長野大学_過去問題(国語)_平成29年度_一般入試A日程(2月1日)_第2問
こんにちは。北の大地で高校教員をしています「きんこ」と言います。
今日は私のブログを見てもらい、ありがとうございます。
今回は、平成29年度一般入試A日程(2月1日)の国語、第2問の解答と解説です。
解説では、解くプロセスについても示していますので、参考にしてみてください。
問題については、2018年現在、長野大学に資料請求するしか方法はありません。過去問題を入手し、自分で問題を解いてみてから、このブログをご覧になるのがいいかと思います。
出典は『差別原論』好井裕明 著 です。
【解答】
問1
- (1)過剰 (2)丁寧 (3)侵食
- (ア)そち (イ)しょうさい
問2
- A.イ B.オ C.エ D.ウ E.ア
問3
- 差別事件が起こったとき、事件の内容や問題、責任の内容を明らかにすることで、差別を世の中に告発し、被差別当事者が奪われている市民的な権利や生活を獲得するため。(78字)
問4
- 私たちが生きてきた歴史の中で否定的な意味が付与され、いまだにその意味で使われているような言葉。(47字)
問5
- ア、オ
問6
- 差別を見抜くこと。(9字)
[解説]
問1 漢字の読み書き
- 基本的な漢字ばかりです。漢字検定2級まで取得していればまったく問題ありません。不安であれば、漢字検定3級から学習することをオススメします。大問2でも同じように5問出題されますので、漢字問題は計10問です。得点源にしましょう。
問2 空欄補充(接続詞・副詞)
- 接続詞・副詞の空欄補充問題は、空欄前後の文脈から判断します。空欄前ではどのようなことを述べているか、空欄後ではどのようなことを述べているか。これを読み取り、その関係性から、適切な接続詞を選びます。
- 空欄Aの前の内容は「重要な政治的戦略だった」です。後の内容は「これが妥当な政治的な戦略だったのか。確認し糾弾する対象として妥当だったのか、など考えるべき内容は多くある」です。実際になされていたのだけれど、「それが本当に」妥当だったのか考えることはあるよね、という流れです。また、Aを含む一文が「~か」という疑問文になっていることもポイントです。「~か」という疑問文に合うのは「はたして」しかありません。ただ、この問題はちょっと難しいかもしれません。Bも少し難しく、C~Eは明らかに答えが分かるものになっているので、それらを答えてから、もう一度A、Bに戻ってきても大丈夫です。
- 空欄Bの前の内容は「確認し糾弾する対象として」です。後の内容は「差別であると指摘された言葉や行為などの事象が差別だということが妥当か」です。後の内容をまとめると「事象を差別とすること」となり、前の内容である「(確認、糾弾する)対象」を述べていることが分かります。このことから、この空欄には「イコール」を表す接続詞が入ることが分かります。「つまり」です。ただ、空欄Aの解説で述べた通り、この問題も比較的難しいと言えます。
- 空欄Cの前の内容は「否定的な意味が付与され続けているような言葉は」です。後の内容は「差別的な言葉として、使うべきではない」です。「~べき」に続く言葉(「~べき」と呼応する語句)として適切なものは「やはり」です。
- 空欄Dの前の内容は「差別を受ける側とする側には現実把握をめぐる圧倒的な”落差”がある」です。後の内容は「ハゲなどの言葉によって、気にする人と気にしない人がいる」です。差別を受ける人とする人との間に落差があることの具体例が書かれています。具体例を示す「たとえば」が入ります。
- 空欄Eの前の内容は「ハゲという言葉を浴びせたら強烈な差別であり攻撃だ」です。後の内容は「こうした言葉(ハゲ)はなにげなく一言で冗談という反応がよく見られる」です。この関係性を考えると「強烈な差別・攻撃」にも関わらず、「よく見られる」となります。逆接の「しかし」が入ります。
問3 内容説明
-
問われているのは、「確認、糾弾という営みの意図」です。「意図」とは「ねらい」、つまり「何のために確認、糾弾をしているのか」が問われていることになります。
