長野大学_小論文_2017年度_一般推薦入試Ⅱ期
こんにちは。きんこです。
長野大学(平成29年度一般推薦入試Ⅱ期)の小論文の解説です。
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長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。
このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。
そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。
まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
現代文の力もつきますよ。
では、はじめます。
設問1
課題文の要旨を200字以内で書く問題です。
まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。
『現代新国語辞典』(三省堂)によれば
「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です。
小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。
それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。
ちなみにこのブログで解説をしている長野大学や名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。
ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。
まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。
ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。
では、今回の課題文を読んでいきましょう。
形式段落ごとに見ていきますので1~4まで番号を振ってください。
1
「間違いないようにものをするのではなく、思い切ってはき違えろ」という教えは真に価値ある教訓だ。
筆者の主張の可能性が高いですね。
文章の読み方の「はじめ」が大切だという好例です。
この後、この教えがなぜ価値あるのかが説明されていくと予想して先を読みましょう。
2
日本人は間違いないようにという用心深い躾ばかりを受けている。
互いに思うことを楽しく快活に話しあったり、こうしたほうが都合がよいと思うことを、無邪気に実行したりする力が非常に少ない。
間違いないようにということを主にすると、自分の考えはいつまでも実行できずに、人まねばかりになってしまう。
形式段落を「はじめ→中程→おわり」を意識して読むと、上記の内容が掴めます。
この中では「中程」の部分が大切ですね。
それは、「1」で述べた教訓の大きな理由になりそうだからです。
つまり、「間違わなようにしすぎて自分の言いたいことが言えない→思い切ってはき違えろと教える」という流れです。
ということは、「自分の言いたいことが言えない」ということは何かしらで「マイナス」であるということになるでしょう。
3
私たちは何でも実行してみて、その中の成功と失敗、間違いの中から多くの大切な経験と知識を発見する。
だから、できるだけ考えて、決定し、それに対してしっかりした心をもって、実行したい。
これも「1」の価値ある教訓である理由です。
「2」の理由とのつながりで考えると、「自分の言いたいことが言えない→失敗がないから大切な経験や知識を発見できない」と言えそうです。
「2」までの流れでこのような理由が述べられるであろうことを予想できていれば素晴らしいですね。
この内容を押さえれば、設問2で書く「自分の意見」の道筋も見えますね。
4
間違いがないように行動するのと、考えた上ではき違えても構わないという勇気で行動するのとでは、行為の上で著しい違いがある。
前者は気魄が乏しくほとんど進歩がないが、後者は活き活きと気持ちがよく進歩と希望がついてまわる。
私たちは、はき違えても構わないということを1つの信条として忘れないようにしよう。
「1」の教訓に倣うと、活き活きと気持ちが良く進歩と希望があるとし、これを1つの信条としようとまとめています。
「1」よりもここを筆者の主張としてまとめた方がよさそうですね。
それは「1」が理由となって、この結果がもたらされるからです。
ただし、絶対に見落としてはいけない点があります。
それは「考えた上で」と述べていることです。
単に「間違っても構わない」ではなく「考えた上で間違っても構わない」という態度が重要だと述べていることは見落としてはいけません。
これが重要なのは「自分の意見」が筆者の主張と大きく変わってしまう可能性があるからです。後述します。
最後まで読んで全体の流れを見てみると、見事に「はじめ→なかほど→おわり」のつくりになっていることが分かりますね。
つまり、「この教訓は大事」→「大事な理由」→「大事にしたらこうなるよ」という内容だったということです。
今回の課題文における筆者の主張は最後の部分でした。
私たちは、はき違えても構わないということを1つの信条として忘れないようにしよう。(私たちは、はき違えても構わないという信条を忘れずにいることが重要だ。)
ただし、先程確認した絶対に見落としてはいけない点は足しておく必要があります。
その点を付け足しつつ、文を整えるとこうなります。
私たちは、何かをする時には、出来るだけ考えた上で、はき違えても構わないという勇気を持つことを1つの信条として忘れないようにしよう。(私たちは、何かをする時には、出来るだけ考えた上で、はき違えても構わないという勇気を持つことを信条として忘れずにいることが重要だ。)
これを中心にまとめていきましょう。
200字にするために、これに「なかほど」の理由を足していきます。
なお、字数制限が短い場合にはこの内容だけでいけそうですが、理由を短めにまとめて入れたいところではあります。
まとめるとこうなります。
私たちは何でも事を実行してみて、その中の成功と失敗から大切な経験と知識を発見する。だから、考えて決定したことははき違えても構わないというしっかりした心をもって、決定した所を行うのがよい。このような態度を持っている人は、たとえ間違っていても活き活きと気持ちがよく進歩と希望とがある。何かをするとき、出来るだけ考えた上で、はき違えても構わないという勇気を持つことを信条として忘れずにいることが重要だ。(198字)
