高校教員の徒然日記

PMA~Positive Mental Attitude~

長野大学_過去問題(国語)_平成29年度_一般入試A日程(2月1日)_第1問

こんにちは。北の大地で高校教員をしています「きんこ」と言います。

今日は私のブログを見てもらい、ありがとうございます。

 

今回は、平成29年度一般入試A日程(2月1日)の国語、第1問の解答と解説です。

解説では、解くプロセスについても示していますので、参考にしてみてください。

 

問題については、2018年現在、長野大学に資料請求するしか方法はありません。過去問題を入手し、自分で問題を解いてみてから、このブログをご覧になるのがいいかと思います。

 

出典は『「個性」を煽られる子どもたち-親密圏の変容を考える』土井隆義 著 です。

 

【解答】

 

問1 

  • (1)不愉快  (2)妥当  (3)端的
  • (ア)ほこさき (イ)しんえん

問2 

  • ア.A   イ.A   ウ.A   エ.B   オ.A

問3 

  • A.ウ   B.ア   C.エ   D.イ

問4 

  • 評価の基準~内部にある

問5 

  • 感覚やありのままの自分を大切にするという浜崎あゆみの歌は、自分たちの直感を重要とする若者たちに共感されているから。(57字)

問6 

問7 

  • 刹那的で状況次第で変化しうる自らの直感を自己の定義とする最近の若者の傾向    は、自己の持続性と統合性を維持することを困難にしてしまうから。(67字)

 

 

[解説]

 

問1 漢字の読み書き

 

  • 基本的な漢字ばかりです。漢字検定2級まで取得していればまったく問題ありません。不安であれば、漢字検定3級から学習することをオススメします。大問2でも同じように5問出題されますので、漢字問題は計10問です。得点源にしましょう。

 

問2 空欄補充(語句)

 

  • 語句の空欄補充問題は、空欄前後の文脈から判断できることがほとんどです。まずは、空欄を含む一文をしっかり確認し、何について述べている一文なのかを確認します。その上で、どのような語句を補充するのが適切か考えます。
  • アは、空欄アを含む一文から「むかつく」の示す感覚が入ることが分かります。また、直後に「しかし」と逆接があることから、直後の内容と対比される言葉が入ります。直後の内容は「不快に感じたり嫌に思う」ですから、「心理的」でしょう。とすると、アには「生理的」が入ることが分かります。
  • イは、空欄イを含む一文から、「この言葉(むかつく)が好んで使われる背景」の説明が入ります。アで確認した通り、「むかつく」は「生理的」な感覚です。
  • ウは、空欄ウを含む一文から、「『むかつき』を覚える」のはどのような感覚からかということが述べられています。これも、アで確認した通り、「生理的」な感覚です。
  • エは、空欄エを含む一文から、「『むかつき』を覚える」感覚ではない、つまり、ウと対比されるものだと分かります。「心理的」です。
  • オは、空欄オを含む一文から、それまでの内容と「同様」の内容を述べていることが分かります。それまでの内容はア~エで確認してきたように、「生理的」な感覚だということですから、それと「同様」な訳です。「生理的」が入ります。 

*ア~オまでの空欄補充問題で、エ以外はすべて「生理的」が入ることになります。答えがAばかりになってしまったからといって、「そんなはずはない」などと考えないようにしましょう(とは言え、結構気にしてしまいますよね…)。実際の過去問題でこのような解答があるので、どのような形になったとしても、自分の解答に自信を持つことが重要です。変な先入観に惑わされないようにしてください。

 

問3 空欄補充(接続詞・副詞)

 