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各形式段落の作りが「まとめ→説明→まとめ」となっていることが多いということを意識して読んでみると、傍線部aは形式段落1のはじめにあります。これについての説明がされるはずだと考え読み進めると、この形式段落の後半は「差別事件が起こったとき、事件の内容や問題、責任の内容を明らかにしよう」として、「確認、糾弾」が行われていたことが分かります。まず、ここの部分が解答で使う部分となります。
-
続いて読み進めていくと、形式段落2の後半に「確認、糾弾という営みは」から始まる文があります。「確認、糾弾という営み」について問われていて、それが主語になっているのだから、この部分は要チェックです。この文は「確認、糾弾という営みは、○○を獲得するために重要だった」とまとめることができるので、「確認、糾弾という営み」のねらいは「○○を獲得するため」だということが分かります。ここも解答で使う部分です。
-
以上をまとめます。
差別事件が起こったとき、事件の内容や問題、責任の内容を明らかにすることで、差別を世の中に告発し、被差別当事者が奪われている市民的な権利や生活を獲得するため。(78字)
-
前半部分では、「差別事件が起こったとき」という条件を必ず書きます。明らかにしようとするときは、このときだと限定されているからです。
後半部分では、本文で「自らが奪われている市民的権利」となっていますが、このまま書いては「自ら」が誰か分かりません。「被差別当事者」と言い換えます。
問4 内容説明
- 傍線部b「差別である」言葉とは、どのような言葉かが問われています。
- 問3でも少し触れましたが、ここで内容説明問題の基本的な考え方を確認しておきます。「傍線部とはどういうことか、どのようなものか」などの問題は、傍線部の言い換え問題と言うことができます。そして、本文中から言い換えられている部分を探すときの基本的な考え方が次の2点です。
①傍線部が主語になっている文に注目する。
例 花は、赤く美しい。
②傍線部を修飾している文に注目する。
例 赤く美しい花が、咲いている。
このような文があった場合、「どんな花か説明せよ」と問われたら、誰でも「赤くて美しい花」と答えることができますね。つまり、助詞「は」の前後の内容や修飾語と被修飾語の関係は「イコール」と捉えることができるということです。内容説明問題は傍線部を言い換える問題なので、この「イコール」に注目することが、基本的な解き方なのです。
- 今回は「差別である言葉」とはどのような言葉かが問われているのですから、「差別である言葉」のような表現が主語になっている部分(「は」でつながっている部分)、もしくは修飾されている部分を探してみるということになります。すると、傍線部bがある形式段落の5行目に「私たちがこれまで生きてきた歴史の中で否定的な意味が付与され、いまだにそれが生きているような言葉は、(C)差別的な言葉として…」という部分を見つけることができます。空欄Cがありますが、「差別的な言葉」と空欄(C)の前の内容が「は」でつながっていることが分かります。ここを使って、解答します。
私たちが生きてきた歴史の中で否定的な意味が付与され、いまだにその意味で使われているような言葉。(47字)
- 後半の「それが生きている」は、このままでは分かりづらいので、「その意味で使われている」と言い換えます。
問5 内容説明
- 傍線部c「非対称性」とは、どのようなことかが問われています。「非対称性」の言い換え問題と言えます。
- 傍線部cは形式段落のはじめにあります(一文で終わりますが)。形式段落後半の内容は「差別を受ける側とする側には現実把握をめぐる圧倒的な”落差”がある」です。この「”落差”がある」が非対称の内容(言い換え)だと分かります。つまり、差別を受ける側とする側には差がある(対称ではない)ということです。
- 形式段落8は、この具体例です。同じ「ハゲ」などの言葉でも受け取る人によって、感じ方が違うという内容です。非対称ですね。→A
