長野大学_国語_2022(令和4)年度_学校推薦型選抜(推薦入試)_第1問
こんにちは。きんこです。
長野大学2022年度(令和4年度)学校推薦型選抜(推薦入試)の国語第1問の解答解説です。
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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。
そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
この読み方、解き方を徹底することで入試問題を解けるようになるでしょう。
ぜひ身につけてください。
問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。
長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。
はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。
では、始めます。
[解答]
1 志水宏吉『「つながり格差」が学力格差を生む』より
問1
(ア)ばいかい (イ)かごん (ウ)みゃくらく (エ)ひるがえ(し) (オ)てい(し)
問2
(1)把握 (2)機微 (3)所与 (4)疑義 (5)苦境
問3
A…ウ、エ、
B…オ、キ、ケ
C…ア、イ、カ、ク、コ
問4
オ
問5
ア、オ
問6
学力とは、個人の能力や資質だけによって決まるものではなく、それらと、学校や地域、家庭など、的確な援助を受けられる環境との相互作用によって決まるものである。(77字)
[解説]
形式段落での説明になります。
1~8まで形式段落に番号を振ってください。
問1 漢字(読み)
「呈したい」はあまり見かけないので難しいかもしれませんが、その他は確実に得点したいものばかりです。
ちなみに「媒介」の「媒」、「呈」が漢字検定準2級の漢字であり、その他はそれ以下の級です。
問2 漢字(書き取り)
漢字自体は難しくありません。漢字検定2級まで取得していればまったく問題ありません(準2級でも大丈夫そうです)。
今回は「把」の「把」が準2級の漢字で、それ以外は4級以下となっています。
ただし、「機微」「所与」「疑義」など「ことば」としては難しめのものが問われています。漢字の学習というよりも、現代文における重要語をしっかりと学んでおく必要がありそうです。
問3 内容理解
この文章で対比されている「ピアジュの学習観」と「ヴィゴツキーの学習観」をしっかりと理解できているかを問う設問です。
このような問題のときには、それぞれがどのようなものかをしっかりと確認してから選択肢を見ていく必要があります。
読み取るときには、これらが主語になっている場合、これらが修飾されている場合、形式段落のはじめに述べられている場合(その後の形式段落のつくり)などに注目します。
詳しくははじめに紹介した「文章の読み方」のブログを参考にしてください。
これらに注目して、それぞれの内容を確認します。
○ピアジュの学習観
形式段落1
・「伝統的な」学習観
・個人中心
形式段落2
・「感覚運動期」「前操作期」「具体的操作期」「形式的操作期」の4段階で把握した
・子どもたちの発達段階に応じて学習を組織していかなければならない。
形式段落3
・「個人の頭のなかで起こる」ことがら
・冷静に論理的に物事を考えることができる個人が、理想的な学習者
形式段落6
・すぐれた個人がすぐれた学習者になる
○ヴィゴツキーの学習観
形式段落1
・「新しい」学習観
・社会関係重視
形式段落4
・思考や学習における他者との関係性に注目した
・一人ひとりの子どもの発達の最近接領域に働きかけること
・「発達の最近接領域」とは、「一人ではできない(わからない)」が「他者のサポートがあればできる(わかる)」という行為の水準・領域
形式段落6
・身近な他者の的確なサポート・援助こそが、学習の成功の鍵になる
以上の内容を踏まえて、各選択肢を見ていきます。
ア 「一人ではできない」子どもの発達に着目するのではなく、「一人ではできない」が「他者のサポートがあればできる」子どもの発達に着目するのがヴィゴツキーです。
どちらにも当てはまりません。
イ 「優れた大人になることを目指す」とは、どちらも言っていません。
ウ 「学習の成功の鍵を個人の内面に見出す」のがピアジュです。形式段落3の内容です。
エ 「年齢とともに発達する」から、それに合わせるのがピアジュです。形式段落2の内容です。
オ 「他者との関係性の内に展開されるとする」のがヴィゴツキーです。形式段落4の内容です。
カ 「日本の学校教育の方針になる」とは、どこにも述べてられていません。
形式段落6で、筆者は「後者の学習観(ヴィゴツキーの学習観)の方が好き」と述べていますが、それが「日本の学校教育の方針になる」とは述べていませんので、どちらにも当てはまりません。
キ 「他者との関係を重視する」のはヴィゴツキーです。
ク 「子どもの発達段階をあえて否定する」とありますが、「子どもの発達段階に合わせる」のがピアジュであり、ヴィゴツキーは「ピアジュをあえて否定した」わけではありませんので、どちらにも当てはまりません。
ケ 「他者からの支援が求められる」とするのがヴィゴツキーです。形式段落4・6の内容です。
コ 「ロシアの教育で主流となった」とありますが、ヴィゴツキーはロシアの心理学者というだけであり、彼の学習観がロシアの主流になったとは述べられていませんので、どちらにも当てはまりません。
問4 空欄補充
空欄補充の問題は、前後の文脈を確認して考えます。
今回の空欄は形式段落3の「なかほど」にありますから、そのまとめが「おわり」に述べられるはずです。
「おわり」を確認すると
「年齢のわりにしっかりしているね」という言い方がほめ言葉になるのは、そうした脈絡においてである。
です。
この「そうした脈絡」が空欄の内容です。
また、この文を確認すると
「年齢のわりにしっかりしているね」という言い方がほめ言葉になる=そうした脈絡においてだ
ですね。「は」は「イコール」ですから。
ということは
空欄=そうした脈絡=年齢のわりにしっかりしている
と判断できます。
ここまで考えて選択肢を見ます。
このような内容になっているのものは「小さな大人」しかありません。
問5 空欄補充(具体例)
