高校教員の徒然日記

PMA~Positive Mental Attitude~

長野大学_小論文_2020年度_編入学試験

こんにちは。きんこです。

 

長野大学(2020年度・令和2年度編集学試験)の小論文の解説です。

 


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問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。

長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。

www.nagano.ac.jp

   


このブログ内にある「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。

そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。

まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。

現代文の力もつきますよ。

kinkoshin.hatenablog.com

 


では、はじめます。

 

課題文は伊豫谷登士翁・齋藤純一・吉原直樹『コミュニティを再考する』です。

 

設問の解説の前に、長野大学が示している、小論文における「評価のポイント」を確認しておきましょう。

以下の記事で詳しく紹介していますので、まだご覧になっていない方は読んでおくことをオススメします。

kinkoshin.hatenablog.com

 

編入学試験で特に意識しておきたいことは、課題文の筆者は何らかの「問題」を提起しているということです。

筆者が提起している「問題」はどういうことかを読み取るという意識で課題文を読みましょう。

それは、長野大学が求めている「評価のポイント」ですし、設問2ではその問題点についての自分の意見を述べることが好ましいからです。


設問1

 

課題文の要旨を200字以内で書く問題です。

 

まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。

『現代新国語辞典』(三省堂)によれば 

「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です。 

小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です

それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。

ちなみにこのブログで解説をしている長野大学名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。

 

ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます

 

また、長野大学の課題文では何らかの「問題」が提起されているはずです。

読み取るべき筆者の主張は、「問題点そのもの」であったり、「問題に対する筆者の考え」であったりするということを意識しておく必要があります。

まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。

ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。

 


では、今回の課題文を読んでいきましょう。

 

形式段落ごとに見ていきますので1~5まで番号を振ってください。

 

人はひとりでは生きていけず、様々な人たちとのあいだに多くの関係を結び、相互に助け合ってきた。

これは社会的共同性、人々にとっての生きられる場所だ。

 

出典で確認したように「コミュニティ」の話だと予想がつきます。

きっとコミュニティがテーマですね。

相互に助け合う社会的共同性を構築して生きているわけです。

 

しかし

社会問題の解決として、国家によってコミュニティが賞賛される裏には、幻想の政治が見え隠れする。

 

逆接から始まっていますし、「幻想の政治」という表現から、「社会問題の解決として、国家によってコミュニティが賞賛される」ことに対して、筆者はマイナスの評価をしていると考えられます。

このことを筆者は問題視していそうです。

 

地域の復権といっても、そもそもコミュニティとして思い描かれてきたような場所はないし、権力が覆い被さって形成されるものでもない。

そのあり方は、時代や地域によって異なり、コミュニティという一言で捉えてよいのか。

コミュニティの復権が世界的な規模で叫ばれ、新しいナショナリズムと共鳴している。

 

ちょっと難しいですね。

形式段落2からの繋がりで読みましょう

国家によってコミュニティ(地域)が賞賛されても(復権が叫ばれても)、そもそもコミュニティなんて存在しないし、国家(権力)によって作られるものでもない(だから幻想の政治と言っているわけです)。

しかも、コミュニティのあり方は時代や地域によって異なる(そりゃそうですよね。江戸時代と現在のコミュニティは違うのは明らかですし、日本とアフリカのコミュニティのあり方が違うのも明らかです)のに、国家による賞賛によって、新しいナショナリズムとしてコミュニティを作ろうとしている(作れないのに)。

 

やはり、国家によってコミュニティが賞賛されることに対して筆者は問題視しています。

それは、国家によってコミュニティ形成はできないのに、やろうとしているからです。

 

グローバリゼーションは、あらゆる具体的な場所で展開する。

空間が国境という境界をたやすく越境する。

ナショナルな境界を越えるコミュニティをどのように構想できるのか。

 

形式段落3からの繋がりを意識すると読み取りやすいですね

コミュニティは地域によって異なるのに、グローバリゼーションによって国をも越えた異なる地域がつながってしまっています。

そこにコミュニティをどのように構想できるのかと問題提起しています

形式段落3までで問題点を指摘し、それに対して形式段落4で問題提起していることが分かります。

 

コミュニティが叫ばれる背景には、グローバリゼーションによって人々の不安が拡大したことがある。

その不安を埋めるものとしてコミュニティへの期待が膨らんでいるが、コミュニティ幻想が崩壊しつつある。

コミュニティが何らかの意図によって作り出されたときにイデオロギーとなる。

 

コミュニティが叫ばれる理由が述べられています。

課題文で述べられている問題点などはすでに確認済みですから、この理由だけ読み取ればいいでしょう。

 


