高校教員の徒然日記

PMA~Positive Mental Attitude~

長野大学_過去問題(国語)_平成29年度_一般入試B日程(3月3日)_第2問

こんにちは。北の大地で高校教員をしています「きんこ」と言います。

今日は私のブログを見てもらい、ありがとうございます。

 

今回は、平成29年度一般入試B日程(3月3日)の国語、第2問の解答と解説です。

解説では、解くプロセスについても示していますので、参考にしてみてください。

 

問題については、2018年現在、長野大学に資料請求するしか方法はありません。過去問題を入手し、自分で問題を解いてみてから、このブログをご覧になるのがいいかと思います。

 

出典は『政治権力の諸問題』丸山真男 著 です。

 

【解答】

 

問1

  • (1)慣性  (2)傾斜  (3)契機
    (ア)しさ  (イ)そうさい

問2

  • A.ウ  B.イ  C.ア  D.イ

問3

  • 物理的強制手段

問4

  •  

問5

  • X 人間あるいは人間集団が持つ権力そのものという実体だ(25字)
    Y 人間あるいは人間集団の相互作用関係にあるものだ(23字)

     

問6

  • 体制が固定的で社会的流動性が乏しい国や時代では実体的権力概念が支配的で、社会集団の自発的形成とその間の相互牽制作用が活潑な国や時代では関係的権力概念が勃興する。(80字)

     

問7

  • 立憲主義では支配者ではなく制定された憲法を重視する政治のあり方となり、自由民主主義は支配者よりも服従者の意見を重視する政治のあり方となるから。(71字)

  •  

    関係概念は支配者と服従者の相互牽制作用により勃興するものだが、立憲主義自由民主主義では、支配者ではなく、制定された憲法服従者の意見が重視されるから。(76字)

  • 立憲主義自由民主主義では、支配者が一定不変の権力を持つということにはならず、制定された憲法服従者の意見が重視され、相互牽制作用がはたらくから。(73字)
  • 立憲主義自由民主主義では、支配者ではなく、制定された憲法服従者の意見が重視される政治のあり方となるため、支配者と服従者の相互牽制作用が必然的に生まれるから。
    (80字)

 

 

[解説]

 

問1 漢字の読み書き

 

  • 基本的な漢字ばかりです。漢字検定2級まで取得していればまったく問題ありません。不安であれば、漢字検定3級から学習することをオススメします。大問2でも同じように5問出題されますので、漢字問題は計10問です。得点源にしましょう。

 

問2 空欄補充(語句)

 

  • 語句の空欄補充問題は、空欄前後の文脈から判断できることがほとんどです。まずは、空欄を含む一文をしっかり確認し、何について述べている一文なのかを確認します。その上で、どのような語句を補充するのが適切か考えます。

     

  • Aは、形式段落2のはじめにあります。ということは、形式段落2では空欄Aに入る語句について述べていくと考えられます。ただ、形式段落2の内容を読んでも、選択肢から正解を判断することは難しそうです。そこで、形式段落1を確認します。なぜなら、当たり前ですが形式段落1の話の続きが形式段落2だからです。形式段落1の内容は、中程にあるように「政治権力を整理し、それを通じて、権力論を提示しますよ」です。ということは、形式段落2以降で「政治権力」についての整理、説明がなされると考えられます。正解は「政治権力」です。
  • Bは、空欄Bを含む一文を見ると「(B)の発展と社会的激変から興った社会物理学は、こうした自然と社会の一元的な法則かをすすめた」となっています。「は」は「イコール」を表すので、前半と後半の内容はイコールの関係だと分かります。すると、前半は「(B)と社会」、後半は「自然と社会」となっていることが分かります。(B)には「自然」に関する語句が入ると判断できます。正解は「自然科学」です。
  • Cは、形式段落2の終わりにあります(最後の一文は具体例だから考えない)。ということは、この段落のまとめとなっているはずです。この段落が何について書かれていたかを確認するために段落のはじめを見ます。すると、「政治権力」について説明するために「力学的な法則」についての説明がされていることが分かります。その後もずっと「力の法則」について書かれていることが分かるので、「力の法則」が正解となります。
  • Dは、空欄Dを含む一文を見ると「C・フリードリヒは権力概念を実体概念としているけれども、マルクスたちは権力についての(D)を前提にしている」となっています。「けれども」は逆接を表すので、前半の「実体概念」と(D)は対比関係になっているはずです。「実体概念」と対比されているのは、形式段落3のはじめの一文から「関係概念、函数概念」です。「関係概念」が正解です。

