平成29年度(2017年度)_センター試験_国語第3問(古文)_解説
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今回は、平成29年度(2017年度)センター試験国語第3問(古文)の解説です。
問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。
センター試験の過去問は、市販されている問題集を購入するか、大学入試センターのホームページからダウンロードできます(過去3年分)。
どちらかでご準備をお願いします。
また、センター試験の過去問を効果的に使うための記事がこちらです。
ぜひ読んでみてください。
では、始めましょう。
平成29年度(2017年度)センター試験国語第3問(古文)は『木草物語』からの出題でした。
まずは本文に出てきた知っておくべき単語と文法の確認です。
さらっと見てみて「分からない」ものがあれば、Quizletでの学習をしてみましょう。
Quizletについてはこちらの記事をご覧ください。
重要単語
にはかなり まうく[設く] ~あへず かたじけなし いそぎ[急ぎ] もてなす ふす[臥す] 給ふ たぐひなし[類無し] はかなし 渡す ところせし[所狭し] をかし まがふ[紛ふ] あはれなり ゐざる[居ざる] こちたし[事甚し] わく[分く] にげなし[似げ無し] あてなり[貴なり] らうたげなり え~打消 ひま[隙] 候ふ いかなり はらから 侍り 月頃 あからさまなり 渡る をり[折] むつかる 聞こゆ なほ 世を背く 承る いやし こよなし ゆゑ[故] げに[実に] いみじ 常無し うちつけなり そぞろなり いかが せうそこ[消息] こころう[心得] ながむ[眺む] おはす おまへ[御前] つれづれなり おはします 物語 いたし[甚し] ゆかし あやにくなり しげし[繁し] わびし おぼす[思す] とし[疾し] 参る たがふ[違ふ] あやし かひなし[甲斐無し] ことわり[理] らうたし ひとりごつ
重要文法
已然形+ば e音+ら・り・る・れ 未然形+ぬ+体言 「もの」系 に+○+あり ぬらむ だに せ給ふ・させ給ふ ずは 未然形+で まじ 場所+なる+名詞 にや・にか 已然形+ど 連用形+ぬ
では、各設問の解説です。
問1 語句の意味
(ア)
「にげなし[似げ無し]」が重要単語ですが、知らない可能性が高いと思います。
ですが、傍線部を含む文から「恋をする女性が質素な家に『にげなし』で上品でかわいい」という文脈から「不釣り合い」を容易に選べます。
なお、古文の世界では、田舎やぼろぼろの家に住んでいるけど美しいという不釣り合いな女性に恋をするパターンが多いことも知っておくといいと思います。
(イ)
「聞こゆ」が重要単語、「まほし」が願望の助動詞です。
「まほし」では判断できませんが、「聞こゆ」で容易に判断できます。
(ウ)
「あやし」が重要単語です。
多義語ですが文脈から容易に判断できます。
何はなくとも重要単語や助動詞を覚えることが重要ですね。
古文常識を知っていることも大切です。
問2 種々の識別
この手の文法問題は確実に得点したいところです。
少しの事項を覚えるだけで簡単に得点できるようになります。
今回は頻出の文法事項ばかりです。
これらは繰り返し出題されます。
なぜなら、それらが頻繁に文中に出てくるからです。
Quizletを数年分見てみるだけで頻出の文法事項が分かるはずですよ。
では、今回の文法事項を確認します。
a 「未然形+ぬ」の「ぬ」は打消「ず」連体形→「ぬ」の識別
b 「に+○+あり」の「に」は断定「なり」連用形→「に」の識別
c 「ぬらむ」「ぬべし」「なむ」の「ぬ・な」は完了(強意)「ぬ」→「ぬ」の識別
d 「連用形+ぬ・ね」は完了「ぬ」終止形・命令形→「ぬ・ね」の識別
e 「未然形+ぬ+体言」の「ぬ」は打消「ず」連体形→「ぬ」の識別
