高校教員の徒然日記

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平成31年度(2019年度)_センター試験_国語第4問(漢文)_解説

こんにちは。きんこです。

 

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 今回は、平成31年度(2019年度)センター試験国語第4問(漢文)の解説です。

 

問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

センター試験の過去問は、市販されている問題集を購入するか、大学入試センターのホームページからダウンロードできます(過去3年分)。

どちらかでご準備をお願いします。

www.dnc.ac.jp

 

また、センター試験の過去問を効果的に使うための記事がこちらです。

ぜひ読んでみてください。

kinkoshin.hatenablog.com


では、始めましょう。


平成31年度(2019年度)センター試験国語第4問(漢文)は『杜詩詳註』からの出題でした。

まずは本文に出てきた知っておくべき重要漢字と句法の確認です。

分からないものがあれば、Quizletでの学習をオススメします。

Quizletは簡単に言えば単語カードアプリです。

今回の重要漢字・重要句法のカードを作ってあるので参考にしてください。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com


重要漢字 

 

嗚呼  或  之  与  奚  若此  対曰  亦  為  臥  又  ~者  遂  易  以  安  以是  而  卒  乃  嘗  久  相  君子  以為A  所A  是以  蓋  至


重要句法

 

不敢A  非敢A  将A


では、各設問の解説です。


問1 漢字の意味

 

X 

「対曰」は重要漢字です。問題ありませんね。

 

「乃」は「①そこで②なんと(意外な場合に用いる)」と訳す重要漢字です

ここでは「そこで」に最も近いものを選びます。

「すぐに・いつも・ことごとく・くわしく」は明らかに違いますね。

 

重要漢字を覚えましょう。

覚えるべき重要漢字の全てもQuizletでカードにしてありますよ!

    

問2 内容理解

 

傍線部を直訳すると「どうして孝義に勤めることがこのようであるのか」です。

 

「孝」という漢字を古文や漢文で見たら、まずは「(親)孝行」のことではないかと考えます。

「義」は「正義」の「義」ですからプラスを表していると分かれば十分です。

 

また、「若此」の指す内容は直前の、杜甫が喪に服したり、徳(これもプラスと分かれば十分)を記したり、墓誌を石に刻んだりしていることですね。

これらはリード文から、叔母の為の行為であることは明らかです。

 

以上を踏まえると、傍線部を含む一文は

「(あなたは)あの孝童さんの甥ですね、どうして亡くなった叔母のためにこんなに一所懸命孝行しているんですか」

という意味だと分かります。

「孝」は「孝行」!

指示語の指す内容は原則直前にありますから、必ず確認しましょう。

 

問3 理由説明

 

傍線部を含む一文を訳します

「とんでもないことです(決してこれ(孝行)に当たるわけではなく)、やはり報いているのだ」

 

ポイントは「報いている」の内容です。

傍線部は会話文中ですから、会話の流れを確認します。

 

ある人「どうして亡くなった叔母のためにこんなに一所懸命孝行しているんですか」

杜甫「とんでもない、報いているのだ」

 

この流れから、杜甫が亡くなった叔母に報いているのは明らかです。

 

さらに、傍線部は会話文の「はじめ」にあり、この後に叔母が杜甫を助けてくれたという内容が続いています。

 

以上から、お世話になった叔母に報いているだけなのだという杜甫の気持ちが読み取れます。

傍線部を含む一文を読むことが重要です。

会話文中に傍線部があるときには、会話の流れを押さえましょう。

 

問4 書き下し文・解釈

 

会話文に傍線部がありますので流れを確認します

 

杜甫と叔母の子が病気になった。

祈祷師に尋ねた。

→主語と内容が省略されていますが、2人が病気になった後に尋ねているわけですから、叔母が祈祷師に病気になった2人をどうすればいいか尋ねたということは容易に想像できます。

祈祷師「傍線部C」

叔母は子どもの場所を変え、杜甫を安らかにした。

傍線部D(杜甫は元気になった)

 

この流れを確認したところで、傍線部Cを見てみましょう。

 

漢文の構造は「S+V+C・O」です。

 

傍線部には重要漢字の「者」があります。

「者」は「~(もの)は」と読み、主語を表す重要漢字です。

 

つまり「(傍線部の前半)は吉だ」と分かります。

先程確認した流れから。この「吉」は病気が治ることを意味することが分かるでしょう。

 

では、どういう者が「吉」なのか。

それが傍線部の前半です。

「処」「楹」が難しいですが、選択肢を見ると「処」は「しょす」か「をる」で、「楹」は「はしら」だと分かります。

「処」がVになることが分かりましたので、その下にC(~に・を)かO(~を)が来ているはずです。

C・Oが来る部分には「東南隅」という場所を表す言葉があります。

また、話の流れから「子の場所を変えた」ことによって、病気が治ったことが分かります。

ということは、「東南隅にいる者が吉だ」というような内容であると分かります。

「処」は「をる(いる)」と読めばいいわけですね。

 

