長野大学_小論文_2018年度_編入学試験
こんにちは。きんこです。
長野大学(2018年度・平成30年度編集学試験)の小論文の解説です。
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長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。
このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。
そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。
まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
現代文の力もつきますよ。
では、はじめます。
課題文は下條信輔『まなざしの誕生-赤ちゃん学革命-』です。
設問の解説の前に、長野大学が示している、小論文における「評価のポイント」を確認しておきましょう。
以下の記事で詳しく紹介していますので、まだご覧になっていない方は読んでおくことをオススメします。
編入学試験で特に意識しておきたいことは、課題文の筆者は何らかの「問題」を提起しているということです。
筆者が提起している「問題」はどういうことかを読み取るという意識で課題文を読みましょう。
それは、長野大学が求めている「評価のポイント」ですし、設問2ではその問題点についての自分の意見を述べることが好ましいからです。
設問1
課題文の要旨を200字以内で書く問題です。
まずは「要旨」とは何かを確認しましょう。
『現代新国語辞典』(三省堂)によれば
「要旨」とは「文章・話などの、おもな(だいじな)内容」です
小論文における課題文では、多くの場合「要旨=筆者の主張」です。
それは、小論文の課題文はあるテーマについて筆者が何かしらの主張をしているものが圧倒的に多いからです。
ちなみにこのブログで解説をしている長野大学や名寄市立大学の小論文の課題文はそのようになっています。
ですから「要旨を書く」ということは、「課題文で筆者が主張していることを書く」ということができます。
また、長野大学の課題文では何らかの「問題」が提起されているはずです。
読み取るべき筆者の主張は、「問題点そのもの」であったり、「問題に対する筆者の考え」であったりするということを意識しておく必要があります。
まずは「小論文を書く力」というよりも「文章を読む力」が試されるわけです。
ですから、先程紹介した「文章の読み方」のブログを必ず読んでくださいね。
では、今回の課題文を読んでいきましょう。
形式段落ごとに見ていきますので1~13まで番号を振ってください。
1
出典に「赤ちゃん学革命」とあることと、文章の「はじめ」にこれらの言葉があることから、この文章のテーマは「赤ちゃんに対する教育」だと予想できます。
2
この事情は日本だけでない。
ああそうですかという感じでいいでしょう。
3
早期教育の流行は平和な社会だからというわけではなく、「都市型の社会」の病像である。
最後に「私の見方」という言葉がありますから、ここが筆者の主張になりそうです。
筆者の主張は「早期教育の流行は「都市型の社会」の病像である」となるでしょう。
また、課題文には「問題」が提起されているという意識を持っていれば、この辺りが筆者の考える問題点ではないかという予想を立てることができます。
基本的に「問題=マイナスのこと」です。
「病像」なんて、どう考えても「マイナス」の評価を示す言葉ですよね。
4
「都市型の社会」とは「自然に対する信頼感を失った社会」である。
「都市型の社会」の説明をしてくれています。
また、形式段落3からの流れで「自然に対する信頼感を失った→早期教育の流行という病像が現れた」ということが読み取れます。
5
「田舎型」の生活に浸透していた、自然の治癒力=回復力に対する信頼感が都市型の社会には残っていない。
だから、人びとは不安に駆られて、薬、自然食品、スポーツへと狂奔する。
形式段落4の「自然に対する信頼感を失った社会」の説明を繰り返しています。
形式段落4の読み取りにこの段落の内容を足すと「自然に対する信頼感を失った→人々は不安に駆られた→薬、自然食品、スポーツへと狂奔したり、早期教育の流行という病像が現れた」となるでしょう。
とはいえ、形式段落1で確認したように、この文章のテーマは「赤ちゃんに対する教育」「早期教育、英才教育」だと考えられますから、「薬、自然食品、スポーツへと狂奔」という内容は「早期教育」と同じことを言っているのだろうと予想されます。