 

問3 内容把握(語句の抜き出し)

 

  • 傍線部aを含む一文は「社会権力は、物理的世界に働く盲目的な力と区別される」です。ただ、直後に「しかし…物理的世界における力学的な法則を適用することは全く無意味ではない」と続いており、傍線部aは「区別はされるけれども関係性はあるというものだ」と捉えることができます
  • 傍線部aの直後には(physical power)とありますが、ここから「物理的な力」「物理力」としてはいけません。抜き出し問題なのに答えが複数になってしまいますし、これでは「盲目的」のニュアンスがないと考えられます。
  • というわけで文章を読んでいくことになるのですが、ここでは、形式段落の作りが「まとめ→説明→まとめ」となっていることを意識して読んでみます(形式段落のはじめと終わりは同じ内容になっているはずです)。この形式段落の最後の方に注目すると、空欄Cを含む文の後半が「社会権力と物理力の相違をやかましくいう必要はない」、つまり、この2つには「関係性があるとみなしてもいい」という内容になっています。続く一文はこの具体例となっており「『物理的強制手段』が(自然と区別された)社会関係によって媒介された概念だ」です。「物理的強制手段」は、社会関係とは区別されているけれど、媒介はされている(関係性はある)ということなので、「物理的強制手段」が答えとなりそうです。aの直後の「physical power」も「物理的」でカバーできますし、「盲目的」のニュアンスも「強制」でカバーできそうです。これらのことから「物理的強制手段」を解答とします。

 

問4 空欄補充(文)

 

  • 再び空欄補充です。

     

  • 空欄(あ)を含む一文は「これに反して」から始まっているので、直前の一文との対比です。直前の一文は「平衡は保ちにくいが、一旦バランスを保つと安定度は高い」です。(あ)の方は「平衡が成立するが、(あ)」です。直前の文とキレイな対比になっていますね。(あ)には「安定度が低い」という内容が入るはずです。この時点で選択肢はイかエとなります。イは「平衡がくずれる」となっており良さそうです。エは「平衡はくずれたままになる」となっており、ある意味安定していることになってしますからダメです。イが正解です。

 

問5 内容説明

 

  • 「関係概念あるいは函数概念としての権力」の説明が問われています。フレームが示され、2つの空欄に適切な文を挿入します。本文中の語句を用いるという条件もついています。

     

 

空欄X

  • 「権力とは、(X)、と考えるのでなく」となっているので、「関係概念としての権力」と対比的に書かれているものが入ります。この文章で「関係概念」と対比されているのは傍線部bの1行前にある「実体概念」です(傍線部bを含む一文の中程に「これに対して」という言葉からも明白です)。ということは、(X)には「実体概念としての権力」の説明を入れればいいということになります。形式段落3の一文目からが、この説明となっています。

 

人間あるいは人間集団が「所有」するもの(19字)
具体的な権力行使の諸態様の背後にいわば一定不変の権力そのものという実体がある(38字)

  • どちらも、このままでは25字以内という制限字数に合わないため、1つめの内容の「所有」を、2つめの内容を使って言い換えます。

 

人間あるいは人間集団が持つ権力そのものという実体だ(25字)

  • 制限字数も合っているので、これを解答とします。

 

空欄Y

  • こちらは「関係概念あるいは函数概念としての権力」の説明の方です。傍線部b直前の内容です。

 

具体的な状況における人間(あるいは集団)の相互作用関係において捉える(力)(35字)

 

  • これを制限字数に合わせます。その際、空欄Xと対比関係にあることも意識してまとめます

 

人間あるいは人間集団の相互作用関係にあるものだ(23字)

 

  • これを解答とします。

 

問6 内容説明

 

  • 線部以降で、傍線部c「権力現象」の傾向を歴史的観点からどのように説明しているかが問われています。「傍線部以降」「歴史的観点」という条件を見落とさないようにしましょう

     

  • 傍線部以降を読み進めると、「たとえば歴史的に見ると」から始まる部分に注目できるはずです。ここを確認します。

 

一般に体制が固定的で階級的あるいは社会的流動性が乏しい国ないし時代には実体的権力概念が支配的である。→A

 

  • さらに読み進めると、「これに対して」とあり、対比的に書かれているものがあることが分かります(問4でも確認したとおり、「実体概念」と「関係概念」との対比です)。

 

