高校教員の徒然日記

PMA~Positive Mental Attitude~

平成28年度(2016年度)_センター試験_国語第3問(古文)_解説

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今回は、平成28年度(2016年度)センター試験国語第3問(古文)の解説です。

 

問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

センター試験の過去問は、市販されている問題集を購入するか、大学入試センターのホームページからダウンロードできます(過去3年分)。

どちらかでご準備をお願いします。

www.dnc.ac.jp


また、センター試験の過去問を効果的に使うための記事がこちらです。

ぜひ読んでみてください。

kinkoshin.hatenablog.com

 

 


では、始めましょう。


平成28年度(2016年度)センター試験国語第3問(古文)は『今昔物語集』からの出題でした。

 

はっきり言って非常に簡単な問題でした。

訳しづらい箇所がほとんどなく、内容が分かりやすいからです。

もし、このレベルが出題されたら超ラッキーです。

余裕で完答できるでしょう。

 

演習として取り組んでも重要単語や文法、古文常識などがしっかりありますので、悪くありませんよ


まずは本文に出てきた知っておくべき単語と文法の確認です。

さらっと見てみて「分からない」ものがあれば、Quizletでの学習をしてみましょう。

Quizletについてはこちらの記事をご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 


重要単語 

 

今は限り ほど[程] ゐる[居る・率る] たがふ[違ふ] ねんず[念ず] とし[疾し] ありつる いらへ[答へ・応へ] しかれば あさまし こころう[心得] 限りなし さはる[障る] 日ごろ せむ方なし 参る 籠もる 給ふ 年ごろ 頼む 奉る 候ふ しるし[験] かくて のたまふ[宣ふ] なんぢ[汝] まかる[罷る] かく いざ かの[彼の] いかで[如何で] ぐす[具す] いかに[如何に] あへて[敢へて] 悩む ふす[臥す] すう[据う] やむごとなし おぼゆ[覚ゆ] しかり[然り] いと いやし[賤し] いかなり[如何なり] けうなり[希有なり]

 


重要文法 

 

会話文中の「けり」 連用形+ぬ 名詞+の+用言 に+○+あり にて・して 已然形+ども 「と」の上の「む」 にき・にけり ごとし 名詞+が+名詞 已然形+ば 「あかざたな」+なり・めり 名詞+の+名詞 文中の「む」 e音+ら・り・る・れ  「の」の上の名詞を「の」の下にある連体形の下に補うことができる「の」 未然形+ね+已然形接続の語 か 「給ふ」につかない「す」「さす」 てき・てけり

 


では、各設問の解説です。

 


問1 語句の意味

 

(ア)
 
「念ず」が重要単語です。

「祈る」か「我慢する」かは、「頭が痛いけれども、念じて『早く家に行って…』」という文脈から容易に判断できます。

「ど・ども」などの「逆接」は文脈を掴むうえで非常に大切なので意識して読みましょう。

 

(イ) 

 

「いかで」が重要単語です。

疑問の場合、反語の場合を文脈で判断しなければいけません。

傍線部を含む一文から「人が通ることができそうもない扉の迫(はさま)から入ろうとしている」という内容が分かるので、反語になりますね。
                
(ウ) 

 

「いかに」「あへて」が重要単語です。

「他人の家に入っていったのに、傍線部」という文脈ですので、単語の意味が分かれば容易です。

 

 

何はなくとも重要単語を覚えましょう。

傍線部前後の文脈を掴むと、より簡単に正答できます。 

 


問2 「の」の識別

 

助詞「の」の識別ができるかどうかです。

助詞「の」の用法は以下の5点を押さえます。

 

①主格(「が」と訳す)→「名詞+の+用言」の形

②連体修飾格(「の」と訳す)→「名詞+の+名詞」の形

③同格(「で」と訳す)→「の」の上の名詞を「の」の下にある連体形の下に補うことができる形

④体言の代用(「のもの」と訳す)→文脈から判断する

⑤比喩(「のような」と訳す)→和歌(特に上の句・序詞)でよく見られる

 

この中で最も重要なのが③の同格です

これを見分けることができると、だいたいの問題は正答できます。

なお、①②④については上の説明で覚えるというよりは訳すと大体判断できます

 

では、今回のものを1つずつ確認しましょう。

 

a 

訳せば分かります。「鬼たち私に唾を吐きかけた」です。

 

訳せば分かります。「僧が出てきて男傍に立って」です。

 

これが同格です

見た瞬間に分かるように慣れてほしいところです。

「の」の上にある「牛飼の童」を「の」の下にある「恐ろしげなる」という連体形の下に補うことができます

こういう場合、この「の」は同格「で」と訳します。

「牛飼の童とても恐ろしいそうな牛飼の童が」と訳します。

ポイントは「の」の下に「連体形」があるかどうかだと言えます。

 

これも同格です

「の」の上にある「扉の迫」を「の」の下にある「なき」という連体形の下に補うことができます

こういう場合、この「の」は同格「で」と訳します。

「扉の隙間人が通ることができそうもない扉の隙間から」と訳します。

 

訳せば分かります。「童が『ただ入れ』と言って男手を取って」です。

 

 

文法問題はあっという間に得点源にできますよ。

頻出の文法事項を覚えてしまいましょう。 

 


問3 理由説明
  
まず傍線部を直訳します

「悲しいことはこの上ない」です。

 

傍線部の直前に会話文があるときには、会話文の内容が答えの根拠となっている場合が非常に多く今回もそうです

 

直前の会話文は
「鬼が私につばを吐いたことによって、私の体が隠れてしまったのだなぁ」です。

 

私の体が見えないから悲しいのですね

 

