長野大学_国語_2020(令和2)年度_学校推薦型選抜(推薦入試)_第2問
こんにちは。きんこです。
長野大学2020年度(令和2年度)学校推薦型選抜(推薦入試)の国語第2問の解答解説です。
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このブログの「文章の読み方」などをどのように運用するのかに重点を置いています。
そのため、それらをお読みいただいていることを前提に説明をしていきます。まだご覧になっていない方は以下のリンクからご覧ください。
この読み方、解き方を徹底することで入試問題を解けるようになりますよ!
ぜひ身につけてください。
とはいえ、今回は第1問で「自分の意見」と「その論拠」を答えさせる設問が出題されました。
つまり、知識や読解に加えて小論文も合わせて出題されたということです。
こちらについては第1問の解説記事を参考にしてください。
問題については、著作権の関係上ここに載せることはできません。
長野大学のホームページで過去の入試問題をダウンロードすることができますので、ご準備をお願いします。
はじめに解答をお示しし、その後解説をお伝えします。
では、始めます。
[解答]
2 塩野谷祐一『エッセー 正・徳・善』より一部抜粋箇所等を含む
問1
(1)拠出 (2)疾病 (3)苦境 (4)贈与
(ア)おちい(る) (イ)とうげんきょう (ウ)まかな(う)
問2
イ
問3
人間が生きるために必要不可欠なものを満たす能力の欠如を事後的に補うために、すべての個人で、そのようなリスクに直面した人々が人間としてのニーズを満たすことができるように事前に準備しておくという意味。(98字)
問4
ウ
問5
イ
[解説]
形式段落での説明になります。
1~10まで形式段落に番号を振ってください。
問1 漢字
基本的な漢字ばかりです。漢字検定2級まで取得していればまったく問題ありません。
今回は書きは最高でも漢字検定3級(中学卒業レベル)であり、読みは準2級までです。
大問1では書きで最高準2級の漢字が出題されています。
とはいえ、「拠出」「疾病」などは言葉自体が慣れないものかもしれません。
この辺りは漢字検定対策の問題集をこなしたり、多くの現代文を読むことが必要となりそうです。
問2 空欄補充
空欄は形式段落5の最後にあります。
形式段落は、これからこの話するよという「はじめ」、それを詳しく説明してくれている「なかほど」、「はじめ」にあった「この話」のまとめである「おわり」だということが分かっていれば簡単です。
これで形式段落5を確認します。
はじめ…すべての個人があらかじめ掛け金を払っておき、リスクが生じた人に補償する。って話をするよ。
なかほど…それが「保険」であり、社会保障制度はすべての人に強制しているんだよ(つまり、「はじめ」の内容がすべての人に適用されている)。
おわり…それ(社会保障)は空欄「あ」。
ここから分かるように空欄には「社会保障」とはどういうものかが入り、それは「形式段落のつくり」から「はじめ」にあった「すべての個人があらかじめ掛け金を払っておき、リスクが生じた人に補償する」というものだと分かります。
そういう意識で選択肢を見ると、「すべての個人」の意味になっているものは選択イとエの「あらゆる人々」です。
イは「利己心を満たす」、エは「利他心を満たす」となっています。
社会保障は「リスクが生じた人」が補償をもらうことができる制度ですから「利己心」つまり「リスクが生じた己(おのれ・自分)に利益があると思うもの」です。
問3 内容説明
まずは設問をよく読み「何が問われているのか」すなわち「何を答える必要があるのか」を確認します。
ポイントは3つです。
①傍線部aについて、どのような意味で「消極的」なのかを説明する
②本文全体を踏まえる
③100字以内で書く
では、ポイント順にどのように考えるか見ていきます。
①傍線部aについて、どのような意味で「消極的」なのかを説明する
傍線部aを含む一文を確認すると「『基礎的ニーズ』の充足は、単にリスクに対する消極的対応として必要であるのではなく…」です。
ここで2点確認します。
1.「『基礎的ニーズ』の充足=リスクに対する消極的対応」であること