社会集団の自発的形成とその間の複雑な相互牽制作用が活潑に行われているような国ないし時代には、関係的=函数的な権力概念が勃興する。→B

 

  • AとBをまとめて解答とします。

 

体制が固定的で社会的流動性が乏しい国や時代では実体的権力概念が支配的で、社会集団の自発的形成とその間の相互牽制作用が活潑な国や時代では関係的権力概念が勃興する。(80字)

  • なお、「関係的権力概念」の説明で「政治権力による社会的価値の独占性が相対的に低く、コミュニケーションの諸形態が発展し」をカットしました。それは「実体的権力概念」の説明で「政治権力の専制性や暴力性を強調する考え方が実体概念と結びついて来た」の部分をカットしたことに合わせたからです(こちらは「実体的権力概念」の説明というより、「実体概念」との結びつきの説明となっているためカットです)。どちらも「政治権力」について書かれているので、対比構造を考えると、カットするなら両方カットするのが自然です。 

  

問7 内容説明

 

  • 傍線部d「立憲主義自由民主主義」だと、なぜ関係概念で権力を説明するのかが問われています。しかも、「自分なりの言葉で考えて」という条件がついています。つまり、本文中の言葉をつなぎ合わせた解答にはならないはずだということです。

  • とはいえ、解答の方向性は本文から考えなければいけません。すると、傍線部の直前が「服従心理的契機や、服従者の行動様式の指導者(あるいは支配者)に対する逆作用を重視するから」と、思いっ切り理由が書かれています。「服従心理的契機や服従者の支配者に対する逆作用を重視するから」という内容が理由となりそうです。これを「立憲主義自由民主主義」に当てはめて考えます。

  • まず、この2つの言葉の意味を確認します。

 

立憲主義憲法を制定し、それに基づいて政治を行うとする考え方。
自由民主主義…構成員の多様な意見や政策が自由な議論と選択によって集団の意志決定に反映されるような政治を行うとする考え方。

 

  • 立憲主義は、支配者ではなく憲法服従するということです。「服従心理的契機」が「支配者」に向かわず「憲法」に向くという点で、実体的権力概念とは異なりそうです。
  • 次に、「自由民主主義」は、支配者ではなく、服従者の意見が重視されるということです。これが「服従者の支配者に対する逆作用を重視している」ということになりそうです。
  • また、問6で確認したように、関係概念は支配者と服従者の相互牽制作用により勃興するものだということも確認しておきます。
  • これらのことを踏まえて、次のような解答となります。いくつかのパターンを示します。

 

立憲主義では支配者ではなく制定された憲法を重視する政治のあり方となり、自由民主主義は支配者よりも服従者の意見を重視する政治のあり方となるから。(71字)

 

  • このパターンのみ「相互牽制作用」には触れていませんが、これで十分だと思います。

 

関係概念は支配者と服従者の相互牽制作用により勃興するものだが、立憲主義自由民主主義では、支配者ではなく、制定された憲法服従者の意見が重視されるから。(76字)

 

立憲主義自由民主主義では、支配者が一定不変の権力を持つということにはならず、制定された憲法服従者の意見が重視され、相互牽制作用がはたらくから。(73字)

 

立憲主義自由民主主義では、支配者ではなく、制定された憲法服従者の意見が重視される政治のあり方となるため、支配者と服従者の相互牽制作用が必然的に生まれるから。(80字)

 

 

 

 

かなり長くなりましたが、いかがでしたか。問題が変わっても、ここで示した「解き方のプロセス」は変わりません。今回解いた過去問題と同じ文章は絶対に出ることはありませんが、問題の傾向は大きく変わることはないはずです。ですから、過去問題をやることで、「解き方のプロセス」を身につけることが何よりの対策となります

今後も他の問題の解答解説をアップしていきますので、自分で「解き方のプロセス」を意識して解いた後で、解説を見てください。はじめは慣れないかも知れませんが、意識して繰り返す内に自分の力となっていくはずです。

長野大学の入試問題は、基本的な読解力をしっかりと問うている良問です。「解き方のプロセス」を身につけることは、文章読解力の向上とイコールです。大学受験を通して、その力を身につけるとともに、大学に合格して、楽しい4年間を過ごしてください。

応援しています。

 

では、今回はこれで終わります。

 

 

長野大学の他の問題の解答解説については、こちらからご覧ください。

kinkoshin.hatenablog.com

 


Twitterでは新着記事や役立つ情報をお知らせしているのでぜひフォローしてください。

また、質問もこちらからどうぞ(^_^)