これらは1時間もあれば理解できます。さくっと勉強しちゃいましょう。
もし、それができなかったり、これらを理解しても迷ったときの方法もお伝えしておきます。
それは「接続」を確認するということです。
例えば、今回であればそれぞれの波線部の直前を確認するとこうなります。
a 未然形
b 名詞(体言)
c 連用形
d 連用形
e 未然形
ほら、これだけでも分けることができますね。
とはいえ、これは最終手段です。
今回は正答できますが、この方法だけではできないこともあります。
やはり1時間くらいは文法の勉強(頻出の識別くらいは)をしましょう。
文法の暗記事項は少ないうえ簡単なので得点源にしましょう。
問3 内容説明
名詞である傍線部「御心地」に修飾している部分がついていますから、その部分がイコールです。
たとえば「美しい花」で考えてみます。
「花」に「美しい」という修飾語がついています。
「花」の説明を問われたら「美しい花」となりますよね。
傍線部を修飾部を含めて訳しましょう。
「とてもしみじみした人を見たなぁ、尼でないなら会わないで終わることができない『御心地』」です。
誰を見たのかはここまでの流れで「若い女性」だと分かるでしょう。
その子に会いたいのだから、それは「恋心」です。
古文で「女性を見たい(女性に会いたい)」というのは、基本的に「恋をしたい」ということです(現代も通じないわけではないと思います)。
ちなみに、「尼でないなら」と言っているのは、尼のような出家した人は俗世間と交わることができないため、恋愛などができず恋愛対象にならないからです。
このあたりも古文常識として知っておきたいところです。
傍線部の内容説明は、主語・修飾部に注目しましょう。
傍線部を含む一文に注目して考えるようにしましょう。
問4 内容説明
傍線部を直訳すると「眠たそうにふるまった」だから、その理由を考えます。
傍線部を含む一文(傍線部の前後)を確認すると傍線部直前に「已然形+ば」がありますから、直前が理由ですね(「已然形+ば(~ので・から)」は絶対に覚えておかないとダメです)。
傍線部の一行前からの内容を確認すると
「返事が待ち遠しいんだけど、人が多いのが嫌に思ったから、眠たそうにした」ことが分かります。
傍線部を含む一文に注目しましょう。
「已然形+ば」は答えの根拠になることが多いので常に意識して読みましょう。
(「已然形+ば」が出てこない古文はないと言っても過言ではありません)
問5 和歌説明
和歌が出てきたら、次の手順で確認します。
①どんな場面か。
②誰が誰に詠んだのか。
③直訳。
和歌の修辞が問われている設問以外は、この3点を確認すれば大丈夫です。
では、今回の和歌を確認します。
X
①菊君が娘に恋心を抱いている場面。
②菊君が娘に詠んだ和歌。
③露のようにこのような心も頼りないなぁ、黄昏時に見た家の夕顔の花。
③の「夕顔の花」が「娘」を指していることは明白です。
なお、和歌中にある「はかな」は形容詞「はかなし」の語幹です。
「形容詞の語幹用法」を確認しておきます。
形容詞が語幹だけの場合、詠嘆です。
例えば「すご(すごいなぁ)」「くさ(くさいなぁ)」と現在も使います。
Y
①娘に代わり老尼が返歌をした場面です。
直前に会話文があるので、ここを踏まえます。
「こんな手紙を受け取る人はいません。場所違うんじゃないですか」に続く歌です。
直訳するときはこれに続く内容だと思って訳しましょう。
②老尼が菊君に詠んだ和歌。
③出家した質素なみずぼらしい家に、どんな夕顔の花を見たのか。
この家にそんな女性はいませんよと言っているわけですね。
選択肢を確認します。
このパターンは前半がXを、後半がYを説明しています。
選択肢は基本的に後半から見ることをオススメします。
その理由は以下のブログで説明していますのでご覧ください。
今回も後半、つまりYの説明で正答を導けます。