これでも良いのですが、「間違えがないようにすること」と「はき違えても構わないとすること」との対比で書かれていることを踏まえた解答にするとさらによくなります。
そこで、次のような一文を入れます。
間違えないように事を実行する人はほとんど進歩がない(27字)
この内容を加えて、字数を調整してまとめると次のようになります。
私たちは実行した物事の成功と失敗から大切な経験と知識を発見する。だから、考えて決定したことは間違えて構わないという心をもって、決定した所を行うのがよい。間違えないように事を実行する人はほとんど進歩がないが、このような態度を持っている人は間違っていても活き活きと気持ちがよく、進歩と希望とがある。何かをするとき、出来るだけ考えた上で、はき違えても構わないという勇気を持つことを信条とすることが重要だ。(199字)
今回考えた流れとは違いますが、対比関係をより鮮明にしてまとめた例も載せておきます。
間違いのないように物事をする人は、実行力に欠け人まねばかりになるため気魄に乏しくほとんど進歩がない。それに対して、考えて決定したことは間違えても構わないという心をもって物事をする人は、成功と失敗から大切な経験と知識を発見できる上、間違っていても活き活きと気持ちがよく進歩と希望とがある。だから、何かをするとき、出来るだけ考えた上で、はき違えても構わないという勇気を持つことを信条とすることが重要だ。(199字)
はじめに確認した「主張」を中心に、その理由と対比関係がまとまっていればオッケーです。
設問2
絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。
具体的には「筆者の主張に対する」を見落とさないことです。
自分勝手な意見を書くのではなく、筆者の主張を押さえた上で自分の意見を述べる必要があります。
ということで、筆者の主張を確認します。
設問1より、
私たちは、何かをする時には、出来るだけ考えた上で、はき違えても構わないという勇気を持つことを信条として忘れずにいることが重要だ。
筆者はこのように言う理由として、成功と失敗から多くの経験と知識を得ることができるし、活き活きとできるし、進歩と希望とがあるからだと言っていましたね。
まさに「長野大学_小論文_傾向と対策 - 高校教員の徒然日記」でお伝えした「どのように生きていくかという人間性」が課題文の内容(筆者の主張)だったということです。
このことについて、自分の意見の方向性を考えます。
筆者は間違いを恐れずに考えたことを実行した方がいいという立場を取っています。
その対比として、間違えないように用心深く慎重にすることも述べられていました。
課題文では筆者の立場がプラス、そうでない方がマイナスで語られていました。
自分の意見を考える際には、このどちらの立場をとるかを決定するところからはじまります。
今回の場合は、どちらの立場をとっても書くことは可能です。
(と言っても反対の立場で書くことは非常に難しいですが…後述します)
筆者に賛成するのであれば
・とにかく「行動」が大事である。
・行動を起こさなければ始まらないし、経験が自分の成長に繋がる。
・考えるだけでは何も変わらない。
このような意見の方向性になるかと思います(あくまで一例であって、他にもたくさん考えることができそうです)。
ただし1点注意があります。
「4」で確認したことです。
「間違ってもいいという信条が重要である」ことには条件がついていました。
それは「出来るだけ考えた上で」という条件です。
これを見落としてしまうと「とにかく行動が大事」のような意見になってしまう可能性があるので注意しなければいけません。
また、「考える」ことを単に否定するような意見にもならないことになります。
「よく考えて間違ってもいいから行動しよう」ということであり、「考える」ことよりも「間違ってもいいから行動しよう」ということが重要だということではありません。
上記の例で出した「考えるだけでは何も変わらない」というのは「考える→行動」という流れが重要だという意見になります。
筆者に反対するのであれば
・物事を慎重にすることのメリットを説く。
・間違ってもよいという考えはいけない。
このような流れになりますが、はっきり言ってこれらを自分の意見とするのは難しいと思います。
なぜなら、これらを自分の意見とすると筆者の主張に反論し論破する必要が出てくるからです(設問は「筆者の主張に対するあなたの意見」なのですから)。
もしくは、筆者の主張を上回るプラス面を述べなければいけません。
どちらにしても、書くことは難しいと思います。
自分の意見の方向性は筆者の主張と同じ方向で決まると思います。
あとはそのように言う理由、説明となる適切な具体例を述べればいいのです。
考えて行動したことが自分の成長に繋がった経験などを述べると書きやすいと思います。
以上の内容で400字で書きます。
基本の構成はこうなるのでした。
第一段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる
第二段落 自分の意見の理由、具体例
第三段落 意見のまとめ
二段落構成にする場合は、上記の「第二段落」の内容を第一段落か第三段落に振り分けることになります。
以上で書くと、合格できる小論文になりますよ。
書き方や表現などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。
最後に今回の小論文で最も学んで欲しいことをお伝えします。
それは「条件を見逃すな」ということです。
筆者の主張に条件があるとき、それを見逃しては内容が大きく異なってしまいます。
今回の課題文は最後の一文に「条件」が書かれていないので、「条件」を見落として自分の意見を書いた受験生が多数いるのではないかと予想されます。
読解の際に「条件」が述べられている場合、しっかりと確認するようにしましょう。
なお、この「条件」というのは現代文の読解や、記述問題でも注意すべき事項ですよ。
過去問に取り組むことで、このような注意点なども学ぶことができます。
どんどん取り組んで練習しましょう。
では、終わります。
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