6
教育の現場にも同じことが起きている。
やはり、形式段落5で確認した通り、「薬、自然食品、スポーツへと狂奔」と「早期教育」とは同じことという流れです。
7
家庭や共同体に内在していた「自然の教育力」は信じることができない。
(自然=自然環境の中という意味、強制的でないという意味、人工的でないという意味)
親子の結びつきが都市型の生活にはない。
ここまでの内容をまとめると、「自然の教育力」に対する信頼を失ったから、人々は不安に駆られ、早期教育などの流行につながるということですね。
8
おさえつけられてきた子どものエネルギーが暴力という形で爆発している。
高校の偏差値が上昇し、予備校同士が国盗り合戦を展開している。
「おさえつけられてきた」という言葉に注目しましょう。
形式段落7の内容から、自然(=強制的でない)を失った社会ですから、子どもは自然でない(=強制的な)教育をされていることが分かります。
この「強制」が「おさえつけられた」という表現になっているわけですね。
また、「高校の偏差値」や「予備校」から、やはり「教育」の話がテーマですね。
9
早期化競争とアカデミック・サイドでの変化とが無節操に野合した先が、抜け駆けの心理と論理であり、それに目をつけたのが赤ちゃん教育のビジネス化だ。
形式段落ほぼすべての内容が「まとめ」となっていますが仕方ないですね…。
「早期化競争+アカデミック・サイドでの変化→抜け駆け→赤ちゃん教育のビジネス化」です。
ちょっと内容が複雑になってきました。ここまでをまとめると2つの点が見えます。
①自然の教育力が信じられない→不安に駆られる→早期教育しなければとなる/強制的な教育のため子どもは爆発
②早期化競争+アカデミック・サイド→抜け駆け→赤ちゃん教育のビジネス化
形式段落1~8の前半までが①の内容、つまり「早期教育を受ける立場」の内容であり、8の後半から(「他方」から始まったところから)が②の内容、つまり「早期教育を提供する立場」の内容です。
このように、ここで2つの立場からの話となっていることが、この課題文の読み取りを難しくしています(どちらか一方だけ、とりわけ①の内容だけだったなら読み取りやすいのですが)。
10
ことのついでに言えば
ほかの「都市型」の症状と同じく、赤ちゃん教育ブームが疑似科学的な雰囲気を身にまとっている。
「ついで」なので、それほど重要ではないと判断します。
形式段落3の「都市型の社会」とのつながりだと考えます。
「都市型」というのは「自然に対する信頼を失った」以外に「疑似科学的なもの」とも言えるということです。
11
早期教育ブームの底流にある人間観、赤ちゃん観を、掘り下げて考えてみたい。
「考えてみたい」と述べていることから、筆者の考え(主張)につながりそうです。
12
「人間は経験の効果によって変われる」「人間の能力は学習のみで決まる」「教育は早いほどよい」
これが早期教育ブームの底流にある人間観、赤ちゃん観です。
13
ところが
そこ(早期教育)でイメージされている「赤ちゃん」や「知能」と、アカデミック・サイドでの「ベビーブーム」の底流にある考えとの間のつながりがはっきりせずズレがある。
それは先に述べた「無節操な野合」だ。
*野合…(対立する者同士が)正式な手続きを踏まず、こっそり関係を結ぶこと
「ズレがある」と述べていることから、筆者が「問題」に感じていると読み取れます。
ただ、この「ズレ」を考えるとなると「アカデミック・サイドでの「ベビーブーム」の底流にある考え方」とはどのようなものかを確認する必要があります。
しかし、この課題文ではそこまで言及されていませんから、この「ズレ」を深めることは難しそうです。
では、課題文の要旨をまとめてみましょう。
読み取りで筆者の主張と考えられる部分は2つありました。
確認します。
①早期教育の流行は「都市型の社会」の病像である(形式段落3)
②早期教育でイメージされている「赤ちゃん」や「知能」と、アカデミック・サイドでの「ベビーブーム」の底流にある考えとの間のつながりがはっきりせずズレがある(形式段落13)
この2つの関係はどのようなものでしょうか。
ズレがあるにもかかわらず(②)、早期教育が流行しており、それは「都市型の社会」の病像である(①)。
このような繋がりになるでしょう。
となると、筆者の主張は①が適切だと考えられます(基本的に、日本語は文の後半が大事ですから)。
これをもとに200字目指して内容を補強していきます。
まず、「ズレ」だけでは内容が分かりませんので、何と何との間のズレかを明らかにします。