2.「『リスク』に対して『消極的』だ」と言っていること
ですから、ここでの「基礎的ニーズ」の充足がどのような意味で消極的なのかということと、「リスク」に対して「消極的」とはどういうことかを説明してあげればいいでしょう。
つまり、基礎的ニーズの充足やリスクに対して「消極的とはどういうことか」という言い換え問題(イコール問題)と考えることができます。
ということで、この内容を確認します。
傍線部aは形式段落6の「はじめ」にあります。
形式段落のつくりは「はじめ-なかほど-おわり」で「この話するよ-説明-ほら、こうだよね」が基本です。
ということは、この形式段落で説明されていくと考えられます。
見てみましょう。
はじめ
「基礎的ニーズ」の充足は、単に傍線部aとして必要であるのではなく、○○するために必要とされる。
形式段落6では、このような話がされると分かります。
その中心は、「AではなくB」となっていることから「B」の話だと考えられます。
傍線部a(消極的)としてではなく、Bするためだ。
という構造から「消極的」の反対である「積極的にはどうか」という話がBの内容でありメインだと予想できます。
そのような意識で「なかほど」を読みます。
なかほど
これは社会保障の消極的な機能にすぎない。
「セーフティネット=消極的」ということが分かります。
また、「むしろ」の後に筆者の主張が来ることが多いことを考えると、やはり「積極的」の方がメインの話だと分かります。
おわり
「必要」の充足が「能力」を高めるという関連を考えることが、ポジティブ(積極的)な社会保障の課題ではないか。
「積極的」な方の話題でまとまっていますから、この後はやはり「消極的」ではなく「積極的」の話題に移っていくことが分かります。
実際に形式段落7からは「ポジティブ(積極的)な社会保障」の話になっています。
では、この形式段落6はどのような働きをしているのか考えてみましょう。
「はじめ」で確認したように
「基礎的ニーズ」の充足は、単に消極的対応として必要であるのではなく、○○(積極的に対応)するために必要とされる。
というように、「消極的」から「積極的」へと話題を転換する働きをしていると考えられます(実際に「おわり」では「積極的」に対応することがどのようなことかがまとめられ、形式段落7では「積極的」の話になっています)。
形式段落6の前に「消極的」の話がすでにされていて、形式段落6の後で「積極的」の話がされると分かります。
今回確認したいのは「消極的」の方ですから、先ほど読み取った「セーフティネット=消極的」の説明が形式段落5まででされていると考えられます。
ということで、「セーフティネット」とはどのようなものかを確認しましょう。
形式段落5の「はじめ」に
このように考えると、すべての個人が事前に掛け金を支払い、補償金の社会的なプールをつくっておき、リスクが生じた人々にそこから損害を補償するという社会的仕組み
とあり、これが「セーフティネット」です。
「このように考えると」と指示語があるので、その内容も確認します。
形式段落4ですね。
形式段落4の「はじめ」に
社会保障制度は、人間にとって本来的な「基礎的必要(ニーズ)」の充足のために、社会的連体の仕組みを用意するもの
とあり、これが先ほどの社会的仕組みです。
この話をしているのが、形式段落4です。
形式段落4の「なかほど」で説明が続きます。
疾病・障害・失業・貧困・老齢などのリスクに直面した人々は、人間としてのニーズを満たすことができなくなる。
形式段落4の「おわり」でまとまっています。
誰もが同様のリスクに直面している。
これが形式段落5の
すべての個人が事前に掛け金を支払い、補償金の社会的なプールをつくっておき、リスクが生じた人々にそこから損害を補償するという社会的仕組み
を作っている、つまりセーフティネットにつながっているわけです。
まとめましょう。
「セーフティネット=消極的」とは
疾病・障害・失業・貧困・老齢などのリスクに直面した人々が人間としての基礎的ニーズを満たすことができなくなった場合のために、すべての個人が事前に掛け金を支払い、補償金の社会的なプールをつくっておき、リスクが生じた人々にそこから損害を補償するという社会的仕組み(であるという意味で「消極的」である)。
