長野大学_小論文_2019年度_編入学試験
こんにちは。きんこです。
長野大学(2019年度・平成31年度編集学試験)の小論文の解説です。
Twitterでは新着記事や役立つ情報をお知らせしているのでぜひフォローしてください。
また、質問もこちらからどうぞ(^_^)
問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。
長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。
このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。
そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。
まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
現代文の力もつきますよ。
では、はじめます。
課題文は加藤尚武『二十一世紀のエチカ』です。
設問の解説の前に、長野大学が示している、小論文における「評価のポイント」を確認しておきましょう。
以下の記事で詳しく紹介していますので、まだご覧になっていない方は読んでおくことをオススメします。
編入学試験で特に意識しておきたいことは、課題文の筆者は何らかの「問題」を提起しているということです。
筆者が提起している「問題」はどういうことかを読み取るという意識で課題文を読みましょう。
それは、長野大学が求めている「評価のポイント」ですし、設問2ではその問題点についての自分の意見を述べることが好ましいからです。
設問1
課題文の要旨を200字以内で書く問題です。
まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。
『現代新国語辞典』(三省堂)によれば
「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です。
小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。
それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。
ちなみにこのブログで解説をしている長野大学や名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。
ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。
また、長野大学の課題文では何らかの「問題」が提起されているはずです。
読み取るべき筆者の主張は、「問題点そのもの」であったり、「問題に対する筆者の考え」であったりするということを意識しておく必要があります。
まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。
ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。
では、今回の課題文を読んでいきましょう。
形式段落ごとに見ていきますので1~7まで番号を振ってください。
1
倫理的問題というのがあるが、どちらが良いのかの選択はすべて倫理的選択だ。
どちらが良いかを選択することが、倫理的選択だということを読み取ります。
また、この倫理的選択こそが、この課題文で提起される問題かな、と思って読み進めたいところです。
2
たとえば病人で考えると、当人の生命の質(QOL)が良くなるかどうかが判断の基準になる。
倫理的選択の具体例です(「たとえば」で始まっているから明らかですね)」。
また、ここでは医療・福祉の分野での例だということも確認しておきましょう。
3
私は生命の質を感じた経験をした。
高齢の小父さんは弱っているのに、畑に行くのが好きで、ひとりで出かける。
QOLの具体例が始まりました。
この具体例が倫理的選択の話につながっていくはずです。
4
息子は「入院したらおしまいだから」と言っていた。
小父さんのQOLは畑に出るとか人と話をするとかいう自然な暮らしだ。
息子夫婦は小父さんのQOLを考えて無理に入院させていない。
形式段落3の続きです。
「入院して長生きするか」「入院せずに自然な暮らしをするか」という小父さんのQOLの選択の話だとわかります。
やはり、倫理的選択(どちらが良いのか)の話でした。
5
病院で治療を受ければ長生きするかもしれないが、生きている意味がないような毎日になるかもしれないから、ただ生きることよりもよく生きることを選ぶという態度がある。
小父さんの倫理的選択を一般化した段落です。
述べられていることは同じです。
6
しかし