再び空欄補充です。
空欄補充は前後の文脈なのですが、今回は設問にあるとおり「ヴィゴツキーの学習観の具体的な場面」を答えます。
ということは、まずは「ヴィゴツキーの学習観」をしっかりと押さえます(これが前後の文脈を押さえるということになります)。
すでに問3で確認しました。もう一度再掲します。
○ヴィゴツキーの学習観
・「新しい」学習観
・社会関係重視
・思考や学習における他者との関係性に注目した
・一人ひとりの子どもの発達の最近接領域に働きかけること
・「発達の最近接領域」とは、「一人ではできない(わからない)」が「他者のサポートがあればできる(わかる)」という行為の水準・領域
・身近な他者の的確なサポート・援助こそが、学習の成功の鍵になる
分かりやすくまとめると
「一人ではできない(わからない)」が「他者のサポートがあればできる(わかる)」ときに、身近な他者が的確なサポート・援助をする
ということでしょう。
ここまで確認してから選択肢を見ます。
簡単ですね。
他者に手伝ってもらって「できる(わかる)」状態になっているのはアとオです。
エについては、「辛抱強さが身に付いた」かもしれませんが、「強制的にやらされている」というのは「的確なサポート」とは言えませんよ。
そもそも「辛抱強さが身に付いた」とは「できる(わかる)」状態とは違いますしね。
問6 内容説明
筆者が考える「学力観」をまとめます。
筆者の学力観が述べられているのは形式段落6からです。
確認しましょう。
形式段落6
・後者の学習観(ヴィゴツキーの学習観)が好き
・ヴィゴツキーの学習観=身近な他者の的確なサポート・援助こそが、学習の成功の鍵になる
形式段落7
・学力は個人の能力や資質に焦点が当てられる傾向にあるが、その見方に半期を翻したい
・「できる・できない」は環境との相互作用によってもたらされるものだ
形式段落8
・平均点の高い学校が「よい学校」、低い学校が「悪い学校」と見られるのが一般的だが、それに疑義を呈したい
・子どもたちの学力テストの成績は「学校の力」と「地域・家庭の力」の総和だ
以上を確認して、答えを作りましょう。
設問では「個人」と「環境」を必ず用いてという条件があります。
「個人」はピアジュの学習観、「環境」はヴィゴツキーの学習観をあらわすことばですね。
そして、筆者はヴィゴツキーの学習観が好きだと述べています。
ということは、大きな枠組みはこうなると考えられます。
学力とは、「個人」によって決まるのではなく、「環境」によって決まるものだ。
これに「個人」「環境」の説明を足していきます。
まず「個人」に足してみます。
形式段落7に「個人」が出てきましたから、そこを使いましょう。
学力とは、個人の能力や資質によって決まるのではなく、「環境」によって決まるものだ。
次に「環境」の説明を足します。
形式段落7の内容です。
学力とは、個人の能力や資質によって決まるのではなく、環境との相互作用によって決まるものだ。(45字)
「相互作用」ということは、「個人」も「環境」のどちらも必要だと考えることができるので、次のように直します。
学力とは、個人の能力や資質だけによって決まるのではなく、それらと、環境との相互作用によって決まるものだ。(52字)
まだまだ字数が足りませんから、「環境」を具体的に説明しましょう。
形式段落8の内容です。
学力とは、個人の能力や資質だけによって決まるのではなく、それらと、学校や地域、家庭などの環境との相互作用によって決まるものだ。(63字)
設問の60字以上を満たしました。
ただ、このような場合(80字以内となっている)、基本的には80字くらい書かないと、すべてのポイントを書くことができていないと判断します。
ですので、さらに「環境」の説明を足します。
ヴィゴツキーの学習観(形式段落7)の内容です。
学力とは、個人の能力や資質だけによって決まるものではなく、それらと、学校や地域、家庭など、的確な援助を受けられる環境との相互作用によって決まるものである。(77字)
これでいいでしょう。
なお、後半の説明を増やしていったのは、あくまで筆者の学力観は「環境(ヴィゴツキーの学習観)」の方だからです。
こちらの説明を手厚くすることが筆者の学力観を説明することになります。
以上が第1問の解説です。
2021年度入試まで長野大学では、文章を正しく読めること、自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること、そして漢字や語句の意味などの語彙力が求められてきました。
このことは学校推薦型選抜(推薦入試)だろうと総合型選抜(AO入試)だろうと、一般選抜だろうと変わりませんでした。
ただ、2022年度入試では「自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること」をはかる設問は出題されていません。
もしかすると、文章を正しく読む力、語彙力だけを求めるようになったのかもしれません。
とはいえ、再び「自分の意見(考え、推測)を根拠を持って述べることができること」をはかる設問が出題されることもあるかもしれませんから油断はできません。
これらすべての力をつけるように学習しておくことをオススメします。
文章を正しく読む力が試される設問に関しては、「文章の読み方」を意識していれば比較的簡単に解くことができるはずです。
大事なのは、常に同じ読み方をしてみることです。
そのためには、一度取り組んだ問題を復習し、このブログで説明したような流れで考えることができるかを試すといいと思います。
自分の意見を述べる設問に関しては、過去の長野大学の小論文問題をやってみるのがいいかもしれません。
私のブログで解説もしているので見てみてください。
先程も書いたように、長野大学の入試問題は漢字などの語句の問題に始まり、文脈から解ける空欄補充、基本的な読解力、表現力などを問うてきます。
特別な力などではなく「基本的な国語力」を試す問題と言えます。
この問題を解けるようになることは、皆さんの人生においてプラスの何かをもたらしてくれるでしょう。
「入試問題」だからやるのではなく、自分の力を高めるためにも取り組んでもらいたいと思います。
頑張ってくださいね。
では、これで終わります。
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