和歌は難しくありません。
どんな場面で誰が誰に詠んだのかを確認して、直訳しましょう。
問6 内容合致
この問題は、評論や小説の最後の問題と同じように一つ一つの選択肢を吟味していき、消去法で答えを導くしかありません。
その際、具体的な内容に関しては、必ず本文に戻って確認しましょう。
訳すことができているかどうかが試されている設問です。
この話から知っておいて欲しい古文常識
古文の世界の恋愛は現代の恋愛と大きく違います。
次の2点の相違点は押さえておきましょう。
①恋愛や結婚の形
現代は、自分で好きな人を見つけ、つき合って、結婚するという自由恋愛が基本だと思います。
しかし、古文の世界はすべて政治的な判断で結婚が決まります(政略結婚)。
結婚相手は親によって決められてしまいます。
親の願いは「自らの昇格」や「一族の繁栄」ですから、息子や娘の結婚相手として身分の高い者を求めるわけです。
このような時代背景がありますから、自由に恋愛しようとして身分差や親の反対で引き裂かれる物語が多く作られたわけです。
②結婚に至るまでの経緯
現代は、男女関係なく常に顔を合わせた状態で生活しています。
しかし、古文の世界では成人式(男子なら初冠(元服)、女子なら裳着)を終えると、基本的に顔を合わせる機会がなくなります。
成人した女性は男性と直接顔を合わせません。常に家の中にいて男性と話すときには御簾越しに話します。
また、女性が男性に今で言う告白をすることもありません。
恋愛は男性が女性に気持ちを伝えるところから始まりました。
では、男性は女性と会えないような状態でどうやって恋愛感情を持つの?って思いますよね。
次の2つのパターンがあったようです。
まず、男性が女性をのぞき見るパターンです。
庭で遊んでいる女性や、たまたま行っていた屋敷に住んでいる女性を「垣間見る」というパターンです。
日頃、女性を見ることがないため、ちらっと見えるとものすごく惹かれてしまい、一気に恋心となってしまうというわけです。
今回の問題文もこのパターンです。
もう1つは、噂を聞いて好きになってしまうパターンです。
女性の親が「うちの娘は美しくて気立てがよくて最高だ」と噂を流すわけです。
で、その話を聞いた男性が恋文(ラブレター)を贈るところから恋が始まるパターンです。
どちらの場合も、男性が女性に惹かれたら和歌(恋文)を贈ります。
その後、そのやり取りが続き、お互い(親がチェックしていることも多々あり)オッケーになると、実際に会います。
日が暮れてから男性が女性の家に行き、召使いに案内されて女性と御簾越しに話を交わし、夜が明ける前に男性は帰ります。これがデートですね。
この関係が続くと、男性が女性の部屋に入り男女の関係になります。
男性が夜が明ける前に帰るのは男女の関係を持っても変わりません。
が、逢瀬の後は和歌を贈るのが礼儀とされていました(後朝の文と言います)。
結婚するときは、男性が3日連続女性の家に通い、3日目に所顕し(ところあらわし、今で言う結婚披露宴)を行います。これで正式に結婚が認められます。
説明をはしょってはいるのですがちょっと長くなってしまいました。
ただ恋愛や結婚に関して現代と大きく違うということが分かったかと思います。
これらのことを知っておくと、読みやすくなる古文がたくさんありますよ。
センター試験の過去問に取り組んでやるべきことは、そこに出てきた単語や文法を押さえること、そして古文常識を知っていくことです。
他の年度でもそれを意識して学習しましょう。
それの積み重ねだけでセンター試験は突破できますよ。
頑張ってください。
では、これで終わります。
センター対策の古文単語や漢文句法を確認する場合はQuizletが便利です。
次の記事もぜひご覧ください。
センター現代文の対策はこちらの記事をご覧ください。
マーク対策についてまとめたので古文漢文にも通じる部分が多くあります。