ということになります。
②本文全体を踏まえる
では、先ほどのものをそのまま「答え」としてもいいのでしょうか。
たしかに「消極的」の説明になっています。
しかし、設問では「全体を踏まえて」という条件が「わざわざ」書かれているわけです。
ということは、傍線部の前後だけではなく、他の部分でも「セーフティネット」についての記述や「消極的」なことについての説明がされていると考えるのが妥当です。
そのような意識でさらに課題文を読み進めます。
先ほど確認したように、形式段落7から「ポジティブ(積極的)」の話が続き、「消極的」の話題は出てきません。
が、たぶんどこかに出てくるはずだ…と思って読み進めると、ありました。
最後の段落である形式段落10の「なかほど」です。
「能力」の欠如を事後的に補うために「リスクへの対応」を行う消極的な福祉政策
「赤く美しい花」というのが「花=赤く美しい」ということを表すように、修飾部分と被修飾部分はイコールの関係です。
これが分かっていれば
消極的(な福祉政策)=「能力」の欠如を事後的に補うために「リスクへの対応」を行う
ということが分かります。
「能力」の欠如を事後的に補うために「リスクへの対応」を行うという意味
で消極的なのですね。
「本文全体」という設問指示から、この部分の見落とさないことが重要です。
③100字以内で書く
①と②で確認してきたものを100字以内でまとめると「答え」になります。
①、②で確認したものを改めて示します。
疾病・障害・失業・貧困・老齢などのリスクに直面した人々が人間としての基礎的ニーズを満たすことができなくなった場合のために、すべての個人が事前に掛け金を支払い、補償金の社会的なプールをつくっておき、リスクが生じた人々にそこから損害を補償するという社会的仕組み(であるという意味で「消極的」である)。
「能力」の欠如を事後的に補うために「リスクへの対応」を行う(という意味で「消極的」である)。
どちらも同じような内容になっていることに気づきますか?
「疾病・障害・失業・貧困・老齢などのリスクに直面した人々が人間としての基礎的ニーズを満たすことができなくなった」が「『能力』の欠如」です。
「すべての個人が事前に掛け金を支払い、補償金の社会的なプールをつくっておき、リスクが生じた人々にそこから損害を補償する」が「リスクへの対応」です。
2つをまとめると、こうなります。
疾病・障害・失業・貧困・老齢などのリスクに直面した人々が人間としての基礎的ニーズを満たすことができなくなるような「能力」の欠如を事後的に補うためにすべての個人が事前に掛け金を支払い、補償金の社会的なプールをつくっておき、リスクが生じた人々にそこから損害を補償するという「リスクへの対応」を行う(という意味で「消極的」である)。
かなり長いので短くしていきます。
単純に「文字」を削っていくのではなく、自分なりに内容をまとめていくのがいいでしょう。
リスクに直面した人が人間としての基礎的な必要(必要不可欠なもの)を満たす能力が欠如する
↓
それを事後的に補う(リスクに直面した人が人間としての基礎的な必要を満たせる)ために
↓
すべての個人で事前に準備をしておく
となり、これを文章化して「答え」とします。
人間が生きるために必要不可欠なものを満たす能力の欠如を事後的に補うために、すべての個人で、そのようなリスクに直面した人々が人間としてのニーズを満たすことができるように事前に準備しておくという意味。(98字)
長々と説明をしてきました。
「文章の読み方」に重点を置いて解説すると、このようになります。
この順で解いて欲しいのですが、これに慣れてくると次のように答えを導けます。
1.「消極的」の説明だから、「消極的」の言い換え部分を探そう。
2.最終段落にある。
3.「能力」と「リスクへの対応」に「」がついているので、ここを詳しく説明してあげればいい。
4.「能力」は、本文全体から「人間として生きる(基礎的必要を満たす)ための力」のことだ。
5.「リスクへの対応」は傍線部aの前後で説明されていた「セーフティネット」のことだ。
「文章の読み方」ができるようになれば、このようにパッと分かります。