本文の読み取りが終了しました。

要旨をまとめましょう。

 

課題文では問題点の指摘と、それに対する問題提起がされていました。

それを中心にまとめます。

まず問題提起は第4段落の内容ですね。 

グローバリゼーションによるナショナルな境界を越えるコミュニティをどのように構想できるのか。 

コレに対する筆者の考えは述べられていませんでしたから、この問題提起の部分が主張だったことが分かります。

 

これに足していきます。

このような問題提起がされるのは、問題点があるからです。

形式段落2と3の内容ですね。 

そもそもコミュニティとして思い描かれてきたような場所は存在せず、そのあり方は時代や地域によって異なる。それにも関わらず、国家によるコミュニティの復権が新しいナショナリズムと共鳴している。グローバリゼーションによるナショナルな境界を越えるコミュニティをどのように構想できるのか。(138字) 

 

これに、コミュニティとは何かということ(コミュニティの定義)、コミュニティが叫ばれ始めた理由を足せばいいでしょう。

課題文はコミュニティがテーマであり、課題文中で定義づけされていたので書くことが望ましいでしょう。 

コミュニティとは社会的共同性であり人々にとっての生きられる場所である。グローバリゼーションによって人々の不安が拡大したことでコミュニティが叫ばれるが、そもそもコミュニティとして思い描かれてきたような場所は存在せず、そのあり方は時代や地域によって異なる。それにも関わらず、国家によるコミュニティの復権が新しいナショナリズムと共鳴している。グローバリゼーションによるナショナルな境界を越えるコミュニティをどのように構想できるのか。(213字) 

 

このままでは字数に収まっていませんから、内容を変えずに本文の他の表現を利用するなどして字数に収めます。

「~による」という表現も多い(笑)ので減らします。 

コミュニティとは社会的共同性であり人々にとっての生きられる場所である。グローバリゼーションによる人々の不安の拡大でコミュニティが叫ばれるが、そもそもコミュニティは本来的なものとして存在せず、そのあり方は時代や地域で異なる。それにも関わらず、国家によるコミュニティの復権が新しいナショナリズムと共鳴している。グローバリゼーションによるナショナルな境界を越えるコミュニティをどのように構想できるのか。(198字) 

 


設問2

 

絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。

具体的には「筆者の主張をふまえ」を見落とさないことです。

筆者の主張をふまえて、自分はどのように考えるのかを述べる必要があります。

 

ということで、筆者の主張を確認します

設問1より、 

グローバリゼーションによるナショナルな境界を越えるコミュニティをどのように構想できるのか。 

 

これを考える上での前提も確認しておきましょう。 

①そもそもコミュニティは本来的なものとして存在しない。

②そのあり方は時代や地域で異なる。 

ここでは、特に②を踏まえておく必要があります。

それは②がグローバリゼーションと相反する内容だからです。

 

コミュニティというのは時代や地域で異なるものなのに、地域(国)がつながるグローバリゼーションの中でどのようにコミュニティを構想すればいいのか、ということに対して自分の意見を述べることになります。

つまり、グローバルな「時代」におけるコミュニティのあり方が問われていることになります。

決して簡単ではない、難しいことが問われていますね。

さすが編入試験といったところです。

 

どのようなコミュニティを考えるかに当たっては、課題文にあった「コミュニティの定義」は頭に入れておきましょう。

すなわち「コミュニティとは社会的共同性であり人々にとっての生きられる場所だ」という内容です。

時代が変わっても、この定義が変わることはないはずです。

あなたが考える新たなコミュニティもこの定義から外れないものにする必要があります。

 

それにしても難しい問いですね…。

受験前にこのようなことに関する本を読んでいたり考えたりしたことがないと厳しいと思います。

実際の受験者の方たちはどのような小論文を書いたのでしょうか…。

ぜひ読んでみたい…。

 


以上の内容で400字で書きます。

 

基本の構成はこうなるのでした。 

第一段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる

第二段落 自分の意見の理由、具体例

第三段落 意見のまとめ 

二段落構成にする場合は、上記の「第二段落」の内容を第一段落か第三段落に振り分けることになります。

特に第一段落の筆者の主張を踏まえる部分では、筆者が提起している「問題」をしっかりと踏まえていることが分かる書き方にすることが重要です(評価のポイントですからね!)。

 

以上で書くと、合格できる小論文になりますよ。

 

書き方や表現などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。


これからも過去問に取り組んでみましょう。

長野大学だけではなく、名寄市立大学の課題文を使って練習するのもアリですよ。

 

では、終わります。


今回以外の長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

ついでに名寄市立大学小論文の記事のリンクも貼っておきます。

kinkoshin.hatenablog.com

 


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