  • 接続詞・副詞の空欄補充問題は、空欄前後の文脈から判断します。空欄前ではどのようなことを述べているか、空欄後ではどのようなことを述べているか。これを読み取り、その関係性から、適切な接続詞を選びます。
  • 空欄Aの前の内容は「若者たちが、ある状況や人物を不快に感じるのは、生理的な感覚に近い」であり、後の内容は「(『むかつく』が生理的な感覚である以上、)そのように至った社会的根拠は問題とならない」です。もう少し短くまとめると、「不快に感じるのは生理的な感覚だ」と「社会的根拠は問題にならない」です。明らかに、話題が変わっていますね。選択肢の中で話題の転換を示す接続詞は「ところで」です。ただ、この問題はちょっと難しいかもしれません。B~Dは明らかに答えが分かるものになっているので、それらを答えてから、もう一度Aに戻ってきても大丈夫です。
  • 空欄Bの前の内容は「若者が重要としているのは自分たちの直感であり、『私が本当に感じているものは何なのか』が重要である」であり、後の内容は「『気持ちいいと感じているのに、なんで注意するのですか』という生徒がいる」という具体例です。具体例を示す「たとえば」が入ります
  • 空欄Cの前の内容は「若者の個性志向(言葉による根拠に意義を見出さず、言葉以前の内発的な衝動の方を重要視する考え方)が進む」であり、後の内容は「退屈なら、我慢しないほうが自分らしいふるまいだということになる」です。個性志向が進んでいる「から」、我慢しない方がいいという流れです。「AだからB」という関係を因果関係と言いますが、これを示す接続詞は「したがって」です
  • 空欄Dの前の内容は「感情をそのまま放出することが、最高の『自分らしさ』だ」であり、後の内容は「直感は刹那的で変化しうるものだ」です。前の内容は「感情(直感)=最高」というプラスのイメージあるのに対して、後の内容は「直感(感情)=刹那的・変化する」というマイナスのイメージとなっています。つまり、空欄前後で逆の内容になっています。逆接を示す「ところが」が入ります

 

問4 内容説明(言い換えている部分を探す)

 

  • 傍線部を言い換えている部分の書き抜き問題は、傍線部の内容説明問題と言えます。傍線部の内容を理解し、それと同じことを別の表現で述べている部分を探します(これを記述式や選択式で答えるのが、一般的な内容説明問題であり、多くの場合「~とは、どういうことか」という設問になっています)。
  • まず、傍線部aを分かりやすく言い換えてみると「感受性の変化が表していることは、〈善いこと〉から〈良い感じ〉に評価基準が変わったということだ」となります。このことを踏まえて、同じような内容がないか本文中を探します。
    この際、評論文の構成を意識して探すことをオススメします。それらについて詳しく説明する「評論文の読み方」については、近々アップします(乞うご期待!)。
  • 今回の読み取りに必要なことを簡単に説明しておくと、各形式段落の作りというのは「まとめ→説明→まとめ」となっていることが多いということです。「これから、こういうことを述べますよ→こういうことですよ(具体例や理由など)→ほら、こういうことですよね」という流れになっているということです。
  • このことを踏まえると、今回の傍線部aは形式段落のはじめにあります。ということは、この後、その説明がなされ、最後にまとめられる可能性が高いということです。最後を確認すると「評価の基準は、自分の外部にあるのではなく、自分の内部にある」です。「自分の外部」つまり「善いこと」ではなく、「自分の内部」つまり「良い感じ」のほうに、評価の基準があるということですね。はじめに確認した「感受性の変化が表していることは、〈善いこと〉から〈良い感じ〉に評価基準が変わったということだ」と同じではありませんか。ですから、ここが答えになります。30字以内という字数制限があるので、必ず数えて答えます

 

問5 理由説明

 

記述問題の解き方の手順は以下の通りです。

 

  1. 設問をよく見て、何を問われているのか確認する(どのようなことを答えることが求められているのか確認する)。
  2. 答えのフレームを作る。もしくは、一言で答える。
  3. フレーム(もしくは一言での答え)に、必要事項を、制限された字数に合わせて加えていく。
  4. 必要があれば表現を整える。 


これに沿って解いてみます。

 

1.

  • 浜崎あゆみの歌が、若者に人気である理由を問われています。傍線部bは「若者が浜崎あゆみの歌に共感している」という内容なので、ここから答えのフレームを作ることができます。

2.

  • 若者が「共感」しているから「人気」なんです。ということは、答えのフレームはこうなります。

 

浜崎あゆみの歌は、若者たちに共感されているから。」

3.

  • では、このフレームに説明を足していきます。「共感」という言葉から、浜崎あゆみの歌と若者たちは何かに対する感じ方が同じだということになります(「共感」とは「他の人の感じ方に対して、自分も同じように感じること」です)。何が同じなのかを説明することが共感の説明となります。
  • ですから、フレームにA、Bの説明を加えます。

 

「Aである浜崎あゆみの歌は、Bである若者たちに共感されているから。」 

  • では、浜崎あゆみの歌はどのような歌なのでしょうか。問4で確認した「形式段落の作り」を意識した読み方を踏まえると、傍線部bは形式段落のはじめにあるので、このあと説明されるはずです。すると、この形式段落の真ん中が歌の説明(歌詞)になっています。歌詞のキーポイントは「感覚は閉ざしてはいけない、私は私のまま立っている」です。まとめると「感覚やありのままの自分を大切にする」でしょうか。これがAです。
  • 次にBを考えます。これまた「形式段落の作り」から、傍線部bと同じまとめの部分がこの形式段落の終わりにあるはずだと考え見てみると、「若者たちにとって重要なのは…」と若者たちが大切にしていることが書かれています。ですから、本来であればこの部分を使えばいいのですが、今回は空欄(あ)があるため使えません。そこで、ここ以外で若者が大切にしていること、かつ、浜崎の歌に通じることが述べられていないか、本文を読み取ります。ここまで読んできていれば、若者が大切にしていることが何かということが明確になっていると思います。形式段落5に若者が「重きを置く」ものが述べられており、それは「自分の直感」だと分かります。Aにも通じるので、これをBとしてまとめ、先ほど作ったフレームに当てはめます。

