平成26年度(2014年度)_センター試験_国語第4問(漢文)_解説
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今回は、平成26年度(2014年度)センター試験国語第4問(漢文)の解説です。
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では、始めましょう。
平成26年度(2014年度)センター試験国語第4問(漢文)は『陸文定公集』からの出題でした。
まずは本文に出てきた知っておくべき重要漢字と句法の確認です。
さらっと見てみて「分からない」ものがあれば、Quizletでの学習をしてみましょう。
Quizletについてはこちらの記事をご覧ください。
重要漢字
毎 以 或 為 故 雖 及 之 也 顧 独 全 而 尽 然 自 猶 夫 莫 亦 偶 豈 所謂
重要句法
以A為B 以AB=B以A 莫不A 豈A
では、各設問の解説です。
問1 漢字の意味
(1)
文脈から判断するしかありません。
「江南の人びとは筍を食べることを『習』。春になるといつも採って食べる」という内容から考えます。
「毎」が「~するといつも、~するたびに」という重要漢字だと分かっていれば「習慣」という熟語を導くことができます。
(2)
文脈から判断するありません。
「そもそも物は甘い物を『尚』、苦い物は完全であることができる」という内容です。
本文全体と「筍」の例から分かるように「良い物は人びとに取られるから無くなり、悪い物は人びとに取られずに残る」であることから考えます。
甘い物(良い物)は大切にされたり皆が欲しい物であったり利用できる物であったりするわけです。
これを踏まえて選択肢でどれが最も適当かを選びます。
また、「尚」が「たっとぶ」と読み「尊」と同じだということを知っていれば正答を導きやすくなります。
漢字の読みや意味の問題は、覚えるべき漢字が出題された場合を除くと、どれだけ漢文を読んできたか、漢字の学習(漢字検定など)をしてきたかに依るところが大きいです。授業や問題演習に出てきた漢字は覚えることを意識しましょう。
また、文脈から漢字の意味を予想する習慣も必要です。
やはり全文を訳せるようになるということが目標になります。
問2 返り点と書き下し文
すべて漢文の構造としては読むことができる選択肢となっています。
このような場合は訳してみて判断するしかありません。
①、②、③は訳すと明らかに意味をなさないから誤りと判断します。
④は「以てし」と読んでいますが、これは重要句法で挙げた「BするにAを以てす」の読み方です。
「Bするに」に該当する部分がないため、この読み方にはならないと判断します。
「以AB=B以A」を確認しておきます。
通常の形は「以AB」です。
・以筆描。
・筆を以て描く。
・筆で描く。
これを倒置した形にすると「B以A」となります。
・描以筆。
・描くに筆を以てす。
・描くのに筆でする。
どちらも意味は同じになることが分かりますね。
漢文でよく出てくる形なので、どちらが出てきても大丈夫なようにしましょう。
返り点、書き下し文の問題は以下の手順で解きます。
①重要句法があるか確認する。
②漢文の基本構造「S+V+C・O」を確認する。
③現代語訳してみる。
多くの場合、①、②で判断できますが、判断できない場合は③です。
問3 空欄補充
空欄補充の問題は空欄前後の内容から考えます。
・Ⅰは必ず棄てられるものです。
・「而ルニ(しかし)」Ⅱとあるので、ⅡはⅠと逆であり、取り尽くされるものです。
・「然らば(だから)」Ⅲは自分で自分を傷つけているものです。
・「而ルニ(しかし)」Ⅳは棄てられるものです。
Ⅰ、Ⅳは棄てられるものと分かり同一のものが入ることが分かります。
Ⅱは取り尽くされて、自分を傷つけているとつながるからⅡとⅢは同一です。
選択肢を見ると「甘」と「苦」しかありませんから、棄てられるものが「苦」、取られるものが「甘」ということが判断できます。
また、接続詞に注目して次のように考えることもできます。
流れを確認します。
Ⅰ しかし① Ⅱ だから Ⅲ しかし② Ⅳ
・「しかし①」からⅠとⅡは逆です。
・ⅡだからⅢということは、ⅡとⅢは逆になりません。
・「しかし②」からⅢとⅣは逆です。
このように考えると、ⅠとⅣ、ⅡとⅢの2つに分けることができますね。
(選択肢が「甘」と「苦」の2つしかないからできることですが…)
空欄補充は前後の文脈で判断します。
接続詞に注目しましょう。
問4 解釈
「猶」が再読文字です。
「ちょうど~のようだ。まるで~と同じだ」と訳すことが分かっていれば何も問題ありません。
何はなくとも重要漢字、重要句法は覚えましょう。
特に再読文字は10個しかありませんが、本文に出てくる可能性は高いですし、今回のように設問になることも多いです。コスパ最強ですよ。
問5 書き下し文
問2で確認した手順に沿って考えます。
①重要句法として、「莫不A(A[セ]ざルハなシ)」があります。
②「S+V+C・O」の確認で重要なことは以下の2点です。
*このブログでは「S=主語」「V=述語(用言・助動詞)」「C=補語(ニ・ト・ヨリ)」「O=目的語(ヲ)」としています。
ⅰ Vの上にSがあるということ。
ⅱ 下から戻ってくるときに「Cニ・Oヲ」という送り仮名がつくということ。つまり、上から順に読むときには「ニ・ヲ」はつかないのが基本です。
選択肢を確認すると②、④、⑤がこれらに反しています。
③選択肢を現代語訳します。
選択肢①のように「採ることを大切にし、棄てることを卑しむ」というような価値観の話ではないので誤りと判断します。
返り点、書き下し文の問題は以下の手順で解きます。
①重要句法があるか確認する。
②漢文の基本構造「S+V+C・O」を確認する。
③現代語訳してみる。