重要句法と重要漢字を覚えて手がかりにしましょう。

漢文の構造である「S+V+C・O」を意識しましょう。

(このブログでは、Sは主語、Vは述語(用言)、Cは「~に・と・より」の部分、Oは「~を」の部分を示しています)
特に大事なのは「V」です(それによってSやC・Oが判断できるからです)。

ですから「V」を意識して読むようにしましょう。

 

問5 内容説明

 

古文や漢文の「内容説明」は傍線部の直訳から始めます。

 

「私はこれで生存し、そして叔母の子は亡くなった」

 

「卒」が「死ぬ」という重要漢字です。

次に「是(これ)」の指示内容を確認します。

「私は是で生存した」ということから、直前(問4)の祈祷師に言われて場所を東南隅に移動したことを表すでしょう。

つまり、私は祈祷師の言う通りに叔母が東南の隅に移動してくれたので生きることができたが、叔母の子は場所を変えた(東南の隅ではない場所に移動させた)結果、死んでしまったということになります。

 

この問題の最大のポイントは「卒」が分かったかどうかです。

これが分かれば選択肢は2つに絞れます。

「是」の指す内容を正確に取れなかったとしても、2つの選択肢を比べれば正答できるでしょう。

内容説明問題は、直訳したら正答にかなり近づきます(それだけで正答になることも非常に多い)。

重要漢字、重要句法を手がかりに答えを導きましょう。


☆ここでワンポイント

 

傍線部C、Dは会話文の「なかほど」にあります。

ということは、これは傍線部B(会話文の「はじめ」)の説明部分になっているわけです。

つまり、「孝行ではなく叔母に報いているだけだ」の説明部分です。

ですから、杜甫が叔母に助けられた・お世話になったというような話が来ることが予想できるわけです。

その観点があれば、傍線部C、Dの読み取りもラクになります。

叔母は自分の子を犠牲にしてまで私(杜甫)を助けてくれたのだから、その恩に報いているだけなのだという流れが分かるはずです。

このように話の流れを追いかけることも非常に重要です

 

問6 内容説明

 

傍線部を直訳すると「叔母はこれがあった」です。

 

「これ」の指す内容が問われています。

指示語の指す内容は直前にあるのが基本ですから、直前を確認します。

また、傍線部はこの形式段落の「おわり」にあるのですから、この形式段落をまとめていることも分かります。

 

直前の「魯義姑」の話が分かればオッケーです。

注をしっかりと確認すれば何も問題ないでしょう。

自分の子では亡く、兄の子を優先させたという内容ですね。

まさに杜甫の叔母と同じだと分かります。

指示語が出てきたら、必ず指示内容を確認しましょう!

「注」は必ず確認しないとダメ!

 

問7 内容説明

 

傍線部を直訳すると「銘文を作るが韻は踏まず、思うに、情(気持ち)が行き着くと文はない」です。

 

ちょっとよく分かりませんね。

 

まず注を見てみると、銘文を作るときに通常は修辞(飾り)として韻を踏むことが分かります。

しかし、杜甫はそれをしないと言っているわけです。

 

そして、次の「蓋」に注目です。

「蓋」は「思うに」と訳す重要漢字です

 

「韻は踏まない、思うに…」となるわけですから、この後には韻を「踏まない理由」が来そうです。

それが「気持ちが行き着くと文はない」となります。

 

この一文の流れ、文章全体の流れから意味を考えると、

「叔母への気持ち」が「最高潮」に達すれば「韻を踏むような文」は必要ない
ということを述べていると考えられます。

 

ちなみに「至」は「行き着く」という意味ですが、「極限状態に行き着く」というニュアンスもあります

「至高」「至上」「至極」「至急」はまさにこの意味ですね。

 

直訳のための重要漢字!

意味をしっかりと読み取るための注!

最後の設問は文章全体の内容を問うているという意識を持ちましょう。


この話から知っておいて欲しい漢文常識

 

「孝」が出てきたら「(親)孝行」の話だということです(今回は親ではなく叔母でしたが)。

 

よくある「孝行」の話のパターンはこれです。

①子が親に尽くす。

親がひどい人でも尽くしたり、親がひどい目に遭っているのを身を挺して助けたり、自分を差し置いて親のために生活したり…

②子に困難が起きる。

③仏様が登場したりして、子の困難が解消される。

④「孝(親孝行)」って大切だとまとめられる。

今回の文章はこのパターンではなく、親でもない叔母のためになぜ孝行をするのかという話でしたが、この話のパターンを知っておくと、読みやすくなる「孝」の話が多いですよ。

 

センター試験の過去問に取り組んでやるべきことは、そこに出てきた漢字や句法を押さえること、そして漢文常識を知っていくことです。

他の年度でもそれを意識して学習しましょう。

ただ、漢文の文章は比較的短く、過去問だけでは受験に必要な重要漢字や重要句法をカバーすることは難しいので、暗記事項は別に学習することをオススメします

 

頑張ってください。


終わります。

 

センター対策の古文単語や漢文句法を確認する場合はQuizletが便利です。
次の記事もぜひご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

センター現代文の対策はこちらの記事をご覧ください。

マーク対策についてまとめたので古文漢文にも通じる部分が多くあります。

kinkoshin.hatenablog.com

 


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