このことを押さえて選択肢の後半を見ると、正答は1つしかありませんね。

 

 

会話文直後の傍線部は会話文が解答の根拠です。   

 

 

問4 内容説明

 

まず傍線部を直訳します

「(男は)喜びながら夢を頼みにして童のお供として行く」です。

 

2つのポイントを確認します。

 

1つめは、問3と同じように直前に会話文があるということです。

会話文直後の傍線部は会話文が解答の根拠でした。

「私の体は現れた(見えるようになった)のだ」です。

 

見えるようになったから、喜んでお供としてついていったのです

これだけでも選択肢の後半で正答を導けます。

 

ただ、もう1つのポイントもお伝えしておきます。

それは傍線部の中に「夢を頼みて」とあることです。

当然、その「夢」の内容を押さえることで「童についていった」理由がはっきりするでしょう

前の段落の終わりに「夢覚めぬ」とありますから、そこまでが「夢」の内容だということは容易に分かります。

その部分を訳すことも難しくありませんよね。

 

 

会話文直後の傍線部は会話文が解答の根拠です。

傍線部に内容を確認した方がいい「ことば」がある場合には確認しましょう。 

 


問5 内容説明


本文全体と照らし合わせるしかありません。

通常の問6と同じパターンです。

これを正答するためには、本文を訳すことができていることが条件になります。

 

 

センター古文は訳すことができるかが勝負です。

重要単語、文法を覚えましょう。

他の科目に比べると、覚えることはべらぼうに少ないですよ。

また、頭の中で話を整理しながら文章を読むようにしたいですね。 

 


問6 内容合致

 

この設問は、評論や小説の最後の問題と同じように一つ一つの選択肢を吟味していき、消去法で答えを導きます。その際、具体的な内容に関しては、必ず本文に戻って確認しましょう。

 

 

訳すことができているかどうかが試されている設問です。 

 

 

この話から知っておいて欲しい古文常識

 

2つのことをお伝えします。

 

まず1つめです。

 

現在、病気になる原因は科学的にいろいろ言われますね。

ウィルスの感染だとか身体のどこかに異物ができたりだとか。

しかし、古文の世界の「病気」は「物の怪(もののけ)」と言われる悪霊や生き霊が取り憑くことによってなるものだと考えられていました

 

だから、病気を治すためには「加持・祈祷(かじきとう)」をして「物の怪」を「調伏(ちょうぶく)」する必要があります。

簡単に言うと、加持・祈祷で物の怪を退治するってことです。

また、加持・祈祷を簡単なイメージで説明すると(あくまで便宜的に)、僧が火をたいたり、白い紙がついた棒をバサッバサッてやったり、念仏を唱えたりするアレです。

身分が高い方に対する加持祈祷では何百人という僧が一斉に加持・祈祷をしたそうです。

 

今回の話で言うと、後半に出てきた「姫君」に「牛飼の童」姿の物の怪(厳密に物の怪と言っていいかは置いておきます)が取り憑いていたということです。

だから、験者(加持祈祷を行う僧)が来たときに、牛飼の童は逃げたわけです。

 

古文では物の怪や仏様などがたくさん出てきますが、今回の文章で出てきたものを確認しておきましょう。

 

 

鬼、観音、牛飼の童、神の眷属 

 

これらはすべて「人間」ではありません。

仏様であったり、物の怪であったり、それらの表現です。

ちなみに、神様など人間以外の者は「童」などの姿で現れることも多いです

 


次に2つめです。

 

古文や漢文で「観音様(仏様)」が出てきた場合です。

古文の世界も漢文の世界も基本的に仏教の世界です。

ですから、仏様たちは「良い存在」であることが基本です

人間が一生懸命お祈りすると助けてくれる存在だということです

 

次のような話のパターンが多いので知っておくといいですよ。

 

①話の主人公が何か困る

②もともと熱心にお祈りをしていたor困ってからでもお祈りする

③仏様が夢に出てきたり、実際に姿を現したり、仏様の部下が現れたりして、助けてくれる

④やっぱり仏教最高、仏様最高だからお祈りすることって大事とまとめられる 

 

今回もこのパターンですね(最後のまとめはカットされていますが)。

 

もちろん良い神様ではなく、悪い神様が登場することもありますが、その場合必ずと言っていいほど「注」を読めば分かるようになっています

「注」はしっかりと読む必要があります

 

あ、「注」で思い出しましたが、今回も「超重要な注」がありましたね。

「牛飼の童」の注です。わざわざ「必ずしも子どもとは限らない」と書かれていたのは、波線部cの設問に絡んでいるからです。

「童」が「子ども」だとしたら「牛飼の童とても恐ろしいそうな童が」と「同格」になることに疑問を抱くかもしれません(子どもで恐ろしいて変じゃない?って)が、この注があることによってこの「童」が子どもではない可能性があるのだから「恐ろしそうな童」としても不思議ではないことが分かります。


余計なことが書かれている「注」は解く際のヒントが隠れていることが多いですから、やはり注はしっかり確認しましょうね。

 


センター試験の過去問に取り組んでやるべきことは、そこに出てきた単語や文法を押さえること、そして古文常識を知っていくことです

他の年度でもそれを意識して学習しましょう。

それの積み重ねだけでセンター試験は突破できますよ。

 

頑張ってください。


では、これで終わります。

 

 

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センター対策の古文単語や漢文句法を確認する場合はQuizletが便利です。

次の記事もぜひご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 

センター現代文の対策はこちらの記事をご覧ください。

マーク対策についてまとめたので古文漢文にも通じる部分が多くあります。

kinkoshin.hatenablog.com