人間が安直に命を縮めるようなことをしていいわけはない。
生命の尊厳・神聖性(SOL)には、いつでも、どこでも、だれにでも同じに適用できるという強みがある
「しかし」という逆接から始まっていることに注目しましょう。
小父さんの例を通して述べてきたQOL中心の選択とは違う立場の話です。
それがSOLですね。
とはいえ、新たにその言葉が出てきただけで、述べていることはここまでの内容と同じです。
小父さんの例で言えば「入院して長生きするか=SOL」「入院せずに自然な暮らしをするか=QOL」です。
7
人類はSOLを「人間の生命はどのような犠牲を払ってでも延長するように努力しなければならない」と解釈してきたが、やみくもに生物としての命を延長すればいいということではないという考え方が出てきた。
それが、SOLをQOLに引きつけて解釈する態度だ。
これまでは「生命」について、SOLは「生命重視(何よりも生命が大事)」という解釈だったが、そこに小父さんのようにSOLをQOLに引きつける考え方が出てきたわけですね。
課題文には「提起された問題」があることを意識していれば、これが「問題」だということが容易に分かります。
すなわち、この課題文で提起されている問題とは「生命とQOLのどちらを優先する選択をするかという倫理的選択がある」というものです。
また「いのち」を表す表現として、「生命」と「生物としての命」の2つを使い分けていることも注目しておきましょう。
対比的な考えで読むと、「生物としての命を延長すればいいのではない」というのは「人としての命を延長しよう」と考えることができます。
設問2では、この辺りを踏まえて自分の意見を考えたいところです。
課題文では、これに対する筆者の見解は述べられていないことも確認しておきます。
いかがですか。
今回の課題文は中程に長い長い具体例が挟まれていたことが分かります。
ということは、「主張」の部分は具体例の前後に抽象的な形で表れているはずです。
ということで、課題文を一言(タイトル的に)でまとめるとこうなります。
生命についての倫理的選択
で、この課題文で述べられている選択が、SOL(生命の尊厳)は生命重視であるという考え方と、SOLは生命の質(QOL)も重要視する考え方との選択です。
コレに対する筆者の見解は述べられていませんから、コレが課題文の要旨となります。
前半の内容は形式段落7、後半の内容は形式段落5で述べられていたことを使ってまとめるとこうなります。
人類は、「人間の生命はどのような犠牲を払ってでも延長するように努力しなければならない」のが生命の尊厳だと解釈してきたが、ただ生きることよりも生命の質を良くすることも判断の基準にすることが生命の尊厳だという考え方が出てきており、そこに倫理的選択がある。(125字)
すでに125字です。これに75字程度増やす必要があります。
では、どのような内容を足せばいいでしょうか。
この課題文は「はじめ」の部分、つまり形式段落1から分かるように「倫理的選択」の話です。
形式段落2が「たとえば」から始まっていることから分かるように、その後の「生命」についての「なかほど」に当たる部分の話題は、あくまで「倫理的選択」の一例です。
ですから、この課題文の構成は「倫理的選択がある→その一例として、医療や福祉分野で見られる「生命」についての倫理的選択を挙げている」となるでしょう。
ということで、要旨にも「倫理的選択」とはどのようなものかという説明をしっかりと書き、その上で「生命」についての例を書きます。
倫理的選択の説明は形式段落1に述べられていました。
それを使ってまとめると、次のようになります。
どちらが良いのかを選ぶという形の問題は、すべて倫理的選択である。これは医療や福祉の分野でも見られる。たとえば、人類は「人間の生命はどのような犠牲を払ってでも延長するように努力しなければならない」のが生命の尊厳だと解釈してきたが、ただ生きることよりも生命の質を良くすることも判断の基準にすることが生命の尊厳だという考え方が出てきた。これが医療や福祉の分野で見られる生命に関わる倫理的選択である。(196字)
設問2
絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。
具体的には「筆者の主張をふまえ」を見落とさないことです。
自分勝手な意見を書くのではなく、筆者の主張をふまえて自分の意見を述べる必要があります。
ということで、筆者の主張を確認します。
設問1より、
生命についての倫理的選択
そして、ここには「評価のポイント」で確認したように「問題」が提起されていました。
それは「生命とQOLのどちらを優先する選択をするかという倫理的選択」の問題です。