また、さらに読み進めていくと、形式段落10の後半に「限られた〈差別を見抜く知〉と圧倒的な〈差別を隠し、見えなくさせる知〉という非対称性」という部分が出てきます。「非対称性」に「限られた〈差別を見抜く知〉と圧倒的な〈差別を隠し、見えなくさせる知〉」という修飾部分がついています。問4で確認したように、修飾部分は、修飾されている言葉とイコールの関係でしたね。ですから、「非対称」とは、「〈差別を見抜く知〉と〈差別を隠し、見えなくさせる知〉」とが対称でないということになります。私たちは、この非対称性の中で、普段生きていると書かれています。→B - 以上の内容を踏まえて、選択肢を見てみます。
アは、「多くが差別しないように意識している」とありますが、これは確認した内容と異なります。これが1つめの不適切なものです。
イは、Bの内容になっています。
ウは、Aの内容になっています。
エは、Bの内容になっています(形式段落10の真ん中の内容です)。
オは、「意思疎通がなければ、両者間に対立がない」とありますが、これは確認した内容と異なります。これが2つめの不適切なものです。 - 選択肢の問題は、まずは自分で答えを作ってから(今回であれば「非対称」とはどのようなことか考えてから)選択肢を見るようにします。自分で答えを作り、それと同じもの(今回は異なるもの)を選ぶという順で解答するようにしましょう。
問6 内容説明
- 傍線部d「処方箋」の目的が問われています。
- 「処方箋」とは、「(病気などを治すための)薬の名称や分量、用法などが記されているもの」です。「処方箋」の内容説明をすると、それが目的になっていそうです(処方箋には病気などを治すための用法が書かれているのですから)。
- 傍線部dを含む一文に注目すると、「処方箋」前半部分が「認識の仕方や処方箋」の修飾部分になっていることが分かります。つまり、「処方箋=ある言葉や行為が差別と分かり、そうしたものを批判的に捉え、なくしていける」となります(この部分は「認識の仕方」と「処方箋」の2つと修飾被修飾の関係です)。ただ、設問では10字以内で述べるという条件がありますので、ここを使うのは難しそうです。ですから、この内容を短くまとめている部分を探すことになります。
- 傍線部dのある形式段落10の構成を確認します。
○○(ここに傍線部「処方箋」がある)としての知識が、圧倒的に少ない。→A
他方、○○としての知識が、世の中に充満している。→B
つまり、限られた〈差別を見抜く知〉と圧倒的な〈差別を隠し、見えなくさせる知〉という非対称性が世の中にある。
- 問2の空欄Bで確認したように、「つまり」はイコールを表す接続詞です。形式段落10は「つまり」の前後が同じ内容になっているということになります。
- 上で確認した構造を見るとAと「限られた〈差別を見抜く知〉」、Bと「圧倒的な〈差別を隠し、見えなくさせる知〉」が同じ内容であることが分かりますね。「(処方箋)としての知識=差別を見抜く知」です。「処方箋」に該当する部分は「差別を見抜く」です。そして、これははじめに確認した「処方箋=ある言葉や行為が差別と分かり、そうしたものを批判的に捉え、なくしていける」とも重なります。ここを使って解答とします。
差別を見抜くこと。(9字)
かなり長くなりましたが、いかがでしたか。問題が変わっても、ここで示した「解き方のプロセス」は変わりません。今回解いた過去問題と同じ文章は絶対に出ることはありませんが、問題の傾向は大きく変わることはないはずです。ですから、過去問題をやることで、「解き方のプロセス」を身につけることが何よりの対策となります。
今後も他の問題の解答解説をアップしていきますので、自分で「解き方のプロセス」を意識して解いた後で、解説を見てください。はじめは慣れないかも知れませんが、意識して繰り返す内に自分の力となっていくはずです。
長野大学の入試問題は、基本的な読解力をしっかりと問うている良問です。「解き方のプロセス」を身につけることは、文章読解力の向上とイコールです。大学受験を通して、その力を身につけるとともに、大学に合格して、楽しい4年間を過ごしてください。
応援しています。
では、今回はこれで終わります。
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