早期教育とアカデミック・サイドとの人間観や赤ちゃん観の捉え方や考え方にズレがあるにも関わらず早期教育が流行しており、それは「都市型の社会」の病像だと言える。
次に、課題文前半の内容、すなわち「早期教育が起きた理由」について、「早期教育を受ける立場」「早期教育を提供する立場」(形式段落9で説明した内容)を足します。
(「早期教育が都市型社会の病像だ」というのが筆者の主張ですから、病像である「早期教育」が起きた理由をまとめた方がいいからです)
人々は自然の教育力を信じることができず不安に駆られる。さらに、学習塾の早期化競争と赤ちゃん研究に対する社会的関心の高まりとの無節操な野合が抜け駆けの心理と論理を生み出した。早期教育とアカデミック・サイドとの人間観や赤ちゃん観の捉え方や考え方にズレがあるにも関わらず早期教育が流行しており、それは「都市型の社会」の病像だと言える。(164字)
最後に「都市型の社会」とは何かを明示します。
筆者が「 」をつけている言葉は特別な意味を持っていると考えられますし、「都市型の社会」は筆者の主張に関わる言葉だからです。
形式段落4で「都市型の社会」をしっかりと定義してくれていましたね。
「都市型の社会」とは「自然に対する信頼感を失った社会」である。そこでは自然の教育力を信じることができず、人々は不安に駆られる。さらに、学習塾の早期化競争と赤ちゃん研究に対する社会的関心の高まりとの無節操な野合が抜け駆けの心理と論理を生み出した。早期教育とアカデミック・サイドとの人間観や赤ちゃん観の捉え方や考え方にズレがあるにも関わらず早期教育が流行しており、それは「都市型の社会」の病像だと言える。(200字)
設問2
絶対に注意しなければいけないことは「設問」をよく見ることです。
具体的には「筆者の主張に対する」を見落とさないことです。
筆者の主張に対して、自分はどのように考えるのかを述べる必要があります。
ということで、筆者の主張を確認します。
設問1より、
早期教育とアカデミック・サイドとの人間観や赤ちゃん観の捉え方や考え方にズレがあるにも関わらず早期教育が流行しており、それは「都市型の社会」の病像だと言える。
そして、ここには「評価のポイント」で確認したように「問題」が提起されています。
①早期教育の流行は「都市型の社会」の病像である
②早期教育でイメージされている「赤ちゃん」や「知能」と、アカデミック・サイドでの「ベビーブーム」の底流にある考えとの間のつながりがはっきりせずズレがある
2つの問題が提起されていると考えられますが、設問1で解説したようにアカデミック・サイドでの「ベビーブーム」の底流にある考えについては課題文で述べられていません。
ですから、②をメインとして論を進めていくことは難しそうです。
ここでは、①の内容を筆者の主張のメインとして考えるのが望ましいと言えます。
今回の場合、筆者の主張に対する自分の意見を考えるというのは、次のように問われているということになります。
早期教育は「都市型の社会」の病像だと言えるが、あなたはどう考えますか。
筆者は課題文で「早期教育はよくない」と述べています(病像なのですから)。
その理由として、早期教育の流行の原因が、人々が「自然に対する信頼感」を失ってしまったこと、さらに学習塾とアカデミック・サイドとの無節操な野合とが赤ちゃん教育をビジネス化していったことを挙げていました。
以上のことを踏まえて、「早期教育」について自分がどのように考えるかを述べることになります。
以上の内容で400字で書きます。
基本の構成はこうなるのでした。
第一段落 筆者の主張を踏まえながら自分の意見を述べる
第二段落 自分の意見の理由、具体例
第三段落 意見のまとめ
二段落構成にする場合は、上記の「第二段落」の内容を第一段落か第三段落に振り分けることになります。
特に第一段落の筆者の主張を踏まえる部分では、筆者が提起している「問題」をしっかりと踏まえていることが分かる書き方にすることが重要です(評価のポイントですからね!)。
以上で書くと、合格できる小論文になりますよ。
書き方や表現などはブログではどうしようもありませんので、身近な方(学校の先生とか)に添削してもらいましょう。
これからも過去問に取り組んでみましょう。
長野大学は過去問が少ないので、名寄市立大学の課題文を使って練習するのもアリですよ。
では、終わります。
今回以外の長野大学の小論文の記事については、こちらからご覧ください。
ついでに名寄市立大学のリンクも貼っておきます。
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