また、これは「長野大学_小論文_傾向と対策 - 高校教員の徒然日記」でお伝えした「どのように生きていくかという人間性(今回はズバリ「生命」がテーマ!)」が課題文の内容(筆者の主張)だったということです。
今回の場合、筆者の主張をふまえて自分の意見を考えるというのは、次のように問われているということになります。
当人の望みなどのあらゆるものを犠牲にして、とにかく生命を延長させることを重視するあり方と、やみくもに生物としての命を延長するのではなくQOLを優先させることを重視するあり方のどちらを選ぶかという倫理的問題があるが、あなたはどう考えますか。
非常に難しい問題ですね。
当然ですが、「これが正解!」なんてものはないでしょう。
しかし、私たちがこの問題に直面したとき、必ずどちらかの選択を迫られるはずです。
そして、その場面は自分の家族の場合はもちろん、自分自身の場合もあるわけで、必ず「自分の考え」で選択するときが来ます(家族とは話し合うことにはなると思いますが)。
ですから、「正解がないから分からない」ではいけませんね。
今の自分ならどう考えるのかというのを、リアルな場面を思い浮かべながら想像力を働かせて考える必要があります。
繰り返しますよ。
これは、簡単な問題ではありません。
しかし、いずれ誰しもが考えなくてはいけない問題でもあります。
自分はどのように考えるかということをしっかりと述べましょう。
その際に重要なのは「評価のポイント」にあった「自分の意見を論理的でかつ説得力を持って展開する」ことです。
気持ちだけを前面に押し出した文章や、抽象的なことだけ述べられた文章では、説得力を持ちません。
具体的な話や、そこから考えることができることをしっかりと述べましょう。
また、課題文中にも考えるためのヒントがありますので、4つほど見てみましょう。
①「当人の為になるか、ならぬか」という判断基準を用いている(形式段落2)
QOLの判断基準は、あくまで「当人」が中心だと分かります。
具体例で言えば「小父さん」が中心なのであって「筆者」や「息子夫婦」の考えが中心にはならないということです。
つまり、周囲の者の都合で考える方向は避けた方がいいということです。
たとえば、「本人がどう思おうと周囲の人は生きていて欲しいと願うものだ。だから、とにかく生命を延長するのがいい」という方向は避けましょう。
②自然な暮らしができるということが、小父さんにとってのQOLなのである(形式段落4)
あくまで「自然な暮らしをしたい」のは小父さんです。
QOLは人それぞれ異なるのだという視点は持っておきたいところです。
極論を言えば「とにかく生きている」ことがQOLだという考えも成り立ちます(その方向で書くことはあまりオススメしませんけど)。
③毎日が生きている意味もないような味気ないものになってしまう(形式段落5)
「生きる意味」というワードは、今回の問題を考えるに当たって大切になりそうです。
QOLに直結するものだからです。
④生命の尊厳とは、ただやみくもに生物としての命を延長すればいいということではない(形式段落7)
「生物として命」の対比は「人としての命」でしょう。
「ただ生きている」ことよりも「人として生きている」ことの方が大事だという考え方ですね。
生物として命を延長している状態とはどのようなものかを考えてみるといいでしょう。
その状態は「人として生きている」と言えるのかという視点につながっていきます。
これらの課題文中のヒントも参考にしながら自分の意見を考えましょう。
以上の内容で400字で書きます。
基本の構成はこうなるのでした。
第一段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる
第二段落 自分の意見の理由、具体例
第三段落 意見のまとめ
二段落構成にする場合は、上記の「第二段落」の内容を第一段落か第三段落に振り分けることになります。
特に第一段落の筆者の主張を踏まえる部分では、筆者が提起している「問題」をしっかりと踏まえていることが分かる書き方にすることが重要です(評価のポイントですからね!)。
以上で書くと、合格できる小論文になりますよ。
書き方や表現などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。
これからも過去問に取り組んでみましょう。
長野大学は過去問が少ないので、名寄市立大学の課題文を使って練習するのもアリですよ。
頑張ってくださいね!
では、終わります。
今回以外の長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。
ついでに名寄市立大学のリンクも貼っておきます。
Twitterでは新着記事や役立つ情報をお知らせしているのでぜひフォローしてください。
また、質問もこちらからどうぞ(^_^)