とはいえ、まずは長々と説明したような「解き方」をしっかりと身につけましょう。
そうすることで、次第にこのように考えることができるようになりますよ。
問4 空欄補充
空欄補充では、前後の内容をしっかりと確認することが重要です。
今回は同じ一文に2つの空欄があります。
その構造を見てみます。
社会保障や社会政策は「(A)」の範囲内で「(B)」の充足に向ける公共的活動だ。
分かりやすいのは空欄Bです。
社会保障や社会政策は(=)「B」の充足に向ける公共的活動
本文で繰り返し述べられているように(問3でも確認したように)、社会保障は人間としての基礎的ニーズを満たすためのものです。
ですから、Bには「基礎的ニーズ」のような語句が入ることが分かります。
この段階で選択肢は、アの「必要」か、ウの「基礎的ニーズ」になります。
では、続いて空欄Aを考えます。
少し難しいかもしれませんが、「形式段落のつくり」から判断できます。
「はじめ(この話するよ)」→「なかほど(説明)」→「おわり(まとめ)」→「はじめ(前の形式段落の「まとめ」を踏まえて、この話するよ」→「なかほど(説明)」→…
これを意識して読んでみましょう。
形式段落9
社会保障や社会政策の話するよ
↓
それってAの範囲内でB(基礎的ニーズ・必要)の充足に向けるものだよ
↓
でも「基礎的ニーズ」を満たせない人が常にいるよ
↓
形式段落10
社会の総生産物から「基礎的ニーズ」を差し引いた残りを「社会的余剰」と呼ぶよ
↓
社会保障制度は(もう1つの)余剰の使用法で、「基礎的ニーズ」を満たせない弱者に「社会的余剰」を当てるよ。
この流れで空欄に入る語句が分かりますね。
「社会的余剰」を「基礎的ニーズ」を満たすことに当てると述べているわけですから、空欄Aには「能力」ではなく「社会的余剰」が入ることが分かります。
問5 内容理解(内容に合った例を選ぶ)
まずは「ポジティブな社会保障」とはどういうものかを確認します。
傍線部b(ポジティブな社会保障)が主部となっていますから、これの述部を確認します。
また、傍線部bは形式段落の「なかほど」にあるので、「おわり」でまとめてくれているはずです。
それ(ポジティブな社会保障・積極的な福祉政策)=一部の社会的弱者を対象とするのではなく、すべての人々を対象とする
つまり、「ポジティブな社会保障」とは
すべての人々に対して、「能力」の発揮を促進し、「自己実現の機会」を保障するもの
だと分かります。
これに合っている選択肢を選べばオッケーです。
ア 失業というリスクに直面した人が…「すべての人々」が対象になっていませんね
イ 誰もが教育…「すべての人々」が「能力を促進」できそうです
ウ 所得の低い人が…「すべての人々」が対象になっていませんね
エ 現役期に積み立てる…「能力の発揮を促進」「自己実現」とは反対の方向であり、これは問3で確認した「消極的」なものです
長野大学が受験者に求めている力は明確です。
文章を正しく読めること、読んだ内容をまとめることができること、自分の意見を根拠を持って述べることができること、そして漢字や語句の意味などの語彙力です。
このことは学校推薦型選抜(推薦入試)だろうと総合型選抜(AO入試)だろうと、一般選抜だろうと変わりません。
ですから、それぞれの力をつけるように学習しましょう。
文章を正しく読む力が試される設問に関しては、「文章の読み方」を意識していれば比較的解くことができるはずです。
大事なのは、常に同じ読み方をしてみることです。
そのためには、一度取り組んだ問題を復習し、このブログで説明したような流れで考えることができるかを試すといいと思います。
読んだ内容をまとめる設問や自分の意見を述べる設問に関しては、過去の長野大学の小論文問題をやってみるのがいいかもしれません。
長野大学の小論文では、必ず要旨をまとめることが要求されるので、それで練習ができます。
私のブログで解説もしているので見てみてください。
頑張ってくださいね。
では、これで終わります。
他の年度や国語の勉強の仕方はこちらからご覧ください。
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