多くの場合、①、②で判断できますが、判断できない場合は③です。
問6 論旨の展開
本文を訳せていることが前提の設問です。
やはり古文漢文は本文を訳すことを目標に学習する必要がありそうです。
今回の本文を3つに分けるとこうなります。
①江南で筍食べている。
②良いものは取られ、悪いものは残る。
③まとめ。
重要漢字の「夫(そもそも)」は「まとめの表現」です。
「夫」があったら、筆者の主張が来るはずだという意識を持っておきましょう。
他に「由此観之(これによりてこれをみれば)」などの表現があります。
本文全体を何となくでもいいので訳せるようになることが必要です。
漢文に限らず、文章構造を意識して文章を読むようにしましょう。
(現代文などでも構成に関する設問は頻出ですね)
問7 書き下し文、解釈と筆者の主張
話全体から分かることは、繰り返しになりますが「良いものは取られるから不幸となることがあり、悪いものは棄てられるから幸となることがある」ということです。
であれば、まさにこのことが筆者の主張となるはずです。
このことを踏まえて選択肢の後半(筆者の主張)を確認すると、正答を導けます。
なお、通常であれば傍線部を直訳するところから始めるべきですが、今回は「豈」が滅多に使われない用法であることから、筆者の主張で判断した方がいいでしょう。
(通常「豈」は「豈に~んや」という反語になりますが、今回は違うんですよね…。ちょっと意地悪な気もします)
ただ「豈」以外の句法から判断できないこともありません。
「以A為B」という形がある場合、多くの場合は「Aを以てBと為す」と読みます。
(絶対だという訳ではないのでこれだけで判断するのは厳しいですが、他に手がかりがない場合にはこれだけで判断してもいいくらいの用法です)
このような書き下し文になっているのは⑤しかありません。
漢文文章の構造は「具体例→まとめ(筆者の主張)」となっていることが多いので、具体例を押さえて主張を確認しましょう。
書き下し文を判断するときには重要句法が役立ちます。
この話から知っておいて欲しい漢文常識
2つあります。
1つは、設問解説でも説明しましたが漢文文章の構造です。
「具体例→まとめ・主張」となっている場合が多いことを知っておくとお得です。
なぜなら、具体例、まとめのいずれかの内容がイマイチ分からなくても、どちらかが分かれば書いてあることが予想できるからです。
具体例が難しい→まとめの部分が分かれば、そこから予想できる。
まとめが難しい→具体例の部分から考えることができる。
また、「夫(そもそも)」や「由此観之(これによりてこれをみれば)」の後に「まとめ・主張」が始まる可能性が高いことも知っておくといいですね。
もう1つは、漢文によく出てくる思想についてです。
今回も最後の一文で荘子の「無用の用」が出てきました。
これを知っていると、最後の設問が解きやすくなったことは間違いありません。
ということで、有名どころは押さえておきましょう。
1.儒家
孔子を祖とする思想です。
「礼」と「仁」が大切だと説きました。
愛や礼儀や道徳によって世の中を治めることが平和に繋がるという徳治主義の思想です。
人間の本性は生まれながらにして善だという思想です。
「義」を説いたのも彼です。
人間の本性は生まれながらにして悪だという思想です。
ここでいう「悪」は現在「悪」と聞いて持つイメージとは違います。
現在の近い言葉で言うと「欲」になるかと思います。
人間は生まれながらに「欲」があるから、それを孔子が説いた「礼」などに従ってよくしていこうという思想です。
荀子が出てきたら、人間は欲望を持っているからそれを制御するための何かが必要だという結論になります。
この考えは後に出てくる「法家」に受け継がれていきます。
2.道家
老子を祖とする思想です。
儒家が説く人為(教育や修養)を否定するところから始まります。
人為的に人を変えるのをよしとせず、「無為自然」が大切だと説きました。
「道」という不変の存在があるとし、それに従って生きるのがよいとする考えです。
「無為にして為さざること無し(無為であれば、できないことはない)」という言葉も有名です。
「無用の用(無用に見えるものが実は有用だ)」を説きました。
老子や荘子(合わせて老荘思想と言います)が出てきたら、人為を加えるのはよくない、そのままで意味があるというような結論になります。
(ざっくり言うとこんな感じですが、本当はもっともっと難しいです…)
3.法家
荀子に学んだ韓非の思想です。
人の性は悪だから「法」による「信賞必罰(良いことには賞を、悪いことには罰を与える)」が必要であることを説きました。
儒家の「徳治主義」に対して「法治主義」で世を治めるという考えです。
この思想は秦(中国を統一した国です。始皇帝や万里の長城が有名ですね。今なら『キングダム』で知っている方も多いかも)に採用されました。
韓非が出てきたら、信賞必罰、法律は大事だという結論になります。
他にも思想はありますが、頻出は以上の3つです。
これを知っているだけで読みやすくなる漢文が多くなるはずです。
センター試験の過去問に取り組んでやるべきことは、そこに出てきた漢字や句法を押さえること、そして漢文常識を知っていくことです。
他の年度でもそれを意識して学習しましょう。
ただ、漢文の文章は比較的短く、過去問だけでは受験に必要な重要漢字や重要句法をカバーすることは難しいので、暗記事項は別に学習することをオススメします。
頑張ってください。
では、これで終わります。
センター対策の古文単語や漢文句法を確認する場合はQuizletが便利です。
次の記事もぜひご覧ください。
センター現代文の対策はこちらの記事をご覧ください。
マーク対策についてまとめたので古文漢文にも通じる部分が多くあります。
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