問題です。

 

では、理由を考えていきましょう。

 

傍線部aが形式段落のはじめにあること、直前の「つまり」がそれまでの内容をまとめる働きをする接続詞であることから、形式段落12以前に傍線部aの説明(「知」の説明)がされていると考えます。

 

すると、形式段落11に「知というのは」とあることに気付きます。

「知」が主語になっているのですから、この一文、この形式段落で「知」の説明がされていることが分かります。

 

形式段落11の内容をまとめます。

知は、生命体が変動する環境条件の中で生き抜くための行動ルールを自分の体験にもとづいて、自分で動的に創り出したものである

だから、生命体は自律システムと言える(形式段落12)と続きます。

 

「知」の説明は形式段落11ですので、先程の内容をまとめると答えになります。


ここで、記述問題の答えの作り方についてアドバイスしておきましょう

記述問題は「一言で答える」ことから始めます

そして、その「一言」が解答の文末で決まりです

 

今回であれば「(知は)自分で動的に創り出したものだから」です。

(主語だけは加えておきましょう)

 

問題と照らし合わせてみます。

知は、自分で動的に創り出したものだから、自分だけの見方や考え方、感じ方なのです。

 

大丈夫そうですね。

 

次に、指定された字数に合わせて、「前に」説明などを足していきます

先程確認した形式段落11の内容を「前に」足していきましょう。

 


問2 筆者の主張、自分の考え

 

小論文的な問題です。

「筆者が警告していること」と「知が停滞するような具体例」と「それへの対処法」が問われています。


まず「警告していること」です。

 

傍線部bは「汎用人工知能が君臨したら、人間の知が停滞してしまう」という内容です。

これがそのまま筆者が警告していることだと考えられますが、「汎用人工知能」がどのようなものか、「知が停滞する」とはどのような状態かを説明してあげます。

 

傍線部bは形式段落17のはじめにありますから、この説明がこの段落でされると考えます

形式段落17中程の「ルールを機械的に遵守し、現実の細かい状況に即応しない態度は、融通のきかない官僚主義として排斥されていく」から、「汎用人工知能」とは「ルールを機械的に遵守し、現実の細かい状況に即応しない」もの、「知が停滞する」とは「現実の細かい状況に即応せず融通がきかない」ことだと分かります。

 

また、この文章全体が「人=主観」「コンピュータ(汎用人工知能)=客観」という対比で述べられていることから、「汎用人工知能」が「客観的」なものであることも分かります。

 

以上をまとめると、筆者が警告していることになります。

 

 

筆者は、汎用人工知能の客観的、機械的な管理は、現実の細かい状況に即応できない融通のきかないものになる可能性があると警告している。(64字) 


次に「知が停滞するような具体例」を考えます。

 

「警告していること」を考えた過程から「現実の細かい状況に即応できない融通のきかない」ようなものの具体例を考えればいいと分かります。

たくさんのデータから機械的に決められていて、人の主観関係なく、押しつけてくるようなものです。

 

自分の経験や身のまわりのことに思いを巡らせてみましょう。

いろいろあるのではないでしょうか。

後程、例を載せますが「自分で考えること」が何より大事ですよ。


最後に「具体例に対する対処法」を考えます。

 

これは、現実の細かい状況をしっかり見る、主観を大切にして臨機応変に対応する、決められたことに思考停止するのではなく自分で考える習慣をつける、などのようになるでしょう。

自分で考えた具体例と合わせて考える必要があります。

 

以上の内容を200字で書きます。

「200字って多い」と感じるかもしれませんが、逆に200字に収めることの方が難しいと思います。400字とかだともう少しラクに書けそうです…。


では、解答の例を載せておきます(これと先程確認した「警告していること」を合わせると200字程度になります)。

 

たとえばマッチングアプリは入力された条件など膨大なデータから男女を機械的にマッチングする。しかし、実際には表面的なデータには表れない部分で相手を判断することが多い。そのため、主観によって相手との相性を確認していく作業をすることが必要である。 

 

たとえば体育座りが挙げられる。学校教育において体育の授業や整列時には機械的に体育座りが強要される。近年科学的に腰に良くないということが判明したにも関わらずこの慣習は続いている。慣習に従うのではなく、新たな科学的根拠や時代の変化に合わせて柔軟に対処する必要がある。 

 

スポーツの練習において、毎年同じ時期に同じ練習を機械的に行うことが具体例として挙げられる。毎年同じ練習をすることは一般的には力がつくと考えられるが、チームや個人が毎年その同じ時期に同じ状態であるということは考えられない。そのため、その時の個人やチームの状況を考えた上で、足りない部分を補う練習など状況に応じて考える必要がある。 

 


いかがでしたか。

同じ問題が出ることはありませんが出題傾向が大きく変わることはないでしょうから、どんな問題が出てもここで示した「文章の読み方」「解き方のプロセス」は変わりません

今回の問題や他の年度の問題などを通して、同じ「文章の読み方」「解き方のプロセス」で解くようにしましょう。

そうすることが一番の対策になるはずです。

 

長野大学の入試問題は、語句の問題に始まり、基本的な読解力、表現力を問う良問です

特別な力などではなく「基本的な国語力」を試す問題と言えます。

この問題を解けるようになることは、皆さんの人生においてプラスの何かをもたらしてくれるでしょう。

「入試問題」だからやるのではなく、自分の力を高めるために取り組んでもらいたいと思います。

 

頑張ってくださいね。

 

では、これで終わります。


他の年度や国語の勉強の仕方はこちらからご覧ください。

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