 

感覚やありのままの自分を大切にするという浜崎あゆみの歌は、自分たちの直感を重要とする若者たちに共感されているから。(57字) 

4.

  • この作業をしなくても、表現的にも字数的にも問題ないため、これを解答とします。

 

問6空欄補充(語句)

 

考え方は問2と同じです。

 

  • いずれも「(あ)的な衝動」と使われていること、形式段落7の空欄を含む一文から「若者たちにとって重要にしているもの」、形式段落8の空欄を含む一文から「言葉以前のもの」、形式段落11の空欄を含む一文から「直感」の説明であることが分かります。これが分かれば、「若者が大切にしているどのような衝動か」を考える必要があるというのは容易に分かるでしょう。つまり、自分の内部にある自分の直感のことです。自分の内部から湧き上がってくる気持ちと言い換えてもいいかもしれません。
  • これに対応する語句は「内発」しかありません。ちなみに「内在」は「内側にある」という意味で、ここでは「ある」だけではないですよね。「衝動」に繋がっていることからも、「ある」だけではおかしいと分かると思います。


問7 理由説明

 

考え方は問5と同じです。

 

1.

  • 筆者が、最近の若者たちの傾向を危険だと感じている理由を問われています。説明する内容としては「若者たちの傾向がどのようなものなのか(A)」と「それがどのような意味で危険なのか(B)」を答えます。

2.

  • 答えのフレームはこうなります。

 

「Aである最近の若者たちの傾向は、Bだから。」 

  • 次に、一言で答えてみます。一言で答えるとは、フレームの最後の部分を考えるということです。本文中のどの部分から「危険だ」という内容が見られるでしょうか。この文章は、若者の傾向について述べてきたものであり、それについての筆者の主張が「危険だ」ということだと考えられるので、主張は最後にありそうです(この辺りも「評論文の読み方」で説明します)。すると、最後の形式段落である11の真ん中に「その直感に依存した自己は、その持続性と統合性を維持することが困難になります」とあり、これが「危険なこと」だと読み取ることができるはずです。つまり、一言で理由を述べると、

 

「自己の持続性と統合性を維持することを困難にしてしまうから」です。 

  • これがBです。
  • では、若者のどのような傾向が、このような危険を導くのでしょうか。Bを含む一文は「したがって」で始まっていますから、直前の内容がBの理由のようです。つまり、形式段落11のはじめの部分が、Bの理由(若者の傾向)と考えられます。内容を確認すると

 

「自らの生理的な感覚や内発的な衝動に依拠した直感は、刹那的なものであり、状況次第で変化しうるもの」だと分かります。 

  • これがAです。
  • AとBを先ほどのフレームに当てはめて、まとめます。

 

刹那的で状況次第で変化しうる自らの直感に依存し自己とする最近の若者の傾向は、自己の持続性と統合性を維持することを困難にしてしまうから。(67字) 

 

4.

  • この作業をしなくても、表現的にも字数的にも問題ないため、これを解答とします。

 

 

かなり長くなりましたが、いかがでしたか。問題が変わっても、ここで示した「解き方のプロセス」は変わりません。今回解いた過去問題と同じ文章は絶対に出ることはありませんが、問題の傾向は大きく変わることはないはずです。ですから、過去問題をやることで、「解き方のプロセス」を身につけることが何よりの対策となります

今後も他の問題の解答解説をアップしていきますので、自分で「解き方のプロセス」を意識して解いた後で、解説を見てください。はじめは慣れないかも知れませんが、意識して繰り返す内に自分の力となっていくはずです。

長野大学の入試問題は、基本的な読解力をしっかりと問うている良問です。「解き方のプロセス」を身につけることは、文章読解力の向上とイコールです。大学受験を通して、その力を身につけるとともに、大学に合格して、楽しい4年間を過ごしてください。

応援しています。

 

では、今回はこれで終わります。

 

 

長野大学の他の問題の